油研工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

油研工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、油圧製品、システム製品、環境機械の製造・販売を主な事業としています。直近の業績は、売上高335億円(前期比13.5%増)、経常利益19億円(同20.0%増)と増収増益で着地しました。


※本記事は、油研工業株式会社 の有価証券報告書(第81期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 油研工業ってどんな会社?

油圧機器の専業メーカーとして、産業機械の基幹部品である油圧製品やシステム製品、環境機械をグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要

1929年に結城工作所として創立し、1956年に株式会社へ改組しました。1969年には台湾に合弁会社を設立するなど早期から海外展開を進め、1970年に東京証券取引所市場第一部へ上場しました。その後、インドや香港、イギリス等に拠点を拡大し、2022年の市場再編に伴いスタンダード市場へ移行しました。

連結従業員数は1,398名、単体では371名です。筆頭株主は取引先持株会である油研協力会持株会、第2位はみずほ銀行、第3位は第一生命保険となっており、取引先や金融機関が上位を占めています。

氏名 持株比率
油研協力会持株会 5.66%
みずほ銀行 4.89%
第一生命保険 4.49%

(2) 経営陣

同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は永久秀治氏です。社外取締役比率は約18.2%です。

氏名 役職 主な経歴
永久 秀治 代表取締役社長 日本興業銀行(現 みずほ銀行)入行。2006年に同社へ転籍し、管理本部長、常務取締役等を経て2017年6月より現職。
萩野 嘉夫 常務取締役(管理本部担当) 1983年入社。総務部長、台湾油研股份有限公司董事長、管理本部長等を経て2025年4月より現職。
平山 直志 常務取締役(国内事業本部担当) 1986年入社。北陸油研代表取締役社長(出向)、国内事業本部長兼東日本営業部長等を経て2025年4月より現職。
宮坂 篤 常務取締役グローバル事業本部長 1987年入社。環境機械部長、海外営業部長、グローバル事業本部長兼事業推進部長等を経て2023年4月より現職。
安木 秀己 取締役(技術本部担当) 1982年入社。品質保証部長、研究開発部長、技術本部長等を歴任。2025年4月より現職。
岡田 忠則 取締役生産本部長 1992年入社。第二製造部長、台湾油研股份有限公司副董事長総経理(出向)、生産部長等を経て2024年10月より現職。


社外取締役は、鈴木正明(公認会計士・税理士)、田岡良夫(元住友精密工業代表取締役社長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「油圧製品」「システム製品」「環境機械」および「その他」事業を展開しています。

**(1) 油圧製品事業部門**
油圧ポンプ・モータ、圧力制御弁、流量制御弁、方向制御弁などの各種油圧制御機器を製造・販売しています。一般産業機械の基幹部品として幅広い顧客に提供されています。
収益は主に製品の販売対価として得ています。運営は、国内では同社および北陸油研が、海外では台湾油研股份有限公司やユケン・インディア LTD.、ユケン・ヨーロッパ LTD.などの現地法人が行っています。

**(2) システム製品事業部門**
産業機械油圧システム、標準油圧ユニット、油圧シリンダの製造・販売に加え、保守・サービスを行っています。顧客の仕様に基づき油圧機器を組み合わせた製品を提供します。
収益は製品の販売および保守・サービス料から得ています。運営は、同社およびユケンサービス、海外では台湾油研股份有限公司、ユケン・インディア LTD.、韓国油研工業などが担っています。

**(3) 環境機械事業部門**
自動切屑圧縮機、自動PETボトル減容機、自動マルチコンパクタの製造・販売を行っています。油圧制御技術の特徴を生かした環境関連機器を提供しています。
収益はこれら機械製品の販売から得ています。運営は主に同社が行っており、アジア地域ではユケン・インディア LTD.も展開しています。

**(4) その他**
油圧製品等の部品となる鋳物の製造・販売を行っています。
収益は鋳造品の販売から得ています。運営は、インドにあるGROTEK ENTERPRISES PRIVATE LIMITEDが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

売上高は増加傾向にあり、直近では300億円を超えています。利益面でも回復基調にあり、当期純利益も増加しています。全体として増収増益のトレンドを示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 231億円 292億円 287億円 295億円 335億円
経常利益 9億円 18億円 13億円 16億円 19億円
利益率(%) 3.9% 6.2% 4.4% 5.4% 5.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 14億円 9億円 6億円 11億円

(2) 損益計算書

売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。営業利益率も改善しており、本業の収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 295億円 335億円
売上総利益 76億円 89億円
売上総利益率(%) 25.7% 26.5%
営業利益 14億円 19億円
営業利益率(%) 4.7% 5.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が22億円(構成比32%)、その他が15億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益

日本、アジア、ヨーロッパの全セグメントで売上高が増加しました。特にアジア地域の伸びが大きく、セグメント利益も大幅に増加し、全体の業績を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 130億円 141億円 4億円 4億円 3.1%
アジア 160億円 189億円 8億円 12億円 6.6%
ヨーロッパ 6億円 6億円 0.2億円 0.3億円 4.7%
その他 - - - - -
調整額 - - 2億円 2億円 -
連結(合計) 295億円 335億円 14億円 19億円 5.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

健全型:営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 32億円 21億円
投資CF -15億円 -14億円
財務CF -5億円 -6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.4%でスタンダード市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.5%でスタンダード市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同グループは、「油圧と共に生きる」を基本的な考えとし、「経営の信条」を実践することで企業価値・商品価値と社会的価値の向上を目指しています。油圧専業総合メーカーとして、油圧機器、システム製品、環境機械の開発・生産・販売を積極的に推進し、日本、アジア、世界に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化

自主技術による油圧機器開発を基本姿勢とし、海外進出への制約条件が少ないことから、早期に台湾、インド、香港へ拠点を設立するなど、アジアを中心に「YUKEN」ブランドの浸透に努めてきました。海外展開力を活かしながら、環境変化の中でも利益成長できる高収益体質の独立系総合油圧メーカーグループを目指しています。

(3) 経営計画・目標

同グループは、中期経営計画Step2(2025年4月~2028年3月)において「成長戦略を実践」していくことを掲げています。
* 2028年3月期 連結売上高370億円
* 営業利益30億円
* 経常利益30億円
* ROE8.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策

中期経営計画Step2では「次なる飛躍に向けた拡大による利益向上」を掲げ、高収益市場でのシェア拡大や再投資による最先端化製品の拡大、環境型新製品群(省エネ、環境負荷低減など)の拡充に取り組みます。インド市場では製品群を拡大し未進出分野へ挑戦するほか、国内工場は先端化を進め、より精密でエネルギー効率の高いソリューション提供に努めます。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「人材が集まる魅力的な企業を目指す」ことを目標に、人材の多様化を進め、健康・安全で活き活きと働ける職場環境の構築に取り組んでいます。人材育成を重要課題と捉え、階層別教育やOJTの見直しを実施しています。また、海外拠点との人材交流を積極的に進め、グローバルな視野を持つ人材の育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.5歳 19.1年 6,396,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 83.3%
男女賃金差異(全労働者) 77.9%
男女賃金差異(正規雇用) 86.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 69.6%


※女性管理職比率については、有価証券報告書に数値の記載がありません(「―」表記)。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(17.1%)、各拠点間人材交流の拡大(48%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 為替相場変動の影響

同グループの海外向け売上高比率は60%を超えており、外貨建ておよび円建て取引を行っています。為替予約等のリスクヘッジ策を講じていますが、急激な為替変動が生じた場合、経営成績等に影響を与える可能性があります。

(2) 海外進出に潜在するリスク

海外において積極的に生産・販売を行っているため、人材採用・確保等の雇用環境の悪化や、現地政府による予期せぬ法規制・政治・経済・社会的な混乱等のリスクが存在します。これらが発生した場合、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 災害等による影響

グローバルに事業を展開しているため、大規模地震、自然災害、火災等の事故や感染症などの発生により、グループ会社に人的・物的被害が生じ、操業停止で製品供給に支障をきたした場合、経営成績等に大きな影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。