古河電気工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

古河電気工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、インフラ、電装エレクトロニクス、機能製品等の製造販売を展開しています。当連結会計年度の業績は、自動車部品やデータセンタ関連製品の伸長等により、売上高は1兆2018億円、経常利益は486億円となり、前期比で大幅な増収増益を達成しました。(139文字)


※本記事は、株式会社古河電気工業 の有価証券報告書(第203期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 古河電気工業ってどんな会社?

1896年の創業以来、電線・非鉄金属の技術を核に、インフラや自動車部品など多岐にわたる事業を展開するメーカーです。

(1) 会社概要

1896年に横浜電線製造として設立され、1920年に現商号へ変更しました。1949年に株式を上場。2001年には米国ルーセント・テクノロジー社の光ファイバ部門を買収しました。2013年には関連会社の古河スカイが合併しUACJとなり、2025年には光ファイバ事業の再編を実施するなど、事業構造改革を進めています。

連結従業員数は51,167人、単体では4,433人です。大株主は、資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行が筆頭株主であり、第2位も同様に日本カストディ銀行です。第3位も信託業務を行う野村信託銀行となっており、上位は信託口が占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.41%
日本カストディ銀行(信託口) 7.09%
野村信託銀行(投信口) 2.40%

(2) 経営陣

同社の役員は男性15名、女性2名の計17名で構成され、女性役員比率は11.8%です。代表取締役社長は森平英也氏であり、社外取締役比率は29.4%です。

氏名 役職 主な経歴
小林 敬一 取締役会長 1985年入社。執行役員常務として自動車・エレクトロニクス材料系事業部門等を管掌。2017年代表取締役社長を経て、2023年4月より現職。
森平 英也 代表取締役社長 1990年入社。情報通信ソリューション統括部門長、ファイバ・ケーブル事業部門長などを歴任。執行役員常務を経て、2023年4月より現職。
宮本 聡 取締役兼執行役員専務戦略本部長 1984年通商産業省入省。中小企業庁長官などを歴任後、2017年同社顧問。総務・CSR本部長、ビジネス基盤変革本部長を経て、2022年4月より現職。
枡谷 義雄 取締役兼執行役員常務営業統括本部長 1989年大倉商事入社。1998年同社入社。グローバルマーケティングセールス部門等で要職を務め、2022年4月より現職。
青島 弘治 取締役兼執行役員常務財務本部長 1992年入社。財務・調達本部経理部等を経て、古河AS管理本部経理部長、同社財務本部経理部長等を歴任。2025年4月より現職。
柳 登志夫 取締役兼執行役員リスクマネジメント本部長 1988年入社。戦略本部経営企画室長、機能製品統括部門銅箔事業部門長などを経て、2021年4月より現職。


社外取締役は、塚本隆史(元みずほフィナンシャルグループ社長)、御代川善朗(元アステラス製薬副社長)、籔ゆき子(元松下電器産業理事)、斎藤保(元IHI会長)、星野岳穂(元経済産業省大臣官房審議官)です。

2. 事業内容

同社グループは、「インフラ」「電装エレクトロニクス」「機能製品」「サービス・開発等」および「その他」事業を展開しています。

(1) インフラ

情報通信ソリューション事業とエネルギーインフラ事業で構成され、光ファイバ・ケーブル、光半導体デバイス、ネットワーク機器、電力ケーブル、産業用電線などを通信事業者や電力会社、建設業者等に提供しています。

収益は、製品の販売対価や工事請負代金等から得ています。運営は、同社、Lightera, LLC、Lightera LatAm S.A.、古河電工メタルケーブル、瀋陽古河電纜有限公司などが行っています。

(2) 電装エレクトロニクス

自動車部品・電池事業と電装エレクトロニクス材料事業で構成され、ワイヤハーネス、車載用機能製品、自動車用・産業用電池、銅線、巻線などを自動車メーカーや電機メーカー等に提供しています。

収益は、製品の販売対価から得ています。運営は、同社、古河電池、古河AS、古河マグネットワイヤなどが行っています。

(3) 機能製品

機能製品事業として、管路製品、発泡製品、半導体製造用テープ、放熱・冷却製品、ハードディスクドライブ用アルミブランク材、電解銅箔などを通信インフラ、エレクトロニクス、自動車関連の顧客に提供しています。

収益は、製品の販売対価から得ています。運営は、同社、Trocellen GmbH、古河銅箔股份有限公司、台日古河銅箔股份有限公司などが行っています。

(4) サービス・開発等

各事業を支援するサービス機能および新製品の研究開発機能を担っており、物流、不動産賃貸、水力発電、新技術開発などをグループ内外に提供しています。

収益は、サービスの提供対価、不動産賃貸料、売電収入等から得ています。運営は、同社、古河日光発電などが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

売上高は増加傾向にあり、特に当期は大幅な増収となりました。利益面では、原材料価格高騰などの影響を受けた期もありましたが、当期は経常利益、当期純利益ともに大きく回復し、増益基調となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 8,116億円 9,305億円 10,663億円 10,565億円 12,018億円
経常利益 52億円 197億円 173億円 103億円 486億円
利益率(%) 0.6% 2.1% 1.6% 1.0% 4.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 243億円 -5億円 252億円 19億円 324億円

(2) 損益計算書

前期と比較して売上高が増加し、売上総利益率および営業利益率も改善しました。これは高付加価値製品の販売拡大や生産性改善などが寄与したと考えられます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 10,565億円 12,018億円
売上総利益 1,590億円 2,017億円
売上総利益率(%) 15.0% 16.8%
営業利益 112億円 471億円
営業利益率(%) 1.1% 3.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与諸手当福利費が565億円(構成比37%)、荷造費及び運送費が234億円(同15%)を占めています。売上原価の主要な構成要素についての具体的な金額は記載がありません。

(3) セグメント収益

全セグメントで売上が増加しました。特に機能製品と電装エレクトロニクスの増収率が高くなっています。利益面では、インフラ、電装エレクトロニクス、機能製品が大幅な増益を達成した一方、サービス・開発等は損失を計上しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
インフラ 2,745億円 3,045億円 -113億円 45億円 1.5%
電装エレクトロニクス 6,441億円 7,277億円 187億円 323億円 4.4%
機能製品 1,110億円 1,409億円 55億円 140億円 9.9%
サービス・開発等 270億円 286億円 -19億円 -36億円 -12.7%
連結(合計) 10,565億円 12,018億円 112億円 471億円 3.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであるため、本業で稼いだ資金を借入金の返済や投資に回している「健全型」と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 319億円 598億円
投資CF -248億円 -72億円
財務CF -93億円 -442億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「『つづく』をつくり、世界を明るくする。」というパーパスを掲げています。これは、創業以来の技術力と提案力で社会課題に挑戦し、持続可能な社会の実現に貢献するという存在意義を示したものです。2030年のありたい姿として、情報・エネルギー・モビリティが融合した社会基盤を創ることを目指しています。

(2) 企業文化

同社グループは、持続的に成長するために大切にする価値観として、「Core Values」を定めています。具体的には、<正々堂々><革新><本質追究><主体・迅速><共創>の5つです。また、「古河電工グループCSR行動規範」に基づき、社会的責任を果たしながら企業活動を展開することを重視しています。

(3) 経営計画・目標

2030年のビジョン達成に向けた中間地点として、2025年度を最終年度とする中期経営計画「Road to Vision2030-変革と挑戦-」を推進しています。資本効率を意識した事業強化と創出を目指し、以下の財務目標を掲げています。

* 連結売上高:1.1兆円以上
* 連結営業利益:580億円以上
* 親会社株主に帰属する当期純利益:370億円以上
* ROIC(税引後):6%以上
* ROE:11%以上

(4) 成長戦略と重点施策

中期経営計画達成に向け、「資本効率重視による既存事業の収益最大化」と「開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備」を推進しています。事業ポートフォリオの見直しを進め、データセンタ等の注力分野へ経営資源を集中させる一方、ESG経営の基盤強化にも取り組んでいます。

* 情報通信:データセンタ関連分野への注力、光ファイバ・ケーブル事業のグローバル経営一体化
* エネルギーインフラ:再生可能エネルギーや送電網増強需要への対応、メタル電線事業の効率化
* 自動車部品:電動化対応製品の開発、製造自動化
* 機能製品:データセンタ・AI市場向け放熱・冷却製品の開発

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「古河電工グループPeople Vision」に基づき、個人と組織が共に成長することを目指しています。経営戦略実行に必要な人材を確保・育成するため、サクセッションプランの実行、採用力の強化、リスキリングによる自律的なキャリア形成支援、エンゲージメント向上に向けた施策等を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.5歳 19.1年 6,984,561円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.4%
男性育児休業取得率 77.2%
男女賃金差異(全労働者) 73.1%
男女賃金差異(正規雇用) 72.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 70.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメントスコア(72)、環境調和製品売上高比率(74.0%)、新事業研究開発費増加率(133%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業ポートフォリオ

事業構成が経済動向や市場環境の変化に対応できず、収益性や成長性が停滞・悪化するリスクがあります。また、M&Aや提携後に市場環境が悪化し、期待した効果が得られない可能性もあります。これに対し、事業ポートフォリオ検討委員会を設置し、変革を推進するとともに、買収・提携時のリスク把握や投下資本の早期回収に努めています。

(2) 新事業の創出

新事業の企画・開発と営業との連携不足により、新事業創出が遅延または中止となるリスクがあります。対応策として、新事業創出に関する専門組織を営業組織へ統合し、テーマ分野における顧客との共創を加速させることで、事業化の確度を高める取り組みを行っています。

(3) 気候変動

各国の排出削減目標引き上げや炭素税などの規制強化によるコスト増、対策不足による市場からの排除、洪水・渇水による工場操業停止等のリスクがあります。これに対し、環境ビジョン2050の改定やTCFD提言への賛同、再生可能エネルギーの導入、水害リスクへの対策などを進め、ネットゼロを目指した活動を実行しています。

(4) 人材・組織

新事業創出やポートフォリオマネジメントを担う専門人材の不足、人材の獲得・定着難、従業員エンゲージメントの低下が成長を阻害するリスクがあります。これに対し、People Visionに基づく組織実行力強化、人材マネジメントの強化、エンゲージメント調査の実施、リーダーシップ変革、働き方改革やダイバーシティ推進などに取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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