※本記事は、株式会社UACJの有価証券報告書(第13期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. UACJってどんな会社?
アルミニウム等の非鉄金属および合金の製造・販売を展開するグローバル企業です。
■(1) 会社概要
UACJは2013年に古河スカイと住友軽金属工業が経営統合して発足しました。2014年にはタイでアルミニウム板圧延工場が操業を開始したほか、2018年に米国の自動車用アルミニウム構造材製造販売会社の持分を取得するなどグローバルに事業を拡大しています。2024年には子会社の吸収合併等を行いました。
従業員数は連結で10,183名、単体で3,943名です。筆頭株主は外資系金融機関のGOLDMAN SACHS INTERNATIONALで、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は事業会社の古河電気工業です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL | 13.13% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.32% |
| 古河電気工業 | 7.03% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員は田中信二氏です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 石原美幸 | 取締役会長 | 1981年住友軽金属工業入社。2018年同社代表取締役社長社長執行役員、2022年同社代表取締役社長執行役員などを経て、2024年より現職。 |
| 田中信二 | 代表取締役社長執行役員 | 1987年住友軽金属工業入社。2021年同社取締役執行役員、2022年同社取締役常務執行役員などを経て、2024年より現職。 |
| 隈元穣治 | 取締役専務執行役員 | 1985年住友商事入社。2017年同社入社。2023年同社取締役執行役員、2024年同社取締役常務執行役員を経て、2025年より現職。 |
| 慈道文治 | 取締役常務執行役員 | 1988年古河電気工業入社。2022年同社執行役員、同社取締役執行役員を経て、2024年より現職。 |
| 岡田浩三 | 取締役執行役員 | 1992年住友軽金属工業入社。2024年同社執行役員を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、池田隆洋氏(元ダイアケミカル社長)、作宮明夫氏(元オムロン副社長)、光田好孝氏(東京大学名誉教授)、永田亮子氏(元日本たばこ産業飲料事業部長)、赤羽真紀子氏(CSRアジア代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「板製品関連」「押出・加工品関連」「航空宇宙・防衛材関連」「自動車部品関連」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 板製品関連
アルミニウム及びその合金の板圧延製品、箔製品の製造や販売を幅広い顧客へ向けて展開しています。飲料缶材などの需要にも対応しています。
各種板製品や箔製品を顧客へ販売することで収益を得ています。運営は同社のほか、米国やタイにあるTri-Arrows AluminumやUACJ (Thailand) など複数の関係会社が担っています。
■(2) 押出・加工品関連
アルミニウム等の押出製品や加工製品の製造・販売、さらにはそれらに関連する土木工事の請負等を行っています。
各種押出・加工品の販売や工事請負代金から収益を得ています。運営は同社をはじめ、UACJ押出加工安城、UACJ金属加工等の国内外の関係会社が担当しています。
■(3) 航空宇宙・防衛材関連
アルミニウム等の鋳物製品や鍛造製品の製造および販売を行っています。高度な技術が要求される先端分野向けの素材を供給しています。
鋳物・鍛造製品の販売を通じて収益を得ています。運営は同社およびUACJ Foundry & Forging (Vietnam) が行っています。
■(4) 自動車部品関連
自動車の軽量化や熱マネジメントに貢献するアルミニウム等の自動車部品の製造・販売を展開しています。
自動車メーカー等への部品販売による代金から収益を獲得しています。運営は同社や米国のUACJ Automotive Whitehall Industriesなどの関係会社が行っています。
■(5) その他
グループの事業に関連する貨物運送や荷扱い業務、アルミニウム製品等の卸売業務などを行っています。
グループ内外に対する運送・卸売などの各種サービス提供を通じて収益を得ています。関連事業をサポートする複数の子会社・関係会社が運営を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は直近4年間で堅調に推移しており、特に当期は1兆円を突破し大幅な増収となりました。税引前利益や当期利益も順調に拡大しており、利益率も直近では5%台に改善するなど収益力の向上が見られます。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 9,557億円 | 8,928億円 | 9,988億円 | 11,817億円 |
| 税引前利益 | 17億円 | 220億円 | 430億円 | 637億円 |
| 利益率(%) | 0.2% | 2.5% | 4.3% | 5.4% |
| 当期利益 | -13億円 | 139億円 | 280億円 | 389億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益が前期比で約18%増加し、1兆円を超える規模に拡大しました。これに伴い、売上総利益および営業利益も順調に伸びており、収益基盤の着実な成長が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 9,988億円 | 11,817億円 |
| 売上総利益 | 406億円 | 442億円 |
| 売上総利益率(%) | 4.1% | 3.7% |
| 営業利益 | 574億円 | 769億円 |
| 営業利益率(%) | 5.7% | 6.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給与諸手当福利費が95億円、荷造費及び運送費が88億円を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は「アルミ製品事業」の単一セグメントであるため、事業区分別の詳細な収益は開示されていませんが、全体として堅調な増収増益を記録しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 連結(合計) | 9,988億円 | 11,817億円 | 574億円 | 769億円 | 6.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動によるキャッシュ・フローはマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローはプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」の状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 91億円 | 640億円 |
| 投資CF | -369億円 | -595億円 |
| 財務CF | 125億円 | 254億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は29.1%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「素材の力を引き出す技術で、持続可能で豊かな社会の実現に貢献する。」という企業理念を掲げています。また、「アルミニウムを究めて環境負荷を減らし、軽やかな世界へ。」を目指す姿として定義しており、アルミニウムの特性を最大限に活かした事業活動を通じて地球環境に配慮した社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
「相互の理解と尊重」「誠実さと未来志向」「好奇心と挑戦心」という3つの価値観を大切にしています。これらをグループ理念体系の社内浸透を図るため、経営幹部と従業員との理念対話会を継続して実施し、国境や世代を超えて永続的に社会・生活を支える企業グループになることを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
「UACJ VISION 2030」に向けた第4次中期経営計画(2024年度〜2027年度)を策定しています。資本効率の向上と持続的な成長を目指し、株式価値向上の観点からROEを重視しています。
* 2027年度目標:売上高1兆500億円、事業利益600億円、ROIC 9%以上、ROE 9%以上
* 2030年度目標:売上高1兆1,000億円以上、売上高事業利益率6%以上、ROIC 10%以上、ROE 10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「素材+α」の付加価値提供企業への変革をコンセプトに掲げ、「リサイクル推進」「素材+加工ビジネスの拡大」「先端分野のサプライチェーン安定化への貢献」「新領域の拡大」を推進しています。また、棚卸資産削減による資金創出や、製造現場の自動化・無人化を進めることで、筋肉質でしなやかな体質の強化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人を育み、人を繋いで、軽やかな未来を創る」というピープルステートメントのもと、「従業員一人ひとりのWell-beingの向上」と「人材力・組織力の向上」を基本方針としています。リーダー育成やDE&Iの推進による組織づくり、新卒・キャリア採用の強化と「ものづくり学園」等での人づくり、さらには健康経営の推進や職場環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.4歳 | 15.5年 | 7,781,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.1% |
| 男性育児休業取得率 | 84.2% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 78.3% |
| 男女賃金差異(正規従業員) | 79.3% |
| 男女賃金差異(臨時雇用者) | 57.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率・連結(11.8%)、自己都合離職率・単体(3.1%)、採用確保率・国内連結(83.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 気候変動と地球環境の変化への対応
温室効果ガス(GHG)排出削減への取り組みが不十分な場合、素材間競争で劣後したり事業機会を喪失するリスクがあります。一方で、軽量性やリサイクル性といったアルミニウムの特性を活かした製品・サービスの提供は、事業機会の拡大につながります。
■(2) 地政学的リスクによるサプライチェーンへの影響
中東情勢の緊迫化や米国の関税政策など、政治・経済動向の変化により、原材料の調達困難や物流コストの上昇が発生するリスクがあります。同社は調達先の多様化や適切な在庫確保、代替拠点の検討などを通じて対応力を強化しています。
■(3) アルミ地金やエネルギー価格の市況激変
アルミ新地金価格やスクラップ価格、物流費、エネルギー価格の大幅な変動は、収益に影響を与える可能性があります。同社は販売価格へ相場変動を適切に反映させる値決め方式の定着や、在庫量のコントロールによってリスクの軽減に努めています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。