JFEホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

JFEホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場。鉄鋼事業、エンジニアリング事業、商社事業を展開する持株会社。当連結会計年度は、海外鋼材市況の悪化や販売数量の減少、スプレッドの縮小等が響き、売上収益は4兆8,596億円へ減収、事業利益および当期利益も大幅な減益となりました。


※本記事は、JFEホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第23期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. JFEホールディングスってどんな会社?

鉄鋼事業を中核に、エンジニアリング、商社事業を展開する企業グループの持株会社です。

(1) 会社概要

2002年、日本鋼管と川崎製鉄が経営統合し、株式移転により同社を設立しました。2003年の会社分割により、事業会社であるJFEスチール、JFEエンジニアリング等を再編。2012年にはJFE商事を完全子会社化し、現在の3事業体制を確立しました。2022年には商号を現社名へ変更し、ブランドの統一を図っています。

同社の連結従業員数は61,296名、単体では55名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に日本カストディ銀行です。第3位には事業資金の融資等で関係のある日本生命保険相互会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.83%
日本カストディ銀行(信託口) 5.40%
日本生命保険相互会社 2.49%

(2) 経営陣

同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は北野嘉久氏です。社外取締役比率は46.2%です。

氏名 役職 主な経歴
北野 嘉久 代表取締役社長 1982年川崎製鉄入社。JFEスチール代表取締役社長等を経て、2019年6月より同社代表取締役、2024年4月より現職。
寺畑 雅史 代表取締役 1982年川崎製鉄入社。JFEスチール専務執行役員、JFE商事取締役等を経て、2019年6月より現職。
広瀬 政之 代表取締役 1986年川崎製鉄入社。JFEスチール専務執行役員、代表取締役副社長等を経て、2024年6月より現職。
福田 一美 取締役 1986年川崎製鉄入社。JFEエンジニアリング専務執行役員等を経て、2024年4月同社代表取締役社長、同年6月より現職。
祖母井 紀史 取締役 1987年川崎製鉄入社。JFEスチール代表取締役副社長等を経て、2025年4月JFE商事代表取締役社長、同年6月より現職。
原 伸哉 取締役(監査等委員)(常勤) 1984年日本鋼管入社。JFEスチール経理部長、同社監査役、同社監査役を経て、2025年6月より現職。
秋本 なかば 取締役(監査等委員)(常勤) 1991年日本鋼管入社。米国NY州弁護士。同社総務部法務室長、監査役等を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、安藤よし子(元厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)、島村琢哉(AGC取締役会長)、小林敬一(古河電気工業取締役会長)、沼上幹(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター研究院教授)、鈴木善久(元伊藤忠商事代表取締役社長COO)、中村直人(中村法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容

同社グループは、「鉄鋼事業」、「エンジニアリング事業」、「商社事業」の3つの報告セグメントを展開しています。

(1) 鉄鋼事業

JFEスチールおよびその関係会社が担う事業で、熱延・冷延薄鋼板、厚鋼板、形鋼、鋼管などの各種鉄鋼製品を製造しています。主要な顧客は、自動車、建築・土木、産業機械、電機メーカーなど多岐にわたり、国内だけでなくグローバルに製品を供給しています。

製品の販売による対価を主な収益としています。JFEスチールが中核となって銑鋼一貫メーカーとして製造販売を行うほか、加工製品や原材料の製造販売、運輸、設備保全などの周辺事業もグループ会社が展開しています。

(2) エンジニアリング事業

JFEエンジニアリングおよびその関係会社が担う事業で、エネルギー、都市環境、鋼構造、産業機械等に関するエンジニアリングを行っています。官公庁や電力・ガス会社等の民間企業を顧客とし、ガスパイプライン、発電設備、ごみ焼却炉、橋梁などのインフラ構築を手掛けています。

施設の設計・調達・建設(EPC)や運転・維持管理(O&M)による対価、およびリサイクル事業や電力小売事業等の事業運営による収益を得ています。運営は主にJFEエンジニアリングが行っています。

(3) 商社事業

JFE商事およびその関係会社が担う事業で、鉄鋼製品、製鉄原材料、非鉄金属製品、食品等の仕入、加工および販売を行っています。鉄鋼メーカーと需要家の間に立ち、サプライチェーン全体の付加価値を向上させるサービスを提供しています。

顧客への製品販売による対価やトレードビジネスによる収益を得ています。JFE商事が中核商社として、JFEグループの全体最適を考えながらグローバルに事業を展開しています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

2021年3月期から2025年3月期までの推移を見ると、売上収益は2023年3月期に5兆円台に達した後、直近2期は減少傾向にあります。税引前利益は2022年3月期に3,885億円を記録しましたが、その後は変動しつつ低下傾向にあり、当期は1,443億円となりました。当期利益も同様の傾向で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 32,273億円 43,651億円 52,688億円 51,746億円 48,596億円
税引前利益 -49億円 3,885億円 2,103億円 2,684億円 1,443億円
利益率(%) -0.2% 8.9% 4.0% 5.2% 3.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -219億円 2,881億円 1,626億円 1,974億円 919億円

(2) 損益計算書

直近2期間を比較すると、売上収益は前期比で減少しました。営業利益については、前期の2,870億円から当期は1,651億円へと減少し、営業利益率は5.5%から3.4%へ低下しました。全体として収益性が低下している状況です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 51,746億円 48,596億円
売上総利益 -億円 -億円
売上総利益率(%) -% -%
営業利益 2,870億円 1,651億円
営業利益率(%) 5.5% 3.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が1,587億円(構成比39%)、その他が1,572億円(同38%)、製品発送関係費が933億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益

鉄鋼事業は販売数量減少や市況悪化により減収減益となりました。エンジニアリング事業は増収ながら洋上風力案件の影響等で減益。商社事業は減収減益となりました。全体として、鉄鋼事業の減益影響が大きく、連結業績を押し下げる結果となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
鉄鋼事業 37,161億円 33,652億円 2,027億円 364億円 1.1%
エンジニアリング事業 5,400億円 5,698億円 244億円 194億円 3.4%
商社事業 14,765億円 14,386億円 490億円 480億円 3.3%
その他 57,325億円 53,736億円 2,761億円 1,037億円 1.9%
調整額 -5,579億円 -5,139億円 35億円 108億円 -%
連結(合計) 51,746億円 48,596億円 2,870億円 1,651億円 3.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、運転資金を金融機関からの借入やコマーシャル・ペーパーの発行等で調達し、投資資金は自己資金を基本としつつ、不足分は長期借入金や社債で調達しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは収入、投資活動によるキャッシュ・フローは有形固定資産等の取得による支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出が中心でした。

これにより、有利子負債残高は減少し、現金及び現金同等物の残高も減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 4,790億円 3,790億円
投資CF -3,253億円 -2,832億円
財務CF -455億円 -1,574億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「常に世界最高の技術をもって社会に貢献します」という企業理念を掲げています。また、各事業会社において「ねがう未来に、鉄で応える」(JFEスチール)、「くらしの礎を 創る・担う・つなぐ」(JFEエンジニアリング)、「世界をつなぐ。鉄でつなぐ。」(JFE商事)というパーパスを定めています。

(2) 企業文化

同社グループは、「挑戦。柔軟。誠実。」を行動規範としています。鉄を中核として、エネルギー技術や資源リサイクル技術等幅広い分野に領域を広げ、世界最高の技術に裏打ちされた3つの事業が生み出し続けるシナジーを、持続可能な社会の構築に向けて更に拡大していくことを目指しています。

(3) 経営計画・目標

同社は「JFEビジョン2035」および「第8次中期経営計画」(2025~2027年度)を策定しています。2030年度にCO2排出量を2013年度比30%以上削減することや、財務健全性の確保(Debt/EBITDA倍率3倍程度、D/Eレシオ60%程度)などを目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策

鉄鋼事業では、国内生産体制のスリム化と高付加価値品比率の向上(2027年度60%へ)を進めるとともに、インドや北米など海外成長地域での事業を拡大します。エンジニアリング事業ではサーキュラーエコノミーの実現を通じた事業拡大、商社事業では海外加工拠点の増強等による現地完結型ビジネスを推進します。また、京浜地区の土地活用やDXによる収益基盤構築にも取り組みます。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「人材こそが企業成長の原動力」との考えのもと、「会社の成長」と「社員の成長」を連動させる長期的な人財戦略を策定しています。多様な人材の確保と育成、労働安全衛生の確保を経営上の重要課題とし、女性管理職比率の向上や男性育児休業取得の促進、DX人材の育成などに注力しています。また、働きがいのある職場づくりに向けた環境整備も進めています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 47.0歳 22.9年 12,643,000円


※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.0%
男性育児休業取得率 97.0%
男女賃金差異(全労働者) 82.2%
男女賃金差異(正規雇用) 82.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 75.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(事務系総合職)(55%)、エンゲージメントサーベイ(肯定割合)(70%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況と販売市場環境

鉄鋼事業や商社事業は、国内外の鋼材需給や経済状況の影響を受けます。特に中国の内需減少に伴う輸出増加や新興国の生産能力拡大による競争激化、各国の輸入規制などが販売量や価格に影響し、業績が悪化する可能性があります。これに対し、国内生産体制のスリム化や高付加価値品の拡販、海外事業の拡大などで対応しています。

(2) 原料・エネルギーの市場環境

鉄鉱石や原料炭などの原材料価格、電力・ガス等のエネルギー価格の上昇はコスト増要因となります。また、自然災害や国際紛争等による調達難のリスクもあります。これに対し、安価原料の使用技術開発や調達ソースの分散化、サーチャージ制の導入などでコスト変動リスクの低減を図っています。

(3) 気候変動問題

鉄鋼製造プロセスは多量の温室効果ガスを排出するため、気候変動対応は極めて重要な課題です。カーボンニュートラルへの取り組みの遅れは競争力低下や資金調達困難を招く恐れがあります。同社は2050年カーボンニュートラルを目指し、超革新技術の開発やグリーン鋼材の供給、省エネ・高効率化などの対策を推進しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。