日亜鋼業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日亜鋼業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の線材加工製品メーカー。普通・特殊・鋲螺線材製品の製造販売を主力とします。直近決算は販売数量減により売上高341億円で減収も、価格是正等により営業利益は13億円と増益を確保しました。一方、特別損失の計上により当期純利益は11億円で減益となっています。


※本記事は、日亜鋼業株式会社 の有価証券報告書(第73期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日亜鋼業ってどんな会社?


日本製鉄グループの線材加工製品総合メーカーです。めっき技術を核にフェンスや自動車用鋼線などを製造しています。

(1) 会社概要


1908年に田中亜鉛鍍金工場として発足し、1918年に日本亜鉛鍍を創立。1952年に日亜製鋼より分離独立し、現在の日亜鋼業を設立しました。1961年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、1987年には東京・大阪両証券取引所市場第一部に指定。2007年には子会社の合併によりジェイ-ワイテックスが発足しました。

2025年3月31日時点の従業員数は連結846名、単体346名です。筆頭株主は同社の主要な原材料仕入先でもある日本製鉄で、第2位は日亜興産、第3位は取引先持株会となっています。

氏名 持株比率
日本製鉄 24.82%
日亜興産 7.60%
日亜鋼業取引先持株会 6.71%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名、計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は大西 利典氏です。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
大西 利典 代表取締役社長 新日本製鐵入社、同社薄板事業部薄板営業部長、日本製鉄執行役員等を経て、2020年日亜鋼業顧問。同年6月代表取締役副社長を経て、2021年4月より現職。
後藤田 英昭 常務取締役 新日本製鐵入社、新日鐵住金君津製鐵所線材部長等を経て、2020年日亜鋼業顧問。取締役技術本部長、取締役製造本部長等を経て、2025年4月より現職。
寺川 斉貴 取締役 神戸信用金庫を経て日亜鋼業入社。営業本部長、TSN Wires Co., Ltd.取締役副社長等を歴任し、2021年9月より現職。
高間 敏夫 取締役 日亜鋼業入社。技術本部長、製造本部長兼設備部長等を歴任。2023年7月よりTSN Wires Co., Ltd.取締役副社長を兼務し現職。
田中 文武 取締役 日亜鋼業入社。名古屋営業所長、普通線材製品販売部長、営業本部副本部長兼加工製品販売部長等を歴任し、2024年4月より現職。
木戸 邦博 取締役 日亜鋼業入社。生産技術部長、海外事業本部部長、技術本部副本部長等を歴任し、2023年7月より現職。
有元 教世史 取締役 日鐵商事入社、日鉄住金物産建材営業部長、日鉄物産常務執行役員等を経て、2022年日亜鋼業顧問。2024年6月より現職。
山内 幸治 取締役 住友金属工業入社、新日鐵住金人事労政部部長、日鉄鋼管執行役員等を経て、2025年4月日亜鋼業顧問。同年6月より現職。


社外取締役は、石原美保(公認会計士・税理士)、古島礼子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「普通線材製品」「特殊線材製品」「鋲螺線材製品」「不動産賃貸」および「その他」事業を展開しています。

普通線材製品


公共土木向けのかご、落石防護網および民間向けのフェンス等に使用される各種めっき鉄線、また、めっき鉄線を素線とした加工製品を製造販売しています。

収益は製品の販売対価として得ています。運営は主に同社が行っています。

特殊線材製品


自動車産業向け、電力・通信産業向けおよび公共土木向け等の硬鋼線、各種めっき鋼線、鋼平線、鋼より線、鋼索を製造販売しています。

収益は製品の販売対価として得ています。運営は主に同社およびジェイ-ワイテックスが行っています。

鋲螺線材製品


土木・建設業向け等のトルシア形高力ボルト、六角高力ボルトおよびGNボルトを製造販売しています。

収益は製品の販売対価として得ています。運営は主に同社および滋賀ボルトが行っています。

不動産賃貸


建物、土地の不動産賃貸業を営んでいます。

収益は不動産の賃貸料として得ています。運営は主に同社および滋賀ボルトが行っています。

その他


めっき受託加工および副産物を販売しています。

収益は加工料および販売対価として得ています。運営は主に同社、ジェイ-ワイテックスおよび太陽メッキが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2021年3月期の278億円から2024年3月期の345億円まで拡大傾向にありましたが、直近の2025年3月期は微減となりました。経常利益は20億円台前半で推移しており、原材料価格の高騰等の影響を受けつつも安定した利益を確保しています。当期利益は10億円台で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 278億円 307億円 341億円 345億円 341億円
経常利益 19億円 26億円 23億円 21億円 21億円
利益率(%) 6.9% 8.5% 6.7% 6.2% 6.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 16億円 11億円 11億円 11億円

(2) 損益計算書


直近2期間の傾向を見ると、売上高は微減となりましたが、売上総利益は増加し、売上総利益率は改善しています。営業利益も前年並みを維持しており、コスト管理や価格転嫁が進んでいることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 345億円 341億円
売上総利益 59億円 61億円
売上総利益率(%) 17.1% 17.9%
営業利益 13億円 13億円
営業利益率(%) 3.9% 4.0%


販売費及び一般管理費のうち、発送運賃が15億円(構成比31%)、給料が10億円(同22%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の増減要因を見ると、普通線材製品と特殊線材製品は販売数量減により減収となりましたが、販価改善等により増益となりました。一方、鋲螺線材製品は建築物件の停滞により減収となり、コスト増の影響で減益となりました。特殊線材製品が最大の売上規模を誇ります。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
普通線材製品 95億円 94億円 2億円 3億円 3.3%
特殊線材製品 169億円 169億円 3億円 3億円 2.1%
鋲螺線材製品 73億円 72億円 7億円 6億円 8.0%
不動産賃貸 2億円 2億円 1億円 1億円 60.9%
その他 6億円 6億円 0.1億円 0.2億円 2.7%
調整額 - - 0億円 -0億円 -
連結(合計) 345億円 341億円 13億円 13億円 4.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFで利益を出しつつ、借入返済を進め、投資も手元資金で賄っている「健全型」の状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 30億円 24億円
投資CF -9億円 -21億円
財務CF -23億円 -16億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、線材加工製品の総合メーカーとして、和親協同・信用保持・創意工夫の社是の下、株主や取引先、従業員、地域社会等のステークホルダーの負託と信頼に応えて、健全で持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図り、社会の発展に貢献していくことを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、「めっき技術で社会に貢献する」をキーワードに活動しています。耐食性の高い環境にやさしい商品の提供(エコプロダクト)、顧客や社会のニーズに応えるソリューションの提案(エコソリューション)、省エネやCO2排出量削減等に資する製造プロセスの構築(エコプロセス)の「三つのエコ」を通じて、持続可能な社会の実現に向けて積極的に貢献する姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、収益性の指標としてEBITDAに準拠した減価償却前の利益率を重視し、以下の目標を掲げています。また、財務の健全性を示すD/Eレシオ(有利子負債/自己資本)についても目標値を設定しています。

* 売上高に対する減価償却前営業利益率:8%
* 売上高に対する減価償却前経常利益率:10%
* D/Eレシオ:0.3倍以下

(4) 成長戦略と重点施策


同社グループは、事業環境の変化に対応し強靭な企業体質を構築するため、諸コスト上昇に対する販価転嫁の完遂、市場競争力の強化、シェア拡大、需要開拓、品種構成の高度化等を推進します。差別化商品と短納期デリバリーを武器にソリューション営業を展開し、既存市場での拡販と新規市場の開拓を進める方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、盤石な経営基盤の構築と成長のベースとなるのが「人財」であるとの認識の下、人財の確保と育成を推進しています。新卒・中途採用等の多面的な対策を講じるとともに、定年を65歳に延長し、高齢者の継続雇用も積極的に行っています。育成面ではOJTや階層別研修等を実施し、「人を育て人が育つ」風土を築き、社員が働きがいと働きやすさを実感できるエンゲージメントの高い会社を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.9歳 18.5年 6,275,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 90.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.3%
男女賃金差異(正規) 69.8%
男女賃金差異(非正規) 48.4%


※女性管理職比率について、同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 規格の変更等について


同社グループの事業において、規格の変更や、新方式・新素材の採用などにより販売環境が大きく変わる可能性があります。こうした変化が生じた場合、同社グループの生産・販売活動に支障が生じるリスクがあります。

(2) 原材料等の市場動向について


同社グループの事業で使用する原材料の価格は、鉄鉱石やスクラップ、亜鉛などの市況と連動しています。そのため、これらの市況の動向次第では、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 固定資産減損損失について


同社グループが保有する固定資産の時価が著しく低下した場合や、事業の収益性が悪化した場合には、固定資産減損会計の適用により減損損失が発生する可能性があります。これにより、同社グループの業績および財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

(4) 米国トランプ政権の関税・通商政策等の影響について


米国トランプ政権による関税・通商政策などが、自動車分野の需要動向をはじめ、日本および世界の景気動向等に影響を与える可能性があります。これらが波及することで、同社グループの業績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。