フジテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フジテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。エレベータ、エスカレータ等の専業メーカーとして、製造から保守までを一貫してグローバルに展開しています。当連結会計年度の業績は、東アジアでの減収を他地域で補い、前期比で増収増益(経常利益ベース)となりましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は減益となりました。


※本記事は、フジテック株式会社 の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フジテックってどんな会社?


エレベータやエスカレータ等の空間移動システムの専業メーカーとして、研究開発から販売、保守までを一貫して手掛けるグローバル企業です。

(1) 会社概要


1948年に設立されエレベータの製造・販売を開始しました。1963年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、1974年には東京証券取引所市場第一部銘柄に指定されました。2006年には本社・研究開発部門を大阪府から滋賀県彦根市へ移転し、「ビッグウィング」を開設しています。2022年に東証プライム市場へ移行しました。

連結従業員数は11,777名、単体従業員数は3,336名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位はウチヤマ・インターナショナル、第3位は英国に拠点を置くGOLDMAN SACHS INTERNATIONALとなっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.24%
ウチヤマ・インターナショナル 6.46%
GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL 5.71%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は原田 政佳氏です。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
原田 政佳 代表取締役社長 1984年同社入社。常務執行役員、中国担当などを歴任し、2023年6月より現職。
中島 隆茂 代表取締役専務技術・生産部門管掌 2019年同社入社。品質統括本部長、常務執行役員などを経て2023年6月より現職。
佐藤 浩輔 取締役管理部門管掌 2021年同社入社。執行役員、財務本部長などを経て2023年6月より現職。


社外取締役は、海野 薫(DLA Piper 東京パートナーシップ外国法共同事業法律事務所パートナー)、トーステン ゲスナー(元ThyssenKrupp North America CEO)、クラーク グラニンジャー(Reboot代表取締役CFO)、嶋田 亜子(Ushio America, Inc.取締役)、アンソニー ブラック(Husky Injection Molding Systems Ltd.社長)、小原 シェキール(DIGIFIT Corporation代表取締役Co-CEO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」、「東アジア」、「南アジア」、「米州・欧州」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


エレベータ、エスカレータ等の開発、製造、販売、据付、および保守・修理等のアフターマーケット事業を行っています。国内に生産拠点を有し、専業メーカーとしての一貫体制を敷いています。顧客は建設会社や建物所有者などが中心です。

収益は、製品の販売代金や据付工事代金、保守・修理サービスの対価として顧客から受け取ります。運営は主にフジテックが行っています。

(2) 東アジア


中国、香港、台湾、韓国において、昇降機等の製造、販売、据付、保守、修理を行っています。各地域に生産拠点や販売拠点を有し、現地の需要に対応しています。特に中国市場は規模が大きく、重要な地域となっています。

収益は、製品販売や工事、メンテナンスサービスの対価として得ています。運営は、華昇富士達電梯有限公司(中国)、フジテック(HK)(香港)、富士達股份有限公司(台湾)、フジテック コリア(韓国)などの現地法人が行っています。

(3) 南アジア


シンガポール、インド等において、昇降機等の製造、販売、据付、保守、修理を行っています。インドには生産拠点を有しており、成長市場での事業拡大を進めています。

収益は、製品販売、据付工事、保守サービス料等からなります。運営は、フジテック シンガポール、フジテック インディアなどの現地法人が行っています。

(4) 米州・欧州


米国、カナダ、アルゼンチン、英国等において、昇降機等の製造、販売、据付、保守、修理を行っています。米州にも生産拠点を持ち、広域での事業展開を行っています。

収益は、製品およびサービスの提供対価として顧客から受領します。運営は、フジテック アメリカ、フジテック カナダ、フジテック UKなどの現地法人が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上高は1,696億円から2,413億円へと順調に拡大傾向にあります。経常利益も133億円から189億円の範囲で推移しており、直近では増益基調です。当期利益は変動が見られますが、全体として事業規模の拡大が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,696億円 1,870億円 2,076億円 2,294億円 2,413億円
経常利益 146億円 157億円 133億円 187億円 189億円
利益率(%) 8.6% 8.4% 6.4% 8.2% 7.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 93億円 108億円 84億円 178億円 145億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加し、売上総利益および営業利益も増加しています。売上総利益率は約21.1%から22.6%へと改善しました。営業利益率は6.4%から6.7%へと上昇しており、収益性の向上が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,294億円 2,413億円
売上総利益 484億円 544億円
売上総利益率(%) 21.1% 22.6%
営業利益 146億円 162億円
営業利益率(%) 6.4% 6.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が133億円(構成比35%)、賞与引当金繰入額が33億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


当期のセグメント別業績では、日本、南アジア、米州・欧州が増収増益となりました。一方、東アジアは中国の不動産不況の影響等により減収となり、営業損失を計上しました。全体としては、海外他地域の成長が東アジアの落ち込みをカバーし、連結での増収増益を達成しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 881億円 919億円 66億円 93億円 10.1%
東アジア 794億円 711億円 16億円 -10億円 -1.4%
南アジア 310億円 389億円 50億円 63億円 16.2%
米州・欧州 458億円 536億円 15億円 16億円 2.9%
調整額 -148億円 -144億円 -2億円 -1億円 -
連結(合計) 2,294億円 2,413億円 146億円 162億円 6.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業利益と資産売却等による収入で借入金の返済や株主還元を進める「改善型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 175億円 154億円
投資CF 4億円 165億円
財務CF -121億円 -193億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「人と技術と商品を大切にして、新しい時代にふさわしい美しい都市機能を、世界の国々で世界の人々とともに創ります。」という経営理念を掲げています。この理念のもと、昇降機の専業トップメーカーを目指し、持続的な成長と高い収益力を通じて、全てのステークホルダーとの共存共栄を図ることを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、「不易流行」の精神を重視しています。これは、安全・安心の追求や品質重視、人材育成といった変えてはならない本質(不易)を守りつつ、時代の変化に合わせて新たなことに挑戦する(流行)姿勢を表しています。また、売り手と買い手だけでなく社会への貢献も重視する「三方よし」の精神や、顧客への「おもてなし」の心を大切にする文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、2024年5月に5ヵ年の中期経営計画「Move On 5」を発表しました。2026年3月期の連結経営指標として以下の目標を掲げています。

* 売上高:2,440億円
* 営業利益:229億円
* 営業利益率:9.4%

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画「Move On 5」では、「日本の専業メーカーならではの美しさとおもてなしを誰でも実感できる業界トップの信頼のブランドを確立」を長期ビジョンとしています。戦略方針として、「安全・安心の追求」「品質重視」「人材の育成」を変わらぬ本質としつつ、「選択と集中」「グループ経営の強化」「ガバナンスとコミュニケーションの充実」に新たに注力します。具体的には、地域事業のセグメント分けによるリソース配分の最適化、デジタル技術を活用したメンテナンスの収益性改善、サプライチェーン最適化によるコスト削減などに取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、ダイバーシティとグローバル人材開発を推進するため、「人材開発方針」を策定しています。「Move On 5」においても人材を最大の財産と位置づけ、組織風土であるチャレンジを促し、個々の従業員が成長を実感できる環境を提供します。また、評価報酬制度の改善や、多種多様な研修を通じた専門技術者のスキルアップを図り、顧客に信頼される「人」と「技」の調和を追求しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.0歳 17.1年 7,656,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.0%
男性育児休業取得率 38.6%
男女賃金差異(全労働者) 50.4%
男女賃金差異(正規雇用) 73.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 85.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競争激化


想定を超える競争激化や市場変化により、事業への影響が生じる可能性があります。低廉な事業展開による収益の悪化や、競争による事業機会の減少が懸念されます。これに対し、部門間連携プロジェクトによる優位性推進策の実行や、計画との乖離に対する定期的な補正、メンテナンスの優位性を維持向上させる取り組みを行っています。

(2) サステナビリティ


脱炭素社会移行や人的資本開示への対応遅れがリスク要因となります。対応コストの増加や、顧客志向への不適合による受注機会の喪失、ステークホルダーからの信頼低下などが考えられます。サステナビリティ委員会において、方針と経営計画の整合性確認や施策の進捗管理・監督を実施し、開示計画の立案と実行を進めています。

(3) コンプライアンス


事業活動において法令や社会的倫理規範を逸脱した行動が生じた場合、社会的制裁や信用の失墜、生産性の低下を招く恐れがあります。これに対し、行動規範等の周知、教育・研修活動の実施、コミュニケーションの活性化を図るとともに、確実なチェック体制の維持管理に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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