**記事タイトル:千代田化工建設転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態**
※本記事は、千代田化工建設の有価証券報告書(第98期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 千代田化工建設ってどんな会社?
LNGや石油化学プラントを中心に展開する総合エンジニアリング企業の特徴を紹介します。
■(1) 会社概要
1948年に三菱石油の工事部門が独立して創立されたエンジニアリング企業です。1961年には東京証券取引所に上場を果たしました。2008年に三菱商事と資本業務提携を結び、強固なパートナーシップを築いています。近年もグループ会社の再編を行うなど、事業基盤の強化を継続的に進めています。
従業員数は連結で3,489名、単体で1,661名です。筆頭株主は事業会社の三菱商事で約60%を保有しており、第2位は三菱UFJ銀行、第3位はモルガン・スタンレーMUFG証券となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三菱商事 | 60.23% |
| 三菱UFJ銀行 | 2.08% |
| モルガン・スタンレーMUFG証券 | 1.63% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長 CEO 兼 CSOは太田光治氏です。社外取締役の比率は41.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 太田光治 | 代表取締役社長 CEO 兼 CSO | 1989年三菱商事入社。同社常務執行役員産業インフラグループCEO等を経て、2024年より現職。 |
| 小林直樹 | 代表取締役副社長執行役員成長推進本部長 | 1988年三菱商事入社。伯国三菱商事会社副社長等を歴任し、2020年同社入社。2026年より現職。 |
| 出口篤 | 代表取締役専務執行役員CFO 兼 CCO 兼 財務本部長 | 1991年東京銀行(現三菱UFJ銀行)入行。MUFGバンクトルコ頭取等を経て、2023年より現職。 |
| 榊田雅和 | 取締役会長 | 1981年三菱商事入社。同社代表取締役常務執行役員等を経て、2021年同社代表取締役会長就任。2024年より現職。 |
| 清水啓之 | 取締役顧問 | 1984年同社入社。執行役員エネルギープロジェクト事業本部長等を歴任し、2026年より現職。 |
| 佐藤聡 | 取締役 | 1991年三菱商事入社。同社執行役員産業機械本部長等を歴任し、2025年より現職。 |
| 渡部修平 | 取締役(常勤監査等委員) | 1991年三菱商事入社。同社中南米統括付CFO等を歴任し、2023年より現職。 |
社外取締役は、松川良(東芝プラントシステム代表取締役社長)、救仁郷豊(東京ガス代表取締役副社長執行役員)、黒木彰子(不二製油グループ本社最高総務責任者CAO補佐)、松尾祐美子(みなとみらい法律事務所共同代表)、椋野貴司(旭化成常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エンジニアリング」および「その他」事業を展開しています。
■エンジニアリング事業
LNGや石油・石油化学分野をはじめ、脱炭素・先端素材、ライフサイエンス分野における各種プラントや産業用設備のコンサルティングから計画、設計、調達、施工、試運転、メンテナンスまでを総合的に提供しています。国内外の顧客に対し、高度な技術とプロジェクトマネジメント力を活かしたサービスを展開しています。
主な収益源は、各種プラントや設備の設計・調達・建設等を一貫して請け負うEPC契約に基づく工事対価です。事業の運営は千代田化工建設を中心に、国内の各種産業用設備を手がける千代田エクスワンエンジニアリングなどのグループ会社が担い、海外の各地域でも子会社が設計や工事の遂行を担当しています。
■その他の事業
エンジニアリング事業を補完し、グループ全体の業務効率化や付加価値向上を目的とした各種サービスを提供しています。財務・会計のコンサルティングや人材派遣、ITシステムの開発・運用などが主な事業内容です。
収益源は、グループ内や外部企業からの業務委託費用やコンサルティング料、派遣料金などです。運営は、財務コンサルティングを行うアロー・ビジネス・コンサルティング、技術コンサルティングや人材派遣を手がける千代田ユーテックなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は大型プロジェクトの進捗などにより変動はあるものの、概ね成長基調にあります。利益面では一時期赤字を計上した年度もありましたが、直近では収益性の見直しや既存案件の着実な遂行が寄与し、大幅な黒字回復と利益率の改善を達成しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,111億円 | 4,302億円 | 5,060億円 | 4,570億円 | 4,939億円 |
| 経常利益 | 114億円 | 203億円 | -55億円 | 322億円 | 925億円 |
| 利益率(%) | 3.7% | 4.7% | -1.1% | 7.0% | 18.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -197億円 | 189億円 | -268億円 | 149億円 | 677億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が増加する中、売上総利益および営業利益が大幅に拡大しています。これは国内外で遂行中の主要プロジェクトが順調に進捗したことや、採算見直しが奏功したことによるもので、収益力が大きく高まっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,570億円 | 4,939億円 |
| 売上総利益 | 423億円 | 1,005億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.3% | 20.4% |
| 営業利益 | 244億円 | 821億円 |
| 営業利益率(%) | 5.3% | 16.6% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が53億円(構成比29%)、研究開発費が26億円(同14%)、賞与引当金繰入額が17億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
エンジニアリング事業が売上高の大部分を占めています。当期はLNGプラント関係や石油・石油化学関係、医薬・生化学・一般化学関係の分野を中心に売上が伸長し、全体の増収を牽引しました。一方、環境・新エネルギー・インフラ関係は減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| エンジニアリング事業 | 4,563億円 | 4,933億円 |
| その他の事業 | 6億円 | 7億円 |
| 連結(合計) | 4,570億円 | 4,939億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金を投資や借入金の返済に充てており、健全な資金繰りを行っていることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 512億円 | 261億円 |
| 投資CF | -42億円 | -33億円 |
| 財務CF | -3億円 | -17億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は123.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は22.2%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
パーパスとして「社会の"かなえたい"を共創(エンジニアリング)する」を掲げています。また、ミッションとして「総合エンジニアリング企業として、英知を結集し研鑽された技術を駆使して、エネルギーと環境の調和、健やかで豊かな未来を目指して事業の充実を図り、持続可能な社会の発展に貢献します。」を定めており、技術を通じた社会課題の解決を企業活動の基軸としています。
■(2) 企業文化
CSR基本方針において「信頼される企業」「環境への取り組み」「社会への貢献」「人の尊重」「公明正大な企業運営」という5つの価値観を定義し、事業活動の基盤としています。また、エンジニアリングを通じて培ってきた多様な個性を活かす自由闊達な組織風土を強みとしており、ダイバーシティ&インクルージョンを推進しながら社員一人ひとりが活き活きと能力を発揮できる環境づくりを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「経営計画2025」において、「自己変革」をテーマに掲げ、収益の安定化と多様化を目指しています。10年後には純利益300億円、Non-EPC事業の比率20%の安定・高収益企業となることをビジョンとしています。その土台作りとして、2025年から2027年までの3年間の中期的な定量目標を設定しています。
* 純利益:150億円(3年平均)
* Non-EPC事業での純利益:10億円(2027年度)
* 売上高:3,800億円(3年平均)
* 粗利益:10%以上(3年平均)
* 受注高:9,500億円(3年累計)
* 受注残:6,000億円(3年平均)
■(4) 成長戦略と重点施策
海外大型プロジェクトの着実な遂行とリスクを抑制した受注方針の改革を進め、安定した収益基盤の構築を図ります。同時に、国内ではライフサイエンスや脱炭素分野の旺盛な需要を取り込み、事業共創を通じて新規技術の社会実装を加速させる戦略です。また、これらを支えるため、複数領域の経験を積ませることで中核人財を計画的に育成・輩出する施策にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
組織と人財のWell-Being向上を目指す人的資本経営を推進しています。「相互に尊重し、挑戦し続ける自由闊達な組織風土」の醸成と「誇りと情熱を持って社会課題に挑戦を続ける人財」の育成を方針に掲げています。職種ごとに人財育成責任者を任命し、社員の自律的なキャリア形成に伴走するとともに、事業共創を担う中核人財やデジタル人財の育成、シニア層の活躍推進にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.3歳 | 14.3年 | 10,793,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.9% |
| 男性育児休業取得率 | 73.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 66.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 35.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、総合職に占める女性の割合(14%)、社内認定されたDXコア人財(37名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) パートナーとの協業リスク
大型案件では他社とジョイントベンチャーなどを組成して受注することがあり、パートナーの債務不履行や遂行能力の問題が生じた場合、連帯責任や追加負担を求められ、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は協業時にパートナーの財務や遂行能力を分析し、継続的なモニタリングでリスク管理に努めています。
■(2) 機器資材費の高騰リスク
プラント建設は見積時と発注時にタイムラグがあり、急激な社会情勢の変化による鉄鋼製品や非鉄金属、海上輸送費などの高騰リスクにさらされています。同社は調達先の多様化や早期発注、有力業者との協力関係構築に加え、顧客やパートナーとの協議を通じてコスト変動の影響を最小化する対策を講じています。
■(3) プラント事故に関するリスク
建設中または建設後のプラントで爆発や火災などの重大事故が発生し、同社に責任があると判断された場合、損害賠償などにより業績に影響が及ぶ可能性があります。これに対し、計画時の安全設計や現場での徹底した品質・安全管理に加え、適切な保険の付保や顧客との合理的な責任分担の契約を取り決めています。



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