佐藤食品工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

佐藤食品工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

佐藤食品工業は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、茶エキスや天然調味料、植物エキス、粉末酒などの食品加工事業を展開する企業です。直近の第72期決算では、茶エキスや粉末天然調味料などの需要が好調に推移したことで、売上高は68億円と増収、経常利益は9億円、当期純利益は7億円といずれも増益を達成しています。


※本記事は、佐藤食品工業株式会社の有価証券報告書(第72期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 佐藤食品工業ってどんな会社?


同社は茶エキスや天然調味料などを製造販売する食品加工メーカーです。

(1) 会社概要


1954年に名古屋市で設立され、白醤油の製造販売を開始しました。1965年に粉末天然調味料、1967年に高含度アルコール粉末、1980年に茶エキスの製造販売を開始するなど事業分野を拡大しました。1991年に店頭登録を果たし、2004年のジャスダック上場を経て、2022年にスタンダード市場へ移行しました。

従業員数は単体で168名です。筆頭株主は事業会社の横浜冷凍で、第2位はブルドックソース、第3位は光通信KK投資事業有限責任組合です。いずれも同社と製品の販売や原材料調達等で取引関係がある事業会社や投資組合が上位を占めています。

氏名 持株比率
横浜冷凍 16.42%
ブルドックソース 11.06%
光通信KK投資事業有限責任組合 8.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長社長執行役員は上田正博氏が務めており、社外取締役比率は18.2%です。

氏名 役職 主な経歴
上田 正博 代表取締役社長社長執行役員 2006年同社入社。管理部長、営業本部長などを経て、2022年より現職。
鈴木 宗行 取締役上席執行役員 1986年同社入社。技術部長や代表取締役社長などを歴任し、2024年より現職。
大津 新司 取締役上席執行役員 2000年同社入社。生産管理部長、品質保証部長などを経て、2025年より現職。
稲垣 篤 取締役上席執行役員 1994年同社入社。設備開発室長、技術品質保証2部長などを経て、2025年より現職。
長谷川 憲治 取締役相談役 税理士事務所開設、同社顧問税理士等を経て、2000年同社監査役就任。2019年より現職。


社外取締役は、秦博文(公認会計士秦博文事務所所長)、光田博充(光田技術士事務所開設)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品加工事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 茶エキス


同社は、高品質化の追求とともに、様々な用途で利用できるコストパフォーマンスに優れた茶エキスの新製品開発と製造販売を行っています。緑茶や紅茶、ウーロン茶などのエキスを抽出・粉末化し、飲料メーカーなどに提供しています。

収益は、飲料メーカーを中心とする取引先への茶エキスの販売により得ています。飲料需要の増加などに伴う販売代金が主な収益源であり、事業の運営は同社単体で行っています。

(2) 粉末天然調味料・液体天然調味料


同社独自の技術を応用した高品質で差別化された天然調味料の製造販売を行っています。粉末昆布や粉末鰹節などの粉末天然調味料や、昆布エキスなどの液体天然調味料を開発し、市場に提供しています。

収益は、食品メーカーや外食産業などの取引先への調味料の販売代金から得ています。外食需要の動向などが収益に影響を与え、本事業も同社単体で運営しています。

(3) 植物エキス・粉末酒


フレッシュな香りを有する野菜や果実のエキス、健康食品等に使用する機能性食品や、独自の粉末化技術を活用したワインタイプなどの粉末酒の製造販売を展開しています。

収益は、製菓用途などを中心とした取引先へのエキスや粉末酒の販売代金から得ています。製品上市後も継続的な品質改善に取り組み、同社が独自に事業を運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は第68期の56億円から第72期の68億円まで5期連続で順調に増収を達成しています。経常利益は8億円から9億円の安定した水準を維持しており、利益率も12%から15%台の高い水準で推移するなど、堅調な業績基盤を築いています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 56億円 59億円 61億円 64億円 68億円
経常利益 9億円 8億円 8億円 8億円 9億円
利益率(%) 15.5% 13.0% 12.9% 12.8% 13.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 4億円 8億円 6億円 7億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前年を上回っています。一方、材料費等の増加により売上総利益率は微減となりましたが、労務費の減少などにより営業利益率は改善し、11%台を確保しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 64億円 68億円
売上総利益 16億円 16億円
売上総利益率(%) 25.7% 24.1%
営業利益 7億円 8億円
営業利益率(%) 10.6% 11.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が2億円(構成比21%)、試験研究費が2億円(同18%)を占めています。売上原価については、当期製品製造原価のうち、材料費が29億円(構成比55%)、経費が12億円(同24%)、労務費が11億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


茶エキスは飲料需要が好調に推移し増収を牽引しました。粉末天然調味料および液体天然調味料も外食需要の回復により売上を伸ばしています。一方、粉末酒は清酒タイプなどの減少により減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
茶エキス 30億円 32億円
粉末天然調味料 17億円 19億円
植物エキス 8億円 9億円
液体天然調味料 7億円 7億円
粉末酒 1億円 1億円
その他 0.1億円 0.1億円
連結(合計) 64億円 68億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型のパターンを示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 9億円 11億円
投資CF -5億円 -14億円
財務CF -6億円 -10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は88.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社の経営理念は、「新しい天然食品の創造に向かって、独創的な技術開発を継続する」「新しい天然食品加工分野を創造し、人類へ貢献する」の2点です。技術立社を基本とする高度な開発技術および生産技術を確立し、顧客満足度と付加価値の高い製品を市場に提供することで社会に貢献し、社会との共生を図ることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、経営理念を実現するための基本方針として、「何事も現状に疑問をもち、常に積極的な改善を心掛けること」や、「常に全体の調和を図り、明るい職場のムードづくりに努めること」を定めています。また、「能力主義を重視したトータルな人事制度の確立」を掲げ、従業員のモチベーション向上と組織の活性化を促す文化が重視されています。

(3) 経営計画・目標


中長期的には、差別化された製品開発と用途開発に注力し、業績を安定的に成長させることを目標としています。また、資産効率の向上や株主資本の有効利用を重視し、「総資産経常利益率(ROA)」と「自己資本当期純利益率(ROE)」を経営上の重要な指標として位置付け、これらの指標の継続的な改善に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


「天然風味の粉末化」の基礎となる独自の開発技術や装置技術を製造技術と融合させ、製品の高付加価値化に経営資源を集中させる戦略を推進しています。

* 安全・安心な品質管理体制の維持と強化
* 生産性の向上と設備投資による合理化の推進
* 高付加価値製品の開発と組織的な提案型営業の展開

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は実務経験を重視し、各部署における専門性の高い研修やOJTを人材育成の中核としています。定期的な上司と部下の面談を通じた目標設定やフィードバックで成長を支援するほか、階層別研修や経営者候補育成のための管理職向け研修を実施し、長期的なキャリア形成を推進しています。また、評価制度や賃金体系の適宜見直しも行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.0歳 16.3年 6,507,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.4%
男女賃金差異(正規雇用) 80.4%
男女賃金差異(パート・有期) 57.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食品の安全性に関するリスク


食品の品質管理には万全な体制で臨んでいますが、不測の事故などにより大規模な製品回収や賠償責任が生じた場合や、社会全般にわたる一般的な品質問題が発生した場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 関連諸法規等の法的規制リスク


同社は食品衛生法やJAS法、製造物責任法、容器包装リサイクル法、酒税法などのさまざまな法的規制を受けて事業を展開しています。万が一、意図せずに法令や規則の違反が発生し、営業停止や行政処分を受けた場合、業績に重大な影響を与える可能性があります。

(3) 主要原材料の価格変動リスク


同社が使用する茶葉や鰹節などの原材料や原油価格は、気象条件や国際的な需給動向により変動します。仕入ルートの複数化等で対応していますが、コスト上昇分を生産効率の改善や販売価格への転嫁で吸収できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。