#記事タイトル:「新東工業転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」
※本記事は、新東工業株式会社の有価証券報告書(第129期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 新東工業ってどんな会社?
表面処理や鋳造設備の製造販売をグローバルに展開する産業用機械メーカーです。
■(1) 会社概要
1934年設立の久保田製作所を源流とし、1960年に新東工業へ商号変更しました。1954年に名証、1962年に東証へ上場しています。早くから海外展開を進め、台湾、韓国、米国等に合弁会社を設立しました。近年ではフランスのスリーディーセラム社やイギリスのオメガ社などを買収し、グローバルでの事業基盤を拡大しています。
従業員数は連結で4,760名、単体で1,662名です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は明治安田生命保険相互会社、第3位は三菱UFJ銀行となっており、主に信託銀行や金融機関が上位株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.42% |
| 明治安田生命保険相互会社 | 4.32% |
| 三菱UFJ銀行 | 3.77% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表取締役社長執行役員は永井淳氏が務めており、社外取締役比率は33.3%(15名中5名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 永井 淳 | 代表取締役社長執行役員 | 1984年同社入社。取締役総合企画部長、常務、代表取締役専務、副社長を経て、2006年より代表取締役社長。2021年より現職。 |
| 仲道 賢一 | 取締役専務執行役員 | 1989年新東ブレーター入社。同社ブラスト事業部長、執行役員、常務執行役員等を経て、2026年より現職。 |
| 武田 裕之 | 取締役専務執行役員 | 1992年新東ブレーター入社。中国 青島新東機械有限公司 総経理、董事長等を歴任し、2026年より現職。 |
| 内山 浩光 | 取締役常務執行役員 | 1983年トヨタ自動車入社。同社電池・FC生技部部長等を経て、2020年同社顧問。2024年より現職。 |
| 中根 幹夫 | 取締役常務執行役員 | 1985年同社入社。同社環境事業部長、エコテックカンパニー長等を歴任し、2026年より現職。 |
| 鈴木 崇 | 取締役常務執行役員 | 1988年同社入社。エコテックカンパニー副カンパニー長、環境事業部長等を歴任し、2025年より現職。 |
社外取締役は、上田良樹(元三菱商事テクノス社長)、山内康仁(元アイシン精機社長)、内永ゆか子(元日本アイ・ビー・エム取締役)、栗原博(元富士ゼロックス社長)、鶴正登(元NOK社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「表面処理事業」「鋳造事業」「環境事業」「搬送事業」「特機事業」および「その他」の事業を展開しています。
■表面処理事業
ショットブラストマシン、エアーブラストマシン等の表面処理装置や、投射材、研磨材などの製造販売、および表面処理の受託加工を行っています。自動車や電子部品など幅広い産業の顧客に対し、加工プロセスの自動化や無人化等のソリューションを提供しています。
収益は、顧客に対する機械装置や部品、消耗品の販売、および加工サービスの提供対価として得ています。運営は新東工業のほか、国内の子会社シントーアドバンストセラミックスや、海外の青島新東機械有限公司、エラスティコスなどのグループ各社が行っています。
■鋳造事業
鋳型造型装置や中子造型装置、鋳物砂処理装置、自動注湯装置などの鋳造関連設備や部分品、耐摩耗鋳物等の製造販売を行っています。自動車や建設機械などを中心としたグローバルな顧客に対し、環境負荷の低減と品質向上を実現する設備を提供しています。
収益は、顧客への鋳造設備プラントの納入や、部品・消耗品の販売対価として受け取っています。運営は同社のほか、海外の子会社であるハインリッヒワグナーシントーマシーネンファブリーク社や青島新東機械有限公司、オメガシントーなどのグループ各社が担っています。
■環境事業
集塵装置、脱臭装置、廃水処理装置、VOCガス浄化装置といった環境保全関連の設備装置や部分品等の製造販売を行っています。工場などの作業環境改善や火災事故防止、排出物の削減を目指す顧客企業に対して製品を提供しています。
収益は、環境設備装置の販売および据付・メンテナンス等の役務提供対価として得ています。運営は同社が主体となって行うほか、海外の子会社である台湾新東機械股份有限公司やタイ新東工業などのグループ各社が現地での製造販売を行っています。
■搬送事業
昇降装置、段差解消機、グラビティコンベアなどの搬送システムや関連設備の製造販売を行っています。物流業界や倉庫関連、食品メーカー、自動車業界などの顧客に対し、荷役作業における人手不足解消や省力化を実現する製品を提供しています。
収益は、リフトやコンベヤ等の搬送装置の販売およびシステム構築の対価として顧客から得ています。運営は、国内では子会社であるメイキコウが主体となり、海外では米国の子会社であるロバーツシントー社がそれぞれ事業を展開しています。
■特機事業
検査・測定装置、サーボシリンダ、ハンドリングロボット、機能性粉末、3Dプリンター装置などの特機設備や部分品の製造販売を行っています。電気・電子部品メーカーや電池市場などに対し、高精度な計測システムや自動化装置を提供しています。
収益は、特殊機械装置やセラミックス製品等の販売対価として顧客から受け取っています。運営は同社のほか、子会社であるメイキコウやシントーアドバンストセラミックス、海外ではスリーディーセラムシントー社などのグループ各社が行っています。
■その他
上記の報告セグメントに含まれない事業として、機械設計や福利厚生事業、海外子会社の管理・運営などの業務を展開しています。グループ全体の事業活動を円滑に進めるためのサポート機能を提供しています。
収益は、機械設計などの役務提供に伴う対価として得ています。運営は、機械設計を行う子会社の新東エンジニアリングや福利厚生事業を担う東寿興産が国内で行うほか、海外ではシントーアメリカ社やシントーヨーロッパ社が地域統括業務を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は右肩上がりで成長を続け、直近の期間では1,762億円に達しています。一方、経常利益は安定して推移しているものの、直近では海外子会社の減損損失等の特別損失計上により、当期純利益が大幅な赤字となる厳しい状況も見られます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 992億円 | 1,064億円 | 1,155億円 | 1,502億円 | 1,762億円 |
| 経常利益 | 45億円 | 40億円 | 75億円 | 32億円 | 34億円 |
| 利益率(%) | 4.5% | 3.7% | 6.5% | 2.1% | 1.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 14億円 | 51億円 | 59億円 | 32億円 | -265億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い売上総利益・営業利益ともに増加しています。一方で、利益率については原材料高や販管費の増加等により、微減傾向で推移しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,502億円 | 1,762億円 |
| 売上総利益 | 427億円 | 508億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.4% | 28.9% |
| 営業利益 | 30億円 | 38億円 |
| 営業利益率(%) | 2.0% | 2.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料報酬が164億円(構成比35%)、運送費及び荷造費が57億円(同12%)、研究開発費が29億円(同6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である表面処理事業や鋳造事業が売上高の増加を牽引し、増収となっています。利益面でも表面処理事業や環境事業が堅調な伸びを見せた一方で、特機事業は減収減益となり赤字が拡大しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 表面処理事業 | 778億円 | 965億円 | 2億円 | 11億円 | 1.1% |
| 鋳造事業 | 417億円 | 510億円 | 16億円 | 19億円 | 3.8% |
| 環境事業 | 120億円 | 132億円 | 16億円 | 17億円 | 13.3% |
| 搬送事業 | 92億円 | 81億円 | 9億円 | 9億円 | 11.1% |
| 特機事業 | 94億円 | 71億円 | -4億円 | -10億円 | -14.0% |
| その他 | 2億円 | 3億円 | 0.8億円 | 1億円 | 34.8% |
| 調整額 | - | - | -10億円 | -9億円 | - |
| 連結(合計) | 1,502億円 | 1,762億円 | 30億円 | 38億円 | 2.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 24億円 | 88億円 |
| 投資CF | -303億円 | -41億円 |
| 財務CF | 153億円 | -60億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-14.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「HEART(信頼される技術を通じて、人間としての豊かさと成果を)」を経営理念に掲げています。モノづくりの新たな価値を創造し、世界のお客様とともに成果と喜びを分かち合うことを使命とし、「技術の差別化」と「信頼のサポート」によりステークホルダーとの絆を深め、新しい提案を提供し続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
「モノづくりの心を大切にして、社会に貢献したい」という思いを創業以来大切にしています。世界中の仲間たちとともに知恵を出し合い、技術を磨いて新たな価値を創出する「感動の共創」を重視し、お客様にしっかりと寄り添いながら、多種多様なニーズの実現に向けた最善策をともに考え、新しい価値を届ける行動様式が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
2024年4月から2027年3月までの3カ年の中期経営計画『「共創」~新しい価値を求めて~ 地球とともに、仲間とともに』を推進し、「お客さまに選ばれつづける」ための体制づくりを強化しています。目標数値として以下の達成を目指しています。
* 売上総利益率 +3pt(31.9%)
* 一人あたり付加価値額 +10%(3,100万円)
* 売上高EBITDA比率 8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
事業領域を「素材づくり」「形づくり」「表面づくり」と再定義し、アフターサービス市場へのシフト等を通じて収益向上とROEの改善を図ります。形づくりでは3Dプリンタ関連技術への投資、表面づくりではレーザ技術への投資を強化します。また、「環境技術」「IoT技術」「エネルギー技術」「ハンドリング技術」「検査・評価技術」の5つのコア技術を高度化し、省人化やカーボンニュートラル実現に貢献する付加価値提案を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「社員に人生の舞台として選ばれる会社」を目指し、人材こそが最大の財産であるとする「活人主義」を人事制度の根幹に据えています。多様な人材が意欲的に挑戦し、強みを発揮できる環境を提供するとともに、世界に通用する技能や技術の習得を奨励しています。個人の能力開発やスキル向上に努めた社員が正当に報われる制度を通じて、中長期的な企業競争力の強化を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.0歳 | 16.6年 | 6,712,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.3% |
| 男性育児休業取得率 | 75.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 66.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期雇用労働者) | 62.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車業界の大変革に伴う需要変動リスク
同社製品の主要顧客である自動車業界は、電動化の進展やカーシェアリングの普及等により大きな変革期を迎えています。これにより自動車を構成する素材や部品が変化し、鋳物部品の需要減少や市場成長の鈍化が生じた場合、設備投資が抑制されて同社製品の受注が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料・エネルギー価格の高騰リスク
製造に使用する鋼材やスクラップ等の原材料価格の上昇や、主力製品である消耗品製造に伴う電力などのエネルギーコストの高騰が懸念されます。これらのコスト増加分を製品の販売価格に十分に転嫁できない場合、同社グループの収益性が低下し、財政状態やキャッシュ・フローに重大な影響を与えるリスクがあります。
■(3) 情報セキュリティ及び自然災害等のリスク
重要な機密情報や個人情報の漏洩、不正アクセスによるシステム障害が発生した場合、社会的信用の失墜や補償費用が発生する恐れがあります。また、主力製造拠点が集中する愛知県での大規模地震や、気候変動による風水害、感染症の流行等により操業が中断した場合、事業運営に深刻な支障をきたすリスクがあります。



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