※本記事は、株式会社宮入バルブ製作所 の有価証券報告書(第80期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 宮入バルブ製作所ってどんな会社?
LPG容器用バルブ等の製造販売を主力とし、エネルギー制御技術を核に多角化を進める企業です。
■(1) 会社概要
1949年に東京都大田区で創業し、1960年に山梨県に甲府工場を建設しました。1963年に東証二部へ上場し、LPG容器用弁の規格化や安全装置開発を牽引してきました。その後、ISO認証の取得やベトナムでの現地法人設立(後に譲渡)などを経て、2022年の市場区分見直しに伴い東証スタンダード市場へ移行しました。
2025年3月31日現在の従業員数は単体で153名です。筆頭株主は主要取引先であるバルブ・継手等の商社で、第2位は取引先持株会、第3位は個人株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 昌栄機工 | 4.80% |
| 宮入バルブ製作所取引先持株会 | 3.10% |
| 清野 正廣 | 2.86% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は西田憲司氏です。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 西田 憲司 | 代表取締役社長 | 三井銀行(現三井住友銀行)、シティバンク等を経て、2014年に同社入社。取締役、副社長を経て2016年より現職。 |
| 荒川 祐一 | 取締役営業本部長 | 北陸電気工業、イリソ電子工業、大泉製作所を経て、2011年に同社入社。国内営業部長、執行役員等を経て2019年より現職。 |
| 風間 晃 | 取締役工場長兼 製造本部長 | 1996年に同社入社。生産技術課長、黄銅弁製造部長、執行役員副工場長等を経て2019年より現職。 |
| 流石 尚 | 取締役経営管理本部長 | フジタ製薬、バイオベットを経て2009年に同社入社。総務担当部長、経営管理本部総務部長等を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、樫原勉(エージェント・パートナーズ社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「黄銅弁」「鉄鋼弁」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 黄銅弁
LPG(液化石油ガス)を使用するための各種容器用弁を製造・販売しています。一般家庭用(2~50kg容器)、工業用(500kg容器)、自動車用容器など幅広い分野に対応しています。また、集合住宅や外食産業、工業用に使用されるバルク貯槽用付属機器弁類も提供しており、この分野の主力製品となっています。
収益は、これらのバルブ製品の販売代金として顧客から受け取ります。主要な顧客にはガス関連機器メーカーや商社が含まれます。運営は主に同社が行っています。
■(2) 鉄鋼弁
LPガス貯蔵設備用弁類として、陸上・海上輸送用設備や貯蔵設備向けの弁類や液面計等を製造しています。また、LNG(液化天然ガス)用の貯蔵・輸送設備や燃料船向けの弁類、医療用ガス制御弁、美術館等の消火設備用弁類など、用途に応じた特殊なバルブも提供しています。
収益は、各種プラント会社、エンジニアリング会社、造船会社などへの製品販売によって得ています。運営は主に同社が行っています。
■(3) その他
食品加工工場向けのサニタリーバルブや、スマート農業に向けた散水ノズル類、ワインろ過機等の製造販売を行っています。また、これらの実践研究として甲府工場敷地内で「きくらげ」や「ワイン用ぶどう」の栽培、ワイン醸造を行う6次化農業にも取り組んでいます。黄銅弁製造時に発生する削り屑の売却も含まれます。
収益は、製品販売および黄銅材の削り屑の売却代金等から構成されています。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は47億円から68億円へと拡大傾向にあります。しかし、利益面では第78期に経常利益2.6億円を記録したものの、直近の第80期は原材料価格高騰や独占禁止法関連の特別損失計上により、当期純利益が赤字に転落しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 47億円 | 54億円 | 63億円 | 62億円 | 68億円 |
| 経常利益 | 0.8億円 | 0.6億円 | 2.6億円 | 2.1億円 | 0.7億円 |
| 利益率(%) | 1.7% | 1.1% | 4.1% | 3.4% | 1.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.5億円 | 0.4億円 | 2.3億円 | 1.8億円 | -0.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加しましたが、売上原価の増加率が売上高の伸びを上回ったため、売上総利益および利益率は低下しています。営業利益も減少しており、収益性の改善が課題となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 62億円 | 68億円 |
| 売上総利益 | 12億円 | 10億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.3% | 15.4% |
| 営業利益 | 2.1億円 | 0.8億円 |
| 営業利益率(%) | 3.4% | 1.2% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が3.2億円(構成比33%)、その他経費が1.7億円(同18%)、支払手数料が1.0億円(同10%)を占めています。売上原価においては、材料費が37億円(構成比66%)と大半を占めており、原材料価格の変動が利益に大きく影響する構造です。
■(3) セグメント収益
黄銅弁事業は主力製品として堅調に推移し、売上を牽引しています。鉄鋼弁事業も増加傾向にあり、その他事業や製造工程で発生する屑の売上高も増加しました。全区分で売上高が増加しており、全体として事業規模は拡大しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 黄銅弁 | 41億円 | 41億円 |
| 鉄鋼弁 | 15億円 | 15億円 |
| その他 | 0.9億円 | 1.0億円 |
| 屑売上高 | 9億円 | 10億円 |
| 連結(合計) | 62億円 | 68億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.4億円 | 1.0億円 |
| 投資CF | -2.8億円 | -5.9億円 |
| 財務CF | -0.5億円 | 4.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-1.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「共栄、団結、自律」を経営理念(基本方針)として掲げています。「共栄」は社会やステークホルダーと共に栄えること、「団結」は緊密なチームワーク、「自律」は各人が自らを律して業務に邁進することを意味します。これらを通じて、顧客満足度No.1、新製品・新市場への挑戦、利益還元の重視を目指しています。
■(2) 企業文化
社会貢献と環境改善を重視する文化があります。環境理念として、事業活動と製品が環境に与える影響を認識し、省エネルギー活動や廃棄物削減に全員参加で取り組む姿勢を明確にしています。また、人材育成においてはプロ意識の高い人材を育成するため、能力・業績評価や研修機会の提供を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
現在は経営環境の変化が大きいため中期経営計画を策定していませんが、過去に掲げた数値目標を維持し、早期達成を目指しています。具体的には以下の指標を掲げています。
* 売上高:60億円以上
* 営業利益率:6%~8%を持続的に達成
■(4) 成長戦略と重点施策
主力であるLPガス用弁市場の成熟を受け、LNG・水素用弁等の「第2の柱」、食品加工・農業分野等の「第3の柱」の育成に注力しています。海外市場、特に中国やグローバル・サウスでの展開や、生産設備の刷新による生産性向上も推進しています。
* LNGおよび水素用弁等の低温弁事業の強化・拡大
* 食品加工向けサニタリーバルブやスマート農業向け製品の拡充
* ワイン醸造機器の開発と自社醸造所での実践研究(6次化農業)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
プロ意識の高い人材を育成するため、役職員の能力評価や業績評価を定期的に行い、社内外の研修・教育機会を提供しています。また、技術の継承や多能工化、女性活躍推進、安全衛生な職場環境の維持向上を重要課題とし、計画的な有給休暇取得によるメリハリのある労働環境作りにも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.1歳 | 15.9年 | 6,204,026円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.3% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員に占める女性従業員の割合(目標15%以上)、次世代の管理職を担う係長級の女性比率(目標12%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 公的規制による影響
主力のLPガス容器用弁は「高圧ガス保安法」の規制を強く受けています。関連する法規制や行政施策の変更が行われた場合、製品仕様や販売活動に影響が及び、同社の業績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(2) 原材料価格および為替の変動
主要原材料である黄銅材や鋳物、副資材の価格変動は製造原価に直結します。これらの価格は為替相場の影響も受けやすく、市場価格が大きく変動した場合、コスト増となり業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 特定の取引先への依存
売上高の約3割が上位3社の得意先に集中しています。これらの主要取引先の販売動向や経営状況が悪化した場合、同社の受注減少などに繋がり、業績に重大な影響を与える可能性があります。
■(4) LPガス関連製品の市場縮小
事業の核であるLPガス用弁類の国内市場は、長期的には人口減少やエネルギー転換により緩やかな縮小が予想されています。この分野への依存が高い状態が続くと、将来的に業績が悪化するリスクがあります。



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