日本精工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本精工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本精工は東京証券取引所プライム市場に上場し、産業機械、自動車、ステアリング等の事業を展開する企業です。直近の業績では、売上高が前期比で増加し、営業利益や親会社の所有者に帰属する当期利益なども大きく伸長し増収増益を達成しています。産業全般を支える軸受技術を軸に、グローバルな事業活動を推進しています。


※本記事は、日本精工株式会社の有価証券報告書(第165期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 日本精工ってどんな会社?


産業機械や自動車向けの軸受、ステアリング製品を中心にグローバルで事業を展開する精密機械メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1916年に設立され、日本で初めて軸受の生産を開始しました。1962年には米国に販売拠点を設立し、その後欧州やアジアなどグローバル展開を推進しています。2004年に委員会等設置会社(現:指名委員会等設置会社)へ移行しガバナンスを強化しました。直近では2025年にNSKステアリング&コントロールを連結子会社化するなど、事業基盤の再構築を進めています。

同社グループの従業員数は連結で26,278名、単体で7,231名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行、第3位は生命保険会社となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.86%
日本カストディ銀行(信託口) 5.74%
明治安田生命保険相互 5.53%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表執行役社長CEOは市井明俊氏が務めています。取締役9名のうち5名が社外取締役であり、過半数を占めています。

氏名 役職 主な経歴
市井明俊 取締役 代表執行役社長CEO 1986年入社。自動車事業本部副本部長、インド総支配人、経営企画本部長などを経て、2021年より現職。
鈴木啓太 取締役 代表執行役専務CFOデジタル変革本部長 1987年入社。財務本部グループ管理部長、執行役常務財務本部長などを経て、2023年より現職。
山名賢一 取締役 1986年入社。財務本部連結会計部長、執行役常務アセアン総支配人などを経て、2025年より現職。
吉田ルリ子 取締役 1991年入社。人材マネジメント本部コーポレート人事部長、法務コンプライアンス本部長などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、津田純嗣(元安川電機社長・指名委員長)、泉本小夜子(元監査法人トーマツパートナー・監査委員長)、藤塚主夫(元小松製作所副社長)、林信秀(元みずほ銀行頭取・報酬委員長)、鹿島章(元PwCコンサルティング合同会社代表執行役会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「産業機械事業」「自動車事業」「ステアリング事業」および「その他」の事業を展開しています。

(1) 産業機械事業


一般産業向けの軸受をはじめ、精密機器関連製品や状態監視システムなどの製造・販売を行っています。顧客は工作機械、半導体製造装置、ロボティクス、エネルギーなど多岐にわたる産業分野の企業です。

収益は、顧客に対する製品販売や保守サービス等から得ています。事業の運営は主に日本精工やNSKマイクロプレシジョンが担当し、グローバルな販売網を通じて製品を提供しています。

(2) 自動車事業


自動車および自動車部品メーカー向けに、ハブユニット軸受や自動変速機用部品などの製造・販売を行っています。近年は自動車の電動化の進展に対応したeAxle向け軸受などの開発にも注力しています。

収益は、完成車メーカーや部品メーカーからの製品販売代金により得ています。事業の運営は主に日本精工およびNSKワーナーが担当し、国内外の製造拠点で連携した生産体制を構築しています。

(3) ステアリング事業


自動車メーカー向けに、電動パワーステアリングなどのステアリング関連製品を製造・販売しています。ADAS(先進運転支援システム)や自動運転の高度化に求められる次世代操舵技術の開発も進めています。

収益は、製品の販売を通じて顧客から得ています。事業の運営は主にNSKステアリングシステムズやNSKステアリング&コントロールが担当しています。

(4) その他事業


報告セグメントに含まれない事業として、鋼球や機械設備等の製造・販売を行っています。生産設備向けの部品提供なども手掛けています。

収益は、各製品の顧客からの販売代金として得ています。事業の運営は、天辻鋼球製作所やNSKマシナリーなどのグループ子会社が主に担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は需要変動の影響を受けつつも、当期にかけて大きく伸長しています。利益面でも原価増や構造改革費用の影響を吸収し、直近では税引前利益や当期利益がともに増加傾向にあり、収益性の回復が進んでいます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 8,652億円 7,768億円 7,889億円 7,967億円 9,116億円
税引前利益 295億円 433億円 262億円 251億円 380億円
利益率(%) 3.4% 5.6% 3.3% 3.2% 4.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 166億円 184億円 85億円 106億円 229億円

(2) 損益計算書


売上高の増加にともない、営業利益も拡大しています。売上総利益率はやや低下したものの、販売費及び一般管理費等のコントロールにより営業利益率は改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 7,967億円 9,116億円
売上総利益 670億円 711億円
売上総利益率(%) 8.4% 7.8%
営業利益 285億円 388億円
営業利益率(%) 3.6% 4.3%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が679億円(構成比42%)、物流費が240億円(同15%)、研究開発費が149億円(同9%)を占めています。売上原価は7,204億円で、売上原価率は約79%となっています。

(3) セグメント収益


主力の自動車事業は関税の売価転嫁等により増収・増益となっています。産業機械事業は欧州の市況悪化や構造改革費用の影響で減益となりました。ステアリング事業は子会社化に伴い売上高が計上され、収益に貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
産業機械 3,615億円 3,775億円 139億円 126億円 3.3%
自動車 4,017億円 4,033億円 147億円 174億円 4.3%
ステアリング - 1,006億円 14億円 77億円 7.7%
その他 335億円 303億円 23億円 5億円 1.6%
調整額 -295億円 -246億円 -38億円 7億円 -
連結(合計) 7,967億円 9,116億円 285億円 388億円 4.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態である「健全型」です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 822億円 978億円
投資CF -588億円 -648億円
財務CF -337億円 -378億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「MOTION & CONTROL™を通じ、円滑で安全な社会に貢献し、地球環境の保全をめざすとともに、グローバルな活動によって、国を越えた人と人の結びつきを強める」という企業理念を掲げています。世界をリードする技術力によって社会課題の解決と持続的発展に貢献する企業を目指しています。

(2) 企業文化


「社員一人ひとりの個性と可能性を尊重する」「柔軟で活力のある企業風土で時代を先取りする」といった経営姿勢を重視しています。また、コアバリューである「安全・品質・環境・コンプライアンス」を意思決定や行動において最優先される共通の価値基準としています。

(3) 経営計画・目標


10年後の目指す姿『NSKビジョン2036』および『中期経営計画2028』を策定しています。事業ポートフォリオの変革と収益を伴う成長を目指し、具体的な経営指標を目標として掲げています。

- 営業利益率:8%以上
- ROE:8%
- ROIC:6%
- ネットD/Eレシオ:0.4倍未満

(4) 成長戦略と重点施策


“Bearings & Beyond”のテーマのもと、既存事業の体質改善と新領域での成長を図ります。既存事業では製品ポートフォリオの強化により収益性を高め、成長領域では自動車の電動化対応やロボット産業向けのアクチュエータ開発を推進します。さらに、状態監視ソリューションなどの技術サービス拡充も進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「未来志向の高い目標に向かって挑戦し、前進し続ける人材」を求める人材像と定義しています。多様なバックグラウンドを持つ従業員がそれぞれの力を発揮できるよう、自律的なキャリア形成を支援するロール型人事制度の導入や、健康経営の推進など、公平で個を活かす職場づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.1歳 16.6年 7,879,335円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.6%
男性育児休業取得率 95.8%
男女間賃金差異(全労働者) 74.7%
男女間賃金差異(正規労働者) 76.9%
男女間賃金差異(非正規労働者) 64.1%


また、同社は「人的資本の価値最大化」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、持続可能なエンゲージメントスコア(74%)、グローバルポスト現地化比率(76%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 地政学リスク

国際紛争に起因する物流遮断や原材料・エネルギー価格の高騰がリスクとなります。また、米国の追加関税政策や各国の通商・経済安全保障政策の変動が、サプライチェーンの維持や収益に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 技術革新に係るリスク

自動車の電動化や産業全般のデジタル化など、急速な技術革新が進む中、市場の変化や顧客からの高度な技術要求に対する開発・対応が遅れた場合、競争力の低下や事業機会の逸失につながるリスクがあります。

(3) 安全・防火及び自然災害に係るリスク

地震や風水害などの自然災害、パンデミック、あるいは工場での火災などが発生した場合、事業拠点の操業停止やサプライチェーンの寸断を引き起こし、業績に重大な影響を与えるリスクが存在します。

(4) 品質に係るリスク

世界中で多様な製品を製造・販売しているため、重大な品質問題の発生や品質保証体制の不備が生じた場合、製品回収(リコール)費用の発生や社会的信用の失墜を招き、業績を悪化させるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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