トーアミ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トーアミ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トーアミは、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、土木建築用資材の製造・販売および土木・建築工事を主力事業として展開しています。直近の業績トレンドとしては、工事セグメントの好調や販売価格水準の維持に努めた結果、増収となり、営業利益や経常利益も大きく改善して黒字転換を達成する増収増益の傾向にあります。


※本記事は、株式会社トーアミの有価証券報告書(第87期、自2025年4月1日 至2026年3月31日、2026年6月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. トーアミってどんな会社?


同社グループは、土木建築用資材の製造・販売と土木・建築工事を主力とする資材メーカーおよび工事業者です。

(1) 会社概要


同社は1940年に東洋金網として設立され、各種金網の製造加工を開始しました。その後、1992年に4社を合併して現在のトーアミに商号を変更し、1995年に大阪証券取引所市場第二部に株式を上場しました。2002年に住倉鋼材の全株式を取得し、2015年にはベトナムに合弁会社を設立して海外進出を果たしました。近年は2024年に中條工務店、2025年にエアードを子会社化するなど、M&Aを通じた事業拡大も積極的に進めています。

現在の従業員数は同社グループ全体で406名、単体では249名が在籍しています。筆頭株主は東洋物産で、第2位は代表取締役社長の北川芳仁氏、第3位は資本業務提携等を行う事業会社の阪和興業となっています。

氏名 持株比率
東洋物産 10.91%
北川 芳仁 6.89%
阪和興業 6.67%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役社長は北川芳仁氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
北川 芳仁 代表取締役社長兼管理本部長 2001年8月同社入社。関西事業部長、常務取締役等を経て、2013年6月より代表取締役社長。2026年5月より現職。
下田 修一 取締役上席執行役員業務統括本部長 1989年9月同社入社。中国事業部営業部長、北九州事業部長等を経て、2018年6月取締役就任。2024年6月より現職。
古田 貴久 取締役上席執行役員グループ統括本部長 2017年1月りそな銀行鶴橋支店長。2020年1月同社入社。同年6月取締役管理本部長就任。2026年5月より現職。
德渕 弘司 取締役(常勤監査等委員) 1994年7月同社入社。内部監査室長、管理本部経理部長等を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、アレキサンダー・キャンベル・ベネット氏(関西大学国際部教授)、藤木晴彦氏(藤木晴彦税理士事務所税理士)、小礒ゆかり氏(税理士法人KTリライアンス代表社員)、内海二郎氏(元船井興産執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「土木建築用資材事業」および「土木・建築工事事業」の報告セグメントを展開しています。

土木建築用資材事業


棒線加工品(溶接金網および鉄筋加工品)、コンクリート二次製品用溶接金網、メッシュフェンス等の土木建築用資材を、土木建築会社等の顧客に対して製造・販売および仕入・販売を行っています。

顧客への商品および製品の販売により収益を得ています。国内の運営は主に同社および住倉鋼材、FDテクノが行っています。また、海外においてはベトナムの合弁会社を通じて、各種ワイヤーメッシュの製造・販売等の事業展開を行っています。

土木・建築工事事業


土木構造物や各種建築物に伴う型枠大工工事を主体に、それらに附帯するコンクリート工事、造成工事、駐車場整備工事、河川護岸工事、外構工事、舗装工事等の施工請負を行っています。

土木建築会社等から工事を受注し、毎月履行した業務の出来高に基づき収益を認識しています。国内における運営は主に渡部建設、中條工務店、エアードの各子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社の業績は、M&Aによる事業領域の拡大などを背景に売上高の持続的な成長が続いています。利益面については、原材料価格の高止まりなどの影響を受けて期によって変動が見られますが、直近の期では販売価格水準の維持等に注力したことで収益性が改善し、経常利益および当期利益ともに黒字転換を果たしています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 123億円 154億円 176億円 181億円 184億円
経常利益 1億円 -1億円 3億円 -0.3億円 3億円
利益率(%) 1.1% -0.6% 1.9% -0.2% 1.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 1億円 -0.4億円 2億円 0.3億円 0.8億円

(2) 損益計算書


売上高は増加傾向にあり、それに伴って売上総利益および売上総利益率も改善しています。前年度に赤字であった営業利益についても、当年度はしっかりと黒字を確保しており、本業における稼ぐ力の回復が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 181億円 184億円
売上総利益 26億円 31億円
売上総利益率(%) 14.2% 16.8%
営業利益 -1億円 2億円
営業利益率(%) -0.6% 1.2%


販売費及び一般管理費のうち、運搬費が9億円(構成比30%)、給料及び手当が4億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


土木建築用資材事業は出荷数量の減少により減収となったものの、販売スプレッドの確保により利益水準は大きく改善しています。一方、土木・建築工事事業は民間建築工事での受注単価改善等が寄与し、増収増益を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
土木建築用資材 144億円 137億円 3億円 6億円 4.3%
土木・建築工事 37億円 46億円 1億円 1億円 2.6%
調整額 - - -6億円 -5億円 -
連結(合計) 181億円 184億円 -1億円 2億円 1.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状態となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 9億円 16億円
投資CF -1億円 -5億円
財務CF 1億円 -8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


企業価値を向上させ、ステークホルダーから信頼されるコーポレートガバナンス体制を構築するとともに、コンプライアンス経営の実践および透明性の向上ならびに企業倫理の確立を目指すことを基本方針に掲げています。顧客ニーズに柔軟に対応し、信頼性の高い製品をタイムリーに供給しつつ、将来にわたる事業の発展に努めています。

(2) 企業文化


同社は「安定した成長へ」を新しい旗幟に掲げ、顧客の要望を確実に捉え、応変できる唯一無二の企業形態を目指しています。また、社員が安心して自分の子供を入社させたくなる会社を経営の中心的な価値観とし、仕事と生活の調和を図り働きやすい雇用環境の整備を進める文化を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同グループは、2024年4月から2027年3月までの3か年を対象期間とする中期経営計画を策定しています。本計画では、「顧客価値向上に焦点を当てた事業の再構築」「社員の成長を目的とした積極的な人的資本投資」「業界のロールモデルになる社会貢献と環境経営」の3つの基本方針のもと、安定的に成長できる姿を追求しています。

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画の中で、4つの重点施策に取り組んでいます。DX化を加速させる「個の確立と機能発揮」、拠点機能の強化とグループ間シナジーを深化させる「融合・連携の強化」、M&Aによる事業基盤拡大を進める「新しい価値の創造」、サステナビリティ経営と人的資本投資を推進する「貢献と還元」により、高収益化と企業価値向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員が安心して自分の子供を入社させたくなる会社を経営の中心的な価値観とし、やりがいを高めるための職場環境の改革を通じて、社員が能力を発揮し働きやすい雇用環境を整備することを基本方針としています。また、多様な人材の採用および登用を図る観点から、女性比率の向上と育成研修制度の充実を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.4歳 16.7年 5,513,494円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、同社単体での男性育児休業取得率(28.6%)、グループ全体での男性育児休業取得率(63.6%)、有給休暇の年間取得日数(6.7日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 資材調達と価格変動リスク


同社グループの主力製品である溶接金網等の主材料となる線材や鉄筋について、価格変動が販売価格への転嫁の遅れを通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、国内外の相場を注視し調達量や時期をコントロールするとともに、仕入れルートの多様化を図りリスクの最小化に努めています。

(2) 建設・土木業界の経済状況変化によるリスク


同社グループの主な販売先は建設・土木業界であるため、国内の公共工事および民間建設投資が減少した場合、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。このため、将来を見据えてインフラ整備等の成長が見込まれる海外市場への進出や、現場ニーズを先取りした新製品開発により新たな市場開拓に努めています。

(3) サステナビリティ対応に関わるリスク


世界基準の環境規制強化や、持続可能性への取り組みに消極的な企業が取引先から峻別されるリスクが存在します。同社グループでは、再生可能エネルギーへの転換や生産性向上、インフラ強靭化に資する建材の提供など「2030年に目指す姿」を設定し、着実に実現することでリスクへの対応を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。