イワブチ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イワブチ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、電力、通信、信号、鉄道等の電気架線金物およびコンクリートポール用品の製造販売を主力事業としています。直近の決算では、配電線路関連や交通信号関連の受注が好調に推移し、売上高は126億円、経常利益は10億円となり、前期比で増収増益を達成しました。


※本記事は、イワブチ株式会社 の有価証券報告書(第75期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. イワブチってどんな会社?


電力や通信インフラを支える架線金物の製造販売を主力とし、長年の実績と高いシェアを持つ企業です。

(1) 会社概要


同社は1950年に岩淵電気器材として設立され、国鉄(現JR)やNTT等への架線金物販売を開始しました。1986年に現社名へ変更し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。2013年には東証JASDAQスタンダード市場(現スタンダード市場)へ上場し、2024年には完全子会社であった富田鉄工を吸収合併するなど、組織体制の強化を進めています。

連結従業員数は419名、単体では259名です。筆頭株主は取引先で構成されるイワブチ取引先持株会であり、第2位は取引関係のある大手総合商社の住友商事、第3位は証券会社の松井証券となっています。事業会社や持株会が上位を占めており、安定した株主構成と言えます。

氏名 持株比率
イワブチ取引先持株会 10.41%
住友商事 4.66%
松井証券 3.87%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名、計13名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役社長は内田秀吾氏です。社外取締役比率は23.1%です。

氏名 役職 主な経歴
内田 秀吾 代表取締役社長 1981年同社入社。福岡支店長、営業本部長、海陽岩淵金属製品有限公司董事長などを歴任。2012年より現職。
富樫 一郎 専務取締役管理本部長兼社長室長 1991年同社入社。総務部長、社長室長などを経て、2024年より現職。
渡邉 尚浩 常務取締役営業本部長兼営業企画部長 1980年日本電信電話公社入社。NTTインフラネット首都圏支店設備部長などを経て2009年同社入社。2018年より現職。
松下 茂 取締役大阪支店長 1976年日本電信電話公社入社。日本コムシスを経て2019年同社入社。2020年大阪支店長に就任し、2021年より現職。
奥山 孝義 取締役営業第一部長 1996年同社入社。広島支店長を経て、2022年営業第一部長に就任。2023年より現職。
笹原 正寿 取締役営業統括部長 1998年同社入社。福岡支店長を経て、2023年営業統括部長に就任。2024年より現職。
西田 弘嗣 取締役製造部長 2002年同社入社。2018年製造部長に就任。2024年より生産本部担当兼製造部長として現職。
木下 哲 取締役総務部長 1996年同社入社。2020年総務部長に就任し、2025年より現職。
高林 敦史 取締役製品開発部長 1995年同社入社。2020年製品開発部長に就任し、2024年より現職。
池田 俊雄 取締役常勤監査等委員 1987年同社入社。海陽岩淵金属製品有限公司総経理、営業第二部長などを歴任。2024年より現職。


社外取締役は、髙品惠子(弁護士)、中村治(住友商事グローバルメタルズ薄板事業部長付)、中村友理香(公認会計士・税理士・社会保険労務士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「交通信号・標識・学校体育施設関連」「CATV・防災無線関連」「情報通信関連」「配電線路関連」「その他」の各需要分野で事業を展開しています。

(1) 交通信号・標識・学校体育施設関連


警察庁等の要請に応じ、交通信号や道路標識を取り付けるための装柱用品を提供しています。また、学校などの体育施設で使用される防球ネットの支持金具なども取り扱っており、公共の安全や教育環境の整備に貢献しています。

収益は、これらの製品の販売によって得ています。製造は主に同社、HOKUEI、協和興業、海陽岩淵金属製品有限公司が行い、販売は同社および協和興業が担当しています。

(2) CATV・防災無線関連


ケーブルテレビ(CATV)用のケーブルを敷設するための装柱用品や、地方自治体が運用する防災行政無線施設のための装柱用品などを提供しています。地域の情報伝達や防災インフラの構築を支える重要な製品群です。

収益は、CATV事業者や自治体等への製品販売から得ています。製造は同社グループ各社が担い、販売は同社、IWM、協和興業が行っています。

(3) 情報通信関連


NTTをはじめとする情報通信企業の通信線路網構築に必要な装柱用品などを提供しています。通信インフラの安定的な運用を支えるため、通信事業者のニーズに合わせた製品開発と供給を行っています。

収益は、通信事業者等への製品販売から得ています。製造は同社、HOKUEI、協和興業、須田製作所、海陽岩淵金属製品有限公司が行い、販売にはIWM、TCMなども関わっています。

(4) 配電線路関連


各電力会社の配電線路に使用される装柱用品や、コンクリートポール(電柱)に関連する用品などを提供しています。電力の安定供給に不可欠なインフラ部材として、各電力会社の仕様やニーズに応じた製品を展開しています。

収益は、電力会社等への製品販売から得ています。製造は同社グループの主要製造拠点が担い、販売は同社および協和興業が行っています。

(5) その他


工場内における配電線路用や、鉄道用の装柱用品などを提供しています。また、これらの分野以外にも幅広いインフラ関連のニーズに対応した製品群を取り扱っています。

収益は、工場や鉄道関連企業等への製品販売から得ています。製造は同社グループ各社が行い、販売は同社、協和興業、須田製作所が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間を通じて増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期は126億円に達しました。利益面では、2023年3月期に一時的に利益率が低下しましたが、その後は回復傾向にあり、直近では経常利益率が7.6%と高い水準を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 99億円 103億円 111億円 118億円 126億円
経常利益 8億円 5億円 3億円 9億円 10億円
利益率(%) 7.7% 4.7% 3.1% 7.9% 7.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 4億円 3億円 6億円 7億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は約30%の水準を維持しています。営業利益率も前期の7.2%から当期は7.0%と、安定して収益を確保できている状況が見て取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 118億円 126億円
売上総利益 35億円 37億円
売上総利益率(%) 30.1% 29.3%
営業利益 9億円 9億円
営業利益率(%) 7.2% 7.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が10億円(構成比35%)、荷造運搬費が4億円(同13%)を占めています。売上原価においては、材料費が23億円(構成比53%)、経費が11億円(同26%)を占めています。

(3) セグメント収益


全ての需要分野において、前期比で売上が概ね堅調に推移しています。特に配電線路関連と交通信号・標識関連の伸びが目立ちます。情報通信関連は前期から微減となりましたが、主力事業である配電線路関連が全体を牽引し、連結全体での増収に寄与しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
交通信号・標識・学校体育施設関連 14億円 16億円
CATV・防災無線関連 9億円 11億円
情報通信関連 28億円 27億円
配電線路関連 37億円 41億円
その他 29億円 31億円
連結(合計) 118億円 126億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

イワブチは、事業運営上必要な資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、短期運転資金は自己資金を、設備投資資金は金融機関からの長期借入を主としています。

営業活動によるキャッシュ・フローはプラスとなり、本業で安定的に資金を生み出している状況を示しています。投資活動によるキャッシュ・フローはマイナスですが、これは将来の成長に向けた設備投資や有価証券への投資を行っていることを示唆しています。財務活動によるキャッシュ・フローもマイナスとなっており、これは借入金の返済や株主への配当金の支払いなど、健全な財務運営の一環と捉えられます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 3億円 8億円
投資CF -2億円 -9億円
財務CF -4億円 -7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、経済的かつ信頼度の高い製品を供給し、電力、通信をはじめとした幅広いインフラ構築の一翼を担い、社会に貢献することを経営の基本理念としています。この理念に基づき、顧客ニーズに合致した製品開発や生産設備の充実、全国的な供給体制の確立を通じて信頼を得ることを目指しています。

(2) 企業文化


基本理念に基づき、何事にもチャレンジし自らの付加価値を高める人材育成や、技術の継承と新たな技術への挑戦を重視しています。また、コンプライアンス体制を根幹に据え、真摯に取り組む姿勢を大切にするとともに、ESGを原動力として人と環境にやさしいものづくりを推進する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、株主への安定配当、継続的な収益確保、資本の効率的運用を重要な経営指標と位置付けています。具体的には、株主資本コスト(6~7%程度と認識)を上回るROE(自己資本利益率)の達成を目標として掲げています。また、2020年に策定した「VISION2030」の実現を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「VISION2030」に基づき、既存の架線金物事業を「ジョイント事業」として深堀りしつつ、工場のスマート化を進めています。同時に、新たな価値を生み出す「コネクト事業」を展開し、脱炭素やスマートシティ関連の新規事業開拓に注力しています。2024年度からは資本収益性を重視した「Phase1 2.0」を展開中です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「VISION2030」の実現に向け、自律した人材、個人の力を発揮できる組織、公正な評価と処遇を基本方針とする新人事制度を2025年4月から開始しました。OJTや社外研修を通じた育成に加え、スペシャリストコースの新設など多様な人材の活躍を推進しています。2030年度までに女性管理職比率15%の達成を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.0歳 17.8年 6,354,000円


※平均年間給与は基準外給与及び賞与を含めております。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.7%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 60.6%
男女賃金差異(正規雇用) 65.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 42.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変化


電力関連のレベニューキャップ制度や情報通信の技術革新など、各市場の制度やニーズの変化に対応できない場合、業績に影響を与える可能性があります。また、特定の顧客に依存はしていませんが、顧客に共通する事業環境の急激な変化が起きた場合、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 資産価値の変化


顧客との連携や情報収集を通じて適切な在庫管理および設備投資を行っていますが、市場環境や競争状況の変化、新技術による既存製品の陳腐化などが生じた場合、棚卸資産の評価損や事業用固定資産の減損損失が発生し、業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

(3) 原材料等の価格・調達


鋼材などの原材料や外注加工品、物流コストが想定外に高騰し、コストダウンや価格転嫁で補えない場合、業績に影響を与える可能性があります。また、中国の子会社を含むサプライチェーンにおいて、地政学的事象等により調達が阻害された場合、製品供給が滞り、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 製品の供給


品質管理体制を整備していますが、製品に欠陥が判明し、リコール等の措置が必要となった場合、多額の費用発生や信用の失墜を招く可能性があります。また、設備故障や事故による生産停止が発生した場合も、製品供給が滞り、業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。