那須電機鉄工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

那須電機鉄工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場のインフラ関連企業。電力・通信インフラ事業と交通インフラ事業を柱とし、鉄塔や架線金物、道路設備等の製造・販売を行う。直近の業績は、売上高は微減となったものの、経常利益などの利益面は増益を確保している。


※本記事は、那須電機鉄工株式会社 の有価証券報告書(第103期、自 2024年4月1日 至 2025年3月1日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 那須電機鉄工ってどんな会社?


電力・通信・交通という社会インフラを支える鉄塔や金物等の製品製造・販売および工事を行う老舗企業です。

(1) 会社概要


1929年に那須鉄工所として創業し、1949年に現在の社名となりました。1962年に東京証券取引所市場第二部(現スタンダード市場)へ上場しています。創業以来、電力・通信、鉄道、道路などのインフラ整備に貢献し、近年では2022年にNテック(連結子会社)を吸収合併による商号変更で発足させるなど、グループ体制の強化を図っています。

同グループの従業員数は連結で475名、単体で358名です。筆頭株主は投資ファンドのNIPPON ACTIVE VALUE FUNDで、第2位は同社代表取締役会長の那須幹生氏、第3位は金融機関の三井住友銀行です。

氏名 持株比率
NIPPON ACTIVE VALUE FUND PLC(常任代理人 香港上海銀行東京支店カストディ業務部) 7.34%
那須 幹生 4.65%
株式会社三井住友銀行 4.29%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は鈴木智晴氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
那須 幹生 代表取締役会長 1971年古河電気工業入社、1979年同社入社。大阪工場長、専務、副社長を経て2007年社長就任。2019年6月より現職。
鈴木 智晴 代表取締役社長 1984年同社入社。電力・通信営業部長、海外部長、沖縄支店長等を歴任。2017年常務、那須電材産業社長等を経て2019年6月より現職。
横山 明男 専務取締役経営管理部長 1983年同社入社。生産管理室長、経営企画室長、経営管理室長、資材部長等を歴任。2022年常務を経て2024年6月より現職。
大熊 幸夫 取締役八千代工場長 1986年同社入社。情報システム部長、会津碍子代表取締役、那須化成社長等を歴任。2022年上席執行役員を経て2022年6月より現職。
清水 幸男 取締役電力・通信営業部長 1988年同社入社。電力・通信営業部長、公共営業部長等を歴任。2018年執行役員、2023年上席執行役員を経て2024年6月より現職。
西岡 雅之 取締役(監査等委員)(常勤) 1980年同社入社。公共営業部長、常務、専務を経て2024年6月より現職。


社外取締役は、黒滝一雄(公認会計士黒滝一雄事務所代表)、中里志万子(西新橋法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電力・通信インフラ事業」および「交通インフラ事業」を展開しています。

(1) 電力・通信インフラ事業


電力会社や通信事業者等を主な顧客とし、送電用・配電用の鉄塔や鉄構、鋼管柱、架空線材料、情報通信材料等の製品を製造・販売しています。また、通信鉄塔設備の工事も請け負っています。

収益は、製品の販売代金および工事の請負代金から得ています。運営は主に那須電機鉄工が行っており、連結子会社の那須電材産業、那須電機商事、東北那須電機、北海道那須電機などが製品の販売等に関わっています。

(2) 交通インフラ事業


道路・鉄道事業者等を顧客とし、道路や鉄道に関連する交通システム材料等の製作・販売を行っています。また、道路設備工事や地中線設備工事、溶融亜鉛めっきの賃加工も手掛けています。

収益は、製品販売や工事請負に加え、めっき加工等の賃加工料から得ています。運営は那須電機鉄工が主体となり、那須電材産業等の連結子会社も事業に関与しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は220億円から230億円の範囲で安定して推移しています。利益面では、経常利益率が10%を超える高い水準を維持しており、直近の2025年3月期も増益を達成しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 216億円 230億円 221億円 233億円 229億円
経常利益 17億円 30億円 25億円 28億円 29億円
利益率(%) 8.1% 12.9% 11.3% 11.9% 12.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 21億円 16億円 15億円 17億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微減となりましたが、売上総利益および営業利益は増加しました。売上総利益率は20.8%から21.3%へ、営業利益率は11.3%から12.1%へと改善しており、収益性が向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 233億円 229億円
売上総利益 48億円 49億円
売上総利益率(%) 20.5% 21.3%
営業利益 26億円 28億円
営業利益率(%) 11.3% 12.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が5.3億円(構成比25.3%)、研究開発費が2.3億円(同11.2%)を占めています。

(3) セグメント収益


電力・通信インフラ事業は売上高が横ばいながらも利益を伸ばしました。一方、交通インフラ事業は大型案件の減少等により減収減益となりましたが、全体としては増益を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
電力・通信インフラ事業 188億円 188億円 26億円 29億円 15.3%
交通インフラ事業 45億円 42億円 6億円 4億円 8.9%
調整額 - - -6億円 -5億円 -
連結(合計) 233億円 229億円 26億円 28億円 12.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

那須電機鉄工グループは、事業運営に必要な資金の流動性と源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、インフラ設備事業における継続的な製品開発やシステム開発、メンテナンスに関わる研究開発活動を推進することで生み出されています。投資活動によるキャッシュ・フローは、電力・通信インフラ設備や交通インフラ設備分野における技術開発、製品開発、システム開発への投資によって変動します。財務活動によるキャッシュ・フローは、事業運営に必要な資金の調達と返済によって形成されています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 32億円 17億円
投資CF -27億円 -18億円
財務CF -0.0億円 -13億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人の和」「誠実」「奉仕の心」を日常準拠すべき規範として経営の基本に置いています。「ゆたかで快適な生活空間を創造する企業」として、製品やサービスをより安全に、良く、安く、早く、安定的に提供することを通じ、顧客からの満足と信頼を得る企業グループを目指しています。

(2) 企業文化


「企業の社会的責任」を経営の最重要課題の一つと位置付けています。法令順守や地球環境問題への取り組みに加え、社会への貢献を通じて責任を果たす姿勢を重視しています。また、日常の規範として「人の和」などを掲げ、顧客からの信頼獲得を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


2029年の創立100周年・100年企業ブランドに向けて事業継続を図るため、3ヵ年の中期経営計画を策定しています。2025年度はその第三次計画の初年度にあたり、「ありたい姿」の実現に向けて取り組みを進めています。

(4) 成長戦略と重点施策


電力事業では、データセンターや半導体工場の新増設による電力需要増やカーボンニュートラル対応を見込み、需要の取り込みを図ります。通信事業では携帯キャリアのサービス向上に伴う機会を深耕します。交通インフラ事業では、高速道路の設備更新需要の獲得に尽力するとともに、都市機能強靭化に向けた無電柱化提案も積極的に行っていきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人の和」「誠実」「奉仕の心」を掲げ、「人」を最大の経営資本と位置付けています。人材育成においては、階層別・職能別の教育訓練規定に基づき、自律的なキャリア構築を支援しています。また、ジョブローテーションによる人材・技術交流や、健康経営の推進により、従業員が心身ともに健康で生産性を高められる環境づくりに努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.0歳 17.0年 5,276,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 74.0%
男女賃金差異(正規) 71.1%
男女賃金差異(非正規) 80.2%


※女性管理職比率および男性育児休業取得率については、有価証券報告書に該当する数値の記載がありませんでした。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、2024年度管理職研修、MTPセミナー受講率(96.0%)、2024年度ジョブローテーション実施者(63名)、2024年度合格率(8.51%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境の変化に伴うリスク


電力流通、情報通信、交通インフラを主要市場としていますが、電力業界での原発再稼働の不透明さや、通信設備の投資一巡による需要減退、交通インフラ工事の遅延などの懸念があります。これら市場の景気悪化や需要低下は、グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料等の調達および価格変動


生産に必要な原材料、副資材、外注加工品のタイムリーな調達が困難になったり、価格が想定以上に高騰したりした場合、製造コストが上昇し、採算性が悪化する恐れがあります。

(3) 製品の欠陥・災害等による操業停止


製品や工事における欠陥・事故の発生、あるいは大規模な自然災害、感染症のパンデミック、事故による環境汚染などで操業停止に追い込まれた場合、信用力の低下や業績への影響が生じる可能性があります。

(4) 情報システムの混乱・情報流出


情報管理に関する規程を整備し厳正に管理していますが、予期せぬ事態によりシステム障害や情報の流出が発生した場合、社会的信用の失墜や業績への悪影響が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。