※本記事は、オルガノの有価証券報告書(第81期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. オルガノってどんな会社?
総合水処理エンジニアリング会社として、水処理設備や消耗品、メンテナンスサービスなどを提供しています。
■(1) 会社概要
1946年にイオン交換樹脂の応用および企業化を目的として長野県諏訪市で創業しました。1961年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1966年に現在のオルガノへと社名を変更しています。1985年に同市場第一部へ指定替えされた後、1980年代からマレーシアやタイなど海外へ積極的に進出しています。
現在の従業員数は連結で2,658名、単体で1,283名です。筆頭株主は親会社であり総合化学メーカーの東ソーで、第2位および第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。東ソーとは水処理薬品の原材料の仕入れや水処理装置の販売などで取引を行っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東ソー | 44.28% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.98% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 3.81% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長執行役員は山田正幸氏が務めています。取締役会における社外取締役の比率は過半数となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山田正幸 | 取締役社長代表取締役社長執行役員 | 東洋曹達工業(現 東ソー)に入社後、バイオサイエンス事業部長などを経て、2021年より同社取締役専務執行役員、2022年より現職。 |
| 中山泰利 | 取締役常務執行役員プラント本部長 | 同社に入社後、産業プラント本部プラント事業部長やエレクトロニクス事業部長などを歴任し、2024年より現職。 |
| 須田信良 | 取締役常務執行役員技術開発本部長 | 同社に入社後、オルガノ(蘇州)水処理有限公司董事長や経営統括本部長などを歴任し、2023年より現職。 |
| 本多哲之 | 取締役常務執行役員経営統括本部長 | 同社に入社後、プラント本部電力事業部長や技術開発本部開発センター長などを歴任し、2023年より現職。 |
社外取締役は、和田守史(元栄研化学会長)、安部大作(元みずほフィナンシャルグループ副会長執行役員)、花野信子(光和総合法律事務所パートナー)、児玉直美(明治学院大学経済学部教授)、苣木雅哉(元東京放送常務取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「水処理エンジニアリング事業」「機能商品事業」を展開しています。
■水処理エンジニアリング事業
純水・超純水製造設備、用水処理設備、排水処理・排水回収設備などの水処理プラントの建設工事や、消耗品交換、メンテナンス、運転管理、改造工事といったソリューションサービスを提供しています。主に電子産業分野や一般産業、電力・上下水などの社会インフラ分野の顧客が対象です。
収益は、プラントの設計・製作・納入による工事代金や、水処理設備の稼働を支えるメンテナンス、運転管理受託等によるサービス利用料から得ています。運営は同社やオルガノプラントサービス、海外の現地法人が行っています。
■機能商品事業
水処理薬品(RO水処理薬品、排水処理薬品、ボイラ水処理薬品など)や、標準型機器・機能材(小型純水装置、フィルタ、分離精製材)、食品加工向けの食品素材・食品添加剤などの製造および販売を行っています。
収益は、各種水処理薬品や小型機器、食品素材などの製品販売による代金から得ています。運営は主に同社やオルガノフードテック、および海外現地法人が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高および経常利益ともに右肩上がりで成長しています。特に電子産業分野の先端半導体向け設備投資の拡大などを背景に、力強い増収増益のトレンドが続いています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,121億円 | 1,324億円 | 1,504億円 | 1,633億円 | 1,777億円 |
| 経常利益 | 115億円 | 160億円 | 234億円 | 316億円 | 381億円 |
| 利益率(%) | 10.3% | 12.1% | 15.6% | 19.4% | 21.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 75億円 | 86億円 | 127億円 | 207億円 | 225億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の売上高および利益はともに増加しています。プラント案件の順調な進捗やソリューション・機能商品事業の拡大などにより、売上総利益率および営業利益率の改善が進んでいます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,633億円 | 1,777億円 |
| 売上総利益 | 552億円 | 651億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.8% | 36.6% |
| 営業利益 | 311億円 | 376億円 |
| 営業利益率(%) | 19.1% | 21.2% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当・賞与が96億円(構成比35%)、技術研究費が34億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
水処理エンジニアリング事業は電子産業分野を中心とした売上拡大により大きく増収となりました。機能商品事業も水処理薬品などが好調に推移し順調に売上を伸ばしています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 水処理エンジニアリング事業 | 1,381億円 | 1,520億円 |
| 機能商品事業 | 251億円 | 257億円 |
| 連結(合計) | 1,633億円 | 1,777億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 211億円 | 131億円 |
| 投資CF | -21億円 | -27億円 |
| 財務CF | -208億円 | 31億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.6%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「水で培った先端技術を駆使して 未来をつくる産業と社会基盤の発展に貢献するパートナー企業としてあり続けます」という経営理念を掲げています。産業の発展に伴う水使用量の増大や環境課題に対し、産業分野で必要とされる高度な水処理や自然環境の保全による産業・環境・生活の調和を目指しています。
■(2) 企業文化
長期経営ビジョンにおいて、「昨日までのやり方を、明日に向けて、今日変える人をつくり、一人ひとりが働きがいと活力に満ちた企業を構築します」という方針を定めています。また、多様な価値観や専門性からイノベーションが生み出されるという共通認識のもと、多様性の確保や挑戦する風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は中長期経営計画である「ORGANO 2030」を策定し、2030年度に向けた成長の道筋を示しています。活発な投資が想定される先端半導体市場における事業機会を確実にとらえるため、グローバルでの体制拡充や技術開発を加速させています。
* 売上高は年平均成長率7%として2,600億円
* 営業利益率は18%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
半導体分野の比率や特定地域への集中度が高まる中、事業および地理的ポートフォリオの継続的な強化を最優先課題としています。安定収益が見込めるソリューション事業の成長や、機能商品事業におけるエンジニアリング事業とのシナジー追求を推進します。また、米国市場の開拓やインドでの事業戦略の立案・実行に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人材」の可能性を最大限に引き出すことを人材戦略の中心に据え、採用・育成・キャリア形成・エンゲージメント向上の各領域で取り組みを進めています。スキルマップを用いた戦略的な人材育成や、階層別・テーマ別研修、資格取得支援などを通じて、社員の学ぶ意欲と挑戦を促進する社内環境の整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.7歳 | 15.5年 | 10,366,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.0% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 81.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 66.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職(国内グループ会社)に占める女性の人数(30人)、一人あたり研修費用(102,333円)、重大な休業災の発生件数(4件)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外事業(地政学リスク)
台湾、中国、東南アジアや北米等でグローバルな事業展開を加速させる中、予期しない政治・経済の混乱や為替変動、サプライチェーンへの影響などのリスクが内在しています。特に台湾有事のリスクや米国の政策変更などが、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定の市場・顧客への集中
水処理エンジニアリング事業の売上高の大部分を電子産業分野が占めており、特に半導体市場における顧客企業や設備の再編、設備投資規模の拡大等の影響を受けやすくなっています。特定顧客への依存度が高まる中、競争激化や顧客の事業戦略の変更が業績に大きく影響する可能性があります。
■(3) 資材・工事調達
製造や建設に使用するイオン交換樹脂などの主要資材の仕入れを特定の取引先に依存しているため、供給元の経営戦略の変更や納期長期化による調達困難化のリスクがあります。また、エネルギー価格の高騰や円安による資材・工事費の上昇が、仕入価格や工事原価を押し上げる可能性があります。
■(4) 人材確保
優れた知識や経験を持つ従業員に競争力を依存しているため、人材確保に失敗した場合や離職が進んだ場合、生産キャパシティや納入品質の低下を招くリスクがあります。特に電子産業分野での受注が拡大する中、デジタル化を担う人材や多様な人材の確保競争が激しくなることが予想されます。



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