日工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する日工は、アスファルトプラントやコンクリートプラント、環境・搬送機械などの製造・販売を主力事業として展開しています。直近の業績では、メンテナンスサービスが堅調に推移したことに加え、利益率の改善も進んだことで、増収増益を達成しており、堅調な成長を続けています。


※本記事は、日工の有価証券報告書(第163期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 日工ってどんな会社?


主力のアスファルトプラントやコンクリートプラント設備において高い技術力を有する機械メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1919年8月に設立され、ショベルやスコップなどの製造販売から事業をスタートしました。1949年5月に大阪証券取引所、1962年5月に東京証券取引所第一部に上場を果たしています。1956年にバッチャープラント、1958年にアスファルトプラントの製造を開始して主力事業を形成し、近年では2022年に宇部興機、2023年に松田機工、2025年に日工藤原電機を子会社化するなど、事業領域の拡大を進めています。

現在の従業員数は連結で1,169名、単体で692名体制となっています。大株主の状況を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は社員持株会、第3位は取引先持株会となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.18%
日工社員持株会 4.49%
日工取引先持株会 3.55%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は中山知巳氏が務めており、取締役8名のうち社外取締役が3名を占めています。

氏名 役職 主な経歴
辻勝 取締役会長(代表取締役)関係会社管掌兼事業本部長 1987年同社入社。事業本部長などを経て2019年代表取締役社長に就任。2025年4月より現職。
中山知巳 取締役社長(代表取締役)内部統制管掌兼技術本部長 1982年同社入社。事業本部長や事業企画部長などを経て、2025年4月より現職。
川上晃一 常務取締役管理本部長兼安全担当兼安全保障貿易管掌兼 CEOオフィスDXビジネスチーム・リーダー(CDO) 1988年同社入社。経営企画部長などを経て、2026年4月より現職。
曾根武志 取締役事業本部副本部長兼事業企画部長 1990年同社入社。関東支店長兼モバイルプラント事業部長などを経て、2026年4月より現職。
山田和寛 取締役製造本部長兼本社工場長 1995年同社入社。前川工業所代表取締役社長などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、石井正文(元駐インドネシア国特命全権大使)、佐伯里香(ユーシステム代表取締役)、貞苅茂(元神戸ビル管理代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「アスファルトプラント関連事業」「コンクリートプラント関連事業」「環境及び搬送関連事業」「破砕機関連事業」「製造請負関連事業」および「その他」事業を展開しています。

アスファルトプラント関連事業

アスファルトプラントやリサイクルプラント等の生産およびメンテナンスサービスを提供しています。道路舗装会社などが主な顧客であり、設備の新設・更新需要や維持補修に対応しています。

製品の販売および関連するサービスの提供により顧客から対価を受け取ります。運営は主に日工や、子会社である日工電子工業、日工マシナリーなどが行っています。

コンクリートプラント関連事業

コンクリートプラントや関連の電子制御機器などの生産およびメンテナンスサービスを提供しています。生コンクリート業界が主な顧客であり、設備の自動化や遠隔化の支援も行っています。

製品の販売およびメンテナンスサービスの提供から収益を得るモデルです。運営は主に日工、日工電子工業、日工マシナリーなどが行っています。

環境及び搬送関連事業

環境・再資源化プラント、各種コンベヤシステム等の生産を行っています。資源循環や環境負荷低減に対する社会的なニーズに応える設備を提供しています。

各種プラント設備やコンベヤの販売により収益を得ています。運営は主に日工が行っています。

破砕機関連事業

自走式破砕機やジョークラッシャー等の生産および販売を行っています。砕石プラントの老朽化に伴う更新需要や、扱いやすい自走式破砕機のニーズに応えています。

製品の販売により顧客から対価を受け取ります。運営は主に日工や、子会社である前川工業所が行っています。

製造請負関連事業

産業機械やガスホルダーなどの製缶加工、溶接、組立等の請負サービスを提供しています。グループ内の相互連携を強化し、高収益事業としての成長を目指しています。

製造請負サービスの提供により収益を得ています。運営は主に日工、宇部興機、松田機工が行っています。

その他

パイプ枠組足場等の仮設機材、ショベル等の土農工具、水門等の生産や不動産賃貸事業などを展開しています。

製品販売や不動産賃貸により収益を得ています。運営は主に日工、日工マシナリー、トンボ工業、日工セック、日工興産などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は388.5億円から493.7億円へと順調に拡大しています。経常利益も一時的な落ち込みはあったものの、直近では34.3億円に達し、利益率も6.9%へと上昇傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 388.5億円 396.7億円 441.0億円 491.6億円 493.7億円
経常利益 22.7億円 12.6億円 21.4億円 30.7億円 34.3億円
利益率(%) 5.9% 3.2% 4.9% 6.2% 6.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 14.9億円 5.5億円 15.4億円 11.7億円 25.7億円

(2) 損益計算書


売上高が微増する中、売上総利益率は28.5%から30.8%へ上昇し、これに伴い営業利益率も5.6%から6.3%へと改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 491.6億円 493.7億円
売上総利益 139.9億円 152.0億円
売上総利益率(%) 28.5% 30.8%
営業利益 27.7億円 31.0億円
営業利益率(%) 5.6% 6.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が40.9億円(構成比34%)、運賃が11.8億円(同10%)、研究開発費が6.7億円(同6%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のアスファルトおよびコンクリート事業は安定した売上を維持しています。環境及び搬送関連事業やその他事業が増収となる一方で、製造請負関連事業は前期の大型案件の反動により減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
アスファルトプラント関連事業 194.8億円 193.3億円
コンクリートプラント関連事業 142.7億円 143.6億円
環境及び搬送関連事業 32.5億円 43.7億円
破砕機関連事業 22.6億円 24.5億円
製造請負関連事業 48.0億円 33.4億円
その他 51.0億円 55.2億円
連結(合計) 491.6億円 493.7億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 29.9億円 25.9億円
投資CF -28.1億円 -14.3億円
財務CF -17.5億円 -37.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「広く社会から信頼され、お客様とともに発展する“ソリューションパートナー”となることを使命に自己変革する」という経営理念を掲げています。また、「NIKKO CORPORATE IDENTITY」のもと、実現したい未来を「世界を、強くやさしい街に。」とし、日々果たすべきミッションを「一歩先ゆくエンジニアリングから、社会基盤をアップデートする。」と定義しています。

(2) 企業文化


「高い技術力に裏打ちされた設備・環境製品のトップメーカー且つ、運用・保全サービスによる顧客の経営パートナー」を目指す文化があります。持続的な企業価値創造に向けて、「カーボンニュートラルの実現」「資源循環型社会の確立」「新たな顧客価値の創造」「人材育成と働きがいの向上」の4つのマテリアリティの実践を重視しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画では「収益力の向上」を主軸とし、2027年度にROE8%以上の達成を目指しています。また、2030年度に向けて売上規模や利益率の長期目標も設定しています。

* 2027年度目標
* 売上高:600億円
* 営業利益率:8.0%以上
* ROE:8%
* 2030年度目標
* 売上高:700億円
* 営業利益率:10.0%

(4) 成長戦略と重点施策


アスファルトプラント事業の収益性向上やコンクリートプラント事業の国内シェア拡大、メンテナンス事業の安全対策を優先課題としています。また、ASEANを中心とした海外市場の深耕や、M&Aや提携を通じた新規発展領域の拡充、脱炭素関連製品の開発など環境負荷低減に向けた技術投資を通じて成長を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「将来に向けて改革する人材」「失敗を恐れず挑戦する人材」「多様な仲間を尊重し協働する人材」の育成を目指しています。自律的な人材の育成や多様な仲間との協働を支援する仕組みづくりに取り組み、従業員の働きがいの向上や安全・ウェルビーイングの実感に向けた社内環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.0歳 13.4年 7,559,261円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.9%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 55.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 55.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 69.3%


また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(4.0%)、研修時間(1名当たり18.1時間)、研修費用(1名当たり73,482円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内市場での競争激化と市場縮小

国内のアスファルトプラント市場は寡占状態ですが、海外メーカーの参入による競争激化や、道路舗装業界の再編・集約化による市場縮小のリスクがあります。同社は新製品開発やメンテナンス事業の強化で差別化を図っています。

(2) 海外市場の競争環境変化

中国市場では現地メーカーの技術力向上によりハイエンド市場での競争が激化する可能性があります。また、ASEAN市場でも顧客の支持獲得や工場の生産性改善が進まない場合、投資に見合う収益を確保できないリスクがあります。

(3) サプライチェーンと資材価格の高騰

地域紛争の激化やインフレを背景に、原材料や部品の調達コスト上昇、供給遅延、物流費の高騰などが発生した場合、製品の製造・出荷に支障をきたし、同社の業績や顧客の設備投資動向に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。