※本記事は、大阪製鐵株式会社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
大阪製鐵は鉄鋼業を営んでいます。同社は日本製鉄の電炉中核子会社として、形鋼、棒鋼、平鋼などの鋼材及び鋼片、鉄鋼加工品の製造販売を手掛けています。
単体従業員数は600名、連結従業員数は1,074名です。セグメントは鉄鋼業の1つです。
主な国内グループ会社は、当社、日本製鉄、東京鋼鐵、大阪新運輸、西鋼物流などです。
なお、大阪製鐵は2026年5月12日開催の取締役会において、連結子会社であるPT.KRAKATAU OSAKA STEELを解散する方針を決議しました。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
大阪製鐵は、鉄鋼業を基盤とする企業として、安定した事業運営を行っています。従業員の働き方においては、長期的な視点での人材育成に力を入れ、多様な人材が活躍できる職場環境の整備を目指していることがうかがえます。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、従業員が長く働き続けられる環境が整っており、平均勤続年数や平均年齢から、安定したキャリア形成が可能な企業文化がうかがえます。従業員一人ひとりの成長を支援し、定着を促す取り組みが進められていると考えられます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 7,147,000円 |
| 平均勤続年数 | 14.7年 |
| 平均年齢 | 41.4歳 |
| 単体従業員数 | 600人 |
| 連結従業員数 | 1074人 |
| 単体のグループ内比率 | 55.9% |
同社は、規約型確定給付企業年金制度、一時金制度、及び確定拠出制度を採用しています。これらの制度は国内グループ会社と海外子会社に適用されています。
退職一時金制度はありますが、支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
なお、退職給付債務は35.5億円、年金資産は26.0億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
大阪製鐵グループは、人的資本を企業価値向上に不可欠な重要資源と位置付け、事業戦略と一体となった人材戦略を推進しています。従業員一人ひとりが互いの個性と多様性を尊重し、目標実現に向けて成長できる働きやすい職場環境の整備、人材育成、そして健康でいきいきと活躍・挑戦できる企業文化の醸成を通じて、持続的な企業価値向上を目指しています。
給与や賞与については、職務内容、役割、成果を総合的に勘案し、公正かつ適正に決定することを基本方針としています。給与水準は社会的水準を踏まえて決定され、賞与には業績連動方式が採用されています。
人材戦略の主要施策として、「人材の確保および育成」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進」「健康経営の推進」の3つの領域に重点的に取り組んでいます。具体的には、リファラル採用やカムバック採用、キャリア採用の強化、上司・部下間のコミュニケーション充実、給与水準の引き上げなどにより人材確保・定着を図っています。
人材育成では、上司と部下が日々の対話を重ねながら業務スキルを伝えていくOJTを基本とし、技術職向けには技能伝承のための育成計画作成や資格取得講習、指導員研修などを実施しています。スタッフ系人材育成では「個人育成対話シート」を活用したPDCAサイクルを構築し、DX研修や部門別エキスパート研修、海外人材育成研修などのOFF-JT研修を充実させています。管理者向けにはマネジメントを目的とした階層別研修や新任管理者研修を実施し、中枢を担う人材の育成強化を目指しています。
ダイバーシティ推進では、女性管理職比率の向上、法定基準を上回る育児・介護支援制度の整備、在宅勤務制度の活用促進、育児休業等取得率の向上に取り組んでいます。また、65歳定年制の導入や障がい者雇用の促進により、多様な人材の活躍機会の拡大を図っています。健康経営においては、健康経営宣言の制定、健康意識向上、生活習慣改善、疾病の早期発見・予防、メンタルヘルス対策、仕事と家庭の両立支援などを推進しています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。連結子会社は法定開示の公表義務対象外のため、提出会社単体のデータを示します。男女の賃金差異は、男女それぞれの社員数に占める各区分の構成比が異なることや、同一区分内でも男女での平均勤続年数が異なることによって発生しています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 2.4% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 64.3% |
| 育児休業と育児目的休暇を合わせた取得率 | 85.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 77.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 82.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 63.6% |
人材育成・エンゲージメント
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 有給休暇平均取得率 | 81% |
| 人材活性化研修実施率 | 80% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
大阪製鐵は、鉄鋼業を営む同社グループの中核企業です。普通鋼の生産から製品の販売、そして運送までを一貫して手掛けています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは鉄鋼業を主な事業としており、普通鋼の生産と製品の販売、関連する運送事業を包括的に展開しています。日本製鉄の電炉中核子会社として、電炉や形鋼に関する製造設備・操業技術面での連携、建築・土木・造船分野における営業面での連携、人材・情報セキュリティ等に関わる連携を通じて、企業価値の向上を図っています。
収益は主に鋼材や鋼片の販売から得ています。地域別の売上高を見ると、日本が最も大きな割合を占め、インドネシア、その他地域がこれに続いています。しかし、インドネシア事業については、現地の鉄鋼需要の急激な低迷と競争激化により、連結子会社であるPT.KRAKATAU OSAKA STEELの事業を停止し、解散する方針を決定しています。主要な顧客としては、日鉄物産、PT.KRAKATAU WAJATAMA OSAKA STEEL MARKETING、エムエム建材が挙げられ、特定の顧客への収益集中が見られます。
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの売上高は直近5年間で変動が見られます。当期は売上高が前期に比べて減少し、経常利益も大幅な減少となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は損失を計上する結果となっています。
一方で、営業活動によるキャッシュ・フローは前期に引き続き収入を確保しており、本業におけるキャッシュ創出力は維持されている状況です。しかし、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローは大きな支出となっており、特に自己株式の取得による支出が財務活動に影響を与えています。当期の純損失は、インドネシア事業の撤退に伴う影響も含まれていると考えられます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,045億円 | 1,171億円 | 1,171億円 | 1,164億円 | 951億円 |
| 経常利益 | 39.6億円 | 63.8億円 | 63.0億円 | 49.1億円 | 33百万円 |
| 経常利益率 | 3.8% | 5.4% | 5.4% | 4.2% | 0.0% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 25.7億円 | 29.0億円 | 31.2億円 | 32.3億円 | △209億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 65.96 | 74.60 | 80.21 | 82.94 | △699.78 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり売上高(連結)は前期から減少しています。また、従業員1人あたり営業利益(連結)も前期から減少しており、当期は損失を計上する結果となりました。これは、当期の売上高減少と営業利益の損失が影響しているものと考えられます。
同社グループは、現場活動を中心とした歩留・原単位の改善や、堺工場での省エネ・省CO2型電気炉の稼働開始など、生産性向上に向けた取り組みを進めています。また、従業員給与水準の引き上げや働き方の柔軟性を向上させる制度の導入など、人的資本強化にも注力している状況です。
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 109.3百万円 | 88.5百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 5.0百万円 | △0.2百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社グループの財務状況は、現在の事業環境における課題と、今後の成長に向けた資金の流れを示しています。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤は、自己資本比率がプライム市場の製造業平均を上回る水準で推移しています。これは、安定した経営基盤を示す一つの指標となります。一方で、ROEは当期にマイナスとなっており、収益性の改善が課題となっています。現金及び預金は減少傾向にあり、今後の資金繰りにも注目が必要です。これらの財務状況は、将来的な雇用や給与の安定性を判断する上で重要な要素となります。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 1,582億円 | 1,135億円 |
| 自己資本比率 | 76.7% | 72.4% |
| ROE(自己資本利益率) | 2.1% | -15.4% |
| 現金及び預金 | 99.5億円 | 30.2億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループのキャッシュフローを見ると、本業の稼ぎを示す営業活動によるキャッシュフローは、棚卸資産や売上債権の減少などにより、前期に比べて増加し88.2億円の収入となりました。これは、事業活動を通じて安定的に資金を生み出していることを示しています。投資活動によるキャッシュフローは、固定資産の取得による支出が主な要因となり、86.4億円の支出となりました。これは、将来に向けた設備投資が行われている状況を表しています。
フリーキャッシュフローは1.8億円のプラスとなっています。財務活動によるキャッシュフローは、自己株式の取得による支出が大幅に増加したことにより、243.3億円の支出となりました。これらの資金の流れは、同社グループが事業環境の変化に対応しつつ、資本効率化を進めている現状を示しており、今後の事業展開とそれに伴う雇用・給与の安定性を見極める上で重要な情報となります。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 76.1億円 | 88.2億円 |
| 投資CF | △58.8億円 | △86.4億円 |
| 財務CF | △14.7億円 | △243.3億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 17.4億円 | 1.8億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、国内における鋼材の需要量に対する供給能力過剰の構造にあり、販売価格の下落リスクがあります。また、東アジア諸国を中心とした需給バランスの変化による海外市況の下落も、業績に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、鋼材生産に必要な鉄スクラップや副原料、各種資材、エネルギー価格が国際マーケットで変動し、高騰や乱高下するリスクも存在します。これらの価格変動は、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、有能な人材の確保及び育成を重要な課題として認識しています。少子高齢化に伴う労働需給の逼迫は、今後の事業活動、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
大阪製鐵は、鉄スクラップをリサイクルし、社会の発展に貢献する電炉グループです。同社グループは、地球環境の保全に努めながら、顧客ニーズを追求し、信頼される企業グループを目指しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
大阪製鐵グループは、「鉄スクラップを鉄鋼製品にリサイクルし、省資源・省エネルギーを通じて地球環境の保全に努めるとともに、社会の発展に貢献する電炉グループ」であることを経営理念としています。同社グループは、顧客ニーズを追求し、合理的でオープンな経営により、ゆるぎない競争力を持ち、信頼される企業グループを目指しています。この目標実現に向け、自らの成長と変革を通じ、挑戦を続けることを掲げています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
大阪製鐵グループは、経営の基本方針として「行動指針」を定めています。具体的には、「自ら考え、行動します」「失敗を恐れず、挑戦します」「技術を極め、技術を磨きます」「役割を認識し、期待に応えます」「対話と信頼を通じ、連携します」の5項目を掲げています。
また、サステナビリティ基本方針として「人々のために、社会のために、そして地球のために」をスローガンに、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。人権を尊重し、社員一人ひとりが多様性を活かした働きがいのある職場環境の実現も重視しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
大阪製鐵グループは、サステナビリティ課題への取り組みを重点テーマとしています。安全・環境・防災・品質活動を最優先とし、カーボンニュートラルやDXを含む労働生産性の向上に向けた具体的な施策を検討・実行しています。
2050年度のカーボンニュートラル実現をビジョンに掲げ、2024年度には「カーボンニュートラル推進委員会」を設置し、CO2排出量削減に取り組んでいます。
また、人材の確保・育成、社員のエンゲージメント向上、D&I推進、健康経営を人的資本対策の重要課題と位置づけ、継続的な取り組みを進めています。社員の能力発揮のため、グループシステム統合やデジタル技術を活用した業務効率化、操業関連プロセスの省力化投資も推進しています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
大阪製鐵は監査役会設置会社として、取締役会と監査役会による経営監督体制を構築しています。社外取締役が経営の透明性と公正性の確保に貢献しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
大阪製鐵の株主構成を見ると、筆頭株主は事業会社である日本製鉄です。同社は過半数を超える株式を保有しており、経営に強い影響力を持つ主要な株主となっています。その他、信託銀行や証券会社などが上位株主に名を連ねています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本製鉄 | 55.58% |
| INTERTRUST TRUSTEES(CAYMAN) LIMITED SOLELY IN ITS CAPACITY AS TRUSTEE OF JAPAN-UP(常任代理人 株式会社みずほ銀行決済営業部) | 17.48% |
| 日本証券金融 | 2.79% |
| 立花証券 | 2.54% |
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 2.25% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は11名(男性11名・女性0名)で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は谷潤一氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 谷 潤 一 | 代表取締役社長 | 1987年住友金属工業(現日本製鉄)入社後、日本製鉄で製鋼部長、製鉄所副所長、執行役員、常務執行役員などを歴任。2024年6月より同社代表取締役社長。 |
| 関 野 孝 志 | 常務取締役 総務・財務、営業・物流、購買・外注管理に関する事項管掌 | 1989年新日本製鐵(現日本製鉄)入社。日本製鉄で厚板営業部造船鋼材室長、大分製鐵所工程業務部長、ニッポンスチール&スミトモメタルアメリカ社シカゴ事務所長などを歴任。2025年6月より同社常務取締役。 |
| 水 谷 友 則 | 常務取締役 安全環境防災、生産技術、情報システム、設備技術、商品企画に関する事項管掌 | 1990年新日本製鐵(現日本製鉄)入社。日本製鉄で堺製鉄所形鋼部大形工場長、鹿島製鉄所形鋼部長、鹿島製鉄所副所長などを歴任。2025年6月より同社常務取締役。 |
| 今 中 一 雄 | 取締役 堺工場長委嘱 | 1985年新日本製鐵(現日本製鉄)入社。日本製鉄で広畑製鐵所電磁鋼板工場長、ブリキ部長、JCAPCPL社副社長などを歴任。2020年6月より同社取締役。2026年4月より堺工場長委嘱。 |
社外取締役は、石川博紳氏(元三井物産専務執行役員)、松沢伸也氏(元塩野義製薬執行役員法務部長)、佐藤光宏氏(元竹中工務店監査役)です。
同社は監査役会設置会社を採用しています。社外取締役は独立した立場から多様な視点での意見を述べ、経営の監督機能の充実に貢献しています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
大阪製鐵の役員報酬は、業務執行取締役に対しては全額業績連動型の月例報酬が支給される仕組みです。これは同社グループの持続的な成長と企業価値向上へのインセンティブを目的としています。一方、社外取締役には固定報酬が、監査役には職務内容に応じた報酬が支給されます。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 6名 | 1.5億円 | 24.8百万円 |
| 監査役(社外除く) | 2名 | 24百万円 | 12.0百万円 |
| 社外役員 | 5名 | 45百万円 | 9.0百万円 |
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。