エンシュウ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エンシュウ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するエンシュウは、工作機械の製造販売や輸送機器部品の受託加工を主力事業としています。直近の業績では、売上高は前期比で減少したものの、採算性を重視した受注やコスト構造の見直し等の収益改善施策が奏功し、営業利益および経常利益、当期純利益において黒字転換を果たしました。


※本記事は、エンシュウ株式会社の有価証券報告書(第158期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エンシュウってどんな会社?


工作機械の製造販売と二輪車・四輪車等のエンジン・駆動部品等の受託加工を主力とする企業です。

(1) 会社概要


1920年2月に初代社長が鈴政式織機を設立し、織機の製造販売を開始したのが同社の始まりです。1937年に工作機械の製造を開始し、1961年には東京、大阪、名古屋の各証券取引所市場第一部に上場しました。1976年にヤマハ発動機の受託生産を開始し、近年では2022年にエンシュウコネクティッドを設立してシステムインテグレーションサービスにも展開しています。

現在の従業員数は連結で804名、単体で514名です。筆頭株主はエンシュウ取引先持株会で、第2位は資本業務関係等を有する事業会社のヤマハ発動機が名を連ねています。

氏名 持株比率
エンシュウ取引先持株会 19.73%
ヤマハ発動機 10.24%
池浦捷行 3.64%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役会長 会長執行役員 CEOは勝倉宏和氏、代表取締役社長 社長執行役員 COOは鈴木敦士氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
勝倉宏和 代表取締役会長会長執行役員CEO 1983年日本興業銀行入行。みずほコーポレート銀行副部長等を経て、2014年エンシュウ入社。代表取締役副社長等を経て2023年より現職。
鈴木敦士 代表取締役社長社長執行役員COO 1986年同社入社。ENSHU GmbH社長、工作機械・レーザー事業部長等を経て、2023年代表取締役社長社長執行役員COO。2026年より現職。
田代繁甲 取締役副社長執行役員 1993年同社入社。輸送機器事業部生産技術部長、常務執行役員技術・製造本部長等を経て、2025年取締役就任。2026年より現職。
村松靖 取締役常勤監査等委員 1994年あさひ銀行入行。りそな銀行支店長等を経て2024年同社に出向。同年入社し取締役(監査等委員)に就任。2024年より現職。


社外取締役は、山地勝仁(元ヤマハ発動機上席執行役員)、森和彦(元浜松ホトニクス取締役常務執行役員)、村松奈緒美(石塚・村松法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「工作機械関連事業」および「部品加工関連事業」、「その他」事業を展開しています。

(1) 工作機械関連事業


システム工作機械、マシニングセンタ、レーザー加工専用機などの各種工作機械の製造販売を行っています。また、人手不足を背景とした自動化ニーズの高まりに応え、システムインテグレーションサービスも展開し、主に自動車や半導体、歯科加工機向けの顧客に製品とサービスを提供しています。

工作機械の販売や改造工事、保守サービスなどの提供により顧客から対価を得ています。主に同社が製造販売を行うほか、海外販売子会社を通じてグローバルに展開し、エンシュウコネクティッドがシステムインテグレーションサービスを担っています。

(2) 部品加工関連事業


大型二輪車用部品や自動車関連向けのエンジン・駆動部品などの受託加工を行っています。自社工場における自動化や省人化を推進するとともに、工作機械事業などで培ったノウハウを活かした高効率なモノづくりを通じて、生産性向上と高品質な部品加工を提供しています。

顧客からの部品の受託加工により収益を得ています。主な取引先はヤマハ発動機であり、国内では同社が受託加工を行うとともに、海外では連結子会社のENSHU VIETNAM Co.,Ltd.がベトナムにおいて二輪車のエンジン部品の受託加工を行っています。

(3) その他


報告セグメントに含まれないその他の事業として、不動産賃貸事業を展開しています。静岡県浜松市内に所有する本社および工場などの一部の土地、建物、構築物を賃貸用の商業用施設として活用し、地域のニーズに応えるサービスを提供しています。

所有する不動産を商業用施設等として賃貸することにより、賃借人から賃貸収益を得ています。当事業は同社が主体となって運営管理を行っており、安定した収益基盤の一つとして同社グループの事業活動を補完する役割を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は増減を繰り返しながら推移しています。利益面では原材料価格の高騰や市場環境の不透明感の影響を受け、経常利益および当期利益の赤字を計上する期もありましたが、直近期においては採算性を重視した受注活動やコスト削減策の効果が現れ、黒字に転換しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 239億円 248億円 241億円 219億円 192億円
経常利益 6億円 -0億円 4億円 -9億円 2億円
利益率(%) 2.7% -0.2% 1.6% -4.3% 1.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -4億円 4億円 -1億円 -23億円 2億円

(2) 損益計算書


直近2期の損益状況を見ると、売上高は減少したものの、売上総利益は改善し、売上総利益率も上昇しています。営業利益についても前段の赤字から黒字へと転換しており、採算性を重視した受注活動や生産性向上、経費削減等の収益改善施策が着実に成果を上げていることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 219億円 192億円
売上総利益 27億円 30億円
売上総利益率(%) 12.3% 15.8%
営業利益 -7億円 4億円
営業利益率(%) -3.2% 2.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が14億円(構成比53%)、法定福利費が3億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、工作機械関連事業は国内および海外において減収となり規模が縮小しました。一方、部品加工関連事業は国内主要顧客向けの仕事量増加を背景に増収を確保しており、事業環境の変化に応じた経営資源の最適配分を進めている状況が伺えます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
工作機械関連事業 99億円 68億円
部品加工関連事業 119億円 124億円
その他 0.7億円 0.7億円
連結(合計) 219億円 192億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 15億円 14億円
投資CF -13億円 -5億円
財務CF -2億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.3%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も35.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は経営理念として「共生共栄」の考えを掲げており、モノづくりで培った技術力をもって持続可能な社会の実現に貢献するとともに、企業価値の向上を目指しています。また、長期ビジョンとして「Make a New Enshu for the World's manufacturing」を掲げ、世界のモノづくりへの貢献を追求しています。

(2) 企業文化


同社は、社員一人一人が新しいモノづくりに挑戦し、常により高いレベルの品質とコストに挑戦する行動様式を重視しています。また、部品加工事業、工作機械事業、SIer&IoT事業の3事業のシナジー発揮に挑戦する姿勢を文化として根付かせ、環境負荷低減や社会課題の解決に積極的に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は、売上高重視から利益額重視への転換を基本方針とする5か年の中期経営計画「Make a New Enshu」を推進しており、ROE5%の達成を目標に掲げています。

* 2029年3月期目標:全社売上高250億円、営業利益率4%
* 2029年3月期目標:部品加工事業売上高170億円、営業利益率5%
* 2029年3月期目標:工作機械事業売上高80億円、営業利益率2%

(4) 成長戦略と重点施策


工作機械関連事業では、安定的な収益基盤の確立を目指し、システム工作機械、顧客共同での開発型機械製造、レーザー加工システム、SIer&IoT、保守サービスの5事業を柱とする構造変革を推進します。部品加工関連事業では、収益基盤の多様化と自動化・省人化を進め、グループ間の事業シナジー創出を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材を企業価値創出の源泉と位置付け、経営戦略と連動した人材戦略を推進しています。組織の階層間・部門間の連携強化や管理職の育成力向上に取り組むとともに、社員主体の研修やeラーニングを活用し、自律的に学び挑戦する「チャレンジ人材」の育成・創出に注力し、事業間のシナジー創出を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.1歳 19.7年 5,332,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.3%
男性育児休業取得率 62.5%
男女賃金差異(全労働者) 69.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 71.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 71.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員採用比率(19.2%)、管理職における中途採用者比率(30.4%)、外国人社員比率(0.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 設備投資動向の影響と自動車業界の構造変化


工作機械関連事業の受注は顧客の設備投資動向に強く依存しており、景気動向の影響を受けやすい特性があります。特に主要顧客である自動車業界においては、EVシフトの見直しや自動化ニーズの高まりなど構造変化が進んでおり、これらの市場動向の変化が同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定の取引先に対する売上依存


部品加工関連事業における受託加工は、関連当事者であるヤマハ発動機に対する売上依存度が43.8%と高く設定されています。同社との取引方針や事業環境の変化、生産計画の変動などは、同社の収益基盤に直接的な影響を与えるため、業績変動のリスク要因として認識されています。

(3) 外貨建て取引に伴う為替変動


同社グループは海外売上高比率が25.2%に達しており、海外との取引において米ドル建てやユーロ建て等の外貨建て決済が含まれています。為替予約の活用や円建て取引の増加によってリスクの低減に努めているものの、想定を超える急激な為替レートの変動は、業績に予期せぬ影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。