日本鋳鉄管 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本鋳鉄管 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本鋳鉄管はスタンダード市場に上場し、上下水道用のダクタイル鋳鉄管やガス用樹脂管などの製造販売を主力とする企業です。直近の業績は、主要な管路工事需要の減少等により前年度比で減収となったものの、価格改定の進展や徹底したコスト削減、受取精算金の計上などにより、最終利益は黒字転換を果たしました。


※本記事は、日本鋳鉄管の有価証券報告書(第122期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本鋳鉄管ってどんな会社?


上下水道やガス用のダクタイル鋳鉄管、樹脂管の製造販売を通じて地域インフラを支える企業です。

(1) 会社概要


同社は1937年10月に東洋精機として埼玉県に設立されました。1949年12月にガスおよび水道用鋳鉄管の製造を開始し、1960年1月に現在の日本鋳鉄管へ社名変更しています。1962年7月に東京証券取引所市場第二部へ上場を果たし、2025年10月には鋳鉄生産を全量電気炉に転換するなど、環境対応を進めながら管路整備を支え続けています。

現在の従業員数はグループ全体で389名、単体で310名規模の体制です。筆頭株主は主要な原材料の購入先であるJFEスチールで、第2位も事業会社の東京瓦斯、第3位は個人株主の松田健太郎氏です。

氏名 持株比率
JFEスチール 29.88%
東京瓦斯 10.37%
松田健太郎 2.33%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長執行役員は石毛俊朗氏が務め、取締役6名のうち社外取締役が3名と半数を占めています。

氏名 役職 主な経歴
石毛俊朗 代表取締役社長執行役員 1989年日本鋼管(現JFEスチール)入社。同社常務執行役員西日本製鉄所長、専務執行役員などを経て2023年6月より現職。
長谷部圭一 取締役執行役員 1985年東京瓦斯入社。同社人事部長、東京ガスカスタマーサポート代表取締役社長などを経て2023年6月より現職。
秋山礼子 取締役 1986年荏原製作所入社。グローバルウォータ・ジャパン広報部長、プラネットバイオフィリア緑化研究所室長などを経て2023年6月より現職。


社外取締役は、奥村一郎(元JFEシビル常務執行役員)、橋本修身(元ジェコス設計取締役社長)、髙野圭(JFEスチール東日本製鉄所企画部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ダクタイル鋳鉄関連」および「樹脂管・ガス関連」事業を展開しています。

(1) ダクタイル鋳鉄関連


水道用ダクタイル鋳鉄管、水道用異形管、上下水道用FEM鉄蓋、水道用付属部品の製造販売をはじめ、水道施設工事業や管路劣化診断サービスを展開しています。日本全国の水道インフラを支える製品・サービスを提供しており、主に地方自治体などの水道事業体や配管工事業者が顧客となります。

製品の販売代金や工事・診断の対価が主な収益源です。同社が母材となる製品の製造を担い、子会社のイガラシなどが資材の販売を行っています。また、AIを活用した管路診断技術を事業体向けに提供することで、管路更新計画の精緻化を支援しています。

(2) 樹脂管・ガス関連


ガス用ダクタイル鋳鉄管、ガス用異形管、ポリエチレン管、レジンコンクリート製品などの製造販売を行っています。さらに、ガス用配管材の保管および輸送、産業廃棄物の収集・運搬、古鉄類の販売など、周辺業務も含めたサービスを展開しています。

製品の販売代金や、運送・保管などの役務提供に対する対価を得ています。同社が製品の製造販売を行うほか、子会社の鶴見工材センターが配管材の保管および輸送を、日鋳サービスがリサイクル事業などを担うことで、グループ全体でインフラ整備をサポートしています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は150億円から170億円台で推移していますが、直近は管路工事の減少等により減収となりました。経常利益は資材価格の高騰などにより一時的な落ち込みが見られましたが、当期利益は受取精算金の計上なども寄与し、黒字へ転換しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 152億円 173億円 169億円 169億円 159億円
経常利益 4.2億円 5.8億円 9.0億円 2.7億円 2.2億円
利益率(%) 2.7% 3.3% 5.3% 1.6% 1.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.4億円 3.6億円 4.8億円 -2.3億円 0.9億円

(2) 損益計算書


売上高は減少したものの、価格改定や高付加価値商品の拡販、コスト削減の徹底により、売上総利益および営業利益は前期と同水準を確保し、利益率は改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 169億円 159億円
売上総利益 27億円 27億円
売上総利益率(%) 16.1% 17.1%
営業利益 2.6億円 2.6億円
営業利益率(%) 1.5% 1.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が8億円(構成比32%)、運送費が4億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


ダクタイル鋳鉄関連は水道事業体の発注量減少により減収となりましたが、価格改定により増益を達成しました。一方、樹脂管・ガス関連はガス導管工事の減少などにより減収減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
ダクタイル鋳鉄関連 147億円 140億円 0.4億円 0.9億円 0.6%
樹脂管・ガス関連 23億円 20億円 2.1億円 1.7億円 8.5%
連結(合計) 169億円 159億円 2.6億円 2.6億円 1.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1.4億円 3.0億円
投資CF -14.7億円 -31.9億円
財務CF 8.2億円 38.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.9%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.6%で、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「水が途切れない世界を実現する」というパーパスを掲げ、インフラに携わる企業としてその機能の維持継続を使命としています。従来の原料調達から製造・販売にとどまらず、データベース化、診断、設計から工事施工まで一貫して行う「管路分野のInnovative All in ワンストップ企業」の実現を目指しています。

(2) 企業文化


「安全はすべてに優先する」を基本理念に、安全活動を最優先で取り組むべき仕事と位置づけています。また、「グループ企業行動基準」や「グループ調達ガイドライン」を制定し、コンプライアンスの徹底や人権尊重、サプライチェーン全体でのサステナビリティ推進を重視する文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画において、水事業では「水道管路の変革を先進し、世界随一の水道インフラを持続させる」、ガス事業では「技術と知識で、安心・安全なガスインフラに責任を果たす」という指針を掲げています。また、環境目標としてカーボンニュートラルへの道筋を明確にしています。

・2027年度にはGHG排出量を2013年度比で50%削減する

(4) 成長戦略と重点施策


クボタとの製造合弁会社設立を通じた生産性の向上や収益拡大、電気炉導入による脱炭素化の促進を重点施策としています。また、各種資材の高騰や人手不足を機会と捉え、AIを活用した管路診断技術や独自工法の拡販により、管路整備サイクル全般への関与を深める戦略を描いています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「働きがい」と「働きやすさ」の創出を両輪とし、誠実に挑戦し続ける人材の確保・育成を進めています。中長期的な育成を目的とした配置や、より困難な課題への挑戦と技能の成長を評価する目標管理制度を導入し、若手から経営人材に至る網羅的な育成体系を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.1歳 20.0年 5,923,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.3%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.1%
男女賃金差異(正規) 75.2%
男女賃金差異(非正規) 83.3%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(85.0%)、係長級にある者に占める女性労働者の割合(35.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料や電力の価格変動リスク


主たる商品を素材から製造しており、鋼屑や石油関連製品、電力の価格上昇や供給不足が発生した場合、調達コストの上昇に伴って製造原価が大幅に変動し、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(2) 公共事業予算に関する市場リスク


同社グループが取り扱う商品の多くが地方自治体などの公共事業向けであり、各年度の公共事業予算に依存しています。予算が大きく変動した場合、国内需要や市況価格が変動し、売上高および業績に大きな影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 販売先への貸倒損失発生リスク


製品を主に各地域の特約店を経由して配管工事業者等に販売しています。特約店に対しては財務状況等を精査し与信額を決定・管理していますが、予期せぬ原因で特約店向けの債権回収が困難になる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。