フジクラ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フジクラ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フジクラは東証プライム市場に上場し、光ファイバなどの情報通信製品をはじめ、エレクトロニクス、自動車用電装品、エネルギー、不動産事業をグローバルに展開する企業です。直近の業績は、生成AI普及に伴うデータセンタ向け光配線需要の拡大等を背景に、大幅な増収増益を達成し、極めて好調に推移しています。


※本記事は、株式会社フジクラの有価証券報告書(第178期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フジクラってどんな会社?


情報通信インフラや自動車、エレクトロニクス向け製品の製造・販売を手掛けるグローバルメーカーです。

(1) 会社概要


1910年に東京で設立され、1949年に東京証券取引所へ上場し、長年にわたり事業を拡大してきました。1980年代以降はタイやイギリスなどに現地法人を設立し、グローバル展開を加速させています。近年は光接続製品やフレキシブルプリント配線板等の製造販売を強化し、2022年には東証プライム市場へ移行しました。

現在の従業員数は連結で50,586名、単体で2,333名です。株主構成をみると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に日本カストディ銀行(信託口)が名を連ねており、第3位は大樹生命保険です。機関投資家や保険会社が主要な株主となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 19.09%
日本カストディ銀行(信託口) 7.50%
大樹生命保険 2.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長CEOは岡田直樹氏が務めています。社外取締役比率は60%です。

氏名 役職 主な経歴
岡田 直樹 代表取締役社長CEO 1986年同社入社。光ケーブル開発部長や光ケーブルシステム事業部長などを経て、2021年代表取締役・取締役COOに就任。2022年4月より現職。
飯島 和人 代表取締役CFO 1989年同社入社。海外関係会社のCFOや同社経理部長を歴任し、2021年執行役員コーポレートファイナンス部門長に就任。2026年4月より現職。
坂野 達也 取締役執行役員 1987年同社入社。光ファイバ事業部長や情報通信事業部門長、取締役CTOなどを歴任し、2026年4月より現職。America Fujikura Ltd.会長。
成毛 幸二 取締役常勤監査等委員 1986年同社入社。コーポレート企画室や海外グループ会社の社長等を歴任し、2023年6月に取締役常勤監査等委員に就任。2024年4月より現職。


社外取締役は、吉川恵治(元日本板硝子社長)、小池利和(ブラザー工業会長)、柳瀬英喜(元豊田通商副社長)、山田保裕(TOYO TIRE会長)、田邊るみ子(田邊公認会計士事務所開設)、中村明日香(元あす未来研究所社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報通信事業部門」「エレクトロニクス事業部門」「自動車事業部門」「エネルギー事業部門」「不動産事業部門」および「その他」事業を展開しています。

(1) 情報通信事業部門


光ファイバや光ケーブル、通信・光関連部品、ネットワーク機器の製造と販売、さらに関連する通信インフラ工事などを手掛けており、国内外の通信事業者やデータセンタなどを主な顧客としています。特に、ハイパースケールデータセンタ向けの細径高密度光配線ソリューションに強みを持っています。

収益は、通信インフラ事業者やデータセンタ事業者等への製品販売およびエンジニアリングサービスの提供によって得ています。事業の運営は、同社を中心に、国内のフジクラ・ダイヤケーブルや、米国を拠点とするAmerica Fujikura Ltd.など多数の連結子会社が担っています。

(2) エレクトロニクス事業部門


スマートフォンなどの情報端末や産業用・医療用機器、自動車向けに、プリント配線板、各種コネクタ、電子ワイヤ、ハードディスク用部品などの製造と販売を行っています。高速大容量化や小型化、高機能化が求められる電子部品市場において、独自の微細加工技術を提供しています。

収益は、国内外の電子機器メーカーや完成車メーカーへの部品販売から得ています。事業の運営は、同社に加えて、国内の東北フジクラやフジクラプリントサーキット、海外ではタイのFujikura Electronics (Thailand) Ltd.などの連結子会社が行っています。

(3) 自動車事業部門


自動車の電装化や情報化に対応するため、自動車用ワイヤハーネスや電装部品などの製造・販売を行っています。軽量化や高速通信対応、電力制御など、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の進展を見据えた先進的な製品開発に注力しています。

収益は、グローバルに展開する完成車メーカーや自動車部品メーカーに対する製品販売から得ています。事業の運営は、同社やフジクラ電装のほか、アジア、欧州、北南米の各地域に拠点を置く多数の海外連結子会社を通じて行われています。

(4) エネルギー事業部門


電力インフラや産業用インフラに不可欠な汎用低圧ケーブル、高圧ケーブル、架空送電線、通信ケーブル、アルミ線などの製造と販売を手掛けています。都市再開発やデータセンタ建設、高経年化した送電線の更新需要に対応する製品を提供しています。

収益は、電力会社や建設・設備事業者等への製品販売から得ています。事業の運営は、同社をはじめ、国内では西日本電線、米沢電線、フジクラ・ダイヤケーブルなどの連結子会社や、海外の関連会社等が協力して行っています。

(5) 不動産事業部門


東京都内などに所有する不動産を活用した賃貸事業を展開しています。環境配慮型のオフィスビル等の提供を通じて、テナント企業のニーズに応えています。

収益は、入居するテナント企業からの不動産賃貸料等として得ています。当事業の運営は、主に同社が主体となって行っています。

(6) その他


報告セグメントに含まれない新規事業の開拓等を行っています。次世代の光ファイバ通信やエネルギー技術の研究開発を通じた、事業化の推進を行っています。

収益は、関連する製品やサービスの提供等によって得ています。事業の運営は、同社のほか、フジクラソリューションズやフジクラプレシジョンなどの連結子会社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績をみると、売上高は6,704億円から1兆1,824億円へと大きく拡大し、成長基調が続いています。経常利益も341億円から1,995億円へと大幅に増加し、これに伴い利益率も5.1%から16.9%へと飛躍的な向上を見せており、収益性が着実に高まっていることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 6,704億円 8,065億円 8,000億円 9,794億円 11,824億円
経常利益 341億円 679億円 697億円 1,372億円 1,995億円
利益率(%) 5.1% 8.4% 8.7% 14.0% 16.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 391億円 409億円 510億円 911億円 1,572億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の9,794億円から1兆1,824億円へと大幅に増加しています。売上総利益や営業利益も順調に伸びており、売上総利益率は26.6%から28.1%へ、営業利益率も13.8%から16.0%へと改善しており、効率的な事業運営が進んでいることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 9,794億円 11,824億円
売上総利益 2,604億円 3,323億円
売上総利益率(%) 26.6% 28.1%
営業利益 1,355億円 1,887億円
営業利益率(%) 13.8% 16.0%

(3) セグメント収益


主力の情報通信事業部門はデータセンタ向け需要の拡大で大幅な増収となり、全体の売上を牽引しました。一方、エレクトロニクス事業部門はサプライチェーン問題や競争激化等により減収となっています。自動車事業部門やエネルギー事業部門はそれぞれ増収を確保しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
情報通信事業部門 4,513億円 6,530億円
エレクトロニクス事業部門 1,859億円 1,723億円
自動車事業部門 1,771億円 1,794億円
エネルギー事業部門 1,452億円 1,570億円
不動産事業部門 108億円 110億円
その他 91億円 97億円
連結(合計) 9,794億円 11,824億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動で得た利益で借入金の返済を進めつつ、事業成長のための投資も手元資金で賄っている健全な優良企業の状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1,159億円 1,329億円
投資CF -209億円 -362億円
財務CF -574億円 -1,113億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は32.5%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も57.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「進取の精神」と「技術のフジクラ」をDNAとし、「“つなぐ”テクノロジーを通じて顧客価値の創造と社会への貢献を実現すること」を存在意義(Purpose)として掲げています。社会や環境の課題解決を通じた持続的な発展を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、多様な価値観や考え方を受け入れ、お互いを尊重し合う職場環境と柔軟な働き方を追求する文化を大切にしています。また、「一人ひとりが主役」となれる組織づくりや、社員が良質な体験を得られる組織を実現し、会社と社員双方の「ウェルビーイング」を目指す姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2026年度よりスタートした「2028年中期経営計画」において、「第4の創業」と位置づけ、資本効率を重視した経営を継続します。最終年度(2028年度)の目標として、以下の数値を掲げています。

* 売上高 1兆6,000億円
* 営業利益 3,150億円

(4) 成長戦略と重点施策


これまでの「守りの選択と集中」から「攻めの選択と集中」へと舵を切り、成長分野への戦略的投資を加速させます。「情報ストレージ」「情報インフラ」「情報端末」の3つの領域に経営リソースを重点配分するとともに、次世代の核融合(フュージョンエネルギー)分野等の社会課題解決につながる技術開発にも取り組んでいきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人財基盤の強化を人財戦略の中核に据え、高度な技術や専門性を有する「技術人財」の育成に加え、事業全体を俯瞰して意思決定を果敢に行う「経営人財」の計画的な育成を進めています。また、社員の自律的な成長を促すキャリア形成支援や、多様な人財が活躍できる環境整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.4歳 15.4年 9,348,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.8%
男性育児休業取得率 77.2%
男女賃金差異(全労働者) 76.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 78.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 55.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、テレワーク利用率(37.1%)、従業員一人あたり月平均残業時間(23.2時間/月)、障がい者雇用率(2.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料等の調達及び価格変動に関するリスク


事業に必要な原材料や副資材、重要な希少資源などの調達において、サプライチェーンの混乱や需給の逼迫、供給元の方針変更などにより必要量が確保できない可能性があります。また、主要材料である銅の価格等の著しい高騰が製品価格に即座に反映されない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 製品の欠陥及び品質に関するリスク


厳格な品質管理基準に従って製品を製造していますが、万一重大なクレームや製造物責任賠償につながる製品・サービスの欠陥が生じた場合、製品回収や補償のための費用、品質管理体制の強化コストが発生し、信用低下による販売活動への影響が生じる可能性があります。

(3) 情報セキュリティに関するリスク


事業遂行に関連して個人情報や機密情報を保有しており、第三者によるサイバー攻撃やコンピューターウイルス感染などの予期せぬ事態により情報が流出する可能性があります。また、情報システムやネットワークの運営が妨げられた場合、事業の停止や生産効率の低下が発生するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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