※本記事は、株式会社LIXIL の有価証券報告書(第83期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. LIXILってどんな会社?
国内主要建材・設備機器メーカー5社が統合して誕生した、住まいの水まわり製品と建材を提供するグローバル企業です。
■(1) 会社概要
2011年4月、トステム、INAX、新日軽、東洋エクステリア等が合併し、現在のLIXILが発足しました。その後、2013年に北米のAmerican Standardブランドを持つASD Holding Corp.を、2015年には欧州の水栓金具メーカーGROHE Group S.à r.l.を子会社化し、グローバル展開を加速させました。2020年12月には持株会社から事業会社へ移行し、2022年4月に東証プライム市場へ移行しています。
同グループは世界150カ国以上で事業を展開しており、連結従業員数は48,660名(単体14,930名)です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は日本カストディ銀行(信託口)といずれも資産管理業務を行う信託銀行です。第3位にはLIXIL従業員持株会が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.48% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.16% |
| LIXIL従業員持株会 | 2.85% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性5名の計16名で構成され、女性役員比率は31.3%です。代表執行役社長兼CEOは瀬戸欣哉氏です。社外取締役比率は80.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 瀬戸 欣哉 | 取締役 代表執行役社長 兼 CEO | 住友商事入社後、米国等の現地法人社長を経て、住商グレンジャー(現MonotaRO)社長・会長を歴任。2016年1月より同社代表執行役兼COO、同年6月より社長兼CEO。2020年4月より現職。 |
| ファ ジンソンモンテサーノ | 取締役 代表執行役専務 | 英国GlaxoSmithKline等を経て、2014年同社入社。広報・人事・CR等を担当し、Chief People Officer等を歴任。2025年4月より現職。 |
社外取締役は、青木淳(元資生堂代表取締役)、石塚茂樹(元ソニーグループ副会長)、大堀龍介(元JPモルガン・アセット・マネジメント本部長)、金野志保(弁護士)、田村真由美(元西友CFO)、西浦裕二(元アクサ生命保険会長)、濵口大輔(元企業年金連合会運用執行理事)、綿引万里子(元名古屋高等裁判所長官)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ウォーターテクノロジー事業」および「ハウジングテクノロジー事業」を展開しています。
■ウォーターテクノロジー事業
水まわり設備に関する製品を提供しています。主な製品には、衛生機器、シャワートイレ、水栓金具、手洗器、浴槽、ユニットバス、スマート製品、シャワー、洗面器、洗面カウンター、システムキッチンなどが含まれます。また、住宅・ビル外装タイルや内装タイルなども取り扱っています。一般消費者や建築事業者などが主な顧客です。
収益は、これらの製品の販売から得ています。運営は主に同社が行っていますが、海外においてはLIXIL Europe S.à r.l.、Grohe AG、ASD Holding Corp.、LIXIL Vietnam Corporationなどが各地域での事業を担っています。また、国内では株式会社LIXILトータルサービスなどが関連サービスを提供しています。
■ハウジングテクノロジー事業
住宅やビル向けの建材を提供しています。金属製建材としてサッシ、玄関ドア、シャッター、門扉、カーポート、カーテンウォールなどを、木質内装建材として窓枠、造作材、インテリア建材などを扱っています。また、サイディングや太陽光発電システムなども提供し、工務店や不動産事業のフランチャイズチェーン展開も行っています。
収益は、建材製品の販売や、フランチャイズ加盟店からのロイヤリティ、建築請負、不動産管理などから得ています。運営は主に同社が行い、株式会社LIXILトータル販売、Gテリア株式会社、株式会社LIXIL住宅研究所、旭トステム外装株式会社、株式会社LIXILリアルティなどがそれぞれの専門領域を担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は1.3兆円台から1.5兆円台の間で推移しており、直近では増加傾向にあります。利益面では、税引前利益が変動しており、前期は利益率が0.4%まで低下しましたが、当期は1.3%まで回復しました。当期利益についても、前期の赤字から当期は黒字に転換しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 13,783億円 | 14,286億円 | 14,960億円 | 14,832億円 | 15,047億円 |
| 税引前利益 | 338億円 | 673億円 | 198億円 | 67億円 | 202億円 |
| 利益率(%) | 2.5% | 4.7% | 1.3% | 0.4% | 1.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 330億円 | 486億円 | 160億円 | -139億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は前期比で微増となりました。売上総利益率は33%台で安定しています。営業利益は前期の164億円から297億円へと大幅に増加し、営業利益率も改善しました。全体として、収益性が回復基調にあることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 14,832億円 | 15,047億円 |
| 売上総利益 | 4,727億円 | 4,981億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.9% | 33.1% |
| 営業利益 | 164億円 | 297億円 |
| 営業利益率(%) | 1.1% | 2.0% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が1,547億円(構成比33.1%)、委託手数料が578億円(同12.4%)、販売運賃が502億円(同10.8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ウォーターテクノロジー事業は、国内での価格改定効果やリフォーム需要、海外(欧州・中東)の堅調な推移により増収増益となりました。一方、ハウジングテクノロジー事業は、リフォーム向け売上が伸長したものの新築需要の減退や事業売却の影響で減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ウォーターテクノロジー事業 | 8,969億円 | 9,278億円 | 227億円 | 409億円 | 4.4% |
| ハウジングテクノロジー事業 | 5,964億円 | 5,868億円 | 359億円 | 292億円 | 5.0% |
| その他 | 14,934億円 | 15,147億円 | - | - | - |
| 調整額 | -101億円 | -100億円 | -354億円 | -388億円 | - |
| 連結(合計) | 14,832億円 | 15,047億円 | 232億円 | 313億円 | 2.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で大きく稼ぎ、投資もしつつ、借入返済や株主還元で資金を社外に出している「成熟・優良型(健全型)」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 480億円 | 1,000億円 |
| 投資CF | -299億円 | -281億円 |
| 財務CF | -37億円 | -725億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.3%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」をPurpose(存在意義)として掲げています。この目的のもと、先進的な技術と製品を開発・提供し、世界中の人びとの住まいの夢を実現することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、持続的な成長に向けて、よりアジャイルで起業家精神にあふれた企業になることを目指しています。そのために、従業員一人ひとりが「LIXIL Behaviors(3つの行動)」を日々の業務の中で実践することを重視しており、これらが価値創造の原動力となっています。
■(3) 成長戦略と重点施策
「LIXIL Playbook」に基づき、インフレーションやサプライチェーンの課題に対応しつつ、日本事業の最適化とリフォーム需要の取り込み強化を図ります。海外ではウォーターテクノロジー事業の成長を促進し、高付加価値製品へのシフトを進めます。また、環境戦略を事業戦略に統合し、気候変動対策や資源循環に取り組みながら、新たなコア事業の創出にも注力します。
■(4) 経営計画・目標
同社は持続可能な成長と価値創造を実現するための長期目標として、事業利益率10%、ROIC10%を掲げています。この長期目標に向けた方向性として、2028年3月期までに以下の数値を達成することを目指しています。
* 事業利益1,100億円以上
* 事業利益率6.5%
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「多様性の尊重」を掲げ、2030年3月期までにインクルージョン文化の浸透とジェンダー不均衡の是正を目指しています。D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の推進と実力主義の徹底を通じ、性別や年齢等に関わらず全従業員が活躍できる環境を整備しています。また、将来の管理職候補育成のため、採用や研修プログラムにも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 46.0歳 | 20.3年 | 7,087,320円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.5% |
| 男性育児休業取得率 | 90.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 66.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 93.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全世界の女性管理職比率(17.4%)、日本の新卒女性比率(47.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況、為替相場・金利の変動
グローバルな事業展開に伴い、各国の景気や物価変動、原材料価格や物流コストの上昇が業績に影響を及ぼす可能性があります。特に国内の新設住宅着工戸数の減少はリスク要因です。また、為替相場の変動や市場金利の上昇も、財務状況や資金調達コストに悪影響を与える可能性があります。
■(2) 地政学的リスク
国際情勢の複雑化により、原材料価格の高騰や供給網の混乱が生じる可能性があります。経済安全保障政策の強化や制裁、戦争・紛争による事業停止や撤退などが業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。これに対し、調達先の多角化や在庫備蓄、地域内供給体制の強化などで対応しています。
■(3) 新製品の開発
市場ニーズの急速な変化や顧客への訴求不足により、新製品が期待通りの成長を遂げられない可能性があります。また、製品の欠陥によるリコールや製造物責任賠償が発生した場合、多額の費用負担やブランドへの信頼低下を招き、業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。
■(4) 原材料等の調達
国際情勢や経済状況による為替やコモディティ価格の変動が、原材料価格の高騰や調達遅延を引き起こす可能性があります。これにより売上原価が増加したり、欠品による信用の低下を招いたりするリスクがあります。物流における遅延やコスト増も同様に業績に影響を与える可能性があります。



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