#記事タイトル:新東工業転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、新東工業株式会社 の有価証券報告書(第128期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 新東工業ってどんな会社?
表面処理装置や鋳造設備などの産業機械を製造・販売するメーカーです。グローバルに事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1934年10月に名古屋市で株式会社久保田製作所として設立されました。1954年6月に名古屋証券取引所(現プレミア市場)、1962年9月に東京証券取引所(現プライム市場)へ上場しました。2024年にはフランスのエラスティコス社、ドイツのシントーアグトス社を相次いで子会社化し、海外事業を拡大しています。
従業員数は連結4,844名、単体1,664名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は主要取引銀行である三菱UFJ銀行、第3位は明治安田生命保険となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.09% |
| 三菱UFJ銀行 | 4.35% |
| 明治安田生命保険 | 4.32% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表取締役社長執行役員は永井 淳氏です。取締役における社外取締役の比率は45.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 永井 淳 | 代表取締役社長執行役員 | 1984年同社入社。取締役総合企画部長、常務取締役、代表取締役専務、取締役副社長を経て2006年6月より現職。ハインリッヒワグナーシントーマシーネンファブリーク社代表取締役を兼務。 |
| 仲道 賢一 | 取締役常務執行役員 | 1989年新東ブレーター入社。同社ブラスト事業部長、取締役海外事業本部長などを経て2024年4月より現職。キャステックカンパニー長、経理・財務担当。 |
| 内山 浩光 | 取締役常務執行役員 | 1983年トヨタ自動車入社。同社電池・FC生技部長などを経て2020年同社顧問。2024年4月より現職。事業推進本部長、人事担当。 |
| 中根 幹夫 | 取締役常務執行役員 | 1985年同社入社。環境事業部長、常務執行役員エコテックカンパニー長などを経て2024年4月より現職。ものづくり本部長兼豊川製作所長、環境統括、システム担当。 |
| 武田 裕之 | 取締役常務執行役員 | 1992年新東ブレーター入社。青島新東機械有限公司総経理、同社執行役員営業本部長などを経て2024年4月より現職。サーフェステックカンパニー長、中国総代表。 |
| 鈴木 崇 | 取締役常務執行役員 | 1988年同社入社。エコテックカンパニー副カンパニー長、執行役員などを経て2025年6月より現職。エコテックカンパニー長兼環境事業部長兼幸田事業所長。 |
社外取締役は、上田 良樹(元三菱商事テクノス社長)、山内 康仁(元アイシン精機社長)、内永 ゆか子(元日本IBM取締役)、栗原 博(元富士ゼロックス社長)、鶴 正登(元NOK会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「表面処理事業」「鋳造事業」「環境事業」「搬送事業」「特機事業」および「その他」事業を展開しています。
■表面処理事業
ショットブラストマシン、エアーブラストマシン、バレル研磨装置などの機械装置や、投射材、研磨材などの消耗品を製造販売しています。また、受託加工サービスも提供しており、自動車や航空機など幅広い産業のモノづくりを支えています。
製品販売による代金や加工料が主な収益源です。運営は同社が行うほか、国内では子会社の新東ブイセラックス、海外ではエラスティコス社、シントーアグトス社、青島新東機械有限公司などが製造販売を行っています。
■鋳造事業
鋳型造型装置、中子造型装置、自動注湯装置などの鋳造設備全般や、鋳造事業部分品、消耗品などを製造販売しています。金属を溶かして型に流し込み製品を作る鋳造プロセスに必要な設備を一貫して提供しています。
設備や部品の販売代金が収益となります。運営は同社が主体となり、海外ではロバーツシントー社、ハインリッヒワグナーシントーマシーネンファブリーク社などが担当しています。
■環境事業
工場等の作業環境を改善するための集塵装置、脱臭装置、廃水処理装置などを製造販売しています。粉塵や有害ガスの除去を通じて、働く人の健康と安全を守る設備を提供しています。
装置や部品の販売代金が収益源です。運営は主に同社が行い、海外では台湾新東機械股份有限公司などが製造販売を行っています。
■搬送事業
昇降装置、段差解消機、搬送システムなどを製造販売しています。物流倉庫や工場内での効率的な物の移動を支援する機器を提供しています。
機器やシステムの販売代金が収益となります。国内では主に子会社のメイキコウが、海外ではロバーツシントー社が製造販売を行っています。
■特機事業
検査・測定装置、サーボシリンダ、ハンドリングロボット、セラミックス製品などを製造販売しています。精密な制御技術や測定技術を活かした製品を展開しています。
製品の販売代金が収益源です。運営は同社のほか、子会社のメイキコウ、新東ブイセラックス、海外ではスリーディーセラムシントー社などが行っています。
■その他
上記セグメントに含まれない事業として、機械設計や福利厚生事業などを行っています。
機械設計料やサービス利用料などが収益となります。運営は子会社の新東エンジニアリングや東寿興産などが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に当期は前期比約30%増と大きく伸長しています。一方、利益面では経常利益率が変動しており、当期は2%台に低下しました。当期純利益も前期の過去最高水準から減少しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 825億円 | 992億円 | 1,064億円 | 1,155億円 | 1,502億円 |
| 経常利益 | 31億円 | 45億円 | 40億円 | 75億円 | 32億円 |
| 利益率(%) | 3.7% | 4.5% | 3.7% | 6.5% | 2.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6億円 | 28億円 | 62億円 | 87億円 | 28億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の大幅な増加に伴い売上総利益も増加しましたが、売上総利益率は微減となりました。販売費及び一般管理費が増加したことにより、営業利益および営業利益率は低下しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,155億円 | 1,502億円 |
| 売上総利益 | 333億円 | 427億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.9% | 28.4% |
| 営業利益 | 54億円 | 30億円 |
| 営業利益率(%) | 4.7% | 2.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料報酬が140億円(構成比35%)、運送費及び荷造費が45億円(同11%)を占めています。売上原価については内訳の詳細データがありません。
■(3) セグメント収益
当期は表面処理事業がM&A効果等により大幅な増収となりましたが、利益面では減少しました。鋳造事業と環境事業は増収増益となり、特に鋳造事業の利益が大きく伸びました。搬送事業は増収ながら減益、特機事業は営業損失を計上しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 表面処理事業 | 461億円 | 778億円 | 37億円 | 2億円 | 0.2% |
| 鋳造事業 | 399億円 | 417億円 | 3億円 | 16億円 | 3.9% |
| 環境事業 | 115億円 | 120億円 | 11億円 | 16億円 | 13.7% |
| 搬送事業 | 83億円 | 92億円 | 12億円 | 9億円 | 9.9% |
| 特機事業 | 94億円 | 94億円 | 4億円 | -4億円 | -4.5% |
| その他 | 2億円 | 2億円 | 1億円 | 1億円 | 49.7% |
| 調整額 | -26億円 | -34億円 | -14億円 | -10億円 | - |
| 連結(合計) | 1,155億円 | 1,502億円 | 54億円 | 30億円 | 2.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
新東工業は、連結会計年度末の現金及び現金同等物が減少したものの、営業活動によるキャッシュ・フローは黒字を確保しました。投資活動では、子会社株式の取得等により一時的に支出が増加しましたが、財務活動においては、長期借入れにより資金を調達しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 59億円 | 24億円 |
| 投資CF | -7億円 | -303億円 |
| 財務CF | -30億円 | 153億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「HEART(信頼される技術を通じて、人間としての豊かさと成果を)」を経営理念として掲げています。モノづくりの新たな価値を創造し、世界中の顧客と共に成果と喜びを分かち合うことを使命とし、「技術の差別化」と「信頼のサポート」によりブランド価値を高めることを目指しています。
■(2) 企業文化
「モノづくりの心を大切にして、社会に貢献したい」という思いを大切にしています。顧客や仲間たちに「ありがとう」と言われる会社を目指し、顧客に寄り添い、最善策を共に考え提供することを通じて絆を強化する姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2024年4月から2027年3月までの3年間を対象とする中期経営計画“Co-creation”を策定しています。2027年3月期において以下の指標達成を目指しています。
* 新規お客さま数:3,900社の増加
* 部品カバー率:+5pt向上
* 売上総利益率:+3pt
* 一人あたり付加価値額:+10%
* 売上高EBITDA比率:8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
企業価値向上のため、資本コスト低減と営業利益拡大に注力します。事業領域を「素材づくり」「形づくり」「表面づくり」と再定義し、3Dプリンタやレーザ技術への投資を行います。また、「環境技術」「IoT技術」「エネルギー技術」「ハンドリング技術」「検査・評価技術」の5つの強み技術を高度化し、付加価値を提案します。
* ROE:のれん償却完了後に8%超を目指す
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「活人主義」を掲げ、社員が生きがいを持って働き、その能力を最大限に活かす経営を目指しています。社員一人ひとりが世界に通用する技能・技術を身に付けられるよう、OJTやOFF-JTを通じた教育を展開し、個人の能力向上を奨励しています。また、ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、多様な人材が活躍できる環境整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.2歳 | 17.4年 | 6,543,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.2% |
| 男性育児休業取得率 | 40.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 66.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 59.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場の競争激化
同社グループの主要市場では、現地のローカルメーカーを含む競合他社との激しい競争が行われています。設備投資環境の急激な変動により競争がさらに激化した場合には、受注台数や価格の低下を招き、経営成績等に悪影響を与える可能性があります。
■(2) 自動車関連業界の業況の影響
主要顧客である自動車業界は電動化などの大変革期にあります。素材や部品の変化による鋳物部品の減少や市場成長の鈍化により設備投資が抑制された場合、同社製品の受注が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 原材料等調達価格の影響
鋼材やスクラップなどの原材料価格の上昇は製造コストの増加につながります。これらのコスト上昇分を製品価格に十分に転嫁できない場合、同社グループの収益性が低下し、経営成績に悪影響を与える可能性があります。
■(4) 人材の確保及び合理化・体質強化
同社製品は労働集約的な面があり、優秀な人材の確保が不可欠です。少子化や労働市場の逼迫により必要な人材を確保できない場合、競争力が低下する恐れがあります。また、省力化やデジタル技術への対応が遅れた場合、製造コスト低減が実現できず、業績に影響を与える可能性があります。



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