※本記事は、株式会社大紀アルミニウム工業所の有価証券報告書(第99期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大紀アルミニウム工業所ってどんな会社?
大紀アルミニウム工業所は、アルミニウム二次合金地金の製造・販売をグローバルに展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1922年に日本で初めて二次アルミニウム製錬業を創業し、1924年に大紀アルミニウム工業所を設立しました。1979年に株式上場を果たしています。その後、2006年にダイキエンジニアリングを設立して事業を拡大し、2010年のインドネシア法人設立など海外展開も積極的に推進しています。
現在の従業員数は連結で1,275名、単体で326名です。筆頭株主は役員関連と見られる山本エステートで、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は代表取締役会長の山本隆章氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山本エステート | 8.79% |
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 8.23% |
| 山本隆章 | 5.64% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.6%です。代表取締役社長執行役員は林繁典氏が務めています。社外取締役比率は25.0%(12名中3名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山本隆章 | 代表取締役会長 | 1976年同社入社。1978年取締役、1989年代表取締役副社長を経て、1994年代表取締役社長に就任。2023年より現職。 |
| 林繁典 | 代表取締役社長執行役員 | 1978年同社入社。2007年取締役、2017年常務取締役などを経て、2022年代表取締役副社長執行役員に就任。2023年より現職。 |
| 後藤和示 | 取締役専務執行役員海外事業室担当 | 1975年同社入社。2006年取締役生産統括室長、2011年常務取締役、2015年専務取締役などを経て、2024年より現職。 |
| 門谷正雄 | 取締役専務執行役員海外事業室長 | 1987年同社入社。2008年タイ法人社長、2013年同社取締役、2020年常務執行役員などを経て、2025年より現職。 |
| 川口絵里 | 取締役常務執行役員管理部担当兼企画室長兼ダイバーシティ推進室長 | 2001年池田泉州銀行入行。2017年同社入社。2021年企画室長、2022年執行役員兼管理部部長代理などを経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、辰野守彦(芝綜合法律事務所設立)、谷謙二(日本冶金工業社外取締役)、山本未生(World in You代表理事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アルミニウム二次合金」および「その他」事業を展開しています。
■アルミニウム二次合金
アルミニウム屑を原料とし、長年培った溶解技術と経験を活かしてアルミニウム二次合金地金の製造および販売を行っています。主な顧客は自動車業界を中心とした産業界であり、ハイブリッド車や電気自動車向けのリサイクル合金の開発と供給にも注力しています。
顧客である自動車メーカー等に製品や商品を販売し、その対価として代金を受け取る収益モデルです。同社が製造販売を直接担うほか、九州ダイキアルミや北海道ダイキアルミ、海外子会社のダイキアルミニウムインダストリー(タイランド)などが運営を行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、アルミニウム溶解炉の製造・販売および新築補修等の事業や、ダイカスト製品の製造・販売を展開しています。アルミニウム二次合金事業で培った高度な技術を活用し、周辺領域における顧客の多様なニーズに対応しています。
顧客に溶解炉やダイカスト製品を提供することで収益を得ています。溶解炉事業の運営はダイキエンジニアリングや大紀(上海)工業炉技術有限責任公司などが担当し、ダイカスト製品事業は聖心製作所やセイシン(タイランド)が主に担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は原材料価格の変動や需要動向の影響を受けつつも、概ね拡大傾向にあります。経常利益は一時的に落ち込みが見られましたが、直近では販売価格の是正などにより回復基調にあります。利益率も直近で改善しており、今後の収益力向上が期待される状況です。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,361億円 | 2,730億円 | 2,627億円 | 2,998億円 | 3,311億円 |
| 経常利益 | 207億円 | 139億円 | 42億円 | 37億円 | 56億円 |
| 利益率(%) | 8.8% | 5.1% | 1.6% | 1.3% | 1.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 72億円 | 61億円 | 37億円 | -7億円 | 34億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。販売価格の適正化やコスト管理の徹底が寄与し、売上総利益率および営業利益率ともに改善が見られます。外部環境の変化に柔軟に対応し、着実に本業の収益性を高めていることが確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,998億円 | 3,311億円 |
| 売上総利益 | 138億円 | 162億円 |
| 売上総利益率(%) | 4.6% | 4.9% |
| 営業利益 | 48億円 | 73億円 |
| 営業利益率(%) | 1.6% | 2.2% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃及び荷造費が17億円(構成比19%)、給料及び手当が6億円(同6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のアルミニウム二次合金事業は、製品および商品の堅調な需要に支えられ、国内外での販売価格の是正も進んだことで前期比で売上を伸ばしています。また、溶解炉やダイカスト製品を手掛けるその他事業も底堅く推移し、全社的な増収に寄与しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| アルミニウム二次合金 | 2,945億円 | 3,253億円 |
| その他 | 53億円 | 58億円 |
| 連結(合計) | 2,998億円 | 3,311億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業キャッシュ・フローがプラス、投資キャッシュ・フローがマイナス、財務キャッシュ・フローがプラスとなっており、本業で生み出した資金と借入等を組み合わせて積極的な投資を行っている「積極型」の状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -100億円 | 19億円 |
| 投資CF | -42億円 | -52億円 |
| 財務CF | 146億円 | 51億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.9%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.9%となっており、いずれもプライム市場の平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「事業」と「環境」を同軸にとらえ、地球が求める真の企業へと成長していくことを目指すため、「G&G(Global&Green)」を経営の基本方針として掲げています。グローバルな視点と活動、そして世界環境を見据えた理念の実践を主旨としており、事業活動を通じた社会課題の解決を追求しています。
■(2) 企業文化
「G&G」の経営コンセプトのもと、アルミニウムのリサイクルを通じて社会の発展に貢献する文化が醸成されています。従業員一人ひとりが「お客様第一主義」「現場主義」「当事者意識の徹底」という3つの行動指針を体現し、多様性を尊重しながら新しい価値の創造に向けて主体的に取り組む風土が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
2030年に目指すべき姿「DAIKI∞NEXT∞」を描き、その実現に向けた中期経営計画において、品質・コスト・サービスで世界水準を見据えた地球レベルの活動を目指しています。収益性改善や株主還元にも注力し、継続的な成長を図っています。
・資本コストを上回るROEの維持およびPBRの向上
・連結配当性向30%程度
・DOE(株主資本配当率)3%程度
■(4) 成長戦略と重点施策
ハイブリッド車や電気自動車などの成長分野への投資を加速させるとともに、生産システムの構築や財務基盤の強化を通じて経営基盤を強固にします。また、高度循環型社会への挑戦として、環境保全やグローバルな人材育成を推進しています。
・成長分野への投資(EV等向けリサイクル合金の開発等)
・環境保全(二酸化炭素排出削減や廃棄物ゼロの推進)
・人材の育成と活用(グローカライゼーションやダイバーシティの推進)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「挑戦」「活躍」「成長」の3つを柱とする人材戦略を推進しています。主体的な挑戦を後押しする企業風土のもと、多様なバックグラウンドを持つ人材が最大限に活躍できる仕組みを整え、日常の業務と研修制度を有機的に連動させることで、従業員の継続的な成長とエンゲージメントの向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.8歳 | 15.8年 | 7,487,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.4% |
| 男性育児休業取得率 | 90.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 73.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 61.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(78.5%)、離職率(3.4%)、海外子会社におけるグローカル人材管理職比率(64.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車業界への販売依存度
同社の販売先は自動車業界を主体とした限られた業態に集中しており、売上比重の大きい顧客が存在します。そのため、自動車業界の景気動向や各社の業績、取引関係の変化が、同社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料の調達および市況変動リスク
アルミニウム事業における原料価格や販売価格は、ロンドン金属取引所(LME)などの国際相場や市況変動の影響を大きく受けます。供給源の縮小や調達の制約、急激な価格変動が生じた場合、収益の悪化を招くリスクがあります。
■(3) 情報セキュリティに関するリスク
事業活動において情報システムを利用しており、企業秘密などの重要な情報を取り扱っています。人的ミスや機器の故障、外部からのサイバー攻撃や不正アクセスにより情報流出やシステム障害が発生した場合、事業運営に支障をきたす可能性があります。
■(4) 固定資産の減損処理に関するリスク
保有する固定資産について、事業計画の未達や市場環境の悪化により将来キャッシュ・フローが減少し、帳簿価額を回収できないと判断された場合、減損処理が必要となり、業績や財務状況にマイナスの影響を与える可能性があります。



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