※本記事は、リンナイ株式会社の有価証券報告書(第76期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. リンナイってどんな会社?
給湯機器や厨房機器をはじめとする熱エネルギー機器の開発から製造、販売までをグローバルに展開する企業です。
■(1) 会社概要
1920年に林内商会として創設され、ガス器具等の製造販売を開始しました。1950年に株式会社に改組し、1971年に現在のリンナイへ商号変更しています。同年にはオーストラリアに子会社を設立して海外進出を本格化させ、1979年に名古屋証券取引所、1982年には東京証券取引所に上場を果たしました。
現在の同社グループの従業員数は連結で11,328名、単体で3,470名です。筆頭株主は事業会社の内藤で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。また、第3位には創業家出身で代表取締役会長を務める林謙治氏が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 内藤 | 13.50% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.01% |
| 林謙治 | 5.33% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.3%です。代表取締役社長は内藤弘康氏が務めています。取締役9名のうち社外取締役は4名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 林謙治 | 代表取締役会長 | 1972年に同社に入社し、総合企画室長、生産技術部長、関連事業部長などの要職を歴任しました。2005年に常務執行役員、2006年に代表取締役副会長を経て、2017年より現職。 |
| 内藤弘康 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1983年に同社に入社し、開発技術本部副本部長、開発本部長、経営企画部長兼総務部長などを歴任しました。2005年に常務執行役員に就任し、同年11月より現職。 |
| 成田常則 | 代表取締役副社長執行役員社長補佐 | 1967年に同社に入社し、開発技術本部長、生産本部長、営業本部長、海外事業本部担当などを幅広く歴任しました。2006年に専務執行役員を経て、2018年より現職。 |
| 白木英行 | 取締役専務執行役員営業本部長 | 1989年に同社に入社し、営業本部関東支社長、営業本部副本部長などを歴任しました。2020年に常務執行役員営業本部長に就任し、2023年より現職。 |
| 井上一人 | 取締役専務執行役員生産本部長 | 1985年に同社に入社し、リンナイコリア副社長、リンナイ精機社長、同社生産技術部長などを歴任しました。2021年に常務執行役員生産技術本部長を経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、神尾隆(元トヨタ自動車専務取締役・指名諮問委員長)、小倉忠(元ノリタケ社長)、土地陽子(元ソフトバンクグループIR部長)、佐藤久美(名古屋国際工科専門職大学教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」、「アメリカ」、「オーストラリア」、「中国」、「韓国」、「インドネシア」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 日本
同社グループの主力市場として、ガス衣類乾燥機やハイブリッド給湯暖房システムなど独自性の高い製品を中心に、給湯機器、厨房機器、空調機器の開発から製造、販売までを手掛けています。省エネや家事時短のニーズに応える高付加価値商品の展開に注力しています。
収益は、都市ガス会社や住設機器メーカー、管建材販売会社などの得意先に対する製品の直接販売やOEM供給から得ています。事業の運営は、同社およびガスター、アール・ビー・コントロールズなどの連結子会社が行っています。
■(2) アメリカ
給湯器の販売台数が年間1,000万台にのぼる巨大市場において、主力商品であるタンクレスの瞬時式ガス給湯器を中心に展開しています。今後は電化の動きを捉えたヒートポンプ式給湯器の拡販も目指しています。
収益は、現地得意先を通じた製品販売から得ています。事業の運営は主に連結子会社であるリンナイアメリカが行っており、現地での包括的な販売戦略に基づく事業活動を展開しています。
■(3) オーストラリア
天然資源が豊富な同国において、脱炭素社会に向けた電化の進展を背景に、ヒートポンプ式給湯器や家庭用ルームエアコン、ダクト式冷暖房システムなどの空調機器、および太陽光発電システムを展開しています。
収益は、現地での多様なエネルギー環境に対応した製品販売から得ています。事業の運営は主にリンナイオーストラリアやスマートエナジーグループが担い、マレーシアの子会社が生産体制を補完しています。
■(4) 中国
同国市場向けに、燃焼・制御技術を活かしたコンデンシング給湯器や静音機能を備えた給湯器など、現地競合メーカーと差別化された独自性の高い製品を開発、製造、販売しています。
収益は、インターネットのプラットフォーマーが持つ大型実店舗などを経由した製品販売から得ています。事業の運営は、主に連結子会社である上海林内や広州林内燃具電器などが担っています。
■(5) 韓国
住宅関連事業の競争が激しい同国において、主力のボイラー機器をはじめ、ウルトラファインバブル機能を搭載したボイラーや独自性の高い高機能なビルトインコンロなどを展開しています。
収益は、現地得意先を通じた高付加価値製品の販売から得ています。事業の運営は、主にリンナイコリアおよびアール・ビー・コリアが担い、生産性向上による収益性改善を図っています。
■(6) インドネシア
同国政府によるLPガス普及プロジェクトの進展を受け、高いシェアとブランド認知を誇る高品質なテーブルコンロを中心に販売しています。また、レンジフードなど高価格帯のビルトイン商材への展開も進めています。
収益は、現地市場でのガス機器製品の販売から得ています。事業の運営は、主に連結子会社であるリンナイインドネシアが担っています。
■(7) その他
台湾、タイ、ベトナム、ニュージーランド、ブラジル、ペルーなど、成長著しい中南米や東南アジアの国々において、地域の所得増加や生活水準の向上に合わせた生活の質向上商品を提供しています。
収益は、各地域のニーズに応じた給湯・厨房・空調機器の販売から得ています。事業の運営は、台湾林内工業やリンナイタイ、MTインダストリアルなどの各現地法人がそれぞれ独立した経営単位として担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上・利益ともに力強い右肩上がりの成長を継続しています。売上高は安定して拡大を続けており、それに伴い経常利益や当期利益も毎期着実に増加しています。利益率も10%台後半から12%台へと向上傾向にあり、高付加価値商品の伸長や原価低減活動の効果が収益性の高さに直結していることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,662億円 | 4,252億円 | 4,302億円 | 4,603億円 | 4,704億円 |
| 経常利益 | 391億円 | 446億円 | 461億円 | 503億円 | 577億円 |
| 利益率(%) | 10.7% | 10.5% | 10.7% | 10.9% | 12.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 154億円 | 185億円 | 198億円 | 226億円 | 313億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに順調に拡大しています。原材料価格やエネルギー費の高騰といった外部環境の逆風があるものの、商品ミックスの改善や価格転嫁の進展により、売上総利益率および営業利益率はいずれも前年度を上回る水準で推移しており、稼ぐ力が着実に強化されていることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,603億円 | 4,704億円 |
| 売上総利益 | 1,561億円 | 1,637億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.9% | 34.8% |
| 営業利益 | 460億円 | 505億円 |
| 営業利益率(%) | 10.0% | 10.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が131億円(構成比12%)、運賃及び荷造費が63億円(同6%)を占めています。また、売上原価は3,067億円で、売上原価合計に対する割合として様々な製造経費が含まれており、徹底した原価低減活動により収益性維持に努めています。
■(3) セグメント収益
主力市場である日本では、重点商品であるハイブリッド給湯器などの販売が堅調に推移し増収となりました。オーストラリアやアメリカでも、電化の進展に伴うヒートポンプ式給湯器の好調や、タンクレスガス給湯器の拡販により大きく売上を伸ばしています。一方で、中国は不動産市場の不況による消費マインドの冷え込みが影響し、減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 2,037億円 | 2,072億円 |
| アメリカ | 665億円 | 721億円 |
| オーストラリア | 366億円 | 440億円 |
| 中国 | 686億円 | 607億円 |
| 韓国 | 347億円 | 343億円 |
| インドネシア | 170億円 | 176億円 |
| その他 | 332億円 | 345億円 |
| 連結(合計) | 4,603億円 | 4,704億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業活動で得た十分な資金を元手に、将来の成長に向けた事業投資を行いつつ、借入金の返済や株主還元も自己資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 575億円 | 493億円 |
| 投資CF | -227億円 | -309億円 |
| 財務CF | -265億円 | -219億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「品質こそ我らが命」を原点思想として掲げています。「熱と暮らし」「健康と暮らし」を主要なテーマとして位置づけ、人々の生活に密着した商品・サービスの提供を通じて、健全で心地よい暮らしの実現を目指しています。安全・安心を基盤としながら、地球規模の社会課題解決にも本業を通じて貢献していく方針です。
■(2) 企業文化
「Creating a healthier way of living(健全で心地よい暮らし方を創造します)」というブランドプロミスのもと、社員一人ひとりがお客様の「楽しみ」や「ワクワク」を体現することを重視する文化があります。現地に根ざした事業展開を基本方針とし、ESG視点でサステナビリティの諸課題に誠実に向き合う企業風土が醸成されています。
■(3) 経営計画・目標
2026年度から2030年度を対象とする中期経営計画「accelerate 2030」において、中長期の持続的成長に向けた明確な目標を設定しています。収益性と資本効率の向上を目指し、以下の数値を達成目標として掲げています。
* 2030年度の連結売上高:6,200億円
* 2030年度の連結営業利益:700億円
* 2030年度の投下資本利益率(ROIC):15.0%
* 2030年度の自己資本利益率(ROE):10.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画のもと、「電化商品の拡大」「新たな価値の創造」「既存事業の盤石化と持続的成長」「経営基盤の強化」を成長戦略として推進しています。各国のエネルギー規制を見据え、ヒートポンプ給湯器をはじめとする電化商品への本格参入で収益向上を図るほか、AIやIoTなどの先進技術を固有技術と融合させ、社会課題の解決に寄与する新たなビジネスモデルの創出に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業ポートフォリオの転換を支えるため、「グローバル人材の育成・獲得」「チャレンジできる人材の発掘・育成」「女性活躍推進のさらなる強化」「事業戦略に基づく人材配置の高度化」を重要課題としています。多様な人材が能力を最大限に発揮できる環境を整備し、イノベーション創出力と事業の実行スピードを高めることで、従業員エンゲージメントの向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.8歳 | 19.2年 | 7,410,733円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.4% |
| 男性育児休業取得率 | 63.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 62.3% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 61.0% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、目標とする従業員エンゲージメントスコア(57%)、女性総合職数(204名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) サプライヤーにおける人権リスク
製品の生産において複数の取引先から原材料や部品を調達する中、サプライヤーにおける強制労働や児童労働、紛争鉱物の使用といった人権リスクが顕在化する可能性があります。これらが発生した場合、社会的信用の失墜やブランド価値の低下を招き、同社グループの経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす恐れがあります。
■(2) 海外子会社の円通貨換算の影響
同社グループは海外売上高の比率が高く、各国の現地通貨で計上された売上や資産等を円換算して連結財務諸表を作成しています。そのため、予想を超える為替相場の変動により、現地通貨の価値変動以上に円換算時の影響が生じ、利益が減少するなど業績に悪影響を与えるリスクが存在します。
■(3) パンデミックによる世界的景気後退の影響
重大な新型感染症が流行した場合、生産・販売活動が停止し、売上が減少するリスクがあります。また、パンデミックに起因する世界的な景気後退や、得意先・仕入先の休業・倒産などにより製品の需給バランスが崩れ、同社グループの事業運営や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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