#オルガノ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社オルガノ の有価証券報告書(第80期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. オルガノってどんな会社?
水処理技術を核に、半導体産業や社会インフラを支えるエンジニアリング企業です。
■(1) 会社概要
同社は1946年、長野県諏訪市にて創業しました。1961年に東証市場第二部に上場し、1985年に第一部へ指定替えとなりました。2013年にはインドネシアに合弁会社を設立し、2021年には米国現地法人を設立するなど海外展開を加速させています。2022年の市場区分見直しにより、現在はプライム市場に上場しています。
同社グループの従業員数は連結で2,660名、単体で1,227名です。筆頭株主は総合化学メーカーである親会社の東ソーで、発行済株式の約44%を保有しており、同社は東ソーグループの一員として位置付けられています。第2位株主は、資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東ソー | 44.28% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.01% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.06% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長社長執行役員は山田正幸氏が務めています。社外取締役比率は55.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山田 正 幸 | 取締役社長代表取締役社長執行役員 | 東洋曹達工業(現 東ソー)入社。同社取締役常務執行役員を経て、2019年よりオルガノ取締役。2022年6月より現職。 |
| 中 山 泰 利 | 取締役常務執行役員プラント本部長 | 1984年入社。産業プラント本部プラント事業部長、エレクトロニクス事業部長などを歴任。2020年6月より現職。 |
| 須 田 信 良 | 取締役常務執行役員技術開発本部長 | 1984年入社。経営統括本部長兼経営企画部長などを経て、2021年より技術開発本部長。2020年6月より現職。 |
| 本 多 哲 之 | 取締役常務執行役員経営統括本部長 | 1986年入社。プラント本部電力事業部長などを経て、2021年より経営統括本部長。2023年6月より現職。 |
社外取締役は、平井憲次(元相模中央化学研究所副理事長)、和田守史(元栄研化学会長)、安部大作(元みずほリース会長)、花野信子(弁護士)、児玉直美(明治学院大学教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「水処理エンジニアリング事業」および「機能商品事業」を展開しています。
■(1) 水処理エンジニアリング事業
主に電子産業、一般産業、電力・インフラ分野の顧客に対し、純水・超純水製造設備、用水処理設備、排水処理・回収設備などのプラント建設や、メンテナンス、運転管理などのソリューションを提供しています。半導体工場などで不可欠な超純水を安定供給するための技術力が強みです。
収益は、プラントの設計・施工請負代金に加え、納入後の消耗品交換、メンテナンス、設備の運転管理委託料、改造工事代金などから構成されます。運営は主にオルガノ、オルガノプラントサービス、および海外の現地法人が行っています。
■(2) 機能商品事業
水処理薬品(RO水処理薬品、排水処理薬品、冷却水処理薬品等)、標準型水処理機器・フィルタ、機能材(イオン交換樹脂等の分離精製材)、食品素材・食品添加剤などを製造・販売しています。電子産業から一般産業、食品加工まで幅広い顧客層を持ちます。
収益は、これらの製品・商品の販売代金から得ています。運営は主にオルガノ、オルガノフードテック、および海外の現地法人が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社の過去5期間の業績は、売上高、利益ともに右肩上がりで推移しており、力強い成長トレンドにあります。特に直近においては、電子産業分野での旺盛な需要を背景に、売上高、各段階利益ともに過去最高水準を更新し続けています。利益率も改善傾向にあり、収益性の向上が見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,006億円 | 1,121億円 | 1,324億円 | 1,504億円 | 1,633億円 |
| 経常利益 | 99億円 | 115億円 | 160億円 | 234億円 | 316億円 |
| 利益率(%) | 9.8% | 10.3% | 12.1% | 15.6% | 19.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 59億円 | 75億円 | 86億円 | 127億円 | 207億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、増収効果に加え、原価率の低減や販管費のコントロールにより、各段階利益が拡大しています。売上総利益率は前年の29.2%から33.8%へと大幅に改善しており、高付加価値案件の増加やコスト管理の効果が表れています。営業利益率も15.0%から19.1%へと上昇し、高い収益性を実現しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,504億円 | 1,633億円 |
| 売上総利益 | 438億円 | 552億円 |
| 売上総利益率(%) | 29.2% | 33.8% |
| 営業利益 | 225億円 | 311億円 |
| 営業利益率(%) | 15.0% | 19.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当・賞与が85億円(構成比35%)、技術研究費が33億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
両セグメントともに増収増益となりました。主力の水処理エンジニアリング事業では、台湾での大型案件の工事進捗や、国内外でのソリューション案件が好調に推移し、利益率も大きく改善しました。機能商品事業も、半導体需要を背景に電子産業向けの水処理薬品や機能材の販売が伸長し、業績拡大に寄与しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 水処理エンジニアリング事業 | 1,264億円 | 1,381億円 | 191億円 | 274億円 | 19.8% |
| 機能商品事業 | 240億円 | 251億円 | 34億円 | 37億円 | 14.9% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | -億円 | -億円 | -% |
| 連結(合計) | 1,504億円 | 1,633億円 | 225億円 | 311億円 | 19.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
オルガノ社のキャッシュ・フローの状況について解説します。
同社グループのキャッシュ・フローは、売上高の大部分を占める水処理エンジニアリング事業、特にプラント事業の長期にわたる大型案件の設計・製作・納入に伴う債権回収や支払時期によって大きく変動します。また、設備保有型サービスでは、設備の製作から資金回収までが長期にわたるため、製作・納入段階で支出が先行する傾向があります。投資活動では、政策保有株式の売却収入があったものの、設備投資の増加により支出が増加しました。財務活動では、営業活動によるキャッシュ・フローの増加に伴う短期借入金の減少や配当金支払額の増加により、支出が増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 37億円 | 211億円 |
| 投資CF | -14億円 | -21億円 |
| 財務CF | -6億円 | -208億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「水で培った先端技術を駆使して未来をつくる産業と社会基盤の発展に貢献するパートナー企業としてあり続けます」という経営理念を掲げています。産業分野での高度な水処理や、自然環境の保全、人々の豊かな生活に必要な水の創造を通じて、産業・環境・生活の調和に貢献することを使命としています。
■(2) 企業文化
長期経営ビジョンにおいて、「昨日までのやり方を、明日に向けて、今日変える人をつくり、一人ひとりが働きがいと活力に満ちた企業を構築します」と掲げています。変革を恐れず、従業員一人ひとりの成長と働きがいを重視する文化を醸成し、付加価値の高い技術やサービスを提供し続けることを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中長期経営計画「ORGANO 2030」において、電子産業分野の成長等を踏まえ、2030年度の業績目標を上方修正しました。新たな目標として、売上高2,500億円、売上高営業利益率15%必達(18%以上を目指す)、ROE15%以上の維持を掲げています。
* 売上高:2,500億円
* 売上高営業利益率:15%以上
* ROE:15%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「事業成長戦略」「バリューチェーン強化」「経営基盤の拡充」を重要課題としています。特に電子産業分野を重点領域とし、技術革新とエリア展開(米国、韓国、インド等)を加速させます。また、ソリューション事業を収益基盤として強化するとともに、M&A等のインオーガニックな手段も検討し、事業ポートフォリオの最適化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を最も重要な経営資源と位置付け、要員体制の強化と人材育成を推進しています。多様な価値観からイノベーションを生むため、女性管理職比率の向上やグローバル人材の活用に取り組んでいます。また、デジタル人材の育成や、従業員の自律的な成長を支援するスキルマップの構築、研修制度の充実を図り、働きがいのある職場環境の整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.5歳 | 15.6年 | 9,073,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.7% |
| 男性育児休業取得率 | 93.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 80.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 58.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職(国内グループ会社)に占める女性の人数(26人)、一人あたり研修費用(82,753円)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外事業(地政学リスク)
台湾、中国、東南アジア等で事業を展開しており、米中対立や台湾有事などの地政学的リスクが高まっています。特に電子産業分野では、関税政策や輸出規制の影響を受ける可能性があります。これに対し、情報収集やモニタリングの強化、生産拠点の分散、独自の差別化技術の開発などを進めています。
■(2) 特定の市場・顧客への集中
売上高の多くを電子産業分野が占めており、特定の大手半導体メーカー等への依存度が高くなっています。主要顧客の設備投資動向や受注の成否が業績に大きく影響する可能性があります。顧客ニーズに基づく技術開発の加速や、ソリューション事業・機能商品事業の拡大により、収益基盤の安定化を図っています。
■(3) 資材・工事調達
主要資材であるイオン交換樹脂などを特定の取引先に依存しており、供給難や価格高騰のリスクがあります。また、大型プロジェクトに必要なパートナー企業の確保も課題です。これに対し、調達先の複層化や代替品の検討、パートナー企業の新規開拓などを進め、リスク低減に努めています。



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