※本記事は、大平洋金属株式会社 の有価証券報告書(第99期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大平洋金属ってどんな会社?
国内唯一のフェロニッケル専業メーカーとして、ステンレス鋼の主原料を供給する素材関連企業です。
■(1) 会社概要
同社は1949年、日本曹達の鉄鋼部門から分離して日曹製鋼として設立され、1952年に上場しました。1957年に八戸工場が完成し、1970年に現社名へ変更しています。1999年にはステンレス鋼部門から撤退し、フェロニッケル専業メーカーとなりました。2022年の市場区分見直しにより、現在はプライム市場に上場しています。
2025年3月31日現在、従業員数は連結441名、単体395名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は同社の主要販売先である日鉄ステンレス、第3位は個人株主の野村 絢氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.74% |
| 日鉄ステンレス | 8.39% |
| 野村 絢(常任代理人三田証券) | 8.27% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役取締役社長は岩舘一夫氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岩舘 一夫 | 代表取締役取締役社長 | 1985年同社入社。製造本部製造部長、環境事業部長、執行役員製造副本部長などを経て2025年6月より現職。 |
| 猪股 吉晴 | 取締役専務執行役員社長補佐、特命事項担当 | 1975年同社入社。品質管理室長、技術開発室長などを経て、専務執行役員、社長補佐を歴任。2025年6月より現職。 |
| 原 賢一 | 取締役常務執行役員調達担当、営業部長 | 1988年同社入社。営業一部長、取締役営業担当などを経て、2021年6月より現職。 |
| 松山 輝信 | 取締役常務執行役員内部統制・IR・総務・人事・経理担当 | 1988年同社入社。経理部長、取締役IR担当などを経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、酒井 由香里(元野村證券)、天野 正人(天野正人国際法律事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ニッケル事業」「ガス事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ニッケル事業
ステンレス鋼の主原料となるフェロニッケル製品の製造・販売を行っています。主原料であるニッケル鉱石の一部は、フィリピンの関連会社であるリオ・チュバ・ニッケル鉱山およびタガニート鉱山より商社を経由して購入しています。主な顧客はステンレス鋼メーカーです。
収益は、商社を経由したフェロニッケル製品の販売により得ています。また、製錬時に発生する鉱滓(スラグ)の販売も行っています。運営は同社および子会社の太平洋興産が行っており、太平洋興産は鉱滓の販売や運搬請負業務等を担当しています。
■(2) ガス事業
フェロニッケル製品の製造過程で使用される各種ガス類の製造および販売を行っています。
収益は、製造したガス類を同社(大平洋金属)へ販売することで得ています。運営は連結子会社である大平洋ガスセンターが行っています。
■(3) その他
主に鋳鍛鋼品および各種産業機械等の仕入・販売、不動産事業などを行っています。
収益は、産業機械等の販売や不動産の賃貸・売買等から得ています。運営は、関連会社のパシフィックソーワ(商社)、大平洋製鋼(鋳鍛鋼品製造)、アミタホールディングス(環境関連)などが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2022年3月期をピークに売上高は減少傾向にあり、利益面では2023年3月期以降、経常損失および当期純損失が続いています。特に直近2期は売上高が大幅に縮小し、赤字幅も大きい状態で推移しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 322億円 | 571億円 | 349億円 | 155億円 | 132億円 |
| 経常利益 | 33億円 | 130億円 | -50億円 | -21億円 | -16億円 |
| 利益率(%) | 10.4% | 22.8% | -14.2% | -13.7% | -12.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 11億円 | 112億円 | -71億円 | -11億円 | -17億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で減少しました。売上総利益および営業利益はいずれもマイナスですが、赤字幅は前期より縮小しています。これは棚卸資産簿価切下げ額の戻入れ等が影響しています。一方、営業外収益に多額の持分法投資利益が計上されているものの、営業損失を補填するには至っていません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 155億円 | 132億円 |
| 売上総利益 | -71億円 | -52億円 |
| 売上総利益率(%) | -45.8% | -39.4% |
| 営業利益 | -91億円 | -74億円 |
| 営業利益率(%) | -58.7% | -55.9% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が4.5億円(構成比21%)、従業員給与が3.5億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ニッケル事業は、数量抑制方針や販売価格の低迷により減収となり、営業損失が継続しています。ガス事業は原燃料価格上昇等の影響で損失計上となりました。その他事業(不動産等)は増収でしたが、維持費等を賄えず損失となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ニッケル事業 | 147億円 | 124億円 | -91億円 | -73億円 | -58.9% |
| ガス事業 | 7.3億円 | 7.0億円 | -0.1億円 | -0.0億円 | -0.1% |
| その他 | 0.6億円 | 1.1億円 | -0.3億円 | -0.9億円 | -85.3% |
| 調整額 | - | - | 0.1億円 | 0.1億円 | - |
| 連結(合計) | 155億円 | 132億円 | -91億円 | -74億円 | -55.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
大平洋金属のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産の増減や利息・配当金の受取額が主な増加要因となり、税金等調整前当期純損失や持分法による投資利益等を加味した結果、前連結会計年度に比べて収入が増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の償還による収入があったものの、有形固定資産の取得による支出が増加したため、前連結会計年度に比べて支出が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、わずかな支出となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 28億円 | 30億円 |
| 投資CF | 20億円 | -1.5億円 |
| 財務CF | -0.0億円 | -0.1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「人の力を活かし、地球の資源をより有用なるものとして提供し、人類社会の幸福に貢献する」という経営理念を掲げています。この理念のもと、グループ全体のシナジー発揮、製錬技術の開発と品質向上、コンプライアンス推進、環境問題への取り組みなどを経営方針として定めています。
■(2) 企業文化
同社は、社員の個性を伸ばし創造性を発揮させるとともに、物心両面のゆとりと豊かさを追求し、生きがいのある職場を実現することを重視しています。また、公正・透明・自由な競争を通じて適正な利益を確保し、広く社会との交流を進めて公正な企業情報を積極的に開示する姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、2025年度から2031年度までの7カ年における中長期戦略「PAMCOvision2031」を策定しました。長期ビジョンとして「持続可能な循環型社会を共創する総合素材カンパニー」を掲げ、業態をゼロベースで見直し新たなステージへ進むことをテーマとしています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後は、業態の抜本的な見直しと新規事業分野への参入による事業ポートフォリオの再構築を進めます。具体的には、海底資源活用による電池用金属材料等の製造事業、ベリリウム製造販売の事業化、リチウムイオン電池(LIB)関連の研究開発などに注力しています。また、サステナビリティ課題への対応として、カーボンニュートラル実現に向けたGHG排出量削減にも取り組んでいきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営理念の実現に向け、多様な人材が活躍できる職場環境や教育体制の整備を進めています。ダイバーシティの推進や、生産性とワークライフバランス向上のための意識改革に取り組み、定年年齢の65歳への引き上げも実施しました。女性活躍推進を含むキャリア形成支援や、主体的に働き方を考える研修なども行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.0歳 | 19.1年 | 5,299,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 16.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 81.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 79.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 120.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 収益に影響する要因
事業の大部分を占めるフェロニッケル製品の価格は、LME(ロンドン金属取引所)のニッケル価格と為替相場の影響を強く受けます。LME価格の上昇や円安は製品価格上昇に寄与しますが、逆の場合は下落します。また、ニッケル銑鉄の価格動向も販売価格に影響を与える可能性があります。
■(2) 販売数量に関する事項
フェロニッケル製品の主な販売先であるステンレス鋼業界の動向が収益に大きく影響します。ステンレス生産者の稼働率低迷や、海外メーカーが安価なニッケル銑鉄へ調達をシフトすることによる販売環境の悪化が、計画数量の未達につながる可能性があります。
■(3) 資材調達に関する事項
主原料であるニッケル鉱石はフィリピンやニューカレドニアから輸入しており、長期契約や資本参加等で安定調達を図っていますが、資源ナショナリズムの台頭など生産国の情勢変化により、計画通りの調達量を確保できなくなるリスクがあります。
■(4) 米国の関税措置に伴う影響
米国の関税措置は国内外のサプライチェーンに広範な影響を及ぼす可能性があり、混乱が懸念されています。現時点での業績への影響は限定的と見込まれますが、各国の経済対策次第では、需要や価格面に大きな影響を与える可能性があります。



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