千代田化工建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

千代田化工建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する総合エンジニアリング企業。LNGプラント等の設計・調達・建設(EPC)を主力とし、エネルギーと環境の調和を目指します。当連結会計年度は、海外大型案件の進捗や契約改定等が寄与し、減収ながらも各段階利益は大幅に改善し、黒字転換を果たしました。


※本記事は、千代田化工建設株式会社 の有価証券報告書(第97期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 千代田化工建設ってどんな会社?


世界60カ国以上でLNGや石油・化学プラント等の建設を手掛ける総合エンジニアリング企業です。

(1) 会社概要


1948年、三菱石油の工事部門が独立して創立され、1961年に東京証券取引所市場第1部に上場しました。世界的なエンジニアリング企業として、LNG、石油、化学プラント等の建設で多くの実績を有しています。2008年に三菱商事と資本業務提携を締結。2019年には経営危機を経て再生計画を策定し、事業基盤の強化を図りました。

連結従業員数は3,419名、単体では1,648名です。筆頭株主は、資本業務提携を結んでいる総合商社の三菱商事(持株比率60.23%)であり、強固なパートナーシップのもと事業を展開しています。第2位は金融機関の三菱UFJ銀行です。

氏名 持株比率
三菱商事 60.23%
三菱UFJ銀行 2.08%
千代田化工建設持株会 1.18%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長 CEO 兼 CSOは太田光治氏が務めています。社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
榊田 雅和 取締役会長 1981年三菱商事入社。同社常務執行役員コーポレート担当役員等を経て、2021年千代田化工建設代表取締役会長CEO兼CWOに就任。2024年10月より現職。
太田 光治 代表取締役社長 CEO 兼 CSO 1989年三菱商事入社。同社常務執行役員産業インフラグループCEO等を歴任。2022年千代田化工建設取締役、2024年6月より現職。
清水 啓之 取締役副社長執行役員 CWO 兼 エネルギープロジェクト事業本部長 1984年千代田化工建設入社。執行役員エネルギープロジェクト事業本部長、専務執行役員エネルギー事業統括等を経て、2024年10月より現職。
出口 篤 代表取締役専務執行役員CFO 兼 CCO 兼 財務本部長 1991年東京銀行(現三菱UFJ銀行)入行。MUFGバンク(トルコ)頭取、三菱UFJ銀行執行役員インド・スリランカ総支配人等を経て、2023年6月より現職。
小林 直樹 代表取締役専務執行役員戦略・リスク統合本部長 1988年三菱商事入社。同社インフラプロジェクト部長等を経て、2020年千代田化工建設入社。執行役員戦略・リスク統合本部副本部長等を経て、2024年6月より現職。
久我 卓也 取締役 1986年三菱商事入社。同社常務執行役員複合都市開発グループCEO、同社常務執行役員社会インフラグループCEO等を歴任。2024年7月より現職。
渡部 修平 取締役(常勤監査等委員) 1991年三菱商事入社。同社主計部長、中南米統括付CFO兼伯国三菱商事会社CFO、三菱商事ライフサイエンス取締役専務執行役員を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、松川良(元東芝プラントシステム社長)、救仁郷豊(元東京ガス代表取締役副社長執行役員)、伊藤尚志(元日本マスタートラスト信託銀行社長)、松尾祐美子(弁護士)、黒木彰子(帝京大学経済学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エンジニアリング事業」および「その他の事業」を展開しています。

エンジニアリング事業


各種産業用・民生用設備、公害防止・環境改善設備等の計画、設計、調達、施工、試運転およびメンテナンスを一貫して行っています。特にLNG、石油、石油化学等の化学工業設備の建設を得意とし、世界各国でプロジェクトを遂行しています。顧客は国内外のエネルギー会社や化学メーカー等が中心です。

収益は、プラント建設工事の請負代金(工事進行基準等に基づく)や各種コンサルティングフィー等から得ています。運営は、同社を中心に、千代田エクスワンエンジニアリングなどの国内子会社や、Chiyoda Philippines Corporation、Chiyoda Almana Engineering LLC等の海外拠点が連携して行っています。

その他の事業


エンジニアリング事業以外の付帯サービスとして、財務・会計に関するコンサルティング、人材派遣、アウトソーシング事業、統合ITシステムのコンサルティング・開発・運用等を行っています。これらは顧客企業の業務効率化やシステム支援を目的としています。

収益は、コンサルティング料、派遣料、システム開発・運用費等から得ています。運営は、アロー・ビジネス・コンサルティング(財務・会計)、千代田ユーテック(人材派遣・技術コンサル)、持分法適用関連会社のTIS千代田システムズ(ITシステム)等が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は3,000億円台から5,000億円台の間で推移しています。利益面では、大型プロジェクトの損失計上により赤字となる期もありましたが、直近の2025年3月期は大幅な増益となり、黒字転換を果たしています。利益率は変動が大きく、プロジェクトの損益状況に強く影響される傾向があります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,154億円 3,111億円 4,302億円 5,060億円 4,570億円
経常利益 85億円 114億円 203億円 -55億円 322億円
利益率(%) 2.7% 3.7% 4.7% -1.1% 7.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 80億円 -126億円 152億円 -158億円 270億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は減少したものの、売上総利益および営業利益は大きく改善しています。前期は損失を計上していましたが、当期は完成工事総利益率が向上し、営業黒字を確保しました。これは海外大型案件の採算改善などが寄与した結果です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,060億円 4,570億円
売上総利益 -2億円 423億円
売上総利益率(%) -0.0% 9.3%
営業利益 -150億円 244億円
営業利益率(%) -3.0% 5.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が47億円(構成比26%)、研究開発費が33億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


エンジニアリング事業が売上の大部分を占めており、当期は前期比で減収となりました。その他の事業は小規模ながら増収となっています。報告セグメントの利益情報は重要性が乏しいため省略されていますが、全体の利益改善は主力のエンジニアリング事業の収益性向上によるものです。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
エンジニアリング事業 5,054億円 4,563億円
その他の事業 6億円 6億円
連結(合計) 5,060億円 4,570億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスの「健全型」です。本業で資金を稼ぎ出し、投資を行いながら借入金の返済を進めている状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 627億円 512億円
投資CF -16億円 -42億円
財務CF -59億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は189.0%で市場平均を大幅に上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は5.1%で市場平均を大幅に下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「エネルギーと環境の調和」をミッションとして掲げ、エンジニアリングの力で社会的課題に対し高度な技術力を用いたソリューションを提供し、社会と共に歩むことを目指しています。また、「社会の“かなえたい”を共創(エンジニアリング)する」ことをパーパス(存在意義)として設定しています。

(2) 企業文化


顧客のニーズを的確に把握し、最も効率的な解決方法を提供することをビジネスの軸としています。高度先端技術を駆使し、グループ各社が一体となったオペレーションを展開することで、時代や社会の要請に柔軟に対応する姿勢を重視しています。また、技術による社会への奉仕を創業以来のスローガンとしています。

(3) 経営計画・目標


「経営計画2025」において、収益の安定化と多様化を実現するための自己変革を掲げています。大型プロジェクトへの集中から脱却し、10年後には純利益300億円、Non-EPC事業比率20%の安定・高収益企業を目指します。2025年度からの3年間は経営安定化期間と位置付けています。

* 純利益:150億円(3年平均)
* Non-EPC事業での純利益:10億円(2027年度)
* 売上高:3,800億円(3年平均)

(4) 成長戦略と重点施策


「エネルギーと素材」「ライフサイエンス」を主な事業領域と設定し、事業ポートフォリオの変革を進めます。既存の大型LNGプロジェクト等の着実な遂行に加え、脱炭素・先端素材分野や医薬品・バイオ分野での事業拡充を図ります。また、O&M-Xソリューションの提供や事業共創を通じて、技術側から事業側へと提供価値を拡大させます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「組織と人財のWell-Beingの実現」を目指し、組織風土と人財開発の両面から人的資本経営を推進しています。自由闊達な組織風土の醸成や、事業をリードする中核人財の輩出に注力しており、職種ごとの人財育成責任者(HRO)を配置してキャリア形成を支援しています。また、ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、多様な個性を尊重する環境整備を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.5歳 14.5年 10,378,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.1%
男性育児休業取得率 73.8%
男女賃金差異(全労働者) 66.5%
男女賃金差異(正規) 66.7%
男女賃金差異(非正規) 47.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気動向、経済・社会・政治情勢の変動


世界的な景気動向や政治情勢の変化、エネルギー政策の転換、資源価格の変動等が、顧客の投資計画に影響を及ぼす可能性があります。特に関税措置の拡大等は経済の不透明感を強め、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。これに対し、受注計画へのバックアップ案件の織り込みやNon-EPC業務への取り組み等で対応しています。

(2) 自然災害、地政学リスク等の不可抗力


地震や気候変動による自然災害、感染症、テロ・紛争等の発生は、工事従事者の安全や資機材搬入、工事進捗に影響を及ぼす可能性があります。特にウクライナ情勢や中東情勢などの地政学リスクは、サプライチェーンの混乱や資機材価格高騰を招く恐れがあります。同社は危機管理体制を強化し、有事の対応手順策定やBCPの訓練等を実施しています。

(3) パートナーリスク


案件の規模やリスク分散のため、パートナーとジョイントベンチャー等を組成して受注する場合があります。パートナーの債務不履行や財政悪化、遂行能力の問題が生じた場合、連帯責任を負うことで同社の経営に影響を与える可能性があります。協業決定時の十分な分析や取引開始後の継続的なモニタリングにより、早期のリスク発見・対処に努めています。

(4) 機器資材費の高騰


プラント建設では契約から発注までにタイムラグがあり、戦争・紛争等の社会情勢変化により機器資材価格が高騰するリスクがあります。特に鉄鋼製品や非鉄金属の価格変動、海上輸送費の上昇はコストに影響します。調達先の分散や早期発注、パートナーとの協力関係構築、ステークホルダーとの協議等を通じて、影響の最小化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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