日工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。アスファルト・コンクリートプラントの製造・販売を行う国内トップメーカーです。第162期は、国内事業のメンテナンス需要や製造請負事業の伸長に加え、海外事業も増収となり、連結売上高492億円、経常利益31億円と増収増益で過去最高を更新しました。


※本記事は、日工株式会社 の有価証券報告書(第162期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日工ってどんな会社?


1919年創業のプラントメーカー。アスファルト・コンクリートプラントで国内トップシェアを誇ります。

(1) 会社概要


1919年に日本工具製作として設立され、ショベル製造を開始しました。1949年に大証、1962年に東証一部へ上場し、1958年からアスファルトプラント製造に着手。1968年に現社名へ変更しました。近年はドイツ企業の持分譲渡やタイ現地法人設立、国内製造請負会社のM&Aなど事業再編を進め、2022年に東証プライム市場へ移行しています。

連結従業員数は1,133名(単体656名)です。大株主は、資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行が筆頭で、続いて従業員持株会、取引先持株会が上位を占めており、安定株主が中心の構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.66%
日工社員持株会 4.49%
日工取引先持株会 3.93%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長は中山知巳氏です。社外取締役比率は23.1%です。

氏名 役職 主な経歴
中山 知巳 取締役社長(代表取締役)内部統制管掌兼技術本部長 1982年入社。事業企画部長、常務、専務を経て2025年4月より現職。
辻 勝 取締役会長(代表取締役)関係会社管掌兼事業本部長 1987年入社。事業本部長、専務、社長を経て2025年4月より現職。
藤井 博 取締役 三井住友銀行出身。同社取締役財務部長、常務、専務、副社長を経て2025年4月より現職。
曾根 武志 取締役事業本部副本部長兼サービス企画部長兼モバイルプラント事業部長 1990年入社。関東支店長、上席執行役員を経て2023年取締役就任。現職。
川上 晃一 取締役管理本部長兼安全担当兼安全保障貿易管掌兼 CEOオフィスDXビジネスチーム・リーダー(CDO)兼 財務統括部長 1988年入社。経営企画部長、執行役員を経て2023年取締役就任。現職。
西川 貴久 取締役相談役製造インフラ活性化 1982年入社。常務、社長、会長を経て2025年4月より現職。


社外取締役は、石井正文(元駐インドネシア国特命全権大使)、佐伯里香(ユーシステム代表取締役)、貞苅茂(元みなと銀行代表取締役専務)です。

2. 事業内容


同社グループは、「アスファルトプラント関連事業」「コンクリートプラント関連事業」「環境及び搬送関連事業」「破砕機関連事業」「製造請負関連事業」および「その他」事業を展開しています。

**(1) アスファルトプラント関連事業**
アスファルト合材を製造するプラント、リサイクルプラント、合材サイロ等の製造・販売およびメンテナンスを行っています。顧客は主に道路舗装会社です。
収益は製品販売および部品・保守サービス等のメンテナンス料から得ています。運営は主に日工、日工電子工業、日工マシナリー、日工(上海)工程機械有限公司などが担っています。

**(2) コンクリートプラント関連事業**
生コンクリートを製造するプラント、コンクリートポンプ等の製造・販売を行っています。主な顧客は生コンクリート製造会社やコンクリート二次製品メーカーです。
収益はプラント製品の販売代金や保守サービス料などから得ています。運営は主に日工、日工電子工業、日工マシナリーなどが担っています。

**(3) 環境及び搬送関連事業**
ベルトコンベヤ、リサイクルプラント(油汚染土壌浄化、プラスチックリサイクル等)の製造・販売を行っています。環境関連企業やプラントメーカー等が顧客です。
収益は各種機械・設備の販売代金から得ています。運営は主に日工が担っています。

**(4) 破砕機関連事業**
岩石等を砕く破砕機の製造・販売を行っています。砕石業者やリサイクル業者が主な顧客となります。
収益は製品販売代金から得ています。運営は主に日工および前川工業所が担っています。

**(5) 製造請負関連事業**
産業機械やガスホルダー等の製造請負を行っています。
収益は顧客からの製造請負代金から得ています。運営は主に日工、宇部興機、松田機工が担っています。

**(6) その他**
仮設機材、土農工具、水門、不動産賃貸・販売等を行っています。
収益は製品販売、賃貸料収入等から得ています。運営は日工マシナリー、トンボ工業、日工セック、日工興産などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が約379億円から492億円へと拡大傾向にあります。特に直近は増収傾向が続いており、経常利益も第160期の13億円を底に回復し、当期は31億円に達しました。利益率は3%台から6%台へと改善しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 379億円 388億円 397億円 441億円 492億円
経常利益 30億円 23億円 13億円 21億円 31億円
利益率(%) 7.9% 5.9% 3.2% 4.9% 6.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 17億円 15億円 5億円 15億円 20億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は50億円以上増加し、売上総利益も約19億円増加しました。増収効果により、利益率も改善しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 441億円 492億円
売上総利益 121億円 140億円
売上総利益率(%) 27.5% 28.5%
営業利益 20億円 28億円
営業利益率(%) 4.5% 5.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が39億円(構成比34%)、運賃が13億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントとも概ね増収傾向ですが、特にコンクリートプラント関連事業と製造請負関連事業の伸びが顕著です。破砕機関連事業は減収減益となりましたが、主力のアスファルトプラント関連事業は増収増益で全社業績を牽引しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
アスファルトプラント関連事業 179億円 195億円 3億円 10億円 5.0%
コンクリートプラント関連事業 119億円 143億円 13億円 17億円 12.1%
環境及び搬送関連事業 33億円 33億円 8億円 8億円 26.0%
破砕機関連事業 32億円 23億円 3億円 0億円 1.8%
製造請負関連事業 31億円 48億円 3億円 6億円 13.4%
その他 47億円 51億円 8億円 7億円 14.0%
調整額 2億円 2億円 -18億円 -22億円 -
連結(合計) 441億円 492億円 20億円 28億円 5.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持しており、その範囲内で借入返済を行っています。投資活動によるキャッシュ・フローはマイナスで、設備投資等を継続していますが、財務キャッシュ・フローはマイナスとなり、借入金の返済や配当支払いを行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 43億円 30億円
投資CF -23億円 -28億円
財務CF 32億円 -17億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「広く社会から信頼され、お客様とともに発展する“ソリューションパートナー”となることを使命に自己変革する」ことを掲げています。また、「一歩先ゆくエンジニアリングから、社会基盤をアップデートする。」をミッションとし、「世界を、強くやさしい街に。」というビジョンの実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「将来に向けて改革する人材」「失敗を恐れず挑戦する人材」「多様な仲間を尊重し協働する人材」の3つをあるべき人材像として定義し、社内外の多様な仲間を尊重し、イキイキと安心して協働できる環境づくりを重視しています。「NIKKO CORPORATE IDENTITY」に基づき、従業員一人ひとりが改革・挑戦を行う風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


2030年ビジョンとして、技術力・製品力のブランド維持・強化とサービスビジネスの拡張により、以下の数値目標を掲げています。また、直近の中期経営計画ではROEをKPIとして重視しています。
* 売上高:700億円(2030年度)
* 営業利益:70億円(2030年度)
* 営業利益率:10.0%(2030年度)
* ROE:8%以上(2027年度)

(4) 成長戦略と重点施策


2030年ビジョンの達成に向け、国内収益基盤の強化、海外売上の確立、新規事業の推進、カーボンニュートラル対応、メンテナンス事業の変革を重点施策としています。国内ではシェアの高さを活かしたサービスビジネスの拡充、海外ではASEAN市場の開拓を進めています。
* 国内売上高営業利益率:10%(現状一桁からの引き上げ)
* 新規事業売上:100億円(10年後)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ビジョン実現のため、自律的な人材育成、多様な仲間とのつながり、新たな改革・挑戦に向けた協働を支援する仕組みづくりに取り組んでいます。また、多様な人材の受け入れ促進や、挑戦・協働を評価する仕組みの整備、労働時間の適正化などを通じ、従業員や家族のウェルビーイング向上と働きがいのある職場環境の整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.5歳 13.8年 7,605,744円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.0%
男性育児休業取得率 61.9%
男女賃金差異(全労働者) 52.8%
男女賃金差異(正規雇用) 55.8%
男女賃金差異(非正規) 62.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性比率(15.8%)、離職率(4.4%)、研修時間(15.3時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内アスファルトプラント関連事業のリスク


国内市場は同社を含む寡占状態ですが、製品開発の遅れやメンテナンス体制の競争力低下により差別化が困難になる可能性があります。また、海外メーカーの参入や、道路舗装業界の再編による工場集約化が進んだ場合、市場シェアや市場規模自体が縮小するリスクがあります。

(2) 海外事業展開に関するリスク


中国市場ではハイエンド機種で一定の地位を確保していますが、現地企業の技術力向上により競争が激化する可能性があります。また、タイ等のASEAN市場において販売計画が未達となった場合や工場の生産性が改善しない場合、投資回収が困難になり減損リスクが生じる可能性があります。

(3) 環境負荷低減への対応リスク


主力製品であるアスファルトプラントはCO2排出源の一つであり、カーボンニュートラルへの対応が急務です。同社は脱炭素技術の開発を進めていますが、世界の環境規制や技術革新のスピードが想定を上回った場合、対応が遅れて競争力を失う可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。