※本記事は、サンコーテクノ株式会社の有価証券報告書(第62期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サンコーテクノってどんな会社?
同社は「あと施工アンカー」をはじめとする建設資材や、電子基板などを提供するメーカーです。
■(1) 会社概要
1964年に設立され、1965年に「オールアンカー」の生産を開始しました。1996年に三幸工業と合併して現在のサンコーテクノへ社名を変更し、2005年にジャスダック上場を果たしました。現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、直近では甲府精鋲などを子会社化して事業拡大を推進しています。
従業員数は連結で850名、単体で345名です。筆頭株主は同社代表取締役社長の洞下英人氏で、第2位は投資育成機関である東京中小企業投資育成、第3位はサンワールドです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 洞下 英人 | 15.03% |
| 東京中小企業投資育成 | 9.10% |
| サンワールド | 8.59% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は洞下英人氏が務めており、役員全体における社外取締役の比率は37.5%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 洞下 英人 | 代表取締役社長 | 1997年に同社へ入社。企画本部長、経営管理本部長、副社長などを歴任し、2010年より現職。タイやベトナムの海外関係会社等の会長や取締役を多数兼任。 |
| 洞下 正人 | 常務取締役 | 1984年に同社へ入社。営業本部長、新事業本部長、リニューアル事業部長などを経て、2018年より現職である常務取締役兼技術研究所所長。 |
| 畠中 竜二 | 取締役 | 1986年に同社へ入社。福岡支店長、ファスニング営業本部長などを経て、2023年より現職である取締役兼ファスニング事業部長。子会社社長等も兼任。 |
| 角谷 義隆 | 取締役 | 1997年に同社へ入社。リニューアル事業部マテリアル営業部長、機能材本部長などを経て、2025年より現職である取締役兼機能材事業部長。 |
| 甲斐 一起 | 取締役 | 1997年に同社へ入社。経営管理本部長、プロジェクトマネジメント本部長などを経て、2025年より現職である取締役兼経営企画室長兼戦略推進室長。 |
社外取締役は、岩城龍夫(元内閣府政策企画調査官)、佐藤靖(青山学院大学経営学部教授)、田村茂雄(流山総合法律事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ファスニング事業」および「機能材事業」の報告セグメントとその他の事業を展開しています。
■(1) ファスニング事業
あと施工アンカーを中心とするドリル、ファスナー等の建設資材の企画開発・原材料調達から製造・販売・施工ツールまでの一貫した価値を提供しています。用途は高層ビルから土木構造物まで幅広く多岐にわたります。
アンカー等の建設資材販売や耐震補強事業・太陽光関連事業の施工管理等から収益を得ています。運営は主にサンコーテクノが行うほか、IKKが電動油圧工具を、甲府精鋲が微細ねじ・シャフト等の製造販売を行っています。
■(2) 機能材事業
紫外線を照射して硬化するFRPシート関連製品やアルコール検知器の製造・販売のほか、電子プリント基板関連および包装・物流関連機器の製造・輸入・販売を行っています。
製品の販売代金や輸入機器の販売代金から収益を得ています。運営は、電子プリント基板関連をスイコー、浦和電研、光洋、アキヤ電気が担い、包装・物流関連機器を成光産業が行っています。
■(3) その他事業
報告セグメント対象外の事業として、販売促進ツールの制作や、IT関連のシステム販売等を行っています。
ツール制作費やシステム販売代金から収益を得ています。運営は非連結子会社のイーオプティマイズが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の売上高は187億円から218億円へと順調に拡大傾向にあります。原材料価格の高騰や労務費の上昇といった外部環境の変化を受けつつも、継続的な価格転嫁や事業構造の強化に取り組み、安定した経常利益を確保しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 187億円 | 206億円 | 211億円 | 213億円 | 218億円 |
| 経常利益 | 17億円 | 19億円 | 20億円 | 13億円 | 19億円 |
| 利益率(%) | 9.1% | 9.5% | 9.7% | 6.1% | 8.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 13億円 | 13億円 | 9億円 | 12億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に加えて、製品の価格改定や完成工事における採算性向上の取り組みが奏功し、売上総利益率は28.8%から31.6%へと改善しました。これにより営業利益も13億円から18億円へと順調に伸びています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 213億円 | 218億円 |
| 売上総利益 | 61億円 | 69億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.8% | 31.6% |
| 営業利益 | 13億円 | 18億円 |
| 営業利益率(%) | 6.0% | 8.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が12億円(構成比34%)、その他が12億円(同32%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別に見ると、ファスニング事業は主力であるあと施工アンカーの販売がやや前年を下回りましたが、機能材事業において包装・物流機器関連の販売が好調に推移し、グループ全体の増収を牽引しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ファスニング事業 | 175億円 | 172億円 |
| 機能材事業 | 37億円 | 45億円 |
| 連結(合計) | 213億円 | 218億円 |
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 15億円 | 14億円 |
| 投資CF | -14億円 | -8億円 |
| 財務CF | 6億円 | -0.1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.3%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.4%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「奉仕は真価の追求なり、啓発は未来の追求なり、協調は繁栄の追求なり」を経営理念に掲げています。主に建設資材分野において時代の要請に適合した価値ある製品や工法を創り活かし、人々が安心して暮らせる社会の実現を目指しています。また、「人のお役に立つために、創造提案型企業をめざす」を基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社グループの役員および社員が遵守する「S.T.Gモラル憲章」を定めています。求める人財像として「創造(新たな価値の提案)」「挑戦(失敗を恐れない行動)」「共生(多様な価値観の尊重)」の3つを掲げ、社員一人ひとりが自律的に成長することで、ステークホルダーから選ばれ必要とされる企業となることを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
2025年3月期からスタートした新中期経営計画「S.T.G Vision2026」において、「私たちは、安全・安心・環境・健康をキーワードに事業拡大とニッチトップを実現します」というビジョンを掲げています。最終年度の2027年3月期に向けて、以下の数値目標を設定しています。
* 売上高:240億円
* 売上高経常利益率:8%
■(4) 成長戦略と重点施策
企業価値の継続的な向上に向けて、販売・開発・製造部門の連携によるスピーディな製品実現や、独自工法に特化した採算性の高い受注推進、M&Aによる事業拡大に注力しています。安定収益事業と成長事業に適切に経営資源を配分する「全体最適化」をキーワードに、各事業のミッションに基づいた戦略を実践しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
将来の持続的な成長に向け、多様な人材の確保と育成を重要課題に位置づけています。新卒・中途を問わず能力と適性を重視した採用を行うほか、熟練者の技術を次世代に引き継ぐマニュアル整備やDX人材の育成を推進しています。また、自己成長を促すPDCAサイクルの実践や、定年後も活躍できる再雇用制度を運用しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.6歳 | 12.5年 | 5,385,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.9% |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 77.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 59.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、役職者(係長級)における女性労働者の割合(14.3%)、平均勤続年数(男性)(14.0年)、平均勤続年数(女性)(12.3年)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境の動向による影響
同社グループの売上高の大半が、あと施工アンカーをはじめとする建設関連製品の卸販売事業であることから、建設業界の動向や設備投資の急変によって主な販売先である卸問屋等の業績が悪化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 建設現場における労働災害のリスク
工事管理者の教育を通じて品質・安全衛生方針を浸透させ、現場における安全管理に万全を期していますが、重大な労災事故が発生して発注者から指名停止等の処分を受けた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 海外拠点のカントリーリスク
あと施工アンカーの一部や微細なねじ・シャフト部品等をタイにある子会社・孫会社で生産しています。そのため、現地における法規制等の変更、政治や経済要因の変化、さらには自然災害などが発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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