三浦工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三浦工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三浦工業はプライム市場に上場し、産業用及び舶用ボイラ、水処理・メディカル機器などの製造販売からメンテナンスまでを展開する熱・水・環境のトータルソリューション企業です。直近の業績は、国内の堅調な販売や海外企業のM&A効果により、売上収益と各利益項目で過去最高を更新し、力強い増収増益が続いています。


※本記事は、三浦工業の有価証券報告書(第68期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 三浦工業ってどんな会社?


ボイラを中心とした熱・水・環境分野で、製造販売からメンテナンスまで一貫したトータルソリューションを提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は1927年に三浦製作所を創業し、精麦・精米機の製造・販売を開始しました。1959年に三浦製作所を設立し、1960年には主力となる小型貫流ボイラの製造をスタートさせました。1984年に東証二部へ上場し、1989年に東証・大証一部に指定、2022年にプライム市場へ移行しています。直近では2024年にドイツや米国のボイラ製造会社を買収し、グローバル展開を加速させています。

従業員数は連結7,896名、単体3,540名です。大株主については、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位は事業会社であるダイキン工業、第3位も資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.67%
ダイキン工業 4.67%
日本カストディ銀行(信託口) 4.61%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役 社長執行役員 CEOの米田剛氏が経営を牽引しています。なお、社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
米田剛 代表取締役 社長執行役員 CEO 1991年入社。アクア事業本部長、環境事業本部長等を経て、2023年生産統括本部長。2026年より現職。
宮内大介 代表取締役 取締役会議長兼CGGO 舶用事業統括本部長 1997年入社。米州事業本部長、代表取締役社長を経て、2024年より現職。
廣井政幸 取締役 専務執行役員 管理統括本部長 1985年入社。メンテ営業推進統括部長、BP事業推進本部長等を経て、2024年より現職。
河本憲一 取締役 専務執行役員 国内販売統括本部長 1993年入社。MI統括部長、国内販売統括本部副本部長等を経て、2024年より現職。
山内修 取締役(監査等委員)(常勤) 1986年入社。舶用営業統括部長、監査等委員会室長等を経て、2023年より現職。


社外取締役は、武藤直樹(元テルモ経営役員CAFO)、安藤吉昭(元コニカミノルタ常務執行役CFO)、小池達子(銀座総合法律事務所弁護士)、正力裕子(日本電気上席プロフェッショナル)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本国内事業」「米州事業」「アジアその他事業」の報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

日本国内事業


主に国内において、蒸気ボイラや温水ボイラ、水処理機器、メディカル機器などの関連機器の製造・販売および諸工事、ならびにこれら製品の有償保守管理契約や点検契約などのメンテナンスサービスを提供しています。

収益は、顧客である事業法人等から機器の販売代金や保守契約期間に応じた定額利用料、個別修理時のサービス料として受け取ります。運営は主に三浦工業および三浦マニファクチャリングなどの国内連結子会社が行っています。

米州事業


北中南米地域において、蒸気ボイラや温水ボイラ、水処理システムなどの機器の製造・販売、ならびに定期的な点検や保守管理契約などのメンテナンスサービスを提供しています。

収益は、現地の顧客から機器の販売代金や保守契約に基づく定額利用料、修理点検料として受け取ります。運営は主にMIURA INTERNATIONAL AMERICAS INC.などの米国、カナダ、メキシコ、ブラジル等の海外連結子会社が行っています。

アジアその他事業


アジアおよび欧州などのその他の地域において、蒸気ボイラや熱媒ボイラ、各種水処理機器の製造・販売、ならびに保守管理契約や個別点検などのメンテナンスサービスを提供しています。

収益は、現地の顧客から機器の販売代金や保守契約に応じた定額利用料、修理サービス料として受け取ります。運営は主に三浦工業(中国)有限公司や韓国ミウラ工業などの海外連結子会社が行っています。

その他事業


報告セグメントの機器販売事業及びメンテナンス事業に含まれない事業として、同社グループが展開している不動産管理や保険代理業などを行っています。

収益は、関連するサービスの対価として顧客から利用料や代理店手数料を受け取ります。運営は同社および関連する連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、力強い拡大基調が続いています。大型のM&Aによる海外事業の取り込み効果に加え、国内での堅調な機器販売とメンテナンスサービスの伸長により、売上収益は右肩上がりで成長しています。各段階利益も増加傾向にあり、利益率も安定した高水準を維持しながら過去最高益を更新し続けています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 1,435億円 1,584億円 1,597億円 2,513億円 2,687億円
税引前利益 202億円 235億円 268億円 292億円 379億円
利益率(%) 14.1% 14.8% 16.8% 11.6% 14.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 142億円 169億円 194億円 229億円 276億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益状況を見ると、増収に伴い売上総利益が増加し、売上総利益率も改善しています。海外の買収企業の業績が通年で寄与したことや、国内事業での付加価値の高い提案が奏功し、販管費の増加を吸収して営業利益の大幅な増益を達成しました。営業利益率も向上し、収益性の高さが際立っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 2,513億円 2,687億円
売上総利益 942億円 1,016億円
売上総利益率(%) 37.5% 37.8%
営業利益 253億円 309億円
営業利益率(%) 10.1% 11.5%


販売費及び一般管理費(721億円)のうち、給料が100億円(構成比14%)、手数料が52億円(同7%)、研究開発費が35億円(同5%)を占めています。売上原価(1,671億円)では、材料費や外注費などが多くを占め、商品及び製品売上原価のほか、メンテナンス原価や工事売上原価が含まれています。

(3) セグメント収益


各セグメントの売上動向を見ると、日本国内はボイラや関連機器の販売に加え、有償保守契約の増加により順調に売上を伸ばしています。米州事業は米国における買収企業の業績反映により増収を達成し、アジアその他事業も各国でのボイラ販売が堅調に推移したことで、全地域での成長を実現しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
日本国内事業 1,327億円 1,432億円
米州事業 862億円 913億円
アジアその他事業 371億円 394億円
調整額 -46億円 -52億円
連結(合計) 2,513億円 2,687億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、本業で創出したキャッシュを設備投資や有利子負債の返済に充てる、堅実で優良な健全型キャッシュ・フローとなっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 341億円 424億円
投資CF -1,346億円 -7億円
財務CF 1,197億円 -242億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.9%でこちらも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「熱・水・環境の分野で、環境に優しい社会、きれいで快適な生活の創造に貢献します」を企業理念に掲げています。エネルギーの有効利用や環境関連の分野で有用な製品やサービスを独自の技術力で創出し、世界のお客様の役に立つことで、中長期的な企業価値の最大化と社会的責任を果たすことを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、「我々はわが社を最も働きがいのある、最も働きやすい職場にしよう」をモットーに掲げています。信頼・連帯感・誇りで結ばれる風通しの良い職場の実現を目指し、すべての社員に挑戦できる機会を均等に与え、多様な価値観を尊重しつつ公平で活力ある企業風土づくりと人財育成に取り組む文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、3年後の目標値を固定する「固定方式」による中期経営計画を策定しています。中長期的な企業価値向上を図るため、ESG経営への取り組みや生産性向上を推進し、持続的な利益成長により株主利益の最大化を目指しています。

* 2028年3月期 売上収益:3,000億円
* 2028年3月期 営業利益:365億円
* ROE:12%以上を維持

(4) 成長戦略と重点施策


「スーパーメンテナンス会社」を目指し、国内では独自技術によるトータルソリューションを進化させて提供し事業拡大を図ります。海外では「熱プロバイダー」として人的投資や拠点網拡充を進め、シナジー創出と企業ブランド浸透を推進します。環境負荷低減、トータルソリューション、ワンストップサービスを軸にM&A等も活用してグローバル展開を加速します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


お客様に役立つ「技術・生産力」「営業・販売力」「メンテナンス力」と、愛され信頼される「サービス力」を高める人財育成に注力しています。従業員一人ひとりの多様性を尊重し、働きがいと働きやすさを両立させる社内環境の整備や、新たな事業展開に向けた専門知識の習得、グローバル事業を担う人財育成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.6歳 15.2年 7,339,099円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.8%
男性育休取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 58.3%
男女賃金差異(正規雇用) 61.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 35.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、熱ソムリエ対象資格の資格保有数(2,050個)、研修受講者数(4,998名)、有給休暇取得率(74.8%)、従業員エンゲージメントスコア(53.5)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 減損会計に関するリスク


同社グループは、事業用の不動産をはじめとする様々な資産や、M&Aによって取得したのれん等の資産を保有しています。これらの資産において、時価の下落や将来の事業環境の変化等により期待した成長シナジーが達成できず、将来のキャッシュ・インフローが低下した場合、減損処理が発生し業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) カントリーリスク


同社グループは複数の国や地域でグローバルに事業活動を展開しています。進出国における政治・経済・社会・法制度などの急激な変化や、暴動・テロ・疫病などの発生による経済活動の制約、サプライチェーンや流通網の遮断等が発生した場合、生産活動や販売・メンテナンス体制に支障をきたし、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 税務に関するリスク


同社グループは、各国の税法や移転価格税制などの国際税務ルールに準拠して適正な納税を行っています。しかしながら、事業を展開する各国の税制の変更や、移転価格ポリシーに基づく取引価格に関する税務当局との見解の相違などにより、予期せぬ追加的な税負担が生じた場合、同社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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