イワブチ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イワブチ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イワブチは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、電力、通信、信号、鉄道など幅広い社会インフラ構築に不可欠な各種電気架線金物やコンクリートポール用品の製造販売を主要事業として展開しています。直近の業績では、配電線路関連や建設関連事業が好調に推移したことで、売上高および各段階利益ともに増収増益を達成しています。


※本記事は、イワブチ株式会社の有価証券報告書(第76期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. イワブチってどんな会社?


イワブチは、電力や通信など幅広い社会インフラ構築に不可欠な架線金物などを製造販売するメーカーです。

(1) 会社概要


1950年に岩淵電気器材として設立され、1951年に日本国有鉄道や私鉄各社へ架線金物などの販売を開始しました。1986年に現在のイワブチへ商号を変更し、1995年に株式を店頭登録しました。2022年には監査等委員会設置会社へ移行し、コーポレートガバナンス体制の強化を図っています。

現在、同社グループの従業員数は連結で426名、単体で272名体制となっています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は同社の取引先で構成されるイワブチ取引先持株会であり、第2位は外国法人のINTERACTIVE BROKERS LLC、第3位には事業会社である住友商事が名を連ねています。

氏名 持株比率
イワブチ取引先持株会 10.95%
INTERACTIVE BROKERS LLC 9.11%
住友商事 4.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.0%です。代表取締役社長は内田秀吾が務めています。

氏名 役職 主な経歴
内田秀吾 代表取締役社長 1981年同社入社。福岡支店長、営業第一部長、営業本部営業統括部長、専務取締役などを歴任し、2012年4月より現職。
富樫一郎 専務取締役管理本部長兼社長室長 1991年同社入社。総務部長、社長室部長を経て、2018年より取締役。2024年6月より現職。
渡邉尚浩 常務取締役営業本部長兼営業企画部長 1980年日本電信電話公社入社。東日本電信電話などを経て2009年同社入社。2025年4月より現職。
松下茂 取締役大阪支店長 1976年日本電信電話公社入社。西日本電信電話などを経て2019年同社入社。2021年6月より現職。
奥山孝義 取締役営業第一部長 1996年同社入社。広島支店長などを経て、2022年4月に営業第一部長。2023年6月より現職。
笹原正寿 取締役営業統括部長 1998年同社入社。福岡支店長などを経て、2023年4月に営業統括部長。2024年6月より現職。
西田弘嗣 取締役製造部長 2002年同社入社。2018年4月に製造部長。2023年6月に取締役就任。2024年7月より現職。
木下哲 取締役総務部長 1996年同社入社。2020年4月に総務部長。2025年6月より現職。
高林敦史 取締役生産技術部長 1995年同社入社。2020年4月に製品開発部長。2024年6月に取締役就任。2026年4月より現職。
池田俊雄 取締役常勤監査等委員 1987年同社入社。海陽岩淵金属製品有限公司総経理、営業第二部長等を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、髙品惠子(誠法律事務所入所)、中村友理香(中村公認会計士事務所独立開業)です。

2. 事業内容


同社グループは、単一セグメントであるため、需要分野別の事業を展開しています。

交通信号・標識・学校体育施設関連


警察庁の要請に応じた交通信号や道路標識の装柱用品、および学校体育施設関連の防球ネット支持金具などを提供しており、全国の交通インフラや教育機関を顧客としています。

各自治体や関連業者などから製品の販売代金を受け取ります。運営は同社および協和興業などが担当しています。

CATV・防災無線関連


CATV用ケーブル敷設用の装柱用品や、各地方自治体の防災行政無線施設用の装柱用品などを提供しており、通信事業者や自治体を主要顧客としています。

製品の販売による収益を事業会社や自治体から受け取ります。運営は同社、IWM、協和興業などが担当しています。

情報通信関連


NTTなどの情報通信企業のニーズに応じた通信線路用の装柱用品などを提供しており、情報通信分野のインフラ構築を支援しています。

通信事業者から装柱用品の販売代金を受け取ります。運営は同社をはじめ、IWM、協和興業、須田製作所などが担当しています。

配電線路関連


各電力会社のニーズに応じた配電線路用の装柱用品やコンクリートポール用品などを提供しており、全国の電力インフラを支えています。

電力会社などから製品の販売代金を受け取ります。運営は同社および協和興業などが担当しています。

その他


工場内の配電線路用品、鉄道用装柱用品、防衛関連の無線システム装置などを提供しており、鉄道会社や防衛関連機関を顧客としています。

鉄道会社や関連機関から製品の販売代金を受け取ります。運営は同社、協和興業、須田製作所などが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は安定して右肩上がりで成長を続けています。経常利益についても一時的な増減はあったものの、当期は大幅な増益を達成しており、利益率も11%台まで大きく向上するなど、収益力が着実に強化されていることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 103億円 111億円 118億円 126億円 135億円
経常利益 5億円 3億円 9億円 10億円 15億円
利益率(%) 4.7% 3.1% 7.9% 7.6% 11.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 3億円 6億円 7億円 9億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期から大きく伸長しています。利益率もそれぞれ向上しており、事業の付加価値向上やコストコントロールが適切に機能していることが読み取れます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 126億円 135億円
売上総利益 37億円 45億円
売上総利益率(%) 29.3% 33.5%
営業利益 9億円 15億円
営業利益率(%) 7.0% 10.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が10億円(構成比33%)、荷造運搬費が3億円(同11%)を占めています。売上原価は90億円となっており、売上高に対する構成比は66%を占めています。

(3) セグメント収益


配電線路関連は、レベニューキャップ制度による高経年化設備の更新工事が進み増収となりました。また、建設関連の自治体案件や防衛関連の機器受注が好調だった「その他」も大きく成長しています。一方、CATV・防災無線関連はケーブルテレビ事業者の更新工事が低調で減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
交通信号・標識・学校体育施設関連 16億円 17億円
CATV・防災無線関連 11億円 10億円
情報通信関連 27億円 27億円
配電線路関連 41億円 44億円
その他 31億円 36億円
連結(合計) 126億円 135億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 8億円 15億円
投資CF -9億円 2億円
財務CF -7億円 -7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、経済的かつ信頼度の高い製品を供給し、電力、通信をはじめとした幅広いインフラ構築の一翼を担い、社会に貢献することを経営の基本理念として掲げています。この理念に基づき、顧客のニーズに合致した技術を培い、全国を網羅する供給体制を確立することで信頼を獲得しています。

(2) 企業文化


経営の基本方針を真摯に貫き、顧客および社会からの信頼の上に成り立つ「イワブチブランド」を次世代へ確実につなぐことを重視しています。何事にもチャレンジし、自らの付加価値を高め、個性を生かせる人材育成を推進しており、真摯に向き合う誠実な文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


株主への安定配当、継続的な収益の確保、および資本の効率的運用を重要な経営指標と位置付けています。資本コストや株価を意識した経営の実現を目指し、株主資本コスト(7%以上と認識)を上回る資本収益性の達成を目標として掲げています。

・ROE(自己資本利益率)の向上

(4) 成長戦略と重点施策


2030年に向けた中長期戦略「VISION2030」を展開し、既存事業の競争力強化を図る「新たなものづくり」と、新需要領域を開拓する「新たな価値づくり」を進めています。次世代の成長エンジンとなる新たな事業セグメントの創出や、QCD競争力を基軸とした生産体制の構築に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


VISION2030の実現に向け、人材を最も重要な経営資本の一つと位置付けています。新たな人事制度のもと、自ら考え行動する自律した人材を求め、個人の力を最大限に発揮できる組織づくりと、意欲を高める公正な評価と処遇を目指しています。多様な人材の活躍促進と次世代リーダーの育成にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.0歳 17.2年 6,426,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外給与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 63.9%
男女賃金差異(正規雇用) 66.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 57.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の急激な変化


送配電網の強靭化や脱炭素社会への移行、通信分野における新技術の導入など、市場環境や顧客ニーズが大きく変化しています。これら制度変更やニーズの変化に的確に対応できない場合や、製品の陳腐化による棚卸資産の評価損等が生じた場合、業績に重大な影響を与える可能性があります。

(2) 原材料等の価格高騰とサプライチェーンの寸断


鋼材や亜鉛などの原材料、および物流・エネルギー価格が高騰し、コストダウンや適切な価格転嫁で補えない場合、製造コストが上昇するリスクがあります。また、中国にある生産子会社を含め、国際情勢の変化等で資源や部品の調達が阻害された場合、製品の供給が滞る恐れがあります。

(3) 製品の欠陥やシステム・情報セキュリティ障害


設計・製造上の過誤などにより製品に欠陥が生じ、無償修理や回収措置等が必要となった場合、多額の費用発生やメーカーとしての信頼失墜を招く恐れがあります。また、高度化するサイバー攻撃やクラウドサービスの障害によって保有情報が漏洩した場合、社会的信用の低下に繋がるリスクが存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。