和井田製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

和井田製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場に上場する、金型および切削工具関連業界向けのCNC研削盤メーカーです。硬脆材料の研削など特殊技術に強みを持ち、ニッチトップ戦略を展開しています。直近の業績は、売上高が前期比でほぼ横ばいを維持したものの、研究開発費や海外展開費用等の増加により減益となりました。


※本記事は、株式会社和井田製作所 の有価証券報告書(第96期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 和井田製作所ってどんな会社?


独自の研削加工技術を核に、金型・切削工具業界向けの精密工作機械を開発・製造するグローバルニッチ企業です。

(1) 会社概要


1933年に和井田製作所として創業し、1946年に株式会社として設立されました。1968年に成形研削盤、1978年にCNC成形研削盤を開発し、現在の事業基盤を確立しています。2005年にJASDAQ証券取引所へ上場しました。海外展開も進めており、2014年に台湾の現地法人を連結子会社化したほか、2022年にドイツ、2025年にはアメリカに現地法人を設立し、グローバル体制を強化しています。

同グループは連結従業員196名、単体172名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は代表取締役会長兼社長の和井田光生氏で、第2位も創業家出身の和井田俶生氏となっており、創業家が主要株主として名を連ねています。また、第3位には取引金融機関である株式会社十六銀行が入っています。

氏名 持株比率
和井田 光生 6.71%
和井田 俶生 5.01%
株式会社十六銀行 4.93%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長兼社長は和井田光生氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
和井田 光生 代表取締役会長兼社長 1971年同社入社。営業部長、国際部長などを経て2006年社長就任。2009年会長、2014年より会長兼社長。2022年に会長となり、2025年6月より現職。
久 保 朝 義 取締役副会長 1976年同社入社。営業本部長、専務取締役、副社長を経て2022年代表取締役副会長に就任。2024年6月より現職。和井田精機股份有限公司董事長を兼務。
比 良 謙 吾 常務取締役営業本部長兼 海外営業部長兼 販売企画部長 1998年同社入社。営業部長を経て2021年取締役就任。2024年6月より現職。欧米子会社の取締役も兼務。
疋 田 寿 久 常務取締役技術本部長 1988年同社入社。技術部長を経て2022年取締役就任。2024年6月より現職。米国子会社の取締役も兼務。
上 小 家  崇 取締役管理本部長兼 経営企画部長兼 法務部長 1991年十六銀行入行。2022年同社に入社し内部監査室長、法務部長を経て2025年6月より現職。
松 村 忠 典 取締役(常勤監査等委員) 1981年岐阜相互銀行入行。2011年同社に入社し総務部長を経て2020年取締役就任。2024年6月より現職。


社外取締役は、山下英一(税理士)、中屋利洋(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、精密工作機械の製造・販売を行う事業を展開しており、主に「金型関連研削盤」「切削工具関連研削盤」「その他の機械」および「アフターサービス」に分類されます。

(1) 金型関連研削盤


複雑な輪郭形状を高精度に加工する成形研削盤や、精密金型・精密機械部品等の穴加工・輪郭加工を行うジグ研削盤を提供しています。主な顧客は精密金型メーカー等であり、最終製品としてはスマートフォンやPCなどに使用される精密部品の製造に利用されています。

同社および連結子会社の和井田精機股份有限公司が製造・販売を行い、製品の販売対価として収益を得ています。また、欧米の連結子会社であるWAIDA Europe GmbHおよびWAIDA AMERICA INC.が販売促進やサポートを行っています。

(2) 切削工具関連研削盤


切削加工に使用される刃先交換チップ(スローアウェイチップ)の外周・溝・上下面を加工する刃先交換チップ研削盤や、ドリル・エンドミル等の軸付工具を加工する軸付工具研削盤を提供しています。顧客である切削工具メーカーは、これらの機械を用いて自動車や航空機部品等の製造に使われる工具を生産しています。

運営主体は同社および和井田精機股份有限公司です。ニッチな市場において高いシェアを獲得しており、機械本体の販売によって収益を得ています。海外市場においても、各地域の連結子会社を通じて販売活動を展開しています。

(3) その他の機械およびアフターサービス


上記以外の特殊または専用的な金属加工機械の開発・販売や、納入した各種研削盤のアフターサービス(有償修理)、部品販売、オーバーホールを行っています。顧客の個別ニーズに応じた特殊機械の提供や、長期的な稼働を支えるメンテナンスサービスを提供します。

特殊機械の製造・販売およびメンテナンスサービスの提供による対価を収益源としています。同社グループ全体で顧客へのサポート体制を構築し、機械のライフサイクルを通じたサービスを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績推移を見ると、売上高は40億円台から70億円台へと拡大し、近年は75億円前後で安定して推移しています。利益面では、2023年3月期に経常利益率が約16%と高い水準に達しましたが、直近の2025年3月期は約10%まで低下しました。それでも売上高経常利益率は2桁に近い水準を維持しており、底堅い収益力を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 42.1億円 64.9億円 75.8億円 75.4億円 75.5億円
経常利益 3.3億円 10.4億円 12.1億円 10.9億円 7.3億円
利益率(%) 7.7% 16.1% 16.0% 14.5% 9.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.2億円 6.9億円 8.6億円 7.1億円 4.4億円

(2) 損益計算書


売上高は前期とほぼ同水準を維持しましたが、売上原価率は約61%で安定しています。一方、販売費及び一般管理費が増加したことにより、営業利益および経常利益は減少しました。営業利益率は前期の12.9%から9.4%へと低下していますが、依然として製造業としては比較的高い収益性を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 75.4億円 75.5億円
売上総利益 29.6億円 29.7億円
売上総利益率(%) 39.2% 39.3%
営業利益 9.7億円 7.1億円
営業利益率(%) 12.9% 9.4%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が6.1億円(構成比27%)、給料及び賞与が4.9億円(同22%)を占めています。積極的な研究開発投資が行われていることがコスト構造から読み取れます。

(3) セグメント収益


金型関連研削盤は国内および欧米向けが好調で増収となりましたが、切削工具関連研削盤は横ばい、その他の機械は大幅な減収となりました。アフターサービスは微減で安定しています。全体としては、地域や製品構成の変化により売上高は前期並みを維持しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
金型関連研削盤 17.6億円 19.4億円
切削工具関連研削盤 44.0億円 44.4億円
その他の機械 2.7億円 0.8億円
アフターサービス 11.1億円 10.9億円
連結(合計) 75.4億円 75.5億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

和井田製作所は、工作機械の製造・販売を主軸とする企業です。

営業活動によるキャッシュ・フローは、利益計上や売上債権の減少等により収入を得ましたが、棚卸資産の増加や税金等の支払いにより、前年と比較して収入額は減少しました。投資活動では、有形・無形固定資産の取得により資金を使用しました。財務活動では、借入による収入があったものの、借入金の返済や配当金の支払いにより、資金を使用しました。これらの活動の結果、期末の現金及び現金同等物は増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 11.4億円 9.2億円
投資CF -3.3億円 -4.0億円
財務CF -5.1億円 -0.1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、コア技術である精密工作機械製造技術、制御技術、研削加工技術を基盤とし、顧客との直接対話によって開発した独創的な工作機械を提供することを基本方針としています。最良の品質とコストで製品を提供し、技術と製品を継続的に進化させることで、顧客の更なる満足に応え、特殊研削盤分野でのトップメーカーを目指しています。

(2) 企業文化


「常に顧客の声に耳を傾ける」という基本的な考えを根底に持ち、「顧客第一主義」を徹底しています。模倣ではなく独創的な製品開発を最優先し、少ロット生産方式で日々製品を進化させることで、「顧客のニーズを的確に把握した製品づくり」と「顧客に求められる機械づくり」を実践する姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、持続的な成長と安定した収益の確保のために「経常利益率」を経営上の重要な指標と位置付けています。2026年3月期については、中国を中心に金型関連研削盤の受注が活発である一方、先行投資による費用増加を見込んでいます。

* 2026年3月期 売上高:7,566百万円
* 2026年3月期 経常利益:623百万円(経常利益率8.2%)

(4) 成長戦略と重点施策


グローバルニッチトップを目指し、海外拠点を活用した市場展開を加速させています。特に欧米地域での販売促進やサポート強化を図るとともに、金型・切削工具業界向けの戦略製品や新製品の投入により需要拡大を目指します。また、コア技術を活かした新分野への進出や、原価管理の徹底、業務システムの改善による経営基盤の強化にも取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


少子高齢化による人手不足をリスク要因と捉え、雇用条件の改善やインターンシップ等を通じた積極的な人材確保を進めています。また、熟練技術者のスキル活用と次世代への継承を目的として定年延長制度を導入しています。従業員が能力を発揮できる環境づくりや、目標管理による評価、階層別研修などを通じてキャリア形成を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.7歳 16.3年 6,286,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者に占める女性比率(20%以上(目標値))、男性従業員の育休取得率(66%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気循環サイクルと設備投資動向


同社が属する工作機械業界は売上の変動が大きく、顧客である製造業の設備投資動向の影響を強く受けます。特に主要顧客である金型関連業界や切削工具関連業界の投資意欲が減退した場合、同社の業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外需要の変動


海外売上高比率が高いため、中国・アジア・欧米等の各地域における景気変動や政情不安がリスク要因となります。また、為替レートの変動は価格競争力や円換算後の業績数値に直接的な影響を与える可能性があります。

(3) 部品調達に関するリスク


高度な技術を要する製品を扱っているため、一部の部品について安定調達が困難になったり、代替調達先の確保が難しい場合があります。サプライチェーンの混乱により部品確保が滞った場合、生産遅延や機会損失、調達コストの上昇による利益率悪化のリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。