関西ペイント 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

関西ペイント 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

関西ペイントは東京証券取引所プライム市場に上場し、自動車用・工業用・建築用など幅広い分野の塗料をグローバルに製造・販売しています。直近の業績は、欧州やアフリカでの売上増により増収を達成したものの、固定費の増加などが影響し営業利益は減益となりました。持分法投資利益等の増加により経常利益は増益で推移しています。


記事タイトル:「関西ペイント転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」

※本記事は、関西ペイント株式会社の有価証券報告書(第162期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 関西ペイントってどんな会社?


国内外に強固な基盤を持ち、多様な産業を支える総合塗料メーカーです。

(1) 会社概要


1918年5月に兵庫県尼崎市で設立され、塗料・顔料の製造を開始しました。1949年5月に大阪および東京の証券取引所に上場しています。その後、海外展開を積極的に進め、1986年9月にインドのKansai Nerolac Paints Ltd.の株式を取得したほか、2017年3月にはKansai Helios Groupの株式を取得し、グローバルでの事業基盤を拡大してきました。

同社グループは、連結で16,739名、単体で1,536名の従業員を擁するグローバル企業へと成長しています。大株主の状況を見ると、資産管理業務を行う信託銀行が上位を占めているほか、生命保険会社や海外の金融機関などが名を連ねており、国内外の機関投資家から広く支持されていることが伺えます。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.97%
日本生命保険相互会社 7.01%
JP MORGAN CHASE BANK 380055 6.94%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長は毛利訓士氏が務めています。社外取締役の比率は50.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
毛利訓士 代表取締役社長 1981年4月同社入社。取締役塗料事業部長補佐、代表取締役常務執行役員などを経て2019年4月より現職。
冨岡崇 取締役常務執行役員最高財務責任者ビジネスユニット長 1996年4月同社入社。経営企画室長、執行役員経営企画本部長などを経て2026年4月より現職。
高多洋一 取締役常務執行役員ヘッドオフィス長管理部門長 1989年4月同社入社。執行役員汎用塗料事業本部長、関西ペイント販売代表取締役社長などを経て2026年4月より現職。
プラヴィン D.チャウダリ 取締役常務執行役員ビジネスユニットアジア事業部門長 1993年6月Kansai Nerolac Paints Ltd.入社。同社Executive Directorなどを経て2026年4月より現職。
長谷部秀士 取締役常勤監査等委員 1985年4月同社入社。管理本部財経部長、執行役員経営管理部長、常勤監査役などを経て2024年6月より現職。


社外取締役は、大森紳一郎(元日立製作所執行役専務)、四方ゆかり(元日本マイクロソフト執行役人事本部長)、アスリ M.チョルパン(京都大学大学院経済学研究科教授)、山本徳男(元日本電気関連企業部長)、中井洋恵(大阪弁護士会会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」、「インド」、「欧州」、「アジア」及び「アフリカ」ならびに「その他」事業を展開しています。

(1) 日本


日本国内において、自動車分野、工業分野、建築および防食分野、船舶分野向けなど、幅広い産業を対象とした各種塗料の製造・販売を行っています。また、関連する諸サービスも提供し、多様な顧客ニーズに対応しています。

主な収益源は、特約販売店等を通じた塗料の販売代金です。事業の運営は主に関西ペイントのほか、関西ペイント販売やカンペハピオ、日本化工塗料などの子会社が担当しています。

(2) インド


インド市場を中心に、自動車分野や建築分野向けの各種塗料を製造・販売しています。同国における自動車生産の拡大や内需主導の経済成長を背景に、強固な事業基盤を築いています。

現地の特約店や顧客企業への塗料の販売代金から収益を獲得しています。事業の運営は主に子会社のKansai Nerolac Paints Ltd.などが担っています。

(3) 欧州


トルコやスロベニアなど欧州地域において、自動車用や工業用の塗料製造・販売事業を展開しています。近隣各国への供給拠点としての役割も果たしており、積極的なM&Aを通じて事業領域を拡大しています。

各種塗料の販売により収益を得ています。事業の運営はKansai Altan Boya Sanayi Ve Ticaret A.S.やKansai Helios Coatings GmbHなどの子会社が行っています。

(4) アジア


インドネシア、タイ、マレーシア、台湾、中国など、成長が続くアジア市場において、自動車用や工業用の塗料を製造および販売しています。各国の自動車生産動向などに合わせた製品供給を行っています。

製品の販売代金が主要な収益源です。運営はPT.Kansai Prakarsa Coatings、Thai Kansai Paint Co.,Ltd.、台湾関西塗料などの子会社が担当しています。

(5) アフリカ


南アフリカ共和国および東アフリカ周辺地域などにおいて、建築分野を中心とした各種塗料の製造および販売事業を展開し、市場の開拓を進めています。

建築および工業向け塗料の販売により収益を得ています。事業の運営はKansai Plascon Africa (Pty) Ltd.やKansai Plascon East Africa (Pty) Ltd.などの子会社が担っています。

(6) その他


上記報告セグメントに含まれない北米市場などにおいて、自動車分野向けの塗料を中心に製造・販売事業を展開しています。

製品の販売による収益を獲得しており、主に米国子会社のU.S. Paint Corporationなどが運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して拡大を続けており、約4192億円から5898億円へと着実な成長を遂げています。経常利益は市場環境の影響により増減を伴いながらも安定的に推移し、直近では547億円を計上して利益率も改善傾向にあります。

項目 第158期 第159期 第160期 第161期 第162期
売上高 4192億円 5091億円 5623億円 5888億円 5898億円
経常利益 376億円 402億円 577億円 491億円 547億円
利益率(%) 9.0% 7.9% 10.3% 8.3% 9.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 311億円 191億円 495億円 357億円 351億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微増となりましたが、販売価格の改善や原価低減などの施策により売上総利益率は改善しました。一方で、人件費などの固定費が増加したため、営業利益はわずかに減少しています。

項目 第161期 第162期
売上高 5888億円 5898億円
売上総利益 1857億円 1913億円
売上総利益率(%) 31.5% 32.4%
営業利益 521億円 497億円
営業利益率(%) 8.8% 8.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賃金が344億円(構成比24%)、荷造運搬費が195億円(構成比14%)、減価償却費が118億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


欧州セグメントやアフリカセグメントにおいて拡販活動や新規連結の影響などにより売上が伸長しました。一方で、日本やインドでは市場需要の低迷や為替の影響を受け、売上はわずかに減少しています。

区分 売上(第161期) 売上(第162期)
日本 1639億円 1599億円
インド 1423億円 1384億円
欧州 1565億円 1627億円
アジア 687億円 681億円
アフリカ 474億円 517億円
その他 100億円 90億円
連結(合計) 5888億円 5898億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動による収入で投資活動と財務活動による支出を十分に賄っており、強固な事業基盤を示す健全な状態です。

項目 第161期 第162期
営業CF 350億円 526億円
投資CF -392億円 -270億円
財務CF -80億円 -222億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「塗料で人を幸せにする」ことをミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の中核に据えています。塗料および関連ソリューションを通じて、同社グループに関わるすべての人々の豊かさを高め、社会課題の解決に貢献することを使命として経営を推進しています。

(2) 企業文化


「ONE KANSAI」の考え方を軸に、グローバル一体経営の深化に取り組んでいます。また、具体的な行動へつなげるグループ共通の行動指針「KP way」を定め、全世界の社員が共通の判断基準を持つことで、地域や文化を越えた一体経営を実現する文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


第18次中期経営計画を策定し、2030年に向けた長期目標(KPI2030)を見据えて持続的な成長を目指しています。計画の最終年度目標としては、以下のような数値を掲げて経営を行っています。

・売上高 7000億円
・EBITDAマージン 17%
・調整後ROE 15%

(4) 成長戦略と重点施策


「構造改革による収益性と効率性の強化」「事業を伸ばす製品開発とDXの推進」「人材育成と最適配置の両立」「最適資本構成に基づく積極的な投資と還元」の4点を重点方針に掲げています。これらの方針のもと、地域や事業の特性に応じた具体的な戦略を実行し、経営基盤の強化と成長機会の創出に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「持続的な企業価値向上を支える人材を世界で育成する」というビジョンのもと、人的資本への投資を最優先の成長投資と位置付けています。明確な役割と成果に報いるジョブ制を取り入れたグローバル人事制度の構築や、中長期的な視点を持った人材の育成・最適配置を推進し、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与は東京証券取引所プライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
第162期 42.1歳 18.4年 8,787,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.9%
男性育児休業取得率 65.7%
男女賃金差異(全労働者) 74.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.9%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 43.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料価格の高騰と調達リスク
同社グループが使用する原材料は、世界的な経済動向による需給バランスや為替変動等の影響を受けます。原油・ナフサ等の急激な価格高騰が生産コストの上昇につながり、販売価格への反映が十分でない場合は、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外事業展開に伴うカントリーリスク
海外売上高比率が高いため、事業展開する国や地域において予期せぬ法律や税制変更、政治的要因、戦争やテロ等が発生した場合、同社の事業活動に影響を及ぼすリスクがあります。事業拠点の多様化や国際情勢の情報収集を通じてリスクの最小化に努めています。

(3) 製品の品質・欠陥に関する賠償リスク
同社グループは品質管理基準に従って製品を製造していますが、万一、製造物責任賠償保険で補填しきれない製品の欠陥による損失が発生した場合、同社の信用低下や業績・財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) サイバー攻撃やシステム障害のリスク
事業活動におけるITシステムへの依存度が高まっているため、機密情報に対するサイバー攻撃や、機器およびソフトウェアの障害による事業中断、個人情報の漏洩等が発生した場合、同社のブランド価値や企業の信用を低下させるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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