天龍製鋸 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

天龍製鋸 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する、機械鋸・刃物類の専門メーカーです。日本初の製鋸事業に成功したパイオニアであり、現在は国内および中国、アジア、米国、欧州に拠点を展開しています。直近の業績は、住宅資材用チップソーの需要回復や海外工場の稼働率上昇により、増収増益となりました。


※本記事は、天龍製鋸株式会社 の有価証券報告書(第172期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 天龍製鋸ってどんな会社?


1913年創業の機械鋸メーカーです。日本、中国、タイに生産拠点を持ち、グローバルに事業を展開しています。

(1) 会社概要


同社は1913年に設立され、1920年に社員を英国へ派遣し日本で初めて製鋸事業に成功しました。1962年にはチップソーの量産を開始し、事業の柱を確立しました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、その後市場統合を経て現在は東証スタンダード市場に上場しています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は970名、単体では199名です。筆頭株主は同社の社員持株会で、第2位は主要取引金融機関である地方銀行、第3位は地元の交通・運輸関連企業となっています。

氏名 持株比率
天龍製鋸社員持株会 7.35%
静岡銀行 5.01%
遠鉄タクシー 4.39%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は大石高彰氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
大石高彰 代表取締役社長 1990年入社。営業部門を経て、中国・欧州・インドなどの海外現地法人代表を兼務し、2019年より現職。
鈴木達志 常務取締役 1991年入社。営業・海外部門を歩み、米国・タイ現地法人の代表を兼務。2025年より現職。
鈴木真 取締役執行役員開発技術部長 1983年入社。生産部門一筋でキャリアを重ね、生産部長を経て2025年より現職。
李澤仁 取締役執行役員中国担当 1996年入社。中国現地法人への出向が長く、中国・大連現地法人の総経理を経て2025年より現職。
塚原俊弘 取締役執行役員生産部長 2001年入社。営業部門、タイ現地法人代表、生産部門を経て2025年より現職。
鈴木良典 取締役常勤監査等委員 1983年入社。営業部門、米国現地法人代表、常務取締役等を歴任し、2025年より現職。


社外取締役は、河島多恵(河島多恵法律事務所所長)、大庭晋一(税理士法人すばる代表社員)、大池源之(大池源之公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「中国」「アジア」「アメリカ」「ヨーロッパ」の各報告セグメントにおいて事業を展開しています。

(1) 日本


同社が主に担当し、各種のこぎりや刃物類の製造および販売を行っています。主な製品には、住宅資材用チップソー、金属用チップソー、製材・木工用チップソーなどがあり、国内市場向けのほか、海外拠点への製品供給も行っています。主要な販売先には、電動工具メーカーのマキタが含まれます。

収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は主に天龍製鋸が行っています。国内市場では住宅資材用チップソーの販売が好調に推移しました。

(2) 中国


中国市場を中心に、チップソー等の製造、加工および販売を行っています。現地での生産能力を活かし、旺盛な需要に対応しています。住宅資材用チップソーの受注増加により、工場の稼働率が向上しています。

収益は、中国国内の顧客への製品販売により獲得しています。運営は、天龍製鋸(中国)有限公司および天龍製鋸(大連)有限公司が行っています。

(3) アジア


タイやインドなどのアジア市場を中心に、チップソー等の製造、加工および販売を行っています。インドの子会社が重要性を増したため、当連結会計年度より連結の範囲に含まれています。

収益は、アジア地域の顧客への製品販売から得ています。運営は、TENRYU SAW (THAILAND) CO., LTD.およびTENRYU SAW INDIA PRIVATE LIMITEDが行っています。

(4) アメリカ


米国市場を中心に、チップソー等の販売を行っています。金属用および住宅資材用チップソーの販売が好調に推移しています。また、メキシコ市場への販売も管轄しています。

収益は、北米地域の顧客への製品販売により獲得しています。運営は、TENRYU AMERICA, INC.が行っています。

(5) ヨーロッパ


欧州市場を中心に、チップソー等の販売を行っています。金属用および製材木工用チップソーなどを取り扱っています。

収益は、欧州地域の顧客への製品販売から得ています。運営は、TENRYU EUROPE GMBHが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は110億円から140億円の範囲で推移しています。2021年3月期から2022年3月期にかけて大きく伸長した後、一時的な調整局面を経て、直近の2025年3月期には再び増加傾向に転じました。経常利益も売上高の動向と連動し、高い利益率を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 110億円 144億円 135億円 119億円 131億円
経常利益 18億円 31億円 23億円 17億円 21億円
利益率(%) 15.9% 21.4% 17.3% 14.6% 16.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 14億円 12億円 12億円 15億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。特に営業利益率は前期間より改善しており、収益性が向上していることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 119億円 131億円
売上総利益 38億円 46億円
売上総利益率(%) 32.1% 34.9%
営業利益 12億円 18億円
営業利益率(%) 10.4% 13.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が9億円(構成比31.4%)、荷造及び発送費が5億円(同17.5%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントともに前年比で売上が増加または堅調に推移しています。特に中国およびアジアセグメントでは、住宅資材用チップソーの受注増により大幅な増収増益となりました。日本セグメントは売上高が微増ながら、原材料高騰等の影響で微減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 81億円 82億円 8億円 7億円 9.1%
中国 11億円 16億円 2億円 7億円 42.4%
アジア 4億円 10億円 0.5億円 2億円 23.2%
アメリカ 15億円 17億円 1億円 2億円 11.6%
ヨーロッパ 8億円 7億円 1億円 0.4億円 5.6%
調整額 - - -0.1億円 -0.4億円 -
連結(合計) 119億円 131億円 12億円 18億円 13.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

天龍製鋸は、営業活動により多くのキャッシュを生み出し、事業の成長を支えています。投資活動では、将来の成長に向けた投資を行っています。また、財務活動では、株主への還元なども行いながら、安定的な資金運営を図っています。これらの活動の結果、同社の現金及び現金同等物は増加傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 12億円 25億円
投資CF -12億円 -13億円
財務CF -6億円 -8億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「誠実と和」を社是とし、「感謝の心をもって、従業員の幸せと株主の幸せを追求し、社会の幸せに結びつけます」という経営理念を掲げています。日本の機械鋸産業界のパイオニアとして、最適・最良の製品・サービスを提供し、顧客の満足と信頼を獲得することを目指しています。

(2) 企業文化


創業以来の「誠実と和」の精神のもと、全社一丸となって総力を結集する風土があります。メーカーとして製品・サービスの開発・製造・提供に努めるとともに、従業員の自己啓発を高め、多様化する市場環境に順応できる企業体質の向上を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は「中期経営計画(2024年度~2026年度)」を推進しており、最終年度である2026年度に向けた数値目標を設定しています。安定した営業利益の確保に加え、資本コストや株価を意識した経営の実現を目指しています。

* 売上高:140億円
* 営業利益:21億円(営業利益率15.0%)
* ROE:4.7%
* PBR:0.62倍

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画の中間年度として、環境負荷低減製品の開発やCO2排出削減に向けた設備投資を推進します。また、グローバル市場に対応した販売・技術サポート体制の強化や、DX化による業務効率の向上に取り組みます。さらに、人的資本経営の実現に向け、本社事務棟の建替えや研修体制の構築を進めます。

* 売上高営業利益率:13.3%(2025年度目標)
* ROE:4.1%(2025年度目標)
* PBR:0.58倍(2025年度目標)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、企業発展の原動力は優秀な従業員であるとの認識のもと、協調性があり、新しいことに挑戦し、最後までやり遂げられる人材を求めています。従業員教育については、通信講座や職位別集合研修によるリスキリング、OJTリーダー制度の充実などを通じ、自律的な成長を支援しています。また、健康経営や育児・介護休業制度の充実、本社事務棟の建替えなど、働きやすい環境整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.8歳 18.2年 5,907,739円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
男性育児休業取得率 75.0%


同社は管理職に占める女性労働者の割合、労働者の男女の賃金の差異については公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用した労働者に占める女性割合(60.0%)、社員に対するアンケート調査の職場環境に対する満足度(65.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 為替相場の変動によるリスク


同社グループはグローバルに事業を展開しており、ドル・ユーロ・元など円以外の通貨での取引が増加しています。これらの通貨の為替相場の変動は売上高や利益に影響を与えるほか、海外資産・負債の円換算価値にも影響を及ぼし、業績や財政状態に重大な影響を与える可能性があります。

(2) 価格競争のリスク


国内外の市場において競合他社との価格競争が激化しています。同社グループはコストダウンや収益性向上に努めていますが、市場からの値下げ圧力、原材料・エネルギーコストの高騰、関税政策の影響などが、業績や財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 海外進出に内在するリスク


海外市場への展開には、予期しない法規制の変更、政治体制や経済環境の変化、人材確保の困難さ、伝染病の蔓延、テロや戦争による社会的混乱などのリスクが内在しています。これらが顕在化した場合、同社グループの業績や財政状態に重大な影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。