※本記事は、油研工業株式会社 の有価証券報告書(第81期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 油研工業ってどんな会社?
油圧機器の専業メーカーとして、産業機械の基幹部品である油圧製品やシステム製品、環境機械をグローバルに展開する企業です。
■(1) 会社概要
1929年に結城工作所として創立し、1956年に株式会社へ改組しました。1969年には台湾に合弁会社を設立するなど早期から海外展開を進め、1970年に東京証券取引所市場第一部へ上場しました。その後、インドや香港、イギリス等に拠点を拡大し、2022年の市場再編に伴いスタンダード市場へ移行しました。
連結従業員数は1,398名、単体では371名です。筆頭株主は取引先持株会である油研協力会持株会、第2位はみずほ銀行、第3位は第一生命保険となっており、取引先や金融機関が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 油研協力会持株会 | 5.66% |
| みずほ銀行 | 4.89% |
| 第一生命保険 | 4.49% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は永久秀治氏です。社外取締役比率は約18.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 永久 秀治 | 代表取締役社長 | 日本興業銀行(現 みずほ銀行)入行。2006年に同社へ転籍し、管理本部長、常務取締役等を経て2017年6月より現職。 |
| 萩野 嘉夫 | 常務取締役(管理本部担当) | 1983年入社。総務部長、台湾油研股份有限公司董事長、管理本部長等を経て2025年4月より現職。 |
| 平山 直志 | 常務取締役(国内事業本部担当) | 1986年入社。北陸油研代表取締役社長(出向)、国内事業本部長兼東日本営業部長等を経て2025年4月より現職。 |
| 宮坂 篤 | 常務取締役グローバル事業本部長 | 1987年入社。環境機械部長、海外営業部長、グローバル事業本部長兼事業推進部長等を経て2023年4月より現職。 |
| 安木 秀己 | 取締役(技術本部担当) | 1982年入社。品質保証部長、研究開発部長、技術本部長等を歴任。2025年4月より現職。 |
| 岡田 忠則 | 取締役生産本部長 | 1992年入社。第二製造部長、台湾油研股份有限公司副董事長総経理(出向)、生産部長等を経て2024年10月より現職。 |
社外取締役は、鈴木正明(公認会計士・税理士)、田岡良夫(元住友精密工業代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「油圧製品」「システム製品」「環境機械」および「その他」事業を展開しています。
**(1) 油圧製品事業部門**
油圧ポンプ・モータ、圧力制御弁、流量制御弁、方向制御弁などの各種油圧制御機器を製造・販売しています。一般産業機械の基幹部品として幅広い顧客に提供されています。
収益は主に製品の販売対価として得ています。運営は、国内では同社および北陸油研が、海外では台湾油研股份有限公司やユケン・インディア LTD.、ユケン・ヨーロッパ LTD.などの現地法人が行っています。
**(2) システム製品事業部門**
産業機械油圧システム、標準油圧ユニット、油圧シリンダの製造・販売に加え、保守・サービスを行っています。顧客の仕様に基づき油圧機器を組み合わせた製品を提供します。
収益は製品の販売および保守・サービス料から得ています。運営は、同社およびユケンサービス、海外では台湾油研股份有限公司、ユケン・インディア LTD.、韓国油研工業などが担っています。
**(3) 環境機械事業部門**
自動切屑圧縮機、自動PETボトル減容機、自動マルチコンパクタの製造・販売を行っています。油圧制御技術の特徴を生かした環境関連機器を提供しています。
収益はこれら機械製品の販売から得ています。運営は主に同社が行っており、アジア地域ではユケン・インディア LTD.も展開しています。
**(4) その他**
油圧製品等の部品となる鋳物の製造・販売を行っています。
収益は鋳造品の販売から得ています。運営は、インドにあるGROTEK ENTERPRISES PRIVATE LIMITEDが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は増加傾向にあり、直近では300億円を超えています。利益面でも回復基調にあり、当期純利益も増加しています。全体として増収増益のトレンドを示しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 231億円 | 292億円 | 287億円 | 295億円 | 335億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 18億円 | 13億円 | 16億円 | 19億円 |
| 利益率(%) | 3.9% | 6.2% | 4.4% | 5.4% | 5.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 14億円 | 9億円 | 6億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。営業利益率も改善しており、本業の収益性が高まっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 295億円 | 335億円 |
| 売上総利益 | 76億円 | 89億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.7% | 26.5% |
| 営業利益 | 14億円 | 19億円 |
| 営業利益率(%) | 4.7% | 5.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が22億円(構成比32%)、その他が15億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
日本、アジア、ヨーロッパの全セグメントで売上高が増加しました。特にアジア地域の伸びが大きく、セグメント利益も大幅に増加し、全体の業績を牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 130億円 | 141億円 | 4億円 | 4億円 | 3.1% |
| アジア | 160億円 | 189億円 | 8億円 | 12億円 | 6.6% |
| ヨーロッパ | 6億円 | 6億円 | 0.2億円 | 0.3億円 | 4.7% |
| その他 | - | - | - | - | - |
| 調整額 | - | - | 2億円 | 2億円 | - |
| 連結(合計) | 295億円 | 335億円 | 14億円 | 19億円 | 5.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
健全型:営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 32億円 | 21億円 |
| 投資CF | -15億円 | -14億円 |
| 財務CF | -5億円 | -6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.4%でスタンダード市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.5%でスタンダード市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、「油圧と共に生きる」を基本的な考えとし、「経営の信条」を実践することで企業価値・商品価値と社会的価値の向上を目指しています。油圧専業総合メーカーとして、油圧機器、システム製品、環境機械の開発・生産・販売を積極的に推進し、日本、アジア、世界に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
自主技術による油圧機器開発を基本姿勢とし、海外進出への制約条件が少ないことから、早期に台湾、インド、香港へ拠点を設立するなど、アジアを中心に「YUKEN」ブランドの浸透に努めてきました。海外展開力を活かしながら、環境変化の中でも利益成長できる高収益体質の独立系総合油圧メーカーグループを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同グループは、中期経営計画Step2(2025年4月~2028年3月)において「成長戦略を実践」していくことを掲げています。
* 2028年3月期 連結売上高370億円
* 営業利益30億円
* 経常利益30億円
* ROE8.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画Step2では「次なる飛躍に向けた拡大による利益向上」を掲げ、高収益市場でのシェア拡大や再投資による最先端化製品の拡大、環境型新製品群(省エネ、環境負荷低減など)の拡充に取り組みます。インド市場では製品群を拡大し未進出分野へ挑戦するほか、国内工場は先端化を進め、より精密でエネルギー効率の高いソリューション提供に努めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人材が集まる魅力的な企業を目指す」ことを目標に、人材の多様化を進め、健康・安全で活き活きと働ける職場環境の構築に取り組んでいます。人材育成を重要課題と捉え、階層別教育やOJTの見直しを実施しています。また、海外拠点との人材交流を積極的に進め、グローバルな視野を持つ人材の育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.5歳 | 19.1年 | 6,396,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 86.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 69.6% |
※女性管理職比率については、有価証券報告書に数値の記載がありません(「―」表記)。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(17.1%)、各拠点間人材交流の拡大(48%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 為替相場変動の影響
同グループの海外向け売上高比率は60%を超えており、外貨建ておよび円建て取引を行っています。為替予約等のリスクヘッジ策を講じていますが、急激な為替変動が生じた場合、経営成績等に影響を与える可能性があります。
■(2) 海外進出に潜在するリスク
海外において積極的に生産・販売を行っているため、人材採用・確保等の雇用環境の悪化や、現地政府による予期せぬ法規制・政治・経済・社会的な混乱等のリスクが存在します。これらが発生した場合、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 災害等による影響
グローバルに事業を展開しているため、大規模地震、自然災害、火災等の事故や感染症などの発生により、グループ会社に人的・物的被害が生じ、操業停止で製品供給に支障をきたした場合、経営成績等に大きな影響を及ぼす可能性があります。



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