共英製鋼 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

共英製鋼 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、鉄鋼事業と環境リサイクル事業を展開しています。直近の業績は、建設鋼材需要の減少等で減収となったものの、海外事業での収益改善等により営業利益は増益トレンドにあります。持続可能な資源循環型社会に貢献するエッセンシャルカンパニーを目指しています。


※本記事は、共英製鋼株式会社の有価証券報告書(第82期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 共英製鋼ってどんな会社?


鉄スクラップを再利用した鉄鋼製品の製造と、環境リサイクル事業を手がける電炉メーカーです。

(1) 会社概要


1947年に共栄製鉄を創立し、その後共英製鋼に社名変更しました。1972年に大阪府枚方市に圧延工場を新設し製鋼圧延一貫体制を確立。1988年には医療廃棄物処理事業を開始し環境リサイクル事業に参入しました。1994年のベトナム進出を皮切りに海外展開を本格化し、2006年に株式上場を果たしました。

同社グループは連結で4,068名、単体で1,007名の従業員を擁しています。筆頭株主は事業会社で提携先でもある日本製鉄で、第2位は役員の高島秀一郎氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
日本製鉄 26.68%
高島 秀一郎 10.00%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.15%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。最高経営責任者は代表取締役社長の坂本尚吾氏が務めており、社外取締役比率は約31%です。

氏名 役職 主な経歴
坂本 尚吾 代表取締役社長 1999年入社。山口事業所長、本社営業企画部長、副社長執行役員等を歴任し、2025年より現職。
高島 秀一郎 代表取締役会長 1989年入社。取締役、常務、専務、副社長を経て1995年社長に就任。2007年副会長を務め、2010年より現職。
菅 哲哉 取締役副社長執行役員 りそな銀行副社長、関西みらい銀行社長等を経て2024年入社。副社長執行役員を務め、2025年より現職。
北田 正宏 取締役常務執行役員 1991年入社。本社経理部長、海外事業部長等を歴任。米国共英製鋼社長等を経て、2025年より現職。
廣冨 靖以 取締役相談役 りそな銀行副社長等を経て2014年入社。取締役副社長、代表取締役社長を歴任し、2025年より現職。


社外取締役は、山尾哲也(弁護士)、川邊辰也(元関西電力常務執行役員)、船戸貴美子(弁護士)、松家優香子(YCP SG Pte Ltd.ディレクター)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内鉄鋼事業」「海外鉄鋼事業」「環境リサイクル事業」および「その他」事業を展開しています。

国内鉄鋼事業


電気炉を使用して鉄スクラップを溶融し、精錬・圧延成形を施して土木・建設用鋼材を中心とした鉄鋼製品を製造・販売しています。主要製品は異形棒鋼、ネジ節鉄筋などで、鉄鋼製品の運搬等も行っています。

製品販売や仕入・加工販売等から収益を得ています。運営は同社および共英産業、共英加工販売などが担っています。

海外鉄鋼事業


自社電気炉で鉄スクラップを溶融・精錬した半製品や購入した半製品から鉄鋼製品を製造・販売しています。ベトナム、米国、カナダを拠点とし、土木・建設・鉱石粉砕用鋼材などを提供しています。

鉄鋼製品の販売により収益を得ています。運営はビナ・キョウエイ・スチール社、キョウエイ・スチール・ベトナム社、ビントン・スチール社、アルタ・スチール社などの海外子会社が行っています。

環境リサイクル事業


電気炉の高温を活用し、医療廃棄物や産業廃棄物の中間および最終処理事業を展開しています。専用容器で回収し無害化溶融処理を行う「メスキュードシステム」や、再生砕石事業も手がけています。

廃棄物処理サービスの提供により収益を得ています。運営は同社をはじめ、共英メソナ、共英リサイクル、共英産業が担っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、港湾事業、鋳物事業および保険代理店業などを展開しています。

港湾サービスや鋳物製品販売、保険代理手数料などから収益を得ています。運営はチー・バイ・インターナショナル・ポート社、吉年などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は3,000億円前後で推移し、直近2期は微減傾向にありますが、経常利益は100億円台後半から200億円超を維持し、利益率は3〜6%台で安定しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2927億円 3557億円 3210億円 3228億円 3151億円
経常利益 105億円 147億円 210億円 157億円 162億円
利益率(%) 3.6% 4.1% 6.6% 4.9% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 24億円 66億円 292億円 59億円 77億円

(2) 損益計算書


売上高は微減となりましたが、原価率の改善により売上総利益および営業利益はともに増加しています。収益性の向上により、営業利益率は前期から改善を見せています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3228億円 3151億円
売上総利益 383億円 400億円
売上総利益率(%) 11.9% 12.7%
営業利益 153億円 170億円
営業利益率(%) 4.7% 5.4%


販売費及び一般管理費のうち、発送運賃が105億円(構成比46%)、給与手当が39億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


海外鉄鋼事業はベトナムのインフラ投資需要の回復等により増収となりましたが、国内鉄鋼事業は建設工事の遅延等の影響により減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
国内鉄鋼事業 1426億円 1255億円
海外鉄鋼事業 1690億円 1790億円
環境リサイクル事業 62億円 59億円
その他 50億円 46億円
連結(合計) 3228億円 3151億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 394億円 247億円
投資CF -99億円 -154億円
財務CF -182億円 -13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「鉄鋼事業を中核とした資源循環型事業を通じて社会と共生し、日本経済および地域社会の発展に貢献する」ことを経営理念に定めています。「100年企業」に向け、社会のインフラづくりや環境保全に貢献するエッセンシャルカンパニーを目指しています。

(2) 企業文化


創業の精神である「Spirit of Challenge」を原点としています。安全とコンプライアンスを徹底する経営風土の確立、進取と変革に挑戦する企業風土の醸成、そしてメーカーの原点である現場重視の経営体制の構築を行動指針としています。

(3) 経営計画・目標


2026年度を最終年度とする中期経営計画「NeXuSⅡ 2026」では、事業の成長性と財務の健全性を両立させる観点から以下の目標を掲げています。

* 売上高:3,800億円
* 経常利益:250億円
* ROE:8.0%以上
* 自己資本比率:50%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「グループ内をつなぐ力」「外部とつなぐ力」「次代につなぐ力」を中核に据え、海外鉄鋼事業では北米事業の強化とベトナム事業の再構築を進めます。国内では関東圏における存在感の向上や、環境配慮型製品「エシカルスチール」を軸としたブランド戦略を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「企業は人なり」の原点に立ち返り、物質的メリット、自己実現、連帯感・チームワーク、企業理念への共感を4つのテーマとして施策を展開しています。多様な人材が活躍できる職場環境の整備や、社内外での研修機会の提供を通じ、次世代の経営人材の育成を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.3歳 16.9年 7,430,926円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.7%
男性育児休業取得率 29.6%
男女賃金差異(全労働者) 71.5%
男女賃金差異(正規雇用) 71.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 75.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(84.6%)、1人当たり教育研修費(14.4万円)、障がい者雇用率(2.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料・副資材およびエネルギーの価格上昇ならびに調達制約


鉄スクラップや電極、石油等のエネルギー資源はグローバルな需給や地政学的要因による価格変動リスクにさらされています。価格上昇や供給不足が生じた場合、製造・輸送コストの増加により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 国内鉄鋼市場の縮小に伴う市況の悪化および需要の減少


競合メーカーが多数存在し供給能力過剰問題を抱える中、人手不足や資材価格高騰により建設鋼材需要は減少傾向にあります。競争激化に伴う販売価格の下落や出荷量の減少が業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 気候変動に係るリスク


カーボンニュートラル社会への移行に伴う温室効果ガス排出規制の強化や炭素税の導入等の移行リスクに加え、異常気象に伴う工場操業の停止や原材料調達の困難化といった物理的リスクが業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 企業の成長に必要な人材の確保に関わるリスク


少子化等による労働市場の需給逼迫や人材流動化が進展する中、長期シナリオの達成に貢献できる人材を獲得・育成できない場合、中長期的な企業競争力の低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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