※本記事は、リンナイ株式会社 の有価証券報告書(第75期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. リンナイってどんな会社?
熱機器の製造・販売を主軸とし、給湯器や厨房機器などをグローバルに展開する企業。
■(1) 会社概要
1920年に「林内商会」として創業し、ガス器具の製造販売を開始しました。1950年に設立後、1970年代にはオーストラリア、韓国、アメリカに現地法人を設立し海外展開を加速。1983年に東証・名証一部へ指定され、2022年の市場区分見直しに伴いプライム・プレミア市場へ移行しました。
連結従業員数は10,908名、単体では3,512名体制です。筆頭株主は創業家資産管理会社の性格を持つ内藤で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は株式会社日本カストディ銀行(信託口)と続きます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 内藤 | 13.25% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.95% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.55% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名(社外取締役含む)の計13名で構成され、女性役員比率は15.3%です。代表取締役社長 社長執行役員は内藤 弘康氏が務めています。社外取締役比率は30.8%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 内藤 弘康 | 代表取締役社長 社長執行役員 | 1983年入社。開発技術本部副本部長、経営企画部長兼総務部長などを歴任。2005年より現職。 |
| 林 謙治 | 代表取締役会長 | 1972年入社。生産技術部長、関連事業部長などを経て、2006年代表取締役副会長。2017年より現職。 |
| 成田 常則 | 代表取締役 副社長執行役員 社長補佐 | 1967年入社。生産本部長、国内総括兼営業本部長などを歴任。2016年より社長補佐。 |
| 白木 英行 | 取締役 専務執行役員 営業本部長 | 1989年入社。営業本部関東支社長などを経て、2020年常務執行役員営業本部長。2023年より現職。 |
| 井上 一人 | 取締役 専務執行役員 生産技術本部長 | 1985年入社。リンナイコリア副社長、生産技術部長などを歴任。2021年常務執行役員生産技術本部長。2023年より現職。 |
社外取締役は、神尾 隆(元トヨタ自動車常務取締役)、小倉 忠(元ノリタケカンパニー・リミテド代表取締役社長)、土地 陽子(元トヨタ・モーター・ヨーロッパ ゼネラルマネージャー)、佐藤 久美(金城学院大学教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「アメリカ」「オーストラリア」「中国」「韓国」「インドネシア」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 日本
国内向けにガスコンロ、ガス給湯機器などの熱機器全般を製造・販売しています。近年はハイブリッド給湯・暖房システムやガス衣類乾燥機などの高付加価値商品に注力しています。
主な顧客は都市ガス会社、プロパン燃料販売会社、住設機器メーカー等であり、製品の販売対価を収益源としています。運営は主にリンナイ、ガスター等の子会社が行っています。
■(2) アメリカ
米国、カナダ、メキシコ等において、タンクレスガス給湯器などの販売および製造を行っています。省エネ志向の高まりを背景に、高効率な給湯器の需要を取り込んでいます。
製品販売による収益が主となります。運営はリンナイアメリカ等の現地法人が担っています。
■(3) オーストラリア
オーストラリアにおいて、瞬間式ガス給湯器、電気貯湯式給湯器、空調機器などを展開しています。脱炭素社会に向け、再生可能エネルギーを利用した機器の拡充も進めています。
製品販売により収益を得ています。運営はリンナイオーストラリア等の現地法人が行っています。
■(4) 中国
中国市場において、給湯器やガスコンロなどの製造・販売を行っています。社会インフラの拡大と所得水準の向上に伴うガス機器需要に対応し、高付加価値商品を提供しています。
製品販売が主な収益源です。運営は上海林内有限公司等の現地法人が担っています。
■(5) 韓国
韓国市場において、ボイラーやガスコンロなどを製造・販売しています。競合他社との価格競争が激しい中、コストダウンや高機能商品の投入による差別化を図っています。
製品販売による対価を得ています。運営はリンナイコリア等の現地法人が行っています。
■(6) インドネシア
インドネシアにおいて、ガスコンロなどの製造・販売を行っています。政府主導のLPガス普及プロジェクトを背景に高いシェアを持ち、ビルトインコンロ等の高価格帯商品も強化しています。
製品販売により収益を得ています。運営はリンナイインドネシア等の現地法人が行っています。
■(7) その他
上記報告セグメントに含まれない台湾、タイ、ベトナム、ブラジル等の地域において、ガス機器等の製造・販売を行っています。
各地域の顧客への製品販売が収益源です。運営は台湾林内工業股份有限公司等の各現地法人が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、特に直近期では4,600億円を超え過去最高を更新しました。利益面でも、原材料価格高騰の影響を受けつつも価格改定や原価低減効果により、経常利益は500億円台に達し、親会社株主に帰属する当期純利益とともに増加基調を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,444億円 | 3,662億円 | 4,252億円 | 4,302億円 | 4,603億円 |
| 経常利益 | 424億円 | 391億円 | 446億円 | 461億円 | 503億円 |
| 利益率(%) | 12.3% | 10.7% | 10.5% | 10.7% | 10.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 276億円 | 237億円 | 261億円 | 267億円 | 297億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しています。売上原価率は前期の68.0%から66.1%へと改善し、利益率の向上に寄与しました。販売費及び一般管理費は増加しましたが、増収効果と原価率改善により、営業利益率は9.2%から10.0%へ上昇しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,302億円 | 4,603億円 |
| 売上総利益 | 1,378億円 | 1,561億円 |
| 売上総利益率(%) | 32.0% | 33.9% |
| 営業利益 | 394億円 | 460億円 |
| 営業利益率(%) | 9.2% | 10.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が332億円(構成比30%)、運賃及び荷造費が123億円(同11%)を占めています。売上原価は3,043億円で、売上高の66%を占めています。
■(3) セグメント収益
日本セグメントは主力商品の販売伸長により増収増益となりました。海外では、アメリカやオーストラリアなどで増収を確保しましたが、中国は消費マインドの冷え込み等により減収減益となりました。インドネシアは高価格帯商品の販売増により大幅な増益を達成しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 1,924億円 | 2,037億円 | 180億円 | 223億円 | 10.9% |
| アメリカ | 579億円 | 665億円 | -12億円 | 21億円 | 3.2% |
| オーストラリア | 303億円 | 366億円 | 12億円 | 11億円 | 3.1% |
| 中国 | 719億円 | 686億円 | 121億円 | 101億円 | 14.7% |
| 韓国 | 319億円 | 347億円 | 0.2億円 | 9億円 | 2.7% |
| インドネシア | 149億円 | 170億円 | 27億円 | 38億円 | 22.6% |
| その他 | 309億円 | 332億円 | 44億円 | 50億円 | 15.1% |
| 調整額 | - | - | 21億円 | 6億円 | - |
| 連結(合計) | 4,302億円 | 4,603億円 | 394億円 | 460億円 | 10.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動と財務活動がマイナスであるため、本業で稼いだ資金で投資や借入返済・株主還元を行っている「健全型」と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 433億円 | 575億円 |
| 投資CF | -200億円 | -227億円 |
| 財務CF | -237億円 | -265億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「品質こそ我らが命」を原点思想とし、「熱と暮らし」「健康と暮らし」をテーマとした商品・サービスの提供を通じて、健全で心地よい暮らしの実現を目指しています。また、ブランドプロミスとして「Creating a healthier way of living(健全で心地よい暮らし方を創造します)」を掲げています。
■(2) 企業文化
創業以来、「品質こそ我らが命」という思想に基づき、ゼロディフェクト(不良ゼロ)を目標としたものづくりを重視しています。法令遵守や社会規範に沿った行動を徹底し、サステナビリティの視点を取り入れた企業活動を通じて、社会課題の解決と自社の成長の両立を図る文化があります。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「New ERA 2025」(2021~2025年度)を推進しています。最終年度となる2025年度の計画数値は以下の通りです。
* 連結売上高:4,700億円
* 連結営業利益:500億円
* 連結営業利益率:10.6%
* 連結投下資本利益率(ROIC):12.0%
* 自己資本当期純利益率(ROE):8.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
「社会課題解決への貢献」「事業規模の拡大」「企業体質の変革」の3つの戦略ストーリーを軸に成長を目指しています。特に、カーボンニュートラル実現に向けた長期方針「RIM 2050」のもと、高効率給湯器やハイブリッド給湯・暖房システムなどの環境貢献商品の普及を加速させるとともに、成長市場や未参入地域での販売拡大を図ります。また、無形資産への投資やDXの推進により企業体質の変革を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営戦略の実現に向け、グローバル人材の育成、DX人材の育成、ブランドの浸透を重点施策としています。国別・部門別に必要なポジションを明確化し、海外人材プールの設定や教育プログラムを展開しています。また、従業員エンゲージメントの向上を目指し、教育機会の増大、多様性の推進、社員の働き方や職場環境の改善への投資を継続的に行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.7歳 | 18.9年 | 7,142,237円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.2% |
| 男性育児休業取得率 | 64.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 62.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 64.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、海外出向経験者数(124名)、女性職系転換数/比率(10人/43%)、福利厚生サービス利用者(2,986人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 住設機器メーカーとしての市場リスク
国内市場の成熟化や競争激化、電力・ガス自由化に伴う流通変革が進む中、海外市場開拓が急務となっています。新製品開発や販売戦略、新規市場開拓が計画通りに進まない場合、売上や利益の減少、投資未回収のリスクがあり、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料及び部品の調達と物流
製品生産に必要な原材料(鉄鋼、銅等)や部品を複数社から調達していますが、価格高騰による製造原価上昇や、取引先の倒産・事故による調達遅延のリスクがあります。また、サプライヤーにおける人権リスクや物流能力の不足等が顕在化した場合、生産活動や社会的信用に影響を与える可能性があります。
■(3) 海外事業展開に関するリスク
海外売上比率が50%を超える中、進出国の政策、法令変更、社会的混乱(テロ、戦争等)やインフラ未整備等のリスクが存在します。これらが顕在化した場合、操業停止や事業縮小を余儀なくされ、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、海外子会社の現地通貨建て財務諸表の円換算に伴う為替変動リスクもあります。
■(4) 環境に関するリスク
世界的な脱炭素社会への動きが加速する中、化石燃料を使用する製品への規制強化が進む可能性があります。これにより製品の製造・販売が制限された場合、経営成績に多大な影響を及ぼす恐れがあります。同社は「RIM 2050」を掲げ、製品ライフサイクル全体でのCO2排出量ゼロを目指しています。



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