天龍製鋸 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

天龍製鋸 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

天龍製鋸は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、鋸・刃物類の製造、加工、販売をグローバルに展開する専門メーカーです。直近の業績は、住宅資材用チップソーの需要が堅調に推移したことで売上高が増加し、為替の好影響や財務収益の増加などにより経常利益および当期純利益が増益となるなど、安定して成長しています。


**※本記事は、天龍製鋸の有価証券報告書(第173期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。**

1. 天龍製鋸ってどんな会社?


同社は、機械鋸産業界のパイオニアとして、木工用や金属用のチップソー等の製造・販売をグローバルに行うメーカーです。

(1) 会社概要


1913年に設立され、1950年には木工用丸鋸で業界初のJIS表示許可工場に指定されました。1960年代から電動工具用丸鋸やチップソーの量産を開始し、1988年に店頭登録、2004年にジャスダック証券取引所へ上場を果たしました。早くから海外展開を進め、中国、米国、タイ、欧州等へ事業を拡大しています。

同社グループは連結従業員数953名、単体200名を抱えています。筆頭株主は天龍製鋸社員持株会であり、第2位は同社の主要取引金融機関である静岡銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
天龍製鋸社員持株会 7.37%
静岡銀行 4.98%
遠鉄タクシー 4.46%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は大石高彰氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
大石高彰 代表取締役社長 1990年同社入社。営業部営業三課長、取締役営業二部長、常務取締役一般・メタル部門担当などを経て、2019年6月より現職。複数の海外子会社の代表も兼任。
鈴木達志 常務取締役 1991年同社入社。タイ子会社代表、取締役海外統括部長などを歴任。2024年6月に常務取締役営業担当に就任し、米国およびタイ子会社代表を経て2025年6月より現職。
鈴木真 取締役執行役員開発技術部長 1983年同社入社。生産部長を経て2019年6月に取締役生産部長に就任。2023年6月に取締役開発技術部長となり、2025年6月より現職。
李澤仁 取締役執行役員中国担当 1996年同社入社。中国子会社出向を経て、同社および大連子会社の総経理を歴任。2020年6月に取締役中国担当となり、2025年6月より現職。
塚原俊弘 取締役執行役員生産部長 2001年同社入社。営業部特販課長、タイ子会社代表などを経て、2023年6月に取締役生産部長に就任。2025年6月より現職。
鈴木良典 取締役常勤監査等委員 1983年同社入社。常務取締役営業担当兼国際営業部長などを歴任し、2024年6月に常勤監査役に就任。2025年6月より現職。


社外取締役は、河島多恵(河島多恵法律事務所開設)、大庭晋一(税理士法人すばる代表社員)、大池源之(大池源之公認会計士事務所開設)です。

2. 事業内容


同社グループは、製造・販売体制を基礎とした地域別のセグメントから構成されており、日本、中国、アジア、アメリカ、ヨーロッパの5つの報告セグメントおよびその他事業を展開しています。

日本

同社グループは、機械鋸産業界のパイオニアとして、住宅資材用や金属用などのチップソー、ダイヤモンドソー等の鋸・刃物類を製造・販売しています。日本市場においては多様化する顧客ニーズに対応した製品の提供と、研究開発活動の中枢を担っています。

収益は、主にマキタ等の電動工具メーカーや住宅建材メーカーなどの顧客に対する製品の販売によって得ています。日本国内の運営および研究開発は同社が主体となって行っています。

中国

中国市場においては、住宅資材用チップソーを中心とした鋸・刃物類の製造、加工および販売を展開しています。現地の旺盛な需要を取り込みながら、高品質な製品を安定して供給する体制を構築しています。

収益は、製品の販売代金から得ています。運営は、天龍製鋸(中国)有限公司および天龍製鋸(大連)有限公司が製造・販売の両面を担い、中国市場を中心に事業を展開しています。

アジア

アジア市場では、住宅資材用チップソーなどの製造・加工および販売を行っています。タイやインドなど、成長著しい地域において、顧客の生産性向上や環境負荷低減に寄与する製品を提供しています。

収益は、製品の販売によって獲得しています。運営は主にタイのTENRYU SAW (THAILAND) CO., LTD.が製造および販売を行い、インド市場についてはTENRYU SAW INDIA PRIVATE LIMITEDが販売を担っています。

アメリカ

アメリカ市場においては、金属用および住宅資材用チップソーなどの販売事業を展開しています。米国やメキシコなど北中米の顧客に対して高品質な切断工具を提供し、幅広い産業のニーズに応えています。

製品の販売代金が主な収益源となっています。運営は、米国のTENRYU AMERICA, INC.が米国市場を中心に、メキシコのTENRYU SAW DE MEXICO, S.A. DE C.V.がメキシコ市場を中心に行っており、現地に密着した販売体制を敷いています。

ヨーロッパ

ヨーロッパ市場では、金属用および製材木工用チップソーなどの販売事業を展開しています。環境規制が厳しく技術要求の高い欧州において、高品質かつ高付加価値な切断工具を提供しています。

収益モデルは製品の販売によるものです。運営は、ドイツに拠点を置くTENRYU EUROPE GMBHが主体となっており、欧州市場を中心とした販売活動を展開しています。

その他

報告セグメントに含まれない事業として、鋸・刃物類以外の付随する事業などを展開しています。

収益は関連サービスの提供等により得ており、同社グループの各拠点がそれぞれの地域において付随業務を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は119億円から144億円の間で推移しており、直近は堅調な需要を背景に増収となっています。利益面では原材料高等の影響を受けつつも、継続的な改善により16%台の利益率を維持しており、安定した収益基盤を構築しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 144億円 135億円 119億円 131億円 135億円
経常利益 31億円 23億円 17億円 21億円 22億円
利益率(%) 21.4% 17.3% 14.6% 16.0% 16.3%
当期利益 14億円 12億円 19億円 17億円 27億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益を見ると、売上高は堅調に推移し増収となったものの、原材料費や人件費等の増加により売上総利益率は低下し、営業利益も減益となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 131億円 135億円
売上総利益 46億円 46億円
売上総利益率(%) 34.9% 34.1%
営業利益 18億円 17億円
営業利益率(%) 13.9% 12.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5億円(構成比31%)、荷造及び発送費が2億円(同13%)を占めています。また、売上原価は84億円となっており、原材料費等の増加が影響しています。

(3) セグメント収益


日本および中国セグメントにおいて住宅資材用チップソーの販売が好調で増収となりました。一方でアメリカやヨーロッパでは販売が減少し、それぞれ減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
日本 82億円 86億円
中国 16億円 17億円
アジア 10億円 10億円
アメリカ 17億円 16億円
ヨーロッパ 7億円 7億円
連結(合計) 131億円 135億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 25億円 21億円
投資CF -13億円 -29億円
財務CF -8億円 -11億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は91.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「感謝の心をもって、従業員の幸せと株主の幸せを追求し、社会の幸せに結びつけます」という経営理念を掲げています。企業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献し、最適・最良の製品やサービスを提供することで顧客の満足と信頼を獲得することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、社是である「誠実と和」の精神のもと、全社が一丸となって社業発展に邁進する文化を有しています。従業員がお互いに尊重し協力し合う風土を醸成し、エンゲージメントの強化を図ることで、多様化する市場環境に順応できる企業体質の向上に努めています。

(3) 経営計画・目標


同社は中期経営計画(2024年度~2026年度)を策定し、安定した営業利益の確保を経営基盤堅持の最重要事項と位置づけています。最終年度の2026年度に向けて、以下の経営指標を目標として掲げています。

・売上高営業利益率:13.0%
・ROE(自己資本利益率):3.7%
・PBR(株価純資産倍率):0.58倍

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、環境負荷の低減に寄与する新製品の開発や既存技術の向上、脱炭素生産の確立に向けた新規設備投資を推進しています。また、グローバル市場に対応する販売・技術サポート体制の強化や、ハード・ソフト両面からの就業環境整備を通じて持続的な成長を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「企業発展の原動力は優秀な従業員である」との認識に立ち、協調性があり、新しいことに挑戦し、時代の変化に対応できる人材を育成しています。ウェルビーイング経営を掲げ、階層別研修の充実や1on1面談の導入など、働きやすい環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.2歳 18.4年 6,465,343円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 71.4%
男女賃金差異(全労働者) 56.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 84.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 52.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、直近5年間の新入社員の離職率(3.5%)、採用した労働者に占める女性割合(27.3%)、社員に対するアンケート調査の職場環境に対する満足度(67.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 為替相場の変動

グローバルな事業展開に伴い、米ドル、ユーロ、人民元など外貨建てでの取引が増加しています。これらの為替相場の変動は、換算差額の発生などを通じて同社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 価格競争の激化

日本や中国、アジア、欧米市場において、競合他社との価格競争が激化しています。同社グループはコストダウンや生産性向上を通じて収益性の向上に努めていますが、競争環境がさらに悪化した場合、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) OEM顧客への依存

住宅資材用チップソー等を中心にOEM顧客向けの販売を行っているため、主要顧客の需要変動や生産調整、調達方針の変更等により受注量が大きく変動し、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 情報システム及びセキュリティ

情報管理およびセキュリティ対策の徹底に努めていますが、想定を上回る不正アクセスやサイバー攻撃、コンピュータウイルス等によりシステム障害や重要情報の漏洩が発生した場合、同社のブランド価値や業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。