※本記事は、東京インキ株式会社 の有価証券報告書(第154期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京インキってどんな会社?
インキ、化成品、加工品の製造販売を主力とし、生活を彩る製品を展開しています。
■(1) 会社概要
1923年に東京インキとして設立し、印刷インキや化成品の製造を開始しました。1961年に東京証券取引所に上場し、1987年の米国現地法人設立を皮切りに海外展開を進めました。2008年には一軸延伸フィルム事業を譲受して事業領域を拡大し、2025年にはグラビアインキ関連事業を承継しています。
現在の従業員数は連結で652名、単体で523名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は取引先で構成される東京インキ取引先持株会で、第2位は事業会社の共同印刷、第3位には東京インキ従業員持株会が名を連ねており、取引先や従業員との安定的な資本関係を構築していることが特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東京インキ取引先持株会 | 8.95% |
| 共同印刷 | 8.43% |
| 東京インキ従業員持株会 | 5.39% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は堀川聡が務めており、取締役における社外取締役の比率は33.3%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 堀川聡 | 代表取締役社長・社長執行役員 | 1987年同社入社。貿易部長、営業部門化成品営業本部長などを歴任。取締役・常務執行役員社長室長などを経て2020年6月より現職。 |
| 髙松典助 | 取締役・常務執行役員営業部門長 | 1982年同社入社。開発・技術部門市場開発部長などを経て2020年6月に取締役・執行役員営業部門長に就任。2025年4月より現職。 |
| 浦田浩之 | 取締役・常務執行役員事業ポートフォリオ戦略推進室長兼開発部長、生産・技術部門管掌 | 1989年同社入社。生産部門大阪工場長などを歴任し、2021年6月に取締役・常務執行役員生産・技術部門長に就任。2025年4月より現職。 |
| 中村真次 | 取締役・常務執行役員管理部門長、IR統括 | 1995年同社入社。生産部門企画管理部部長や管理部門理財部長などを経て2023年4月に執行役員管理部門長に就任。2024年10月より現職。 |
社外取締役は、田地司(元日本ポリプロ副社長)、小栗道乃(安西法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「インキ事業」「化成品事業」「加工品事業」「不動産賃貸事業」を展開しています。
■インキ事業
オフセットインキ、グラビアインキ、インクジェットインクなどの各種印刷インキの製造販売や、印刷用材料の仕入販売を行っています。パッケージ用途の機能性製品にも注力しています。
印刷会社やパッケージ製造会社などの顧客に対する製品販売を主な収益源としています。同社が主体となって製造販売を行うほか、林インキ製造や荒川塗料工業などの子会社を通じても事業を展開しています。
■化成品事業
プラスチック用の着色剤であるマスターバッチや、機能性を付与した樹脂コンパウンドなどの化成品の製造販売を行っています。モビリティや情報通信などの分野が主要な顧客となります。
樹脂加工メーカーなどの顧客への自社製品の販売や受託製造による対価が収益源です。同社や東京インキ(タイ)が製造販売を担い、東京ポリマーなどの子会社が製造受託を行っています。
■加工品事業
特殊な成形加工技術を用いた樹脂加工品であるネトロン工材や土木資材、農業資材、一軸延伸フィルムなどの製造および仕入販売を行っています。
建設業や農業関係者、包装資材メーカーへの製品・商品の販売によって収益を得ています。同社を中心に、トーイン加工や東洋整機樹脂加工などの子会社と連携して製品の取引や販売を行っています。
■不動産賃貸事業
保有する不動産を有効活用し、オフィスビルや住宅などの賃貸サービスを提供しています。安定的な収益確保を目的とした事業です。
不動産のテナントや入居者から受け取る賃貸料を収益源としています。この事業は同社が直接運営および不動産賃貸を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一時的に足踏みしたものの、販売価格の改定や高付加価値製品へのシフトが浸透したことで直近では増収基調に転じています。経常利益も原材料高の影響を受けた時期を乗り越え、利益率の改善により大幅な増益を達成するなど、収益力の回復と成長が見られます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 414億円 | 434億円 | 439億円 | 468億円 | 499億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 48億円 | 10億円 | 7億円 | 25億円 |
| 利益率(%) | 2.2% | 11.0% | 2.2% | 1.5% | 4.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 21億円 | 8億円 | 15億円 | 16億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は販売価格改定の浸透や高付加価値製品の販売拡大により増加しました。これに伴い売上総利益も増加し、売上総利益率は改善しています。販売費及び一般管理費は増加したものの、増収効果がそれを上回り、営業利益は前期から大幅に増加し、営業利益率も上昇して収益体質の強化が進んでいます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 468億円 | 499億円 |
| 売上総利益 | 72億円 | 83億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.3% | 16.6% |
| 営業利益 | 13億円 | 22億円 |
| 営業利益率(%) | 2.8% | 4.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が13億円(構成比22%)、荷造及び発送費が13億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
インキ事業は価格改定と機能性製品の伸長により大幅な増益を達成しました。化成品事業も自社製品の販売拡大とタイ法人の好調により増収増益となりました。加工品事業は一部製品の減損等があったものの、土木資材が堅調に推移し増益を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| インキ事業 | 163億円 | 184億円 |
| 化成品事業 | 225億円 | 239億円 |
| 加工品事業 | 78億円 | 76億円 |
| 不動産賃貸事業 | 1億円 | 1億円 |
| 連結(合計) | 468億円 | 499億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 23億円 | 24億円 |
| 投資CF | -12億円 | 1億円 |
| 財務CF | -13億円 | -20億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、パーパス(存在意義)として『「伝える」「彩る」「守る」ことで、豊かな未来を実現する』を掲げています。また、ビジョン(企業理念)として「暮らしを彩る、暮らしに役立つものづくりで、社会に貢献する。」と定め、ミッション(目指すべき企業像)には「色彩を軸に、市場が求める価値をお客様と共に創造、実現し続ける企業。」を据えており、社会課題の解決と豊かな生活の実現に向けた事業活動を推進しています。
■(2) 企業文化
同社では、パーパスやビジョンの実現に向けた従業員のバリュー(行動指針)として、「挑戦し続ける」「イノベーションで価値を創造する」「共に成長する」の3つを掲げています。これらの行動指針の浸透を通じて、新たな価値を創造できる人材の創出やマインドの醸成を図っており、環境や社会と共存共栄しながら持続可能な価値を提供し続ける企業文化の構築を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」の達成に向けた3カ年の中期経営計画「TOKYOink 2027」において、2030年に目指す姿からのバックキャストで以下の目標数値を掲げています。
* 売上高:480億円(2027年度)、500億円(2030年度)
* 営業利益:20億円(2027年度)、28億円(2030年度)
* 当期純利益:15億円(2027年度)、20億円(2030年度)
* 自己資本利益率(ROE):5.5%(2027年度)、8.0%(2030年度)
* 自己資本比率:54.0%(2027年度)、50.0%(2030年度)
■(4) 成長戦略と重点施策
長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」の実現に向け、「変革の実践」と位置付けた中期経営計画を推進しています。事業ポートフォリオの変革を軸に、既存事業内の高付加価値製品やサステナブル対応製品の構成比を引き上げるとともに、生産体制の再構築や自動化による高収益化を進めます。また、成長が見込める加工品事業への積極投資や、資産効率を重視したキャッシュの創出により、強固な財務基盤の確保と株主還元の充実を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、従業員一人ひとりを企業価値創出の源泉である「人財」と位置付け、「多様な人材の育成・確保」「リーダーシップ」「変化に応じた再配置」「キャリア構築」の4つの柱を軸に人事戦略を展開しています。新人事制度の安定運用を通じた公平な評価や、専用の研修プログラムによる自立的なキャリア構築の支援、さらには健康経営やダイバーシティの推進により、行動指針を体現できる人材の育成と企業文化の醸成を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.7歳 | 21.6年 | 7,797,283円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.5% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 76.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 88.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(56.8%)、時間外労働時間(7.9時間/人)、教育研修費用(33,687円/人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業継続に関するリスク
自然災害の頻発や激甚化に伴い、操業停止による収益圧迫や人材確保等への甚大な影響が懸念されています。同社では緊急時対応計画(ERP)や危機管理計画(CMP)に基づく指揮命令系統を確立し、防災訓練の継続的実施や備蓄品の管理、各拠点の事業継続計画(BCP)の構築を通じて対応力を強化しています。
■(2) 人的資本に関するリスク
最適な人員構成や組織体制の構築が不可欠である一方、人材の流出や過労・ストレス、技術伝承の失敗などが事業の競争力低下を招くリスクとなります。これに対し、多様な労働力に対応する仕組みの強化やダイバーシティへの対応、時間外労働の徹底管理、中途採用の強化などによりウェルビーイングな職場環境の実現を図っています。
■(3) ITに関するリスク
近年増加するサイバー攻撃や不正アクセス、内部関係者による情報漏洩のインシデントは、直接的な金銭的損失や社会的信用の低下につながります。同社は基幹システム環境の更新や全社ネットワーク回線の見直し、IT-BCPの構築および定期的な見直しを行うことで、被害の最小化と安定稼働を図る体制を整備しています。
■(4) 気候変動に関するリスク
脱炭素社会の実現が求められる中、石化由来原材料を多く扱う同社にとって環境負荷低減対策の遅れは事業上の重大なリスクとなります。温室効果ガス排出量削減目標の達成に向けて、省エネ活動の推進や再生可能エネルギー電力の段階的導入、環境対応製品の拡充などを継続し、持続可能な企業価値の向上に努めています。



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