三ッ星 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三ッ星 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三ッ星は東京証券取引所スタンダード市場に上場する、電線事業、ポリマテック事業、電熱線事業を展開するメーカーです。第80期の連結業績は、売上高が前期比5.3%増、経常利益が同39.3%増と増収増益を達成しました。電線事業が堅調に推移し、全体を牽引しています。


※本記事は、株式会社三ッ星 の有価証券報告書(第80期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三ッ星ってどんな会社?


電線、合成樹脂製品、電熱線などを製造販売する老舗メーカーです。ESG経営と人材育成を重視しています。

(1) 会社概要


同社は1947年に設立され、1958年にビニル絶縁電線の製造を開始しました。1963年には合成樹脂製品の製造へ進出し、事業を多角化しています。2007年にはフィリピンに子会社を設立してグローバル展開を加速させました。2022年の東京証券取引所市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しました。近年では2023年に河南伸銅所およびエムシーレフィラを子会社化するなど、M&Aによる事業拡大も進めています。

現在の従業員数は連結で314名、単体で159名です。筆頭株主はスイス・プランツ有限責任事業組合、第2位は個人株主の本多敏行氏、第3位は事業会社のミツワ樹脂工業です。

氏名 持株比率
スイス・プランツ有限責任事業組合 7.00%
本多敏行 5.79%
ミツワ樹脂工業 5.46%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役社長は青木邦博氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
青木邦博 代表取締役社長 大日本インキ化学工業(現DIC)入社後、海外拠点の総経理や董事長を歴任。2022年より現職。河南伸銅所およびエムシーレフィラの代表取締役社長、MITSUBOSHI PHILIPPINES会長も兼務。
唐澤利武 取締役副社長 帝人にて樹脂事業や人事・総務部門の要職を歴任。帝人ソレイユ代表取締役社長を経て、2024年より現職。事業統括・M&Aを担当し、MITSUBOSHI PHILIPPINES社長も兼務。
羽生忍 取締役 カナフレックスコーポレーションにて工場長や製造担当執行役員を歴任。2023年に同社入社後、執行役員工場統括を経て、2024年より現職。生産革新を担当。


社外取締役は、上村多恵子(京南倉庫代表取締役)、渡邉雅之(弁護士)、加藤正憲(公認会計士)、吉永久三(元警視庁警部)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電線」「ポリマテック」「電熱線」事業を展開しています。

(1) 電線事業


天然ゴムや合成ゴムを使用したキャブタイヤケーブル、架橋ポリエチレンケーブル、溶接用ケーブル、制御用ケーブルなどの各種電線を製造販売しています。建設や電販市場向けが中心で、国内民間設備投資やインフラ再開発などの需要に対応しています。

収益は、顧客である商社や電材店、ユーザーへの製品販売代金です。運営は主に三ッ星が行い、製造面では子会社のMITSUBOSHI PHILIPPINES CORPORATIONや株式会社河南伸銅所が担っています。

(2) ポリマテック事業


プラスチック押出成形品、射出成形品、真空成形品、高機能チューブ、LED関連商品などを製造販売しています。住宅・非住宅分野や道路照明のLED化案件など、幅広い産業分野に製品を提供しています。

収益は製品の販売代金です。運営は三ッ星およびMITSUBOSHI PHILIPPINES CORPORATIONが行い、エムシーレフィラ株式会社が同社商品の販売に関与しています。

(3) 電熱線事業


電熱線・帯や抵抗器などの電子部品向け部材を製造販売しています。車載や産業機器向けの抵抗器、ヒーター用途などで使用されています。

収益は製品の販売代金です。運営は主に三ッ星および子会社のシルバー鋼機株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、第76期の76億円から第80期には109億円まで拡大しています。経常利益は原材料価格変動等の影響を受けつつも黒字を維持しており、第80期は1.5億円となりました。当期利益も第78期を除き黒字を確保しており、直近では回復基調にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 76億円 92億円 99億円 103億円 109億円
経常利益 2.8億円 3.0億円 2.0億円 1.1億円 1.5億円
利益率(%) 3.7% 3.3% 2.1% 1.1% 1.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.9億円 2.8億円 -0.7億円 1.2億円 2.2億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の103億円から当期は109億円へ増加しました。売上総利益率は16.4%から17.4%へ改善し、営業利益率は0.6%から1.3%へ上昇しています。コスト管理や価格転嫁が進んだことで、利益率が向上する傾向が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 103億円 109億円
売上総利益 17億円 19億円
売上総利益率(%) 16.4% 17.4%
営業利益 0.6億円 1.4億円
営業利益率(%) 0.6% 1.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が4.2億円(構成比24%)、荷造運搬費が3.0億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


電線事業は売上高が増加し、利益も大幅に伸長して全体の収益を支えています。ポリマテック事業は増収となったものの、コスト増の影響で損失が拡大しました。電熱線事業は売上が微減し、利益はほぼ横ばいの水準で推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
電線 75億円 77億円 1.4億円 3.0億円 3.9%
ポリマテック 19億円 23億円 -0.8億円 -1.6億円 -%
電熱線 9億円 8億円 0.0億円 0.0億円 0.1%
連結(合計) 103億円 109億円 0.6億円 1.4億円 1.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.4%で市場平均を下回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1.1億円 1.5億円
投資CF -4.3億円 -0.6億円
財務CF 3.8億円 2.8億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、環境・社会の変化を迅速かつ的確に捉え、ニーズに即応する技術開発を通じて環境・社会に貢献することをミッションとしています。その基本として、コンプライアンスの徹底と、品質向上・品質管理への尽力を掲げています。

(2) 企業文化


ESGを経営の中核に据え、持続的な成長を実現するために経営資源(ヒト・モノ・カネ)の充実・強化を図る方針を持っています。特に「ヒト(従業員)」に重点を置き、人材確保と育成に努めるとともに、働きがいのある職場づくりに真摯に取り組む文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


経営環境の変化に対応し、収益力を向上させる体制を強化することを掲げています。具体的には、以下の中長期的な経営目標を設定しています。

* 連結売上高経常利益率3.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


持続的な成長を実現するため、「4S(新)運動」を展開しています。新分野開拓、新製品創出、新顧客増強、新グローバル戦略推進の4つを柱とし、環境・社会の変化に即応した高付加価値製品の提供や、海外市場の開拓を進めています。特に、脱炭素、防災、漁業・農業、ロボット、メンテナンスの5つの柱での新分野展開を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


経営方針に基づき、特に「ヒト」に重点を置いた人材確保と育成に注力しています。働きがいのある職場づくりに取り組むとともに、多様性への対応として、女性・外国人・中途採用者の中核人材への起用を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.3歳 14.5年 5,319,492円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、男性労働者の育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異については記載を省略しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性・外国人・中途採用者の中核人材(管理職等)への起用(7.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料価格の変動リスク


銅やニッケルなどの主要原材料は国際的な相場変動の影響を受けます。また、塩化ビニル樹脂などは原油価格の影響を受けます。これらの価格が高騰し、製品価格への転嫁がタイムリーに行えない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 資材等の調達リスク


製品製造に必要な設備や資材等の安定調達に注力していますが、産地や供給者の状況変化、自然災害などの不測の事態により調達が困難または遅延した場合、生産活動に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 海外事業と為替変動リスク


フィリピンなどに拠点を持ち海外事業を展開していますが、現地の政治・経済情勢の変化や法規制の変更が事業運営に影響を与える可能性があります。また、為替レートの変動により、円換算した業績や財政状態が影響を受けるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。