東京インキ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京インキ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場。主要事業は印刷インキ、プラスチック着色剤等の化成品、防災・土木資材等の加工品の製造販売を行う。直近の業績は、売上高468億円(前期比6.6%増)、営業利益13億円(同70.3%増)となり、製品販売価格改定や高付加価値製品の伸長により増収増益となった。


#記事タイトル:東京インキ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、東京インキ株式会社 の有価証券報告書(第153期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東京インキってどんな会社?


印刷用インキの製造から始まり、現在はプラスチック着色剤や加工品、不動産賃貸まで多角的に展開する化学メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1923年、印刷インキ製造を目的に設立されました。1961年に東京証券取引所市場第二部に上場し、事業拡大を進めています。2008年に一軸延伸フィルム事業、2019年にネトロン事業を譲受するなどM&Aも活用。2023年には創立100周年を迎え、2025年には株式会社T&K TOKAよりグラビアインキ関連事業を承継しました。

同グループは、東京インキおよび連結子会社9社、非連結子会社1社で構成されています。連結従業員数は675名、単体では541名です。大株主構成については、筆頭株主は同社の主要な取引先でもある共同印刷で、第2位は取引先持株会、第3位は従業員持株会となっており、取引先や従業員との関係性を重視した安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
共同印刷 9.25%
東京インキ取引先持株会 8.68%
東京インキ従業員持株会 5.67%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長・社長執行役員は堀川 聡氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
堀川 聡 代表取締役社長・社長執行役員 1987年入社。貿易部長、化成品営業本部長などを経て、2014年取締役就任。常務執行役員、営業部門長などを歴任し、2020年6月より現職。
髙松典助 取締役・常務執行役員営業部門長 1982年入社。化成品営業本部開発部長、市場開発部長などを経て、2018年取締役就任。営業部門長兼市場開発本部長などを歴任し、2025年4月より現職。
浦田浩之 取締役・常務執行役員事業ポートフォリオ戦略推進室長兼開発部長、生産・技術部門管掌 1989年入社。大阪工場長、生産部門副部門長などを経て、2021年取締役就任。生産・技術部門長などを歴任し、2025年4月より現職。
中村真次 取締役・常務執行役員管理部門長、IR統括 1995年入社。生産部門企画管理部部長、管理部門理財部長などを経て、2024年取締役就任。管理部門長兼理財部長などを歴任し、2024年10月より現職。


社外取締役は、田地 司(元JNC石油化学代表取締役社長)、小栗道乃(安西法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「インキ事業」「化成品事業」「加工品事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。

(1) インキ事業


新聞や出版物、包装資材などに使用されるオフセットインキ、グラビアインキ、インクジェットインク等の製造販売を行っています。また、印刷用材料の仕入販売や印刷機械の販売も手掛けています。主要顧客は印刷会社等です。

収益は、顧客への製品販売による対価が中心です。運営は同社が行うほか、林インキ製造株式会社、荒川塗料工業株式会社、東京油墨(上海)有限公司との間で製品・商品の取引が行われています。荒川塗料工業株式会社は紙加工用塗料等の製造販売も行っています。

(2) 化成品事業


プラスチック製品の着色剤や機能性付与剤であるマスターバッチ、および樹脂コンパウンドの製造販売を行っています。自動車、家電、食品容器など幅広い分野のプラスチック製品に使用されています。

収益は、顧客への製品販売による対価が中心です。運営は同社が行っており、英泉ケミカル株式会社、ハヤシ化成工業株式会社が製造受託を行っています。また、東京インキ(タイ)株式会社や東京油墨貿易(上海)有限公司等との間で製品取引が行われています。

(3) 加工品事業


プラスチック成形加工品として、網状成形品「ネトロン」、一軸延伸フィルム、土木資材、農業資材等の製造販売および仕入販売を行っています。防災・減災用途の土木資材や、包装資材、農業用資材として提供されています。

収益は、顧客への製品販売による対価が中心です。運営は同社が行うほか、トーイン加工株式会社、東洋整機樹脂加工株式会社、東京油墨貿易(上海)有限公司との間で製品・商品の取引が行われています。

(4) 不動産賃貸事業


東京都内に保有するオフィスビル(土地含む)および埼玉県に保有する住宅(土地含む)の賃貸を行っています。

収益は、賃借人からの賃貸料収入です。運営は同社が直接行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の業績を見ると、売上高は増加傾向にあります。2023年3月期には原材料価格高騰などの影響で一時的に利益率が上昇しましたが、その後は落ち着きを見せつつも、2025年3月期は価格改定の進捗等により利益率が改善しています。当期利益も回復基調にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 382億円 414億円 434億円 439億円 468億円
経常利益 6億円 9億円 48億円 10億円 7億円
利益率(%) 1.6% 2.2% 11.0% 2.2% 1.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 7億円 16億円 9億円 12億円

(2) 損益計算書


売上高は増加し、売上総利益および営業利益ともに改善しています。特に営業利益率は前期の1.7%から2.8%へと上昇しており、収益性の向上が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 439億円 468億円
売上総利益 65億円 72億円
売上総利益率(%) 14.8% 15.3%
営業利益 8億円 13億円
営業利益率(%) 1.7% 2.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が14億円(構成比24%)、荷造及び発送費が12億円(同21%)を占めています。売上原価の増加は主に原材料価格やエネルギーコストの影響によるものです。

(3) セグメント収益


全てのセグメントで黒字を確保しています。主力の化成品事業は売上・利益ともに最大規模であり、大幅な増益を達成しました。インキ事業も増収増益となり、利益率が改善しています。加工品事業は減益となりましたが、一定の利益水準を維持しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
インキ事業 145億円 163億円 3億円 6億円 3.4%
化成品事業 214億円 225億円 2億円 6億円 2.7%
加工品事業 80億円 78億円 5億円 3億円 4.3%
不動産賃貸事業 0.9億円 0.9億円 0.6億円 0.6億円 62.9%
連結(合計) 439億円 468億円 8億円 13億円 2.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスであり、本業で稼いだ資金で投資を行い、借入返済も進めている「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 20億円 23億円
投資CF -13億円 -12億円
財務CF -4億円 -13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.3%で市場平均とほぼ同じ水準です。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、パーパス(存在意義)として『「伝える」「彩る」「守る」ことで、豊かな未来を実現する』を掲げています。また、ビジョン(企業理念)として「暮らしを彩る、暮らしに役立つものづくりで、社会に貢献する。」、ミッション(目指すべき企業像)として「色彩を軸に、市場が求める価値をお客様と共に創造、実現し続ける企業。」を定めています。

(2) 企業文化


従業員のバリュー(行動指針)として、「挑戦し続ける」、「イノベーションで価値を創造する」、「共に成長する」を掲げています。これらを浸透させることで、新たな価値を創造できる人材の創出とマインドの醸成を図っています。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」および2025年度を初年度とする中期経営計画「TOKYOink 2027」を策定しています。2027年度および2030年度の経営目標として以下の数値を掲げています。
* 2027年度目標:売上高480億円、営業利益20億円、ROE 5.5%
* 2030年度目標:売上高500億円、営業利益28億円、ROE 8.0%

(4) 成長戦略と重点施策


長期ビジョンの実現に向け、事業ポートフォリオ変革を推進します。具体的には、高付加価値製品やサステナブル対応製品の構成比向上、周辺領域や新規事業の探索、生産体制の再構築による高収益化に取り組みます。また、資本効率の向上と株主還元の充実も重視しています。
* サステナブル対応製品売上高比率:2030年度目標50%
* 温室効果ガス排出量削減率:2030年度目標50%削減(2013年度比)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「多様な人材の育成・確保」「リーダーシップ」「変化に応じた再配置」「キャリア構築」を軸とした人事戦略を展開しています。2023年4月に導入した新人事制度の安定運用を図り、個人の自律的なキャリア構築支援や、シニア人材の活用、ダイバーシティ推進に注力しています。また、健康経営の推進や労働安全衛生の強化により、従業員が安心して働ける環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.9歳 22.1年 7,399,954円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.1%
男性育児休業取得率 44.4%
男女賃金差異(全労働者) 64.3%
男女賃金差異(正規) 75.2%
男女賃金差異(非正規) 82.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、パーパス理解度(46.1%)、バリュー評価達成率(65.6%)、エンゲージメントスコア(5.9)、教育研修費(31,920円/人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業継続に関するリスク


大規模な地震や自然災害、事故、感染症蔓延等が操業停止やサプライチェーンの途絶を引き起こし、業績に甚大な影響を与える可能性があります。同社は全社的なBCP(事業継続計画)の策定や訓練、生産機能の相互補完、在庫調整などを通じて対策を強化しています。

(2) 人的資本に関するリスク


労働人口の減少に伴う人材獲得競争の激化や、技術伝承の失敗、従業員のモラール低下などが競争力低下を招くリスクがあります。これに対し、人事制度改革の定着、中途採用の強化、教育研修の充実、ダイバーシティ推進などの施策を行い、人材価値の向上に努めています。

(3) ITに関するリスク


サイバー攻撃やシステム障害による情報漏洩、業務停止のリスクがあります。特にIT-BCPの構築やセキュリティプラットフォームの整備、システム構成の最適化を進め、情報管理とセキュリティの強化を図っています。

(4) 気候変動に関するリスク


脱炭素社会への移行に伴う規制強化やコスト増加、自然災害の激甚化による物理的被害が事業に影響を及ぼす可能性があります。TCFD提言に沿った情報開示や温室効果ガス排出量の削減、サステナブル対応製品の開発・拡販を通じて、リスク低減と機会の創出に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。