記事タイトル:「三ッ星転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」
※本記事は、株式会社三ッ星の有価証券報告書(第81期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 三ッ星ってどんな会社?
ゴム電線やプラスチック電線などの製造販売を手掛ける、電線およびポリマテック事業を展開するメーカーです。
■(1) 会社概要
1947年に三ッ星商会として設立され、1952年にコードなどの製造を開始しました。1971年に現在の三ッ星へと商号を変更し、1996年に株式を店頭登録、2004年にジャスダック証券取引所への上場を果たしました。また、フィリピンへの現地法人設立や関連企業のM&Aなどにより事業基盤を拡大しています。
従業員数は連結で326名、単体で165名体制で事業を展開しています。大株主の構成については、筆頭株主が一般法人のスイス・プランツ有限責任事業組合となっており、第2位は金融機関である日本証券金融、第3位には一般法人の杉山製作所が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| スイス・プランツ有限責任事業組合 | 6.14% |
| 日本証券金融 | 3.92% |
| 杉山製作所 | 3.52% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役社長は青木邦博氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 青木 邦博 | 代表取締役社長 | 大日本インキ化学工業(現DIC)に入社後、同社グループの海外法人董事長などを歴任。2022年に三ッ星の代表取締役社長に就任し、関連会社の代表や海外子会社の会長なども兼務し現在に至る。 |
| 唐澤 利武 | 取締役副社長 | 日本航空電子工業を経て帝人に入社し、樹脂事業本部の部門長や海外子会社社長などを歴任。帝人グループの要職を経て2024年に三ッ星へ入社し、事業統括・M&A担当の取締役副社長に就任。 |
| 羽生 忍 | 取締役 | プラスチック工業(現カナフレックスコーポレーション)に入社し、同社の複数工場の工場長や製造担当執行役員などを歴任。2023年に執行役員として三ッ星へ入社し、生産革新担当の取締役に就任。 |
社外取締役は、上村多恵子(京南倉庫代表取締役)、渡邉雅之(弁護士法人三宅法律事務所パートナー)、加藤正憲(加藤公認会計士事務所代表)、吉永久三(元警視庁武蔵野署警部)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電線事業」「ポリマテック事業」「電熱線事業」の報告セグメントで事業を展開しています。
■電線事業
天然ゴムや合成ゴム、プラスチックを使用したキャブタイヤケーブルや溶接用ケーブルなどを製造・販売しています。建設や電販市場を中心に、首都圏の再開発や半導体工場建設需要などの大型案件向けに製品を提供しています。
顧客に対する製品の販売を主な収益源としています。事業の運営は主に三ッ星が行っており、銅線加工などを手掛ける子会社の河南伸銅所やフィリピンの海外子会社などと連携しながら、グループ一体で生産・供給体制を構築しています。
■ポリマテック事業
プラスチック押出成形品や射出成形品、真空成形品、高機能チューブなどを製造・販売しています。また、道路照明などに用いられるLED関連商品の展開も行っており、非住宅分野や高速道路などの社会インフラ向けに製品を提供しています。
成形品や高機能チューブ、LED関連商品などの販売を主な収益源としています。事業の運営は主に三ッ星が行っており、製品の販売を担う子会社のエムシーレフィラやフィリピンの生産子会社などとともに事業を展開しています。
■電熱線事業
電熱線や帯などの製造・販売を行っています。産業機器用ヒーター向けをはじめ、白物家電分野の冷蔵庫向け、さらには自動車向けや産業ロボットの抵抗器といった電子部品向けなど、幅広い産業用途に製品を提供しています。
産業機器や家電、電子部品メーカーなどに対する製品の販売を主な収益源としています。事業の運営は、主に子会社であるシルバー鋼機が担っており、同社が生産・販売を手掛けることで市場ニーズに対応しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は92億円から117億円へと右肩上がりの成長を続けています。経常利益は原材料価格や物流費の高騰などにより一時落ち込みましたが、価格転嫁等の進展により当期は3.9億円となり、増収増益の回復傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 92億円 | 99億円 | 103億円 | 109億円 | 117億円 |
| 経常利益 | 3.0億円 | 2.0億円 | 1.1億円 | 1.5億円 | 3.9億円 |
| 利益率(%) | 3.3% | 2.1% | 1.1% | 1.4% | 3.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.7億円 | -1.8億円 | 0.8億円 | 1.5億円 | 1.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前年を上回る結果となりました。適正な価格転嫁やコストダウン活動が奏功し、売上総利益率は上昇し、営業利益率も1.3%から3.0%へと改善を見せています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 109億円 | 117億円 |
| 売上総利益 | 19億円 | 22億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.4% | 18.5% |
| 営業利益 | 1.4億円 | 3.6億円 |
| 営業利益率(%) | 1.3% | 3.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が4.2億円(構成比23.4%)、荷造運搬費が3.1億円(同17.0%)を占めています。
■(3) セグメント収益
電線事業は建設や電販市場での価格転嫁が進み増収増益を牽引しました。ポリマテック事業は価格改定の効果が出始めたものの、住宅着工の低調やLED関連の伸び悩みにより損失計上となりました。電熱線事業は設備投資の停滞などで厳しい環境でしたが、価格改定などで増収と黒字転換を果たしました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 電線事業 | 77億円 | 83億円 | 3.0億円 | 4.8億円 | 5.7% |
| ポリマテック事業 | 23億円 | 25億円 | -1.6億円 | -1.3億円 | -5.2% |
| 電熱線事業 | 8.4億円 | 8.9億円 | 0.0億円 | 0.1億円 | 1.0% |
| 連結(合計) | 109億円 | 117億円 | 1.4億円 | 3.6億円 | 3.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業活動で生み出した資金に加え、借入等の資金調達も活用しながら、将来の成長に向けた設備投資などを積極的に行っている「積極型」の状態と言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.5億円 | 6.3億円 |
| 投資CF | -0.6億円 | -2.9億円 |
| 財務CF | 2.8億円 | 2.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.0%であり、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「環境・社会の変化を迅速かつ的確に捉え、その変化に伴うニーズに即応する技術開発を通じて、環境・社会に貢献する」ことを経営理念(ミッション)として掲げています。また、ESGを経営の中核に据え、特に「ヒト(従業員)」に重点を置いた人材育成や働き甲斐のある職場づくりに取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社は、コンプライアンスの徹底と品質向上・品質管理への尽力を基本とする企業文化を築いています。企業倫理規範や社員行動規範を制定し、法令遵守と企業倫理の周知徹底を図ることで、健全な社会秩序の維持を重視しています。また、持続可能な成長に向けた環境マネジメントにも全社を挙げて取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、経営環境の変化に対応し、収益力を向上させる体制を強化するため、中長期的な経営目標として具体的な指標を設定しています。財務面の目標に加え、サステナビリティやダイバーシティに関する数値目標も掲げています。
* 連結売上高経常利益率:3.0%以上
* エネルギー使用量:単位生産量当たり年間1%削減
* 女性・外国人・中途採用者の中核人材への起用:従業員比率で10%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、環境・社会の変化に伴うニーズに即応するため、「4S(新)運動」を成長戦略の軸として推進しています。社会課題に対応した高付加価値製品による「新分野開拓」、ニーズに呼応した「新製品創出」、情報発信強化による「新顧客増強」、成長が見込まれる海外市場での「新グローバル戦略推進」を展開しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を価値創出の源泉と捉え、「社員一人ひとりの成長を重視し、働きがいと生活の充実を両立すること」を方針としています。採用面では正規・非正規の不合理な待遇差解消や正社員登用を行い、育成面では自己啓発の資格取得支援や階層別研修を提供しています。さらに多様な働き方に応じたワーク・ライフ・バランスの実現にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.3歳 | 13.9年 | 5,487,805円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※同社は法定の公表義務の対象ではないため、有報には男性育児休業取得率および男女賃金差異の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、多様な人材の中核人材への起用実績(7.8%)、当期のベースアップ賃上げ率(5.03%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 需要変動と主要原材料の価格変動
銅やニッケルなどの主要原材料は、国際的な需要動向や投機的要素などの影響を受けて価格が変動するリスクがあります。市場価格が急騰した際に適正な製品価格への転嫁が遅れた場合、同社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 資材等の安定的な調達
製品の製造に必要な設備や資材などの調達において、産地や供給者、市況の急激な変化、または不測の事態によって必要量の確保が困難になった場合、納期の遅延や生産体制の停止を招き、業績に悪影響を及ぼすリスクが存在します。
■(3) 海外事業と為替変動
フィリピンなどの海外への事業展開に伴い、現地における経済動向や政治・社会情勢の変化、法律や規制の変更により事業運営に支障をきたすリスクがあります。また、外貨建て取引における為替レートの変動が業績に影響を与える可能性があります。



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