※本記事は、三浦工業株式会社の有価証券報告書(第67期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 三浦工業ってどんな会社?
ボイラおよび関連機器の製造販売・メンテナンスを主力とし、熱・水・環境分野でグローバルに事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1959年に株式会社三浦製作所として設立され、1970年に営業部門を分離して三浦工業株式会社を設立しました。1989年には東証一部へ指定され、オンラインメンテナンス業務を開始してサービス体制を強化しました。2004年には中国・蘇州に現地法人を設立するなど海外展開を加速し、2024年には米国の大手ボイラメーカーであるThe Cleaver-Brooks Company, Inc.を買収し、グローバル事業を拡大させています。
2025年3月31日現在の従業員数は連結7,729名、単体3,364名です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位は資本業務提携先であるダイキン工業、第3位は地元の地方銀行である伊予銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 13.91% |
| ダイキン工業株式会社 | 4.67% |
| 株式会社伊予銀行 | 4.61% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役は米田剛氏です。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 米田 剛 | 取締役(代表取締役)技術統括本部長生産統括本部長 | 1991年入社。水処理技術統括部長、アクア事業本部長、環境事業本部長、アイナックス稲本社長などを歴任。2024年4月より代表取締役社長 社長執行役員 CEO兼CTO。 |
| 宮内 大介 | 取締役(代表取締役)舶用事業統括本部長 | 1997年入社。米国現地法人社長、米州事業本部長などを経て、2016年代表取締役社長CEOに就任。2024年4月より代表取締役 取締役会議長兼CGGOおよび舶用事業統括本部長。 |
| 廣井 政幸 | 取締役管理統括本部長 | 1985年入社。メンテ営業推進統括部長、BP事業推進本部長などを経て、2021年取締役常務執行役員。2023年6月より代表取締役専務執行役員。2024年4月より取締役専務執行役員。 |
| 河本 憲一 | 取締役国内販売統括本部長 | 1993年入社。MIソリューション統括部次長、中部統括部長などを経て、2023年取締役常務執行役員。2024年6月より取締役専務執行役員。 |
| 山内 修 | 取締役(監査等委員)(常勤) | 1986年入社。水処理統括部長、横浜支店長、舶用営業統括部長、監査等委員会室長などを歴任。2023年6月より取締役(監査等委員)。 |
社外取締役は、武藤直樹(元テルモ経営役員CAFO)、安藤吉昭(元コニカミノルタ取締役常務執行役CFO)、小池達子(弁護士)、正力裕子(元NECエンジニアリング営業本部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内機器販売事業」、「国内メンテナンス事業」、「海外機器販売事業」、「海外メンテナンス事業」および「その他」事業を展開しています。
■国内機器販売事業
国内において、蒸気ボイラ、温水ボイラなどの各種ボイラ製品や、水処理機器、食品機械、メディカル機器、ランドリー機器などの製造・販売を行っています。顧客は工場や病院、クリーニング店など多岐にわたります。
収益は、顧客への製品販売代金や設置工事代金などから得ています。運営は主に同社および三浦アクアテック、三浦マニファクチャリングなどの国内連結子会社が行っています。
■国内メンテナンス事業
国内で販売した製品の保守・点検、修理、部品販売などを行っています。ボイラの効率的な運用を支援するエネルギー管理システムや、水処理薬品の販売も含まれます。
収益は、顧客との有償保守管理契約(ZMP契約)に基づく保守料や、スポットでの点検・修理代金、部品代金、リースレンタル料などから得ています。運営は主に同社が行っています。
■海外機器販売事業
海外市場において、各種ボイラや関連機器の製造・販売を行っています。米州、中国、韓国、東南アジアなどで事業を展開しており、各地域の需要に合わせた製品を提供しています。
収益は、海外の顧客への製品販売代金から得ています。運営はMIURA AMERICA CO., LTD.、The Cleaver-Brooks Company, Inc.、三浦工業(中国)有限公司、韓国ミウラ工業などの海外連結子会社が行っています。
■海外メンテナンス事業
海外で販売した製品に対する保守・点検、修理サービス、部品販売などを提供しています。日本国内と同様に、独自のアフターサービス体制を構築し、顧客との長期的な関係維持に努めています。
収益は、海外顧客からの保守契約料、点検・修理代金、部品代金などから得ています。運営はMIURA AMERICA CO., LTD.、The Cleaver-Brooks Company, Inc.などの海外連結子会社が行っています。
■その他
上記報告セグメントに含まれない不動産管理や保険代理業などを行っています。
収益は、不動産賃貸料や保険手数料などから得ています。運営は同社グループの関係会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は直近5期間において一貫して増加傾向にあり、特に2025年3月期は前期比約1.6倍の大幅な増収となりました。利益面でも、税引前利益および親会社の所有者に帰属する当期利益ともに増加基調を維持しており、2025年3月期は過去最高益を更新しています。利益率も安定した水準を保っています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,347億円 | 1,435億円 | 1,584億円 | 1,597億円 | 2,513億円 |
| 税引前利益 | 182億円 | 202億円 | 235億円 | 268億円 | 296億円 |
| 利益率(%) | 13.5% | 14.1% | 14.8% | 16.8% | 11.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 127億円 | 142億円 | 169億円 | 194億円 | 233億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益の大幅な増加に伴い、売上総利益も増加しましたが、売上原価率の上昇により売上総利益率は低下しました。営業利益は増加しましたが、販管費の増加などにより営業利益率は低下しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,597億円 | 2,513億円 |
| 売上総利益 | 668億円 | 942億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.8% | 37.5% |
| 営業利益 | 231億円 | 253億円 |
| 営業利益率(%) | 14.4% | 10.1% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が294億円(構成比42%)、減価償却費及び償却費が103億円(同15%)を占めています。売上原価の内訳については、有価証券報告書等のデータに詳細な費目別内訳の記載がありません。
■(3) セグメント収益
全てのセグメントで増収増益となりました。特に海外機器販売事業と海外メンテナンス事業は、米国企業の買収効果により売上が急増し、セグメント利益も大幅に伸長しました。国内事業も機器販売、メンテナンスともに堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内機器販売事業 | 774億円 | 842億円 | 83億円 | 75億円 | 8.9% |
| 国内メンテナンス事業 | 414億円 | 446億円 | 114億円 | 124億円 | 27.8% |
| 海外機器販売事業 | 297億円 | 797億円 | 28億円 | 82億円 | 10.2% |
| 海外メンテナンス事業 | 112億円 | 428億円 | 14億円 | 75億円 | 17.6% |
| その他 | 0.6億円 | 0.8億円 | 0.4億円 | 1.0億円 | 121.0% |
| 調整額 | -46億円 | -49億円 | -1.8億円 | -1.7億円 | - |
| 連結(合計) | 1,597億円 | 2,513億円 | 238億円 | 355億円 | 14.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で資金を稼ぎつつ、大規模な投資を行い、その資金を財務活動で調達している「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 208億円 | 341億円 |
| 投資CF | -13億円 | -1,346億円 |
| 財務CF | -154億円 | 1,197億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「熱・水・環境の分野で、環境に優しい社会、きれいで快適な生活の創造に貢献します」を企業理念に掲げています。この理念の実現に向け、独自の技術力でエネルギーの有効利用や環境関連分野において有用な製品・サービスを創出し、世界中の顧客に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
「我々はわが社を最も働きがいのある、最も働きやすい職場にしよう」をモットーとしています。信頼、連帯感、誇りで結ばれる風通しの良い職場の実現を目指し、働きがいのある企業風土づくりや人材育成に取り組むことで、成長し続けるための基盤強化を図る文化があります。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画では、経営環境の変化に応じて毎年見直すローリング方式から、3年後の目標値を固定する固定方式へ変更し、目標を明確化しています。
* 2028年3月期 売上収益:3,000億円
* 2028年3月期 営業利益:365億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「スーパーメンテナンス会社(商品やサービスを通じてお客様と持続的につながり続ける会社)」を目指し、国内では独自技術によるトータルソリューションの進化と提供による事業拡大を図ります。海外では「熱プロバイダー」として、積極的な人的投資や拠点網拡充、シナジー創出により、グローバルな市場ニーズに合致した新製品開発や品質追求を進めます。
* 2026年3月期 営業利益目標:326億円
* ROE(自己資本当期純利益率)目標:13%以上
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
顧客に役立つ「技術・生産力」「営業・販売力」「メンテナンス力」と、信頼される「サービス力」を高める人材育成に注力しています。また、新技術や専門知識の習得、グローバル人材の育成を重視し、多様性を尊重した人材投資を行います。社内環境整備では、働き方改革や両立支援制度、福利厚生の充実を進め、役割等級制度の導入などの人事制度改革を通じて、従業員の成長意欲と挑戦を支援する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.4歳 | 15.1年 | 7,045,389円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.4% |
| 男性育児休業取得率 | 94.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 58.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 61.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 36.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(67.1%)、従業員エンゲージメントスコア(52.6)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 減損会計に関するリスク
事業用資産の時価下落や将来キャッシュ・フローの状況により、減損処理が必要となり、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、M&Aなどで取得したのれん等についても、期待したシナジーが得られない場合、減損処理のリスクがあります。
■(2) 知的財産権について
特許取得による技術情報の開示が他社による模倣や係争を招くリスクや、他社からの特許侵害訴訟を受けるリスクがあります。これらが発生した場合、同社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 製品及びサービスの欠陥について
製品やサービスの欠陥によりリコールや賠償責任が発生するリスクがあります。特に、保険でカバーしきれない規模の欠陥が生じた場合、直接的な損害だけでなく社会的信用の低下を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。