アドバネクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 アドバネクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するアドバネクスは、自動車や医療機器向け等の精密ばねを製造販売する精密金属加工メーカーです。直近の業績は、医療や航空機向け需要の回復、価格改定の効果により前年度比で増収となり、営業利益や経常利益も増益、最終利益も黒字化を達成するなど堅調に推移しています。


※本記事は、株式会社アドバネクスの有価証券報告書(第78期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アドバネクスってどんな会社?


同社は自動車や医療機器、OA機器などで使用される精密金属加工部品をグローバルに製造・販売する総合メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1930年に東京都でスプリング専門工場として設立されました。1964年に東京証券取引所に株式を上場し、1971年の米国進出を皮切りにグローバル展開を本格化させました。2001年に現在の社名へ変更し、近年ではインドネシア、インド、チェコ、メキシコに新工場を開設するなど、積極的な成長投資を続けています。

現在の同社グループの従業員数は連結で1,913名、単体で363名です。筆頭株主はAAAで、第2位はスマート、第3位はASADAとなっています。

氏名 持株比率
AAA 10.86%
スマート 10.46%
ASADA 8.09%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役会長兼社長は朝田英太郎氏が務めており、社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
朝田英太郎 代表取締役会長兼社長 トピー工業入社、アサダ代表取締役、同社取締役最高顧問等を経て2023年より現職。
吉原哲也 常務取締役CFO 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行、同社管理本部長、最高財務責任者等を経て2023年より現職。
加藤精也 常務取締役 同社入社、執行役員自動車事業部長、代表取締役社長、品質保証本部長等を経て2025年より現職。


社外取締役は、杉井孝(弁護士)、新田都志子(文京学院大学名誉教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「米州」「欧州」「アジア」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

日本


日本市場において、自動車、OA機器、医療、精密機器、住設機器向けなどに精密ばね製品やインサート成形品などの精密金属加工製品を製造・販売しています。

主に顧客に対する製品販売を通じて収益を得ています。主な運営はアドバネクスが行うほか、アドバネクスPLUSやベアー技研などの非連結子会社も関連事業を担当しています。

米州


米国やメキシコを拠点に、主に医療機器向けなどを中心とした精密ばねや金属加工製品を製造・販売しています。

現地での製品販売により収益を上げています。運営は連結子会社であるAdvanex Americas, Inc.やAdvanex de Mexico S.de R.L.de C.V.が行っています。

欧州


英国やチェコ共和国を製造・販売拠点とし、航空機向けや医療向けなどを中心に精密ばね製品を供給しています。

製品販売等による収益モデルです。運営はAdvanex Europe Ltd.およびAdvanex Czech Republic s.r.o.が担っています。

アジア


タイ、中国、インドネシア、インド、ベトナム、シンガポールなどに拠点を置き、主に自動車や精密機器向けの精密ばねやインサート成形部品を製造・販売しています。

現地市場における製品販売を通じて収益を得ています。運営はAdvanex(Thailand)Ltd.やAdvanex(Shanghai)Inc.などの現地子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の業績は、原材料や人件費の高騰があったものの、医療や航空機向け需要の拡大、価格改定の効果などにより増収となっています。利益面でも、不採算拠点の改善や海外工場の黒字化が進んだことで経常利益が大幅に増加し、最終利益も黒字転換を果たしました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 217億円 246億円 265億円 285億円 297億円
経常利益 4億円 6億円 8億円 2億円 13億円
利益率(%) 1.6% 2.4% 3.1% 0.6% 4.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 -13億円 -4億円 6億円 0.8億円

(2) 損益計算書


全体として増収に伴い売上総利益も増加し、利益率も改善傾向にあります。これは価格転嫁の進展や成長市場向けの販売拡大が寄与したためです。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 285億円 297億円
売上総利益 69億円 73億円
売上総利益率(%) 24.3% 24.7%
営業利益 11億円 13億円
営業利益率(%) 3.9% 4.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が26億円(構成比44%)、発送費が6億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


米州は医療向けの拡大により増収増益となりました。アジアも自動車や精密機器向けが好調で利益を牽引しています。一方、欧州は航空機向けが回復し増収となったものの、先行投資や固定費の増加により減益となりました。日本は堅調に推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
日本 91億円 92億円 2億円 3億円 2.8%
米州 54億円 60億円 2億円 3億円 4.6%
欧州 34億円 35億円 2億円 0.8億円 2.3%
アジア 106億円 109億円 5億円 7億円 6.4%
連結(合計) 285億円 297億円 11億円 13億円 4.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態(積極型)にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 5億円 22億円
投資CF -13億円 -29億円
財務CF 9億円 13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「三つのコアを追求し、当社の企業活動を永続させることで、地球の未来、社会の発展、全てのステークホルダーの幸福実現に貢献する」を経営理念として掲げています。その三つのコアとは、「Global:新しい発想でグローバルに展開する」「Change:社会や市場の変化を見据えて自ら変化する」「Innovation:常にイノベーションを起こし、新しい価値や技術を発信する」です。

(2) 企業文化


同社は、経営理念を体現するため、常に新しい発想やイノベーションを起こし、自ら変化し続ける行動様式を重視しています。また、グループ企業倫理と遵法に関する基本方針や倫理行動指針を定め、従業員が高い倫理観を持って事業活動を行うコンプライアンス意識の浸透を図り、透明性と効率性の高い組織文化の構築に努めています。

(3) 経営計画・目標


同社は、持続的な成長に向けた中期経営計画において、2027年3月期の達成目標を設定しています。具体的には以下の数値目標を掲げています。

・連結売上高300億円
・連結営業利益15億円
・自己資本比率30%以上
・ROE7.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、精密金属加工分野における事業基盤の強化と領域拡大を成長戦略の柱としています。自動車市場では高付加価値製品の受注拡大、医療市場ではグローバル供給体制を活かした事業拡大、自社規格品の開発強化を推進します。また、赤字拠点の構造改革を進め、成長市場へ経営資源を積極的に投下していきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、労働人口の減少や働き方の多様化を見据え、人的資本の価値最大化を持続的成長の基盤と位置付けています。技術・技能・グローバル人材の戦略的配置、精密加工技術の継承やリスキリングの推進、多様な人材の活躍と柔軟な働き方の実現を通じ、エンゲージメントと生産性の向上を図る方針を掲げています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.0歳 14.5年 5,189,761円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.3%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 71.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 37.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 世界経済の変動


同社の事業分野は自動車、医療、OA機器などで、グローバルに精密金属加工製品を供給しているため、予測を超える景気後退や中東情勢の悪化、原油価格高騰などの世界経済の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 主要国の関税率変更


同社は米国向けの輸出や米国工場での材料輸入を行っており、米国の関税政策の変更などの影響を受けます。各国の関税政策の動向が収益の押し下げ要因となる可能性があります。

(3) 原材料等のコスト高騰


金属材やプラスチック材などの原材料価格の高騰、円安やエネルギーコスト高騰に伴う電力料の上昇、人件費や運送費の増加が収益を圧迫するリスクがあります。同社は顧客への価格転嫁による対応を進めています。

(4) 製品の品質問題


同社の売上は自動車関連向けが過半を占めており、製品起因の不具合が発生しリコール等に発展した場合、多額の対応コストを請求されるリスクがあります。自動品質判定装置の導入などで品質管理を強化しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。