※本記事は、那須電機鉄工株式会社の有価証券報告書(第104期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 那須電機鉄工ってどんな会社?
電力流通関連や情報通信関連のインフラを支える製品製造や工事を手掛けるメーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1929年6月に那須鉄工所として創立し、1949年5月に現在の那須電機鉄工へ社名を変更しました。1962年2月に東京証券取引所市場第二部へ株式上場を果たし、2022年4月には同スタンダード市場へ移行しています。長年にわたり社会インフラ設備に関わる製品の製作・販売を中心に事業を拡大してきました。
同社グループの従業員数は連結で464名、単体で352名規模となっています。筆頭株主は投資ファンドであるNIPPON ACTIVE VALUE FUND PLCで、第2位は事業会社のケー・エフ・シー、第3位は創業家・役員関係者である個人株主の那須幹生氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| NIPPON ACTIVE VALUE FUND PLC | 7.46% |
| ケー・エフ・シー | 5.75% |
| 那須幹生 | 4.66% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.6%です。代表取締役社長は鈴木智晴氏が務めています。監査等委員である取締役3名のうち2名が社外取締役であり、全役員に対する社外取締役比率は33.3%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鈴木智晴 | 代表取締役社長 | 1984年同社入社。電力・通信営業部長、海外部長、常務取締役等を経て、2019年6月より現職。 |
| 大熊幸夫 | 常務取締役 | 1986年同社入社。情報システム部長、八千代工場長、取締役生産担当等を経て、2025年6月より現職。 |
| 清水幸男 | 取締役情報システム部長電力・通信営業部長 | 1988年同社入社。電力・通信営業部長、上席執行役員等を経て、2026年4月より現職。 |
| 西岡雅之 | 取締役(監査等委員)(常勤) | 1980年同社入社。公共営業部長、常務取締役、専務取締役を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、黒滝一雄(公認会計士黒滝一雄事務所開設)、中里志万子(原子力損害賠償紛争解決センター入室)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電力・通信インフラ事業」および「交通等インフラ事業」を展開しています。
■電力・通信インフラ事業
電力用の送電設備材料、配電設備材料、および通信用の通信設備材料などの製作・販売と、通信鉄塔設備工事を展開しています。主要な顧客は電力各社や通信会社などであり、インフラ設備の構築や維持を支えています。
製品の販売や工事の請負等により対価を得ています。事業の運営は主に同社のほか、子会社である東北那須電機や北海道那須電機などが担っています。
■交通等インフラ事業
道路設備や交通システム材料等の製作・販売、道路設備工事・地中線設備工事および表面処理を手掛けています。高速道路や新幹線などの国家的インフラプロジェクトをはじめとする交通設備に関わっています。
製品の販売や道路関連設備の更新などの工事請負等から収益を得ています。事業の運営は主に同社や、子会社の那須電材産業、那須電機商事などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、主力事業の需要が安定しており、売上高は220億円から230億円台で堅調に推移しています。利益面でも収益性の改善が進み、増益基調にあります。当期は大型案件の受注等が寄与し、増収増益と利益率の向上を達成しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 230億円 | 221億円 | 233億円 | 229億円 | 237億円 |
| 経常利益 | 30億円 | 25億円 | 28億円 | 29億円 | 34億円 |
| 利益率(%) | 12.9% | 11.3% | 11.9% | 12.8% | 14.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 21億円 | 16億円 | 15億円 | 19億円 | 25億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期における損益の状況を見ると、堅調な売上の推移を背景に、売上総利益率および営業利益率ともに改善が進んでいます。収益性の確保とコスト管理の徹底により、増収効果以上に利益面での伸長が顕著に表れています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 229億円 | 237億円 |
| 売上総利益 | 49億円 | 52億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.3% | 21.8% |
| 営業利益 | 28億円 | 31億円 |
| 営業利益率(%) | 12.1% | 13.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が6億円(構成比27%)、研究開発費が3億円(同14%)を占めています。また、売上原価は186億円で、売上高に対する構成比は78%となっています。
■(3) セグメント収益
電力・通信インフラ事業は、大型幹線鉄塔や通信基地局の資機材受注が寄与し、全体の増収増益を牽引しました。交通等インフラ事業は、インフラ設備の大型案件減少などにより売上高は横ばいでしたが、利益率の改善により増益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 電力・通信インフラ事業 | 188億円 | 196億円 | 29億円 | 31億円 | 15.7% |
| 交通等インフラ事業 | 42億円 | 42億円 | 4億円 | 5億円 | 11.8% |
| 連結(合計) | 229億円 | 237億円 | 28億円 | 31億円 | 13.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業を示す健全型のキャッシュ・フローとなっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 17億円 | 27億円 |
| 投資CF | -18億円 | -3億円 |
| 財務CF | -13億円 | -15億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.7%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
日常準拠すべき規範として「人の和」「誠実」「奉仕の心」を経営上の基本に置き、「ゆたかで快適な生活空間を創造する企業」として、「より安全に、より良く、より安く、より早く、より安定的に製品やサービスを提供する」ことを通じ、顧客から満足いただき、信頼される企業グループを目指しています。
■(2) 企業文化
「企業の社会的責任」を経営の最重要課題のひとつとして位置付けており、法令遵守や地球環境問題への取り組みはもとより、社会に対してさまざまな貢献を通して、社会的責任を果たしていくことを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2029年の創立100周年、100年企業ブランドに向けての事業継続を図るため、3ヵ年の中期経営計画「2027中期経営計画」を策定し、創立100周年の「ありたい姿」の実現に向けた取り組みを推進しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
電力業界におけるカーボンニュートラル実現に向けた取り組みやデータセンターの急増に伴う電力需要の伸びに対応し、通信関係では5G基地局の資機材および鉄塔延命化工事などの受注に取り組みます。交通インフラでは老朽化による設備更新や無電柱化提案を積極的に行い、収益性の確保とコスト管理の徹底に努めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
社憲に掲げる「人の和」「誠実」「奉仕の心」を経営理念とし、「人」を最大の経営資本と考えています。積極的な教育機会の提供、ジョブローテーションによる人材交流、キャリアパス制度を利用した管理職・経営層の育成を通じて、持続的な企業価値の向上と自律的なキャリア構築を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.4歳 | 17.9年 | 5,382,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 78.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 90.7% |
※女性管理職比率については、有価証券報告書に該当する数値の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職研修・MTPセミナー受講率(100.0%)、ジョブローテーション実施者(41名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境の変化に伴うリスク
同社の主要顧客である電力業界におけるエネルギー価格高騰の影響や、通信業界における設備投資一巡などによる需要減退リスクが存在します。また、新幹線などの国家的プロジェクト工事の中断・延期による受注時期の不透明さも、業績や財務状況に影響を与える可能性があります。
■(2) 原材料等の調達および価格変動のリスク
生産に必要な原材料、副資材、外注加工品のタイムリーな調達が阻害された場合や、原価管理上で予定する価格を上回る高騰などによって製造コストが上昇した場合、同社グループの採算性が悪化するリスクがあります。
■(3) 新事業・新製品に係るリスク
顧客のニーズに応えるための新技術・新製品の開発や、設備の延命化を図るメンテナンス事業・リサイクル事業での受注拡大を推進していますが、今後の業界の需要動向や同業他社との競合状況等により、所期の成果を達成できない可能性があります。



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