月島ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

月島ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。上下水道および汚泥再生処理設備等の「水環境事業」と、化学・二次電池関連設備等の「産業事業」を展開しています。2025年3月期は、両事業ともに受注残高が順調に進捗したことなどから、売上高、営業利益、経常利益がいずれも過去最高を更新する増収増益となりました。


#月島ホールディングス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、月島ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第163期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 月島ホールディングスってどんな会社?


上下水道などの水インフラや産業用プラントの設計・建設を行うエンジニアリング企業です。

(1) 会社概要


1905年に東京月島機械製作所として創業し、1917年に月島機械を設立しました。1949年に東京証券取引所へ上場し、下水処理や化学プラント等の分野で実績を重ねてきました。2023年4月に持株会社体制へ移行し、現社名へ商号変更しました。同年10月にはJFEエンジニアリングの国内水エンジニアリング事業を統合し、事業基盤の拡大を図っています。

連結従業員数は3,510名、単体では110名です。筆頭株主は信託銀行で、第2位は製造分野で基本協定を締結している株式会社日本製鋼所、第3位は信託銀行です。主要株主には取引先持株会や金融機関、事業パートナーなどが名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.23%
日本製鋼所 5.69%
日本カストディ銀行(信託口) 5.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名、計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長社長執行役員は川﨑淳氏です。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
川﨑 淳 代表取締役社長社長執行役員 1992年同社入社。経営企画部長、経営統括本部長などを歴任。プライミクス社長を経て2022年同社代表取締役専務、2023年4月より現職。
高野 亨 代表取締役副社長副社長執行役員最高財務責任者(CFO) 1990年千代田化工建設入社。2001年同社入社。財務部長、経営統括本部長などを経て2025年4月より現職。
福沢 義之 取締役 1990年同社入社。開発本部長などを経て2020年同社代表取締役社長。2023年4月より同社取締役および月島機械社長(現職)。
鷹取 啓太 取締役 1988年同社入社。水環境事業本部長などを経て2019年同社代表取締役専務。2023年4月より同社取締役および月島JFEアクアソリューション社長(現職)。


社外取締役は、増田暢也(元仙台高等検察庁検事長)、志村直子(西村あさひ法律事務所パートナー弁護士)、田中達也(元富士通社長)、和田篤也(元環境事務次官)です。

2. 事業内容


同社グループは、「水環境事業」「産業事業」および「その他」事業を展開しています。

水環境事業


浄水場や下水処理場、汚泥再生処理・バイオマス利活用向けプラントの設計・建設を行っています。また、これらのプラントで使用される脱水機、乾燥機、焼却炉などの単体機器の設計・販売も手掛けています。国内の官公庁や地方自治体が主な顧客となります。

収益は、プラント建設工事の請負代金や機器の販売代金のほか、PFI・DBO事業や包括O&M(運転・維持管理・補修)業務などの官民連携事業、消化ガス発電事業によるサービス対価や売電収入から得ています。運営は主に月島JFEアクアソリューションや月島ジェイテクノメンテサービスなどが行っています。

産業事業


化学分野やライフサイエンス分野、二次電池製造関連設備、廃液・固形廃棄物処理プラントなどの設計・建設・補修工事を行っています。また、晶析装置、ろ過機、遠心分離機、乾燥機などの各種単体機器の製造・販売も展開しています。国内外の民間企業が主な顧客です。

収益は、プラントや機器の設計・建設・販売、メンテナンスサービス、一般・産業廃棄物処理事業などから得ています。運営は主に月島機械、月島環境エンジニアリング、三進工業、プライミクス、サンエコサーマルなどが行っています。

その他


物流施設、事務所ビル、駐車場などの不動産管理・賃貸事業および大型図面・各種書類等の印刷・製本事業を行っています。

収益は、不動産の賃貸料や印刷・製本業務の対価から得ています。運営は月島ビジネスサポートなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に直近2期で大きく伸長しています。利益面では、2024年3月期から2025年3月期にかけて経常利益および当期純利益が大幅に増加しました。2025年3月期は売上高、営業利益、経常利益ともに過去最高を記録しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 906億円 931億円 978億円 1,242億円 1,392億円
経常利益 61億円 65億円 56億円 78億円 103億円
利益率(%) 6.8% 7.0% 5.8% 6.3% 7.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 82億円 42億円 27億円 67億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益が増加しています。営業利益率は前期の5.4%から当期は6.4%へと改善しました。売上原価率や販管費率のコントロールが進み、増収効果が利益に結びついています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,242億円 1,392億円
売上総利益 258億円 289億円
売上総利益率(%) 20.8% 20.7%
営業利益 68億円 89億円
営業利益率(%) 5.4% 6.4%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び従業員給与・諸手当・賞与・福利費が78億円(構成比39%)、見積設計費が23億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


水環境事業は、大型案件の獲得やJFEエンジニアリングとの事業統合効果などにより増収増益となりました。産業事業も、プラント・単体機器の受注が堅調で、月島機械の受注回復などもあり増収となり、利益率も大きく改善しました。その他事業は横ばいですが、利益率は高い水準を維持しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
水環境事業 810億円 927億円 51億円 61億円 6.6%
産業事業 419億円 452億円 14億円 21億円 4.7%
その他 13億円 13億円 3億円 7億円 50.9%
調整額 -億円 -億円 -0億円 -0億円 -%
連結(合計) 1,242億円 1,392億円 68億円 89億円 6.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはプラス、財務CFはマイナスで「改善型」です。本業で得た資金に加え、政策保有株式の売却等による収入で投資CFがプラスとなり、それらを原資に有利子負債の返済や株主還元を行っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -56億円 185億円
投資CF -28億円 14億円
財務CF 74億円 -205億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、パーパスとして「環境技術で世界に貢献し未来を創る」を掲げています。また、グループ企業理念として「最良の技術をもって産業の発展と環境保全に寄与し、社会に貢献します」「市場のニーズを先取りし、最良の商品とサービスを顧客に提供します」「創意と活力によって発展し、豊かで働きがいのある企業をめざします」を定めています。

(2) 企業文化


同社グループは、2030年に向けた長期ビジョン「豊かな生活・文化の創造に貢献し、快適でサステナブルな社会を実現する」を制定しています。また、企業行動指針として「健全で誠実な企業グループであり続けます」「法令を遵守し倫理にもとづき行動します」「技術・サービスで地球環境をまもり社会に貢献します」「人権を尊重します」「安全で働きがいのある職場環境をつくります」の5つの約束を掲げています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画(2023年4月~2027年3月)の最終年度となる2027年3月期の数値目標として、以下を掲げています。
* 連結売上高:1,600億円
* 連結営業利益:120億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:70億円

(4) 成長戦略と重点施策


「サステナビリティ経営の推進」「事業領域の拡充とグループ収益力の強化」「資本効率の向上と株主還元の拡充」を基本方針としています。水環境事業では、JFEエンジニアリングとの事業統合によるシナジー創出や、官民連携事業(PFI、DBO、ウォーターPPP)の拡大を目指します。産業事業では、リチウムイオン二次電池関連設備やアンモニア関連技術など脱炭素社会に貢献する分野に注力します。また、DX推進やM&Aなどの戦略投資を実行し、事業ポートフォリオの最適化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「魅力的で働きがいのある職場環境整備」をマテリアリティとし、多様な人材が活躍できる機会の提供、研修・育成プログラムの充実、成果を出した社員の評価・登用を掲げています。また、エンゲージメント調査に基づく経営施策の実行、ウェルビーイングを高める職場づくり、ダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んでいます。技術伝承やICT・AI人材の育成にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.6歳 14.3年 7,664,550円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 56.3%
男女賃金差異(正規雇用) 56.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 60.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 需要・市場環境


水環境事業は地方自治体の公共投資動向に、産業事業は民間企業の設備投資動向に業績が左右される可能性があります。特に官公庁案件は年度末に検収が集中する傾向があり、工事遅延等による期ずれが発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外事業展開に伴うリスク


海外事業においては、為替や資源価格の変動、地政学的リスク(米国の関税政策、ウクライナ情勢、中東情勢など)、各国の政治経済情勢、法規制の変更などが業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 設備工事および機器製造における事故および災害


プラント建設や機器製造の現場において予期しない事故や災害が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は品質保証安全管理の担当部署を設け、マネジメントシステムの構築・維持に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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