栗本鐵工所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

栗本鐵工所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場しており、鉄管を中心としたライフライン事業、産業機械、建設資材などを展開しています。直近の業績は、売上高が前期比で微増し、各利益項目も増加するなど、増収増益のトレンドで推移しています。


※本記事は、株式会社栗本鐵工所 の有価証券報告書(第129期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 栗本鐵工所ってどんな会社?


1909年の創業以来、社会インフラを支える鉄管や産業機械、建設資材などを製造・販売する老舗メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1909年に創設者が鋳鉄管の製造を開始したことに始まります。1949年に東京・大阪証券取引所市場第一部に上場しました。その後、2004年に栗本建材、2009年に栗本化成工業などの関連会社を吸収合併し、事業基盤を強化してきました。2016年にはクリモトコンポジットセンターを開設し、新素材技術の開発にも注力しています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は2,182名、単体では1,337名体制です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は保険事業を営む太陽生命保険、第3位は日本カストディ銀行(信託口)となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.11%
太陽生命保険 8.95%
日本カストディ銀行(信託口) 5.62%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は菊本一高氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
菊本 一高 代表取締役社長 1982年入社。建材事業部各職を経て、産業建設資材事業本部化成品事業部長などを歴任。2021年4月より現職。
織田 晃敏 取締役常務執行役員 1984年入社。人事室長、総合企画室長などを経て、財務・人事・総務・DX推進を担当。2025年4月より現職。
吉永 泰治 取締役常務執行役員 1989年入社。鉄管事業部長、パイプシステム事業部長などを経て、設備・生産・物流・CSRを担当。2025年4月より現職。
浦地 好博 取締役上席執行役員 1986年入社。素形材エンジニアリング事業部長などを経て、グループガバナンス・法務・監査・海外を担当。2025年4月より現職。
丸谷 等 取締役上席執行役員 1985年入社。本山製作所代表取締役社長などを経て、技術開発室・知財・コンポジットPJを担当。2025年4月より現職。
新宮 良明 取締役 1983年入社。素形材エンジニアリング事業部長、グループガバナンス担当などを歴任。2025年4月より現職。


社外取締役は、近藤慶子(元名城大学学術研究支援センター産学連携コーディネーター)、佐藤友彦(元稲畑産業取締役常務執行役員)、澤井清(元鴻池組取締役専務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ライフライン事業」、「機械システム事業」、「産業建設資材事業」を展開しています。

(1) ライフライン事業


主にダクタイル鉄管、バルブ等の製造販売を行っており、上水道などの社会インフラ整備に貢献しています。一部製品については、連結子会社などが特約販売店として販売を担当しています。

収益は、官公庁や民間企業などの顧客への製品販売および関連する工事・サービスの提供から得ています。運営は主に同社が行い、一部製品の販売等は連結子会社の栗本商事、ヤマトガワ、北海道管材、および本山製作所などが担っています。

(2) 機械システム事業


各種産業機械(粉体機器、プレス機等)、特殊鋳鉄・鋳鋼の製造販売、およびプラントエンジニアリングを手掛けています。自動車産業や建設市場など幅広い分野に製品を供給しています。

収益は、製品の販売代金やメンテナンスサービス料、プラント建設工事代金等から構成されます。運営は主に同社が行うほか、連結子会社のケイエステック、八洲化工機、三協機械などが製造・販売に関わっています。

(3) 産業建設資材事業


建設資材(スパイラルダクト等)や合成樹脂製品(ポリコン・FRP管等)の製造販売、およびこれらに付随する工事を行っています。建築、下水道、電力、鉄道などの市場へ資材を提供しています。

収益は、製品の販売および付帯工事の対価として顧客から受領します。運営は主に同社が行うほか、連結子会社の栗本商事、日本カイザー、クリモトポリマー、ゼンテックなどが製造・販売や工事を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近で増加傾向にあり、堅調に推移しています。利益面では、経常利益が連続して増加しており、収益性の向上が見られます。当期利益についても増加トレンドを維持しており、全体として増収増益基調にあると言えます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 1,166億円 1,060億円 1,248億円 1,259億円 1,267億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 46億円 42億円 69億円 78億円 85億円
利益率(%) 3.9% 3.9% 5.5% 6.2% 6.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 17億円 14億円 30億円 35億円 46億円

(2) 損益計算書


売上高は微増し、売上総利益および営業利益も増加しています。売上総利益率、営業利益率ともに改善傾向にあり、効率的な事業運営が進んでいることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,259億円 1,267億円
売上総利益 315億円 333億円
売上総利益率(%) 25.0% 26.3%
営業利益 75億円 79億円
営業利益率(%) 5.9% 6.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が72億円(構成比29%)、運送・荷造費が46億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


ライフライン事業は減収となりましたが、機械システム事業と産業建設資材事業が増収となり、全体としての売上増加に寄与しました。特に機械システム事業の伸びが顕著です。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
ライフライン事業 644億円 622億円
機械システム事業 291億円 310億円
産業建設資材事業 323億円 335億円
その他・調整額 0億円 0億円
連結(合計) 1,259億円 1,267億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


* パターン:勝負型
* 意味:本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 103億円 -23億円
投資CF -27億円 -36億円
財務CF -86億円 22億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「全てのステークホルダーの期待と信頼に応え、常に最適なシステムを提供し、『夢ある未来』を創造します」という経営理念を掲げています。創業以来の信頼と実績を基盤に、社会インフラや産業設備の分野で最適なシステムを提供し、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の「三方よし」に「未来もよし」を加えた「四方よし」の精神を重視しています。また、社是として「技術並びに経営の革新に努める」「英知を育て、衆知を集める」「有効性に徹する」を掲げ、従業員一人ひとりの親和と企業の発展を通じて社会貢献を目指す風土があります。

(3) 経営計画・目標


2030年のありたい姿「将来にわたって社会へ貢献できる企業グループ」に向け、2024年度から2026年度を「変革成長準備期間」と位置づけた中期経営計画を推進しています。最終年度である2026年度には、以下の数値目標の達成を目指しています。

* 売上高:1,300億円
* 営業利益:80億円
* ROE:7%以上(3年間継続)

(4) 成長戦略と重点施策


安定収益事業の収益力強化と、成長牽引事業への積極投資による「成長」を推進しています。また、資本コストや株価を意識した経営、サステナビリティ経営を継続します。

* ライフライン事業:管路設計・施工の一括発注増加に対応し、工事・サービスを含めたソリューションビジネスを確立します。
* 機械システム事業:脱炭素や循環型社会への貢献を目指し、二次電池や再生骨材製造設備等へ最適システムを提供します。
* 産業建設資材事業:道路・橋梁の維持メンテナンス市場でのビジネス拡大や、周辺資材の拡充により国土強靱化へ貢献します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人は企業にとって最も重要な資本」という視点に立ち、組織風土改革、働きがいのある職場づくり、ダイバーシティ推進に取り組んでいます。多様な人材が活躍できる環境整備や、次期経営幹部・イノベーション人材の発掘・育成に注力し、人的資本経営を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.8歳 21.2年 8,264,085円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.4%
男性育児休業取得率 77.3%
男女賃金差異(全労働者) 72.2%
男女賃金差異(正規雇用) 74.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 70.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者に占める女性比率 総合職文系(29.6%)、定期採用者の採用10年前後の継続雇用割合(67.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況の変動による影響


事業は国際情勢、国内経済、為替、疫病などの外部環境の影響を受けやすく、これらが変動することで受注量や原材料調達コストが増減し、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 会計上の見積りに関する不確実性


棚卸資産の評価や工事原価、有価証券・固定資産の減損、繰延税金資産、退職給付制度などに関する会計上の見積りは将来の予測に基づいており、実際の結果が前提と異なった場合、予期せぬ費用が発生し業績に影響する可能性があります。

(3) 保有有価証券の価格変動リスク


保有する有価証券の大半は市場性のある株式であるため、経済状況や株式市場の動向によって価格が下落し、評価損や売却損が発生することで、業績や財務状況に悪影響を与える可能性があります。

(4) 固定資産の減損リスク


保有する固定資産について、事業の収益性低下や市場価格の下落などにより減損損失が発生した場合、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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