共英製鋼 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

共英製鋼 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する鉄鋼メーカーです。電炉による鉄鋼事業を中核とし、国内および海外(ベトナム・北米)での鉄鋼製品の製造販売に加え、医療・産業廃棄物処理を行う環境リサイクル事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、売上高3,228億円(前期比0.6%増)、経常利益157億円(同25.1%減)の増収減益でした。


※本記事は、共英製鋼株式会社 の有価証券報告書(第81期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 共英製鋼ってどんな会社?


同社は電炉による鉄鋼事業を中核とし、医療・産業廃棄物処理などの環境リサイクル事業も展開する資源循環型企業です。

(1) 会社概要


1947年に共栄製鉄として創業し、翌年現社名へ変更しました。1994年にベトナムへ進出して海外事業を開始し、2006年には東京証券取引所および大阪証券取引所市場第一部へ上場しました。その後、2016年に米国、2020年にカナダの鉄鋼会社を子会社化するなど海外展開を加速させています。

連結従業員数は3,903名、単体では990名です。筆頭株主は国内鉄鋼最大手の日本製鉄で26.68%を保有し、第2位には代表取締役会長の高島秀一郎氏(10.00%)が名を連ねています。日本製鉄とは持分法適用関連会社として資本関係にありますが、同社は独立した経営を行っています。

氏名 持株比率
日本製鉄 26.68%
高島 秀一郎 10.00%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役会長は高島秀一郎氏、代表取締役社長は廣冨靖以氏です。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
高島 秀一郎 代表取締役会長 1989年同社入社。常務、専務、副社長を経て、1995年代表取締役社長兼COOに就任。2007年代表取締役副会長を経て、2010年より現職。
廣冨 靖以 代表取締役社長 1978年大和銀行(現りそな銀行)入行。同行代表取締役副社長兼執行役員を経て、2014年同社入社。副社長執行役員社長補佐などを経て、2018年より現職。
坂本 尚吾 取締役副社長執行役員 1999年同社入社。山口事業所営業部長、取締役常務執行役員山口事業所長などを経て、2023年取締役副社長執行役員社長補佐。2024年より現職。
国丸 洋 取締役常務執行役員 1986年大和銀行(現りそな銀行)入行。同行審査部長などを経て2016年同社入社。経営企画部長、上席執行役員などを歴任し、2023年より山口事業所長として現職。
北田 正宏 取締役常務執行役員 1991年同社入社。経理部長、海外事業部長などを経て、米国共英製鋼会社社長、アルタ・スチール社社長等を歴任。2025年より海外・北米事業会社等の会長として現職。
川井 健司 取締役常務執行役員 1992年同社入社。枚方事業所営業部長、名古屋事業所副事業所長などを経て、2021年取締役上席執行役員。2023年より枚方事業所長として現職。
横山 政美 取締役上席執行役員 1992年同社入社。山口事業所製造部長、本社生産企画部長などを経て、2023年取締役上席執行役員。2024年より本社生産企画部・環境リサイクル部担当兼枚方事業所副事業所長として現職。


社外取締役は、山尾哲也(弁護士)、川邊辰也(元関西電力取締役)、船戸貴美子(弁護士)、松家優香子(YCP SG Pte Ltd.ディレクター)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内鉄鋼事業」「海外鉄鋼事業」「環境リサイクル事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 国内鉄鋼事業


電気炉を使用して鉄スクラップを溶解し、土木・建設用鋼材を中心とした鉄鋼製品を製造・販売しています。主要製品は異形棒鋼、構造用棒鋼、平鋼、山形鋼、I形鋼、ネジ節鉄筋などで、鉄鋼製品の仕入販売や運搬事業も行っています。

収益は、主に建設業者や鉄鋼商社等の顧客からの製品販売代金により構成されています。運営は、共英製鋼が製造販売を行うほか、共英産業および共英加工販売が仕入販売や加工販売を行っています。また、共英産業は鉄鋼製品の運搬事業も担っています。

(2) 海外鉄鋼事業


海外において、自社電気炉での生産または外部購入した半製品から、土木・建設・鉱石粉砕用鋼材を中心とした鉄鋼製品を製造・販売しています。主要製品は異形棒鋼、線材、鉱石粉砕用丸鋼などです。

収益は、各国の顧客への製品販売代金から得ています。運営は、ベトナムのビナ・キョウエイ・スチール社、キョウエイ・スチール・ベトナム社、ベトナム・イタリー・スチール社、米国のビントン・スチール社、カナダのアルタ・スチール社などの現地子会社が行っています。

(3) 環境リサイクル事業


医療廃棄物や産業廃棄物の中間および最終処理、再生砕石事業などを行っています。電気炉の高温を利用して医療廃棄物を無害化溶融処理する「メスキュードシステム」などを展開しています。

収益は、医療機関や排出事業者から受け取る処理手数料等で構成されています。運営は、共英製鋼の各事業所のほか、株式会社共英メソナ、共英リサイクル株式会社などの子会社が行っています。共英リサイクル株式会社ではガス化溶融炉を用いた燃料ガス製造も行っています。

(4) その他


港湾事業、鋳物事業、保険代理店業などを行っています。

収益は、港湾利用料や鋳物製品の販売代金などから得ています。運営は、ベトナムのチー・バイ・インターナショナル・ポート社が港湾事業を、共英産業、株式会社吉年などが鋳物事業を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は変動しつつも総じて拡大傾向にあり、特に2023年3月期に大きく伸長しました。利益面では、2024年3月期に高い利益率を記録しましたが、直近の2025年3月期は減益となり、利益率は低下しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 2,264億円 2,927億円 3,557億円 3,210億円 3,228億円
経常利益 129億円 105億円 147億円 210億円 157億円
利益率(%) 5.7% 3.6% 4.1% 6.6% 4.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 33億円 24億円 66億円 292億円 59億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は微増しましたが、売上原価の増加により売上総利益は減少しました。また、販売費及び一般管理費が増加したことで、営業利益および営業利益率は低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,210億円 3,228億円
売上総利益 420億円 383億円
売上総利益率(%) 13.1% 11.9%
営業利益 211億円 153億円
営業利益率(%) 6.6% 4.7%


販売費及び一般管理費のうち、発送運賃が105億円(構成比45%)、給与手当が40億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の状況を見ると、主力の国内鉄鋼事業は需要減退の影響等で減収となりました。一方、海外鉄鋼事業は増収となりましたが、ベトナムでの市況低迷や米国拠点の操業不調等の影響が続き、利益面では苦戦しています。環境リサイクル事業は競争激化等により減収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
国内鉄鋼事業 1,597億円 1,426億円
海外鉄鋼事業 1,501億円 1,690億円
環境リサイクル事業 65億円 62億円
その他 47億円 50億円
連結(合計) 3,210億円 3,228億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

共英製鋼は、ベトナムでの港湾事業や鋳物事業の好調などにより、営業活動によるキャッシュ・フローが大幅に増加しました。投資活動では、定期預金の預入と払戻し、設備投資などが行われました。財務活動では、借入金の返済や配当金の支払いなどが行われています。これらの活動の結果、現金及び現金同等物は増加しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 243億円 394億円
投資CF -170億円 -99億円
財務CF -142億円 -182億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「鉄鋼事業を中核とした資源循環型事業を通じて社会と共生し、日本経済と地域社会の発展に貢献する」ことを経営理念として定めています。創業の精神である「Spirit of Challenge」の下、持続可能な社会の実現に貢献する「エッセンシャル・カンパニー」を目指しています。

(2) 企業文化


経営理念の実現に向け、グループ一丸となって取り組むための行動指針として、「安全とコンプライアンスを徹底する経営風土を作り出すこと」「進取と変革に挑戦する企業風土を醸成すること」「メーカーの原点である現場重視の経営体制を構築すること」を掲げています。

(3) 経営計画・目標


2026年度を最終年度とする中期経営計画「NeXuSⅡ 2026」において、以下の定量目標を掲げています。

* 連結売上高:3,800億円
* 連結経常利益:250億円
* 出荷量:400万トン体制(国内160万トン・海外240万トン)
* ROE:8.0%以上
* 配当性向:30~35%

(4) 成長戦略と重点施策


海外鉄鋼事業では、投資戦略をベトナムから北米へシフトし、米国・カナダでの約600億円の投資を通じて収益拡大を目指すとともに、ベトナム事業の再構築を図ります。国内鉄鋼事業は4事業所体制での連携強化と質的向上を進めます。また、環境リサイクル事業の強化や、人的資本などの無形資産への投資も積極的に行います。

* 投資計画:1,100億円/3か年
* CO2排出量:50%削減(2013年度対比2030年度目標)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「企業は人なり」の原点に立ち返り、従業員のエンゲージメントを高めるため、「物質的メリット」「自己実現」「連帯感」「企業理念への共感」を感じられる施策を実施しています。事務所・厚生棟の新設や研修制度の充実、健康経営の促進に加え、多様な人材の確保により「3つのつなぐ力」を強化することを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.8歳 16.3年 7,735,918円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.6%
男性育児休業取得率 15.8%
男女賃金差異(全労働者) 71.6%
男女賃金差異(正規雇用) 71.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 77.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性総合職比率(14.2%)、管理職に占めるキャリア採用者の比率(46.0%)、障がい者雇用率(2.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 日本製鉄との関係


日本製鉄は同社の筆頭株主であり、同社は持分法適用関連会社となっています。同社は独立した経営を行っていますが、筆頭株主としての議決権行使等により経営に影響を及ぼす可能性があり、日本製鉄の利益が他の株主の利益と一致しない可能性があります。

(2) 原材料・エネルギー価格および調達


鉄スクラップや電極、電力などのエネルギー資源はグローバルな需給や地政学的要因により価格が変動します。これらが高騰または供給不足となった場合、製造コストや輸送コストが増加し、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 国内鉄鋼市場の縮小


国内の建設需要は長期的に縮小傾向にあり、主力製品である異形棒鋼の需要減少が想定されます。競合との競争による価格下落や出荷量減少が業績に影響する可能性があります。同社は海外展開や関東圏でのプレゼンス向上等で対応を図っています。

(4) 気候変動に係るリスク


カーボンニュートラル社会への移行に伴う規制強化やコスト増加(移行リスク)に加え、異常気象による操業停止やサプライチェーン寸断(物理的リスク)が想定されます。同社はCO2削減目標を掲げ、省エネや燃料転換等の対策を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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