※本記事は、株式会社LIXILの有価証券報告書(第84期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. LIXILってどんな会社?
水回り設備や金属製建材などの製造・販売をグローバルに展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1949年に日本建具工業として創設され、1971年にトーヨーサッシへ商号変更しました。1985年に東証二部へ上場し、2001年に持株会社化と同時にINAXを子会社化しています。2011年に主要建材・設備機器メーカー5社が統合して現在のLIXILが誕生し、2020年に事業会社へ移行しました。
従業員数は連結で48,073名、単体で15,128名です。筆頭株主および第2位の株主は資産管理業務を行う信託銀行となっています。また、第3位の株主には同社の従業員持株会が名を連ねており、従業員が株主として資本に参加している点が特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.18% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 3.56% |
| LIXIL従業員持株会 | 3.01% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性6名の計17名で構成され、女性役員比率は35.3%です。代表執行役社長兼CEOは瀬戸欣哉が務めています。取締役10名のうち8名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 瀬戸 欣哉 | 代表執行役社長兼CEO | 1983年住友商事入社。MonotaRO代表取締役社長等を経て、2016年に同社代表執行役兼COO、代表取締役社長兼CEOに就任。 |
| 金澤 祐悟 | 代表執行役副社長 | 1999年住友商事入社。MonotaRO執行役副社長等を経て、2016年に同社専務役員に就任。執行役専務等を経て、2026年より現職。 |
| ファ ジンソンモンテサーノ | 取締役 | 1995年米国Korea Economic Institute入社。GlaxoSmithKline等を経て、2014年同社執行役専務に就任。現在は取締役を務める。 |
社外取締役は、青木淳(元資生堂代表取締役・報酬委員長)、石塚茂樹(元ソニーグループ副会長)、石野博(元関西ペイント代表取締役社長)、大堀龍介(元JPモルガン・アセット・マネジメント投資調査部長・監査委員長)、金野志保(弁護士)、田村真由美(元西友執行役員)、西浦裕二(元三井住友トラストクラブ代表取締役会長・取締役会議長)、綿引万里子(弁護士・指名委員長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ウォーターテクノロジー事業」「ハウジングテクノロジー事業」および「リビング事業」を展開しています。
■(1) ウォーターテクノロジー事業
衛生機器、シャワートイレ、水栓金具、浴槽、外装タイルや内装タイルなどの水回り設備およびタイル建材類を提供しています。一般消費者や住宅・ビル建設会社を主な顧客としています。
製品の販売やサービスの提供から収益を得ています。運営は主に同社のほか、LIXIL Europe S.a r.l.、Grohe AG、ASD Holding Corp.などの子会社が行っています。
■(2) ハウジングテクノロジー事業
住宅・ビル用のサッシ、玄関ドア、各種シャッター、窓枠、太陽光発電システムなどの金属製建材やその他建材類の製造・販売を行っています。また、工務店のフランチャイズ展開や建築請負、不動産管理も手がけています。
製品の販売や住宅ソリューションの提供、不動産の管理から収益を得ています。運営は同社に加え、LIXILトータル販売、LIXIL住宅研究所、LIXILリアルティなどの各社が行っています。
■(3) リビング事業
システムキッチンや洗面化粧台などの水回り設備、室内ドアや床材、階段、収納などのインテリア建材を提供しています。リフォーム需要や新築向けに製品を展開しています。
これらの製品の販売を通じて収益を得ています。運営は主に同社と、LIXILトーヨーサッシ商事、驪住通世泰建材(大連)有限公司などの各社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は1兆4,000億円から1兆5,000億円台で安定して推移しています。一方、税引前利益と当期利益は原材料価格の高騰や海外事業の市況低迷などの影響で増減を繰り返していますが、直近では価格改定や構造改革の効果により当期利益が回復傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 14,286億円 | 14,960億円 | 14,832億円 | 15,047億円 | 15,107億円 |
| 税引前利益 | 673億円 | 198億円 | 67億円 | 202億円 | 157億円 |
| 利益率(%) | 4.7% | 1.3% | 0.4% | 1.3% | 1.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 486億円 | 160億円 | -139億円 | 20億円 | 81億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は前期比で微増となりました。売上総利益は価格改定などの効果により増加し、売上総利益率も改善しています。一方で、構造改革に伴う費用の計上などが影響し、営業利益は減少しました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 15,047億円 | 15,107億円 |
| 売上総利益 | 2,570億円 | 2,690億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.1% | 17.8% |
| 営業利益 | 297億円 | 284億円 |
| 営業利益率(%) | 2.0% | 1.9% |
販売費及び一般管理費(合計4,767億円)のうち、給与手当が708億円(構成比15%)、業務委託料が462億円(同10%)、販売運賃が327億円(同7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ウォーターテクノロジー事業およびリビング事業は、リフォーム向け売上が堅調に推移したことで増収となりました。ハウジングテクノロジー事業は新築向け売上の低迷により減収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ウォーターテクノロジー事業 | 8,049億円 | 8,111億円 |
| ハウジングテクノロジー事業 | 5,271億円 | 5,257億円 |
| リビング事業 | 2,055億円 | 2,076億円 |
| 調整額 | -328億円 | -336億円 |
| 連結(合計) | 15,047億円 | 15,107億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1,000億円 | 827億円 |
| 投資CF | -281億円 | -236億円 |
| 財務CF | -725億円 | -725億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.3%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.3%となっており、いずれもプライム市場の平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」をPurpose(存在意義)として掲げています。この目的のもと、人びとの住まいの夢を実現するために先進的な技術と製品を開発・提供しています。日本のものづくりの伝統を礎に、世界をリードする技術で日々の暮らしの課題を解決し、責任ある事業成長を推進しています。
■(2) 企業文化
同社は、存在意義を実現するための原動力として、「LIXIL Behaviors(3つの行動)」を重視しています。従業員一人ひとりがこの行動様式を日々の業務の中で実践することにより、よりアジャイル(機敏)で起業家精神にあふれた企業になるための取り組みを続け、新たな価値創造につなげています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続可能な成長と価値創造を実現していくための長期的な財務目標として、事業利益率10%およびROIC(投下資本利益率)10%の達成を掲げています。また、2030年には売上の半分以上を社会や環境にインパクト(良い影響)を生み出す商品群が占める姿を目指し、強靭な事業基盤の構築を進めています。
* 事業利益率 10%
* ROIC 10%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、経営の基本的方向性を示す「LIXIL Playbook」に基づき、持続的な成長に向けた優先課題に取り組んでいます。具体的には、インフレーションやサプライチェーンの課題への対応、日本事業の最適化とリフォーム需要の取り込み、海外におけるウォーターテクノロジー事業の成長促進などに注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人的資本を価値創造の最大の原動力と位置づけ、グローバル人事戦略を推進しています。「インクルージョンをDNAに組み込む」「人材育成への投資」「従業員エクスペリエンスの向上」を3つの柱とし、多様な従業員が能力を最大限に発揮できる環境整備と、次世代リーダーの計画的な発掘・育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 2026年3月期 |
|---|---|
| 平均年齢 | 46.2歳 |
| 平均勤続年数 | 20.3年 |
| 平均年間給与 | 7,296,288円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 7.9% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 86.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 62.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 68.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 93.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全世界の女性管理職比率(17.0%)、日本の新卒女性比率(41.0%)、女性取締役・執行役比率(31.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況や為替相場・金利の変動
グローバルに事業を展開しているため、世界的な景気や物価変動の影響を受けます。原材料価格や物流コストの上昇、国内の新設住宅着工戸数の減少が業績に影響する可能性があります。また、為替相場や金利の急激な変動も、資金調達や外貨建取引の収益に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 地政学の不確実性
原材料や資源・エネルギー価格の高騰、物流ルートの遮断によるリードタイムの長期化など、地政学的な要因によるサプライチェーンの分断リスクが存在します。また、各国の経済安全保障政策による予期せぬ法規制の変更や、紛争地域での事業停止などが業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 新製品の開発と品質
市場や顧客ニーズの急速な変化に対応した新製品を適時に開発・投入できない場合、競争力の低下や売上減少につながるリスクがあります。また、製品に欠陥が生じて大規模なリコールや製造物責任問題に発展した場合は、ブランドへの信頼性が損なわれ、多額の費用が発生する可能性があります。



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