※本記事は、月島ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第164期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 月島ホールディングスってどんな会社?
水環境事業と産業事業を両輪とし、社会インフラと産業基盤を支えるエンジニアリング企業です。
■(1) 会社概要
1905年に東京月島機械製作所として創業し、1917年に設立されました。1949年に東証へ上場しています。2023年に持株会社体制へ移行して月島ホールディングスへ商号変更するとともに、JFEエンジニアリングの国内水エンジニアリング事業を統合し、水インフラ分野での事業基盤を強化しました。
従業員数は連結で3,367名、単体で105名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位には同社の従業員持株会が名を連ねています。第3位には製造分野等で協業関係にある事業会社の日本製鋼所が入っており、安定した資本関係とパートナーシップを構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.82% |
| 月島ホールディングス従業員持株会 | 5.38% |
| 日本製鋼所 | 4.47% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長社長執行役員は川﨑淳氏が務めており、社外取締役の比率は50.0%(取締役8名中4名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 川﨑淳 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1992年同社入社。秘書室長、総務人事部長、経営企画部長などを経て2019年取締役に就任。2021年専務執行役員、2022年代表取締役専務執行役員を歴任し、2023年より現職。 |
| 高野亨 | 代表取締役副社長副社長執行役員最高財務責任者(CFO) | 1990年千代田化工建設入社。2001年同社入社。財務部長などを経て2022年取締役常務執行役員。2023年取締役専務執行役員CFOを経て、2025年より現職。 |
| 福沢義之 | 取締役 | 1990年同社入社。研究開発部長などを経て2019年取締役。2020年代表取締役社長を経て、2023年より現職。月島機械の代表取締役社長を兼任。 |
| 鷹取啓太 | 取締役 | 1988年同社入社。水環境事業本部長などを経て2018年取締役。2019年代表取締役専務執行役員を経て、2023年より現職。月島JFEアクアソリューションの代表取締役社長を兼任。 |
社外取締役は、増田暢也(元横浜地方検察庁検事正)、志村直子(弁護士)、田中達也(元富士通社長)、和田篤也(元環境事務次官)です。
2. 事業内容
同社グループは、「水環境事業」「産業事業」および「その他」の事業を展開しています。
■水環境事業
浄水場・下水処理場、汚泥再生処理・バイオマス利活用向けプラントの設計・建設や、単体機器の設計・販売、運転・維持管理などを行っています。顧客は主に地方自治体などの官公庁です。
プラントの工事請負や機器販売、PFIやDBOなどの官民連携事業を通じた長期の維持管理サービスから収益を得ます。運営は主に月島JFEアクアソリューションや月島ジェイテクノメンテサービスなどが行っています。
■産業事業
化学分野やライフサイエンス分野向けプラント、二次電池製造関連設備などの設計・建設のほか、廃液・固形廃棄物処理などの環境関連設備の提供を行っています。民間企業が主な顧客です。
プラントの工事請負、晶析装置や分離機等の単体機器販売、廃棄物の中間処理事業などから収益を得ます。運営は主に月島機械や月島環境エンジニアリング、サンエコサーマルなどが行っています。
■その他
事務所ビルや駐車場などの不動産管理・賃貸事業、および大型図面や各種書類などの印刷・製本事業を展開しています。
不動産の賃貸料や不動産管理の委託料、印刷物の制作請負から収益を得ています。運営は主に月島ビジネスサポートなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高が持続的に拡大しており、特に直近2年間は水インフラ関連の更新需要や民間設備投資の取り込みにより大きく伸長しています。利益面でも増益基調が続いており、安定した収益基盤を確立しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 931億円 | 978億円 | 1,242億円 | 1,392億円 | 1,490億円 |
| 経常利益 | 65億円 | 56億円 | 78億円 | 103億円 | 110億円 |
| 利益率(%) | 7.0% | 5.8% | 6.3% | 7.4% | 7.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 72億円 | 27億円 | 15億円 | 38億円 | 123億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の成長に伴い売上総利益が増加し、利益率も改善傾向にあります。増収効果に加えて採算性の高い案件が寄与したことで、営業利益率も向上し、本業の稼ぐ力が高まっていることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,392億円 | 1,490億円 |
| 売上総利益 | 289億円 | 311億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.7% | 20.9% |
| 営業利益 | 89億円 | 98億円 |
| 営業利益率(%) | 6.4% | 6.6% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び従業員給与・諸手当・賞与・福利費が82億円(構成比39%)、見積設計費が24億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
水環境事業は豊富な受注残が順調に進捗し、更新・増設需要の取り込みにより増収となりました。産業事業も、化学・環境関連分野における国内外の設備更新需要を確実に取り込み、売上を伸ばしています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 水環境事業 | 927億円 | 986億円 |
| 産業事業 | 452億円 | 497億円 |
| その他 | 13億円 | 6億円 |
| 連結(合計) | 1,392億円 | 1,490億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスの「改善型」です。本業で創出した資金と資産売却(物流施設等)による資金を原資として、借入金の返済や自己株式の取得、配当などの財務活動を積極的に進めています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 185億円 | 52億円 |
| 投資CF | 14億円 | 272億円 |
| 財務CF | -205億円 | -216億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.7%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も48.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「環境技術で世界に貢献し未来を創る」をパーパスとして掲げています。最良の技術で産業の発展と環境保全に寄与すること、市場ニーズを先取りした商品・サービスを提供すること、そして創意と活力で発展し働きがいのある企業を目指すことをグループ企業理念としています。
■(2) 企業文化
同社は、「私たちの5つの約束」として企業行動指針を定めています。健全で誠実な企業グループであり続けること、法令遵守と倫理に基づく行動、環境保全と社会への貢献、人権の尊重、そして安全で働きがいのある職場環境づくりを重視し、事業活動を通じた社会価値の創出を目指す文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的な成長を目指し、「サステナビリティ経営の推進」「事業領域の拡充とグループ収益力の強化」「資本効率の向上と株主還元の拡充」を基本方針とした中期経営計画を推進しています。最終年度となる2027年3月期に向けて、以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:1,520億円
* 営業利益:110億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:85億円
■(4) 成長戦略と重点施策
温室効果ガス削減に貢献する環境ビジネスや成長が見込める官民連携事業(PFI、DBO事業など)など、付加価値の高い領域へ事業領域をシフトしています。また、M&Aやアライアンスを具現化し、事業ポートフォリオマネジメントを実行するための戦略投資やDX推進にも積極的に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
EPC事業のバリューチェーン全体を担う人材の確保・育成を重要課題としています。「誠実さ」「主体性」「挑戦する姿勢」を重視し、多様な人材が活躍できる機会の提供や、自律的な成長を促す研修プログラムの充実に取り組んでいます。また、社員が働き続けたいと思える「働きがい改革」を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.3歳 | 14.4年 | 8,529,953円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 55.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 61.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期雇用労働者) | 54.5% |
また、同社は「人的資本への対応」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(5.9%)、取締役会の女性比率(9.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 大規模災害等の発生
生産拠点や工事現場での地震・洪水等の自然災害により、機能低下や停止が生じるリスクがあります。同社は事業継続計画(BCP)を策定し、定期的な訓練で実効性を高めています。
■(2) 気候変動に関するリスク
脱炭素化の規制強化による需要減少や、平均気温上昇による建設現場での生産性低下等のリスクがあります。同社はTCFD提言に賛同し、汚泥のエネルギー利用や作業環境の改善等の対応を進めています。
■(3) 海外事業展開に伴うリスク
地政学的リスクや為替・資源価格の変動、予期せぬ法規制変更のリスクがあります。同社は案件ごとの原価見積もりや為替予約等のヘッジ取引により、採算性低下の抑制と変動リスクの低減に努めています。
■(4) 情報セキュリティのリスク
サイバー攻撃や不正アクセスによる重要データの流出・改ざんリスクがあります。同社は「情報セキュリティ基本規程」を定め、従業員教育等の人的対策とシステム面での継続的な改善を図っています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。