日本鋳鉄管 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本鋳鉄管 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する、上下水道・ガス用資材の大手メーカーです。ダクタイル鋳鉄管や樹脂管の製造販売を主力とし、倉庫・運送業も展開しています。2025年3月期の業績は、売上高が微増で推移したものの、コスト高騰や特別損失の計上等により経常利益は減益となり、最終損益は赤字となりました。


※本記事は、日本鋳鉄管株式会社 の有価証券報告書(第121期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本鋳鉄管ってどんな会社?


上下水道やガス等のライフラインを支える鋳鉄管・樹脂管の老舗メーカーです。JFEスチールグループに属し、インフラの更新需要に対応しています。

(1) 会社概要


同社は1937年に東洋精機として設立され、1960年に現社名へ変更しました。1962年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1993年には同市場第一部へ指定替えとなりました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に移行しています。主力であるダクタイル鋳鉄管の製造に加え、近年ではAIを活用した管路劣化診断技術の展開など、事業領域を拡大しています。

連結従業員数は388名、単体では305名です。筆頭株主は、同社の主要な関係会社であり原材料の購入先でもある鉄鋼メーカーのJFEスチールで、29.88%を保有しています。第2位は主要販売先でもある東京瓦斯(東京ガス)で、10.37%を保有しています。

氏名 持株比率
JFEスチール 29.88%
東京瓦斯 10.37%
株式会社W不動産 1.87%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長執行役員は石毛 俊朗氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
石 毛 俊 朗 代表取締役社長執行役員 日本鋼管(現JFEスチール)入社。同社常務執行役員東日本製鉄所京浜地区所長、専務執行役員西日本製鉄所福山地区所長等を経て、2023年6月より現職。
長谷部 圭一 取締役執行役員 東京瓦斯入社。同社人事部長、東京ガスエンジニアリングソリューションズ専務、東京ガスカスタマーサポート社長等を経て、2023年6月より現職。
秋 山 礼 子 取締役 荏原製作所入社。グローバルウォータ・ジャパン広報部長、プラネットバイオフィリア緑化研究所室長等を歴任。2023年6月より現職。


社外取締役は、奥 村 一 郎(JFEシビル元常務)、橋 本 修 身(ジェコス元常務)、髙 野  圭(現JFEスチール部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ダクタイル鋳鉄関連」および「樹脂管・ガス関連」事業を展開しています。

(1) ダクタイル鋳鉄関連


水道用ダクタイル鋳鉄管、水道用異形管、上下水道用FEM鉄蓋、水道用付属部品等の製造販売を行っています。主な顧客は地方自治体などの水道事業体や工事業者です。また、水道施設工事業やエンジニアリング事業、AIを活用した管路劣化診断業務なども手掛けています。

製品の販売代金や工事請負代金、エンジニアリングサービスの対価などが主な収益源です。運営は主に日本鋳鉄管が行っており、販売については連結子会社の日鋳商事や株式会社イガラシも担っています。

(2) 樹脂管・ガス関連


ガス用ダクタイル鋳鉄管、ガス用異形管、ガス用FEM鉄蓋、ポリエチレン管、レジンコンクリート製品等の製造販売を行っています。また、ガス用配管材等の保管および運送事業、産業廃棄物の運搬・保管事業、鉄管類リサイクル事業なども展開しています。

製品の販売代金や保管・運送サービスの利用料、リサイクル事業収入などが主な収益源です。製造販売は日本鋳鉄管が行い、保管・運送業務は連結子会社の株式会社鶴見工材センターが、リサイクル事業等は日鋳サービス株式会社が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は160億円台後半から170億円前後で推移しており、一定の規模を維持しています。利益面では、原材料価格やエネルギーコストの高騰などの影響を受け、変動が見られます。直近では最終損益が赤字となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 147億円 152億円 173億円 169億円 169億円
経常利益 7億円 4億円 6億円 9億円 3億円
利益率(%) 5.0% 2.7% 3.3% 5.3% 1.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 1億円 3億円 4億円 -2億円

(2) 損益計算書


売上高は横ばいで推移していますが、売上原価の増加により売上総利益が減少し、収益性が低下しています。営業利益率も低下傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 169億円 169億円
売上総利益 34億円 27億円
売上総利益率(%) 20.2% 16.1%
営業利益 9億円 3億円
営業利益率(%) 5.1% 1.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が8億円(構成比32%)、運送費が4億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


ダクタイル鋳鉄関連事業は売上高が微減となり、コスト増の影響で利益が大幅に減少しました。樹脂管・ガス関連事業は増収となったものの、利益は減少しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ダクタイル鋳鉄関連 147億円 147億円 5億円 0.4億円 0.3%
樹脂管・ガス関連 21億円 23億円 3億円 2億円 9.5%
調整額 -1億円 -0.5億円 -0.1億円 0.04億円 -
連結(合計) 169億円 169億円 9億円 3億円 1.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**積極型**
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 10億円 1億円
投資CF -8億円 -15億円
財務CF 11億円 8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失計上のため算出されていません。財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社はインフラに携わる企業として、その機能の維持継続を使命と考えています。管路更新サイクル全般に関与する事業スタイルへの転換を目指し、「管路分野の Innovative All in ワンストップ企業」としての地位確立を掲げています。社会的な使命を果たしつつ、継続的に発展していく企業を目指しています。

(2) 企業文化


「水が途切れない世界を実現する」をパーパスとして掲げています。環境変化に俊敏かつ柔軟に対応できる企業体質の強化を重視し、誠実に挑戦し続ける人材の確保と育成に取り組む姿勢を持っています。また、コンプライアンスの徹底を信頼関係の基盤と位置づけ、企業倫理の向上に努めています。

(3) 経営計画・目標


具体的な数値目標としては、女性活躍の推進に関連して、2026年3月末までに係長級にある者に占める女性労働者の割合を30%以上、2028年3月末までに管理職に占める女性労働者の割合を8%以上とする目標などを掲げています。また、カーボンニュートラル実現に向け、2025年度の電気炉稼働を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「管路分野の Innovative All in ワンストップ企業」を目指し、コア事業の収益力強化に取り組んでいます。具体的には、株式会社クボタとの製造合弁会社の設立による生産体制の再編や、カーボンニュートラルに向けた電気炉への転換を進めています。また、AIを活用した管路診断技術やDXソフトの展開など、デジタル情報基盤の整備にも注力しています。

* 設備投資:ダクタイル鉄管の生産能力増強(約27億円)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「水が途切れない世界を実現する」ために、誠実に挑戦し続ける人材の確保と育成を重要課題としています。新卒・中途採用による人材確保、メンター制度導入、教育体系の整備、360度評価の導入などを進めています。また、女性人材の確保・登用を重点課題とし、多様な働き方の推進にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.6歳 20.3年 5,993,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.9%
男性育児休業取得率 100%
男女賃金差異(全労働者) 73.5%
男女賃金差異(正規雇用) 74.3%
男女賃金差異(非正規) 61.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(90.0%)、係長級にある者に占める女性労働者の割合(40%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料・仕入部品の価格変動リスク


同社製品の原材料費は製造原価の約半分を占めています。鋼屑、コークス等の原材料価格は国際市況の影響を受けやすく、また仕入部品価格も諸物価の上昇により変動する可能性があります。これらの価格変動は、同社の業績に大きな影響を与える要因となります。

(2) 市場リスク


同社グループの製品の多くは地方自治体等の公共事業向けであり、需要は各年度の公共事業予算に依存しています。そのため、公共事業予算が大幅に変動した場合、国内需要や市況価格が変動し、同社グループの売上高および業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 貸倒損失の発生リスク


同社は主に特約店を経由して製品を販売しています。取引先の与信管理を行っていますが、予期せぬ事態により特約店等の経営状況が悪化し、債権回収が困難となった場合、貸倒損失が発生するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。