関西ペイント 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

関西ペイント 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。塗料の製造販売を主力事業とし、日本国内に加えインド、欧州、アジア、アフリカ等でグローバルに展開しています。直近の連結業績は、海外事業の拡大等により売上高は増収となりましたが、持分法投資利益の減少や一過性の損失計上等により経常利益および当期純利益は減益となりました。


※本記事は、関西ペイント株式会社 の有価証券報告書(第161期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 関西ペイントってどんな会社?


塗料の製造販売および関連サービスをグローバルに展開する化学メーカーです。自動車用、工業用、建築用など幅広い分野で製品を提供しています。

(1) 会社概要


同社は1918年に兵庫県尼崎市で設立され、塗料・顔料の製造を開始しました。1949年には大阪・東京の証券取引所に上場しています。その後、海外展開を加速させ、2011年に南アフリカのFreeworld Coatings Ltd.(現Kansai Plascon Africa Ltd.)、2017年には欧州のHelios Group(現Kansai Helios Group)の株式を取得し子会社化しました。2023年には大阪市北区へ本社事務所を移転しています。

現在の従業員数は連結17,414名、単体1,507名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社で、第2位は日本生命保険相互会社です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.98%
日本生命保険相互会社 7.01%
第一生命保険株式会社 7.01%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長は毛利 訓士氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
毛利 訓士 代表取締役社長 1981年入社。塗料事業部長補佐、代表取締役常務執行役員(営業、国際管掌)、代表取締役専務執行役員COOなどを歴任。2019年4月より現職。
冨岡 崇 取締役常務執行役員最高財務責任者ビジネスユニット長ビジネスユニット 欧州事業部門長 1996年入社。経営企画室長、経営推進本部副本部長、常務執行役員経営推進部門長などを経て、2025年4月より現職。
梶間 淳一 取締役 1987年入社。自動車塗料本部副本部長、Kansai Helios Coatings GmbH社長、取締役常務執行役員生産・SCM・調達部門長などを歴任。2025年4月より現職。
高原 茂季 取締役 1981年日本電気入社。ミスミグループ本社執行役員CFO、ファイザー取締役執行役員等を経て2020年同社入社。代表取締役副社長執行役員最高財務責任者を経て2025年4月より現職。
長谷部 秀士 取締役常勤監査等委員 1985年入社。管理本部財経部長、執行役員管理本部経営管理部長、常勤監査役を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、大森 紳一郎(元日立製作所執行役専務)、四方 ゆかり(元日本マイクロソフト執行役人事本部長)、アスリ M.チョルパン(京都大学大学院経済学研究科教授)、山本 徳男(元NECネッツエスアイ執行役員)、中井 洋恵(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」、「インド」、「欧州」、「アジア」、「アフリカ」および「その他」事業を展開しています。

(1) 日本


自動車用、工業用、建築用、船舶用などの塗料の製造販売を行っています。主な顧客は自動車メーカー、建設業者、一般消費者などです。

製品の販売による対価を主な収益源としています。運営は、同社および関西ペイント販売、久保孝ペイント、日本化工塗料、カンペハピオ、カンペ商事などの子会社・関連会社が行っています。

(2) インド


建築用、自動車用などの塗料の製造販売を行っています。インド国内の旺盛な需要に対応し、製品を提供しています。

製品の販売による対価を収益源としています。運営は主にKansai Nerolac Paints Ltd.が行っています。

(3) 欧州


工業用塗料などを中心に製造販売を行っています。トルコやオーストリアなどを拠点に欧州全域で事業を展開しています。

製品の販売による対価を収益源としています。運営は、Kansai Altan Boya Sanayi Ve Ticaret A.S.(トルコ)、Kansai Helios Coatings GmbH(オーストリア)などの子会社が行っています。

(4) アジア


自動車用、建築用塗料などの製造販売を行っています。インドネシア、タイ、マレーシア、中国などで事業を展開しています。

製品の販売による対価を収益源としています。運営は、PT.Kansai Prakarsa Coatings(インドネシア)、Thai Kansai Paint Co.,Ltd.(タイ)などの子会社が行っています。

(5) アフリカ


建築用塗料などを中心に製造販売を行っています。南アフリカや東アフリカ地域で事業を展開しています。

製品の販売による対価を収益源としています。運営は、Kansai Plascon Africa Ltd.(南アフリカ)、Kansai Plascon East Africa (Pty) Ltd.(モーリシャス)などの子会社が行っています。

(6) その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、北米などでの塗料事業を行っています。

製品の販売による対価を収益源としています。運営は、U.S. Paint Corporation(アメリカ)などの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの推移を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模が拡大しています。一方、利益面では変動が見られ、直近の2025年3月期は経常利益、当期利益ともに減益となりました。利益率は8%から10%程度で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,646億円 4,192億円 5,091億円 5,623億円 5,888億円
経常利益 359億円 376億円 402億円 577億円 491億円
利益率(%) 9.8% 9.0% 7.9% 10.3% 8.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 189億円 311億円 191億円 495億円 357億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上総利益率は低下し、営業利益率は若干低下しました。売上の伸びに対し、コスト増などの要因により利益率が圧迫されている傾向が見て取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,623億円 5,888億円
売上総利益 1,734億円 1,857億円
売上総利益率(%) 30.8% 31.5%
営業利益 516億円 521億円
営業利益率(%) 9.2% 8.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賃金が325億円(構成比24%)、荷造運搬費が185億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで売上高はおおむね堅調に推移しましたが、利益面では明暗が分かれました。日本、アフリカでは増益となりましたが、インド、アジアでは減益となり、欧州では赤字に転落しました。その他セグメントも若干の減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 1,653億円 1,639億円 215億円 239億円 14.6%
インド 1,366億円 1,423億円 148億円 142億円 10.0%
欧州 1,359億円 1,565億円 51億円 -10億円 -0.6%
アジア 719億円 687億円 105億円 92億円 13.4%
アフリカ 433億円 474億円 41億円 44億円 9.2%
その他 92億円 100億円 33億円 32億円 31.9%
調整額 -201億円 -190億円 -0億円 0億円 -0.0%
連結(合計) 5,623億円 5,888億円 592億円 539億円 9.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ現金を投資に回しつつ、借入金の返済や配当支払い等も行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 671億円 350億円
投資CF -90億円 -392億円
財務CF -729億円 -80億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、第18次中期経営計画策定にあたり、新たに「塗料で人を幸せにする」ことをMVV(Mission、Vision、Value)におけるビジョンと定めています。これは、グループに関わる人々を豊かにし、困りごとを解決することを意味しており、塗料を世界中の人々に届けることで人を幸せにするという「ありたい姿」を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「利益と公正」を企業活動の基軸としています。「正しいことをしながらより多くの資金を作り出し、その資金を寝かせずに将来のために投資していく。これが循環し、規模を拡大することで世の中への貢献度合いを高めていく」という創業時からの変わらない価値観をもとに、誠実に課題に取り組む姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2030年の目標(KPI2030)に向けて、2027年度に財務・非財務両方の中間目標を達成することを目指しています。第18次中期経営計画の最終年度(2027年度)目標としては、以下の数値を設定しています。

* 売上高:7,000億円
* EBITDAマージン:17%
* 調整後ROE:15%

(4) 成長戦略と重点施策


「構造改革による収益性と効率性の強化」、「事業を伸ばす製品開発とDXの推進」、「人材育成と最適配置の両立」、「最適資本構成に基づく積極的な投資と還元」を重点方針としています。地域ごとの特徴や個社のブランドを活かす事業分野では地域軸で、グローバル展開する事業分野では事業軸で事業を強化し、価値提供の機会を拡大していきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材育成と最適配置の両立」を重点方針の一つに掲げています。グローバル人事制度をはじめとした「明確な役割と生み出した成果に報いる人事制度」の整備を推進し、事業のグローバル化を支える人材開発戦略を構築します。新人事制度の導入やジョブディスクリプションの再整備、グローバルでの人材育成と最適配置などを通じて、社員が最大限に力を発揮し挑戦できる機会をつくります。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.5歳 18.7年 8,448,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.9%
男性育児休業取得率 63.5%
男女賃金差異(全労働者) 75.8%
男女賃金差異(正規雇用) 79.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 56.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済・市況等の変動リスク


製品を販売する国・地域の経済状況や、顧客企業・市場の動向、競合による価格変動の影響を受けます。また、原材料価格の変動や供給不安、為替・金利の相場変動も業績に影響を及ぼす可能性があります。これらに対し、事業特性分析や代替原材料の検討、デリバティブ取引などによる対策を講じています。

(2) 法律・規制、社会的・政治的要因等


事業を行う国・地域における予期せぬ法律・税制変更、政治的要因、戦争やテロなどが事業活動に影響を与える可能性があります。また、訴訟や知的財産権の紛争、コンプライアンス違反のリスクも存在します。これらに対し、国際情勢の収集、専門家との連携、社内教育などの体制を整備しています。

(3) 製品・品質および環境リスク


製品の欠陥による損失や、気候変動への対応不足、予期せぬ環境汚染などが発生した場合、業績や社会的信用に悪影響を及ぼす可能性があります。品質保証体制の整備や、製品の環境負荷低減、TCFD提言への対応などを通じて、これらのリスクの最小化に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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