アドバネクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 アドバネクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場するアドバネクスは、精密ばねの製造販売を主力とする金属加工メーカーです。自動車や医療機器向け製品をグローバルに展開しています。2025年3月期は、自動車向けの伸び悩みや為替差損の影響があったものの、医療向けの拡大等により増収を確保しました。


※本記事は、株式会社アドバネクス の有価証券報告書(第77期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アドバネクスってどんな会社?


精密ばねを中心に、インサート成形品等の精密金属加工製品を製造・販売するグローバルメーカーです。

(1) 会社概要


1930年にスプリング専門工場として創業し、1946年に加藤スプリング製作所として法人化しました。1964年に東証市場第二部に上場し、2004年に第一部へ昇格しています。2001年に現社名のアドバネクスに変更しました。米国、シンガポール、英国などに拠点を設立して海外展開を進め、近年ではメキシコ、チェコ、インドなどに新工場を開設しています。

連結従業員数は1,870名、単体では354名です。筆頭株主は創業家資産管理会社のAAAで、第2位はスマート有限会社、第3位はASADAと続き、創業家やその関連会社が上位株主となっています。

氏名 持株比率
AAA 10.86%
スマート有限会社 7.95%
ASADA 7.29%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名、計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役会長兼社長は朝田英太郎氏です。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
朝田英太郎 代表取締役会長兼社長 トピー工業を経てアサダ代表取締役等を歴任。2020年より同社取締役最高顧問、2022年代表取締役会長を経て、2023年6月より現職。
吉原哲也 常務取締役CFO 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2020年同社出向、管理本部長等を経て、2023年6月より現職。
加藤精也 取締役 1981年同社入社。常務取締役、アポロ専務取締役、同社代表取締役社長等を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、杉井孝(弁護士)、新田都志子(文京学院大学名誉教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「米州」「欧州」「アジア」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


精密ばね製品やインサート成形品などの製造・販売を行っています。自動車関連やOA機器、医療機器向けなど幅広い産業に製品を供給しており、グループのマザー工場としての機能も有しています。

主な収益は、自動車部品メーカーやOA機器メーカーなどの顧客に対する製品の販売代金です。運営は主にアドバネクスが行っています。

(2) 米州


米国およびメキシコにおいて、精密ばね製品の製造・販売を行っています。特に医療向け製品の生産が増加傾向にあり、自動車関連市場とともに主要な事業領域となっています。

主な収益は、現地の顧客に対する製品販売によるものです。運営は、米国のAdvanex Americas, Inc.やメキシコのAdvanex de Mexico S.de R.L.de C.V.が行っています。

(3) 欧州


英国およびチェコにおいて、精密ばね製品の製造・販売を行っています。医療市場や航空市場向けの製品などを取り扱っており、独自の市場開拓を進めています。

主な収益は、欧州域内の顧客に対する製品販売代金です。運営は、英国のAdvanex Europe Ltd.やチェコのAdvanex Czech Republic s.r.o.が行っています。

(4) アジア


シンガポール、タイ、ベトナム、インドネシア、インド、中国(上海、大連、東莞、常州、香港)の各拠点において、精密ばね製品や金属プレス・インサート成形部品の製造・販売を行っています。OA機器向けや自動車向けが主要です。

主な収益は、アジア各国の顧客に対する製品販売によるものです。運営はAdvanex (Singapore) Pte. Ltd.やAdvanex (Thailand) Ltd.など、各国の子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にありますが、利益面では変動が見られます。当期は増収となりましたが、経常利益は前期から減少しました。一方で、当期利益についてはデータ上で改善が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 195.4億円 217.2億円 246.3億円 265.5億円 285.3億円
経常利益 3.6億円 3.5億円 5.9億円 8.3億円 1.7億円
利益率(%) 1.8% 1.6% 2.4% 3.1% 0.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.2億円 6.8億円 -12.6億円 -3.7億円 5.9億円

(2) 損益計算書


売上高は増加し、売上総利益および営業利益も改善しています。売上総利益率は上昇傾向にあり、営業利益率も前期と比較して向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 265.5億円 285.3億円
売上総利益 58.0億円 69.3億円
売上総利益率(%) 21.8% 24.3%
営業利益 3.7億円 11.1億円
営業利益率(%) 1.4% 3.9%

(3) セグメント収益


全セグメントで売上が増加しました。特に米州は医療向けが好調で大幅な増収となり、黒字転換を果たしました。日本やアジアも増益となりましたが、欧州はコスト増により減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 99.9億円 102.5億円 1.1億円 2.2億円 2.2%
米州 42.3億円 54.2億円 -4.6億円 1.9億円 3.6%
欧州 32.3億円 35.1億円 2.3億円 1.5億円 4.3%
アジア 105.5億円 108.5億円 4.6億円 5.4億円 5.0%
調整額 -14.5億円 -14.9億円 0.1億円 -0.0億円 -
連結(合計) 265.5億円 285.3億円 3.7億円 11.1億円 3.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

アドバネクスは、借入金の増加により財務活動によるキャッシュ・フローが増加しました。営業活動では、減価償却費の計上等により資金が増加したものの、税金等調整前当期純損失や売上債権の増加等により、前連結会計年度と比較して資金増加額は減少しました。投資活動では、有形固定資産の取得による支出が主な要因となり、資金が減少しました。これらの結果、期末の現金及び現金同等物は増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 20.5億円 5.1億円
投資CF -6.7億円 -13.0億円
財務CF -4.5億円 9.1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「三つのコアを追求し、同社の企業活動を永続させることで、地球の未来、社会の発展、全てのステークホルダーの幸福実現に貢献する」ことを経営理念としています。三つのコアとは、「Global」「Change」「Innovation」を指しています。

(2) 企業文化


同社は「Global:新しい発想でグローバルに展開する」「Change:社会や市場の変化を見据えて自ら変化する」「Innovation:常にイノベーションを起こし、新しい価値や技術を発信する」という三つのコアを重視しており、これらを追求する姿勢が企業文化の根幹にあります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、2027年3月期に向けた目標として以下の数値を掲げています。

* 連結売上高:290億円
* 連結営業利益:15億円
* 自己資本比率:30%以上
* ROE:7.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は精密金属加工総合メーカーとして持続的な成長を図るため、事業基盤の強化と領域拡大に取り組んでいます。具体的には、グローバルビジネスの展開と海外拠点の収益化、自動車関連市場での成長機会の追求、医療向け事業の拡大、およびコイルスレッド等の自社製品の開発強化と売上拡大を重点施策として掲げています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、グローバル展開する製造業として持続的に機能する人材育成体系の構築を重視しています。社員のリスキリングを推奨・支援する制度や、実業務に沿った資格取得奨励金制度を再構築し、自己啓発を支援しています。また、次世代経営幹部の育成に向けた研修や、若手を抜擢するエグゼクティブベンチ制度なども運用しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.2歳 14.1年 5,123,548円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.4%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.8%
男女賃金差異(正規) 73.5%
男女賃金差異(非正規) 34.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 世界経済の変動


主要事業である自動車、OA機器、医療等の製品向け精密金属加工製品をグローバルに供給しているため、日本、米州、欧州、アジア等の主要市場における景気後退や需要縮小の影響を受けます。中国経済の減速や地政学リスク等も懸念材料です。

(2) 為替レートの変動


海外拠点の資産等において為替変動リスクを抱えています。円安からの揺り戻しによる為替差損のリスクが懸念されており、海外子会社の事業安定化や現地での資金調達シフト、親会社の投資資産の早期回収によるリスクヘッジを進めています。

(3) 主要国の関税率変更


主要国の関税率変更、特に米国の関税政策の影響を受ける可能性があります。同社は地産地消が中心のため直接的影響は軽微と見込んでいますが、エンドユーザーの輸出動向等を通じて間接的な影響を受ける可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。