※本記事は、株式会社フジクラ の有価証券報告書(第177期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. フジクラってどんな会社?
電線・ケーブルの製造技術を基盤に、光ファイバ等の情報通信や電子部品などを展開するグローバル企業です。
■(1) 会社概要
同社は1910年に藤倉電線として設立され、1949年に東京証券取引所へ上場しました。1992年に現在のフジクラへ商号を変更し、事業の多角化を推進しています。2005年には米国にAmerica Fujikura Ltd.を設立するなどグローバル展開を加速し、2013年のカンパニー制導入を経て、現在は情報通信やエレクトロニクス等の事業を展開しています。
連結従業員数は51,262人、単体では2,149人です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に日本カストディ銀行(信託口)です。第3位には大樹生命保険が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 17.98% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 9.76% |
| 大樹生命保険株式会社 | 3.69% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名(女性比率12.5%)で構成されています。代表者は取締役社長CEOの岡田直樹氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岡田 直樹 | 代表取締役 社長 CEO | 1986年同社入社。光ケーブル開発部長、ケーブル・機器開発センター長などを経て、2021年取締役COO。2022年より現職。 |
| 坂野 達也 | 代表取締役 CTO | 1987年同社入社。光ケーブル事業部長、情報通信事業部門長などを経て、2022年取締役CTO。2023年より現職。 |
| 飯島 和人 | 取締役CFO | 1989年同社入社。経理部長、執行役員コーポレートファイナンス部門長、ファイナンス統括部長などを経て、2023年より現職。 |
| 成毛 幸二 | 取締役常勤監査等委員 | 1986年同社入社。エネルギー・情報通信カンパニー企画部長などを経て、2020年Fujikura Fiber Optics Vietnam社長。2024年より現職。 |
社外取締役は、花﨑浜子(弁護士)、吉川恵治(元日本板硝子社長兼CEO)、山口洋二(元三井住友銀行管理部長)、目黒高三(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「情報通信事業部門」「エレクトロニクス事業部門」「自動車事業部門」「エネルギー事業部門」「不動産事業部門」および「その他」事業を展開しています。
■情報通信事業部門
光ファイバ、光ケーブル、通信部品、光部品、ネットワーク機器などを製造・販売し、通信インフラの構築やデータセンタ向けのソリューションを提供しています。主な顧客は通信事業者やデータセンタ事業者、工事会社などです。
製品の販売対価や工事請負代金を主な収益源としています。運営は、同社およびFujikura Fiber Optics Vietnam Ltd.、America Fujikura Ltd.などの国内外の連結子会社が行っています。
■エレクトロニクス事業部門
プリント配線板(FPC)、電子ワイヤ、ハードディスク用部品、各種コネクタなどを製造・販売しています。これらはスマートフォンや自動車、産業機器などの内部配線や接続部品として使用されており、電子機器メーカー等が主な顧客です。
製品の販売対価を主な収益源としています。運営は、同社およびFujikura Electronics (Thailand) Ltd.、第一電子工業などの国内外の連結子会社が行っています。
■自動車事業部門
自動車用ワイヤハーネスや電装品などを製造・販売しています。自動車の神経・血管とも言われるワイヤハーネスを世界の自動車メーカー等に供給しています。
製品の販売対価を主な収益源としています。運営は、同社およびFujikura Automotive (Thailand) Ltd.、フジクラ電装などの国内外の連結子会社が行っています。
■エネルギー事業部門
電力ケーブル、通信ケーブル、アルミ線、被覆線などを製造・販売しています。社会インフラである電力供給網や通信網の構築に必要なケーブル類を提供しており、電力会社や建設会社等が主な顧客です。
製品の販売対価を主な収益源としています。運営は、同社および西日本電線、フジクラ・ダイヤケーブルなどの国内外の連結子会社が行っています。
■不動産事業部門
保有する不動産の賃貸等を行っています。東京都江東区の深川ギャザリアなどのオフィスビルや商業施設の賃貸事業を展開しています。
テナントからの賃貸料を主な収益源としています。運営は主に同社が行っています。
■その他
上記セグメントに含まれない新規事業などを展開しています。
製品やサービスの提供対価を収益源としています。運営は同社およびフジクラソリューションズなどの連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に2025年3月期には大きく伸長しました。利益面でも、経常利益率が2.9%から14.0%へと大幅に改善しており、収益性が高まっています。2021年3月期は赤字でしたが、その後は順調に回復し、2025年3月期には過去最高益を記録しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 6,437億円 | 6,704億円 | 8,065億円 | 7,998億円 | 9,794億円 |
| 経常利益 | 184億円 | 341億円 | 679億円 | 697億円 | 1,372億円 |
| 利益率(%) | 2.9% | 5.1% | 8.4% | 8.7% | 14.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -97億円 | 254億円 | 309億円 | 267億円 | 911億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しました。特に営業利益率は8.7%から13.8%へと大幅に向上しており、収益構造の強化が見て取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7,998億円 | 9,794億円 |
| 売上総利益 | 1,707億円 | 2,604億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.3% | 26.6% |
| 営業利益 | 695億円 | 1,355億円 |
| 営業利益率(%) | 8.7% | 13.8% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が552億円(構成比44.2%)、荷造運搬費が220億円(同17.6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
情報通信事業部門が売上、利益ともに大きく牽引しました。生成AIの普及に伴うデータセンタ需要の拡大が主因です。エレクトロニクス、自動車、エネルギーの各事業部門も増収増益となり、全セグメントで堅調な業績となりました。不動産事業は安定的に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 情報通信事業部門 | 2,972億円 | 4,513億円 | 392億円 | 922億円 | 20.4% |
| エレクトロニクス事業部門 | 1,647億円 | 1,859億円 | 166億円 | 229億円 | 12.3% |
| 自動車事業部門 | 1,795億円 | 1,771億円 | 12億円 | 58億円 | 3.3% |
| エネルギー事業部門 | 1,391億円 | 1,452億円 | 87億円 | 119億円 | 8.2% |
| 不動産事業部門 | 105億円 | 108億円 | 49億円 | 49億円 | 44.9% |
| その他 | 87億円 | 91億円 | -11億円 | -22億円 | -23.7% |
| 調整額 | - | - | 0億円 | 0億円 | - |
| 連結(合計) | 7,998億円 | 9,794億円 | 695億円 | 1,355億円 | 13.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で十分なキャッシュを稼ぎ出し、それを原資に投資や借入返済を行っている「健全型」です。財務基盤は安定しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 944億円 | 1,159億円 |
| 投資CF | -215億円 | -209億円 |
| 財務CF | -360億円 | -574億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は24.3%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、グループ経営理念である「ミッション・ビジョン・基本的価値」を指針としています。「“つなぐ”テクノロジー」を通じて「顧客価値創造型」事業へ積極的に展開し、収益性重視のスピード感ある積極経営で豊かな社会づくりに貢献することを経営方針として掲げています。
■(2) 経営文化
同社は、「“つなぐ”テクノロジー」を軸に、顧客価値を創造することを重視しています。また、サステナビリティの実現のため、「持続可能な企業経営」と「持続可能な社会」の構築の両輪が必要と考え、ガバナンス強化や環境への配慮などを進める文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は「2025年中期経営計画」を策定し、2025年度の定量目標を設定していましたが、2024年度の業績拡大により、これらを1年前倒しで概ね達成しました。
* 売上高:8,250億円
* 営業利益:850億円
* 営業利益率:10.3%
* ROE:16.5%
* ROIC:12.8%
* 自己資本比率:51.7%
■(4) 成長戦略と重点施策
「情報インフラ」「情報ストレージ」「情報端末」の3つを核心的事業領域と位置づけ、経営資源を集中的に投入しています。特にインフラ向けでは光ファイバケーブルのグローバル生産体制強化、データセンタ向けでは次世代コネクタの増産などを推進しています。また、将来を見据えた「Beyond2025」として、超電導、ファイバレーザ、EV(電気自動車)の3分野での開発を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、多様な価値観を受け入れる職場環境と柔軟な働き方を追求し、社員の自律的なキャリア形成を支援しています。また、役割と貢献に応じた公正な評価・処遇を行い、「一人ひとりが主役」となれる組織づくりと適所適材の配置を目指しています。グローバルに活躍できる人材の育成にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.1歳 | 16.1年 | 8,670,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.1% |
| 男性育児休業取得率 | 86.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 66.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(69.4%)、テレワーク利用率(43.8%)、キャリア採用比率(54.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料等の調達及び価格変動に関するリスク
事業に必要な原材料や副資材、希少資源の調達において、サプライチェーンの混乱や需給逼迫、価格高騰が生じた場合、経営成績に影響が及ぶ可能性があります。特に主要材料である銅価格の変動は、製品価格への反映にタイムラグが生じる可能性があり、業績に影響を与える要因となります。
■(2) 製品の欠陥及び品質に関するリスク
厳格な品質管理基準に従って製品を製造していますが、重大なクレームや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥が発生した場合、製品回収や補償費用、信用の低下により、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 情報セキュリティに関するリスク
事業遂行に関連して多くの機密情報を有していますが、サイバー攻撃等により情報が流出した場合、イメージ低下や損害賠償の発生につながる可能性があります。また、システム障害により事業が停止した場合、生産体制や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 人財確保に関するリスク
グループの成長原動力である人材の獲得競争が激化しており、必要な人材の確保や流出防止ができない場合、開発力や技術力の停滞、デジタル活用の遅れなどが生じ、事業活動や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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