上組 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

上組 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、港湾運送事業を中核に、倉庫、国際運送などを展開する総合物流企業です。直近の業績は、売上収益が前期比4.6%増、親会社株主に帰属する当期純利益が同7.6%増と、増収増益で着実に成長を続けています。


※本記事は、株式会社上組 の有価証券報告書(第86期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 上組ってどんな会社?


神戸港での創業以来、港湾運送や倉庫業を主力とする総合物流のリーディングカンパニーです。

(1) 会社概要


1867年に神戸浜仲として創業し、1948年に港湾運送事業を統合的に再開しました。1972年には東京・大阪証券取引所市場第一部に指定され、全国主要港湾へと拠点を拡大しました。その後も国際物流事業を強化し、2010年には中国・上海に現地法人を設立、2015年にはマレーシア現地法人を設立するなど、グローバル展開を加速させています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は4,149人、単体では3,623人です。大株主構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は同社の関連団体である共栄会、第3位も資産管理を行う信託銀行となっており、安定した株主基盤を持っています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 株式会社(信託口) 14.42%
かみぐみ共栄会 7.29%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 5.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性4名の計12名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長社長執行役員CEO取締役会議長は深井義博氏です。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
深井 義博 代表取締役社長社長執行役員 CEO取締役会議長 1977年入社。鹿島支店長、東京支店長、青果事業本部長、米事業本部長等を歴任。2012年代表取締役社長に就任。2023年より現職。
田原 典人 代表取締役副社長執行役員管理部門管掌 1982年入社。名古屋支店長、国内営業戦略室長、国際物流事業本部担当等を歴任。2025年4月より現職。
平松 宏一 取締役専務執行役員営業部門管掌(鉄鋼・エネルギーエリア) 1981年入社。東海支店長、福山支店長、鉄鋼支店・重量エネルギー輸送事業本部統括等を歴任。2025年4月より現職。
長田 行弘 取締役専務執行役員営業部門管掌(西日本・九州エリア) 1979年入社。徳山支店長、港運事業本部長、海外事業本部統括等を歴任。2025年4月より現職。
椎野 和久 取締役専務執行役員営業部門管掌(東・中日本エリア) 1981年入社。大阪支店長、名古屋支社長、中京地区統括等を歴任。2025年4月より現職。


社外取締役は、保坂收(元陸上自衛隊東北補給処長)、松村はるみ(元LIXIL取締役専務役員)、柚木和代(元博多大丸代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「物流事業」および「その他事業」を展開しています。

(1) 物流事業


港湾荷役、コンテナターミナル運営、倉庫保管、貨物自動車運送、国際複合一貫輸送など、国内外における物流サービス全般を提供しています。港湾運送から陸上輸送、保管までを一貫して手掛け、幅広い顧客の物流ニーズに対応しています。

主な収益源は、顧客からの荷役料、倉庫保管料、運送料などです。運営は主に上組が行い、地域や機能に応じて上組陸運、上組海運などの子会社や関連会社が担っています。

(2) その他事業


重量貨物の運搬・据付を行う重量建設機工事業のほか、不動産賃貸、酒類の製造販売、物品販売・リース、金融業、太陽光発電事業、ソフトウェア開発など多岐にわたる事業を行っています。

収益は、建設工事代金、不動産賃貸料、商品販売代金などから得ています。重量建設機工事業は主に同社が手掛け、その他の事業はカミックスなどの子会社や関連会社が運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあります。特に直近の2025年3月期は売上高、経常利益ともに過去最高水準を記録しており、安定した成長を続けています。利益率も10%を超える高い水準を維持しており、収益性の高さがうかがえます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,393億円 2,617億円 2,741億円 2,668億円 2,792億円
経常利益 262億円 309億円 351億円 342億円 367億円
利益率(%) 10.9% 11.8% 12.8% 12.8% 13.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 178億円 209億円 238億円 246億円 270億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も順調に増加しています。売上総利益率は約20%、営業利益率は約12%の水準で推移しており、コストコントロールが適切に行われ、安定した収益構造を維持していることが分かります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,668億円 2,792億円
売上総利益 510億円 555億円
売上総利益率(%) 19.1% 19.9%
営業利益 306億円 331億円
営業利益率(%) 11.5% 11.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が126億円(構成比56.2%)、退職給付費用が6億円(同2.5%)を占めています。

(3) セグメント収益


物流事業では、港湾運送や倉庫、国内運送の取扱量が増加し、増収となりました。その他事業においても、重量建設機工事業での大型案件や新エネルギープロジェクト案件の受注などが寄与し、増収を達成しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
物流事業 2,313億円 2,429億円
その他事業 355億円 362億円
連結(合計) 2,668億円 2,792億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

上組は、営業活動で得た資金を主に設備投資や株主還元に充てています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、事業活動から潤沢な資金を生み出しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、将来の成長に向けた設備や有価証券への投資が主な支出要因となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入による資金調達と配当金の支払い、自己株式の取得が支出を上回る結果となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 425億円 404億円
投資CF -164億円 -75億円
財務CF -122億円 -179億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は創業以来、「現場力」と「充実したアセット」を武器に、港湾領域で確固たるポジションを築き社会を支えてきました。存在意義(パーパス)に基づき、2035年にありたい姿として「日本と世界で物流の未来をデザインする総合物流カンパニー」を掲げています。

(2) 企業文化


物流を総合的にマネジメントできる企業として、国内外のハード・ソフトの増強や人材育成に努めています。グローバル企業としての価値を高めるとともに、企業の社会的責任(CSR)を果たし、企業価値の更なる向上を図ることを経営方針としています。

(3) 経営計画・目標


同社は「長期ビジョン2035」の実現に向けたロードマップとして「中期経営計画2030」を策定しています。2035年3月期には連結営業収益4,500億円を目指しています。

* 2030年3月期 連結営業収益:3,500億円
* 2030年3月期 連結営業利益:380億円
* 2030年3月期 EBITDA:550億円
* 2030年3月期 ROE:8.0%

(4) 成長戦略と重点施策


構造改革と成長事業への積極投資を進め、成長性と資本収益性の向上を図ります。国内基盤事業のシェア拡大・強靭化、グローバル事業の確立、新たな物流ニーズへの対応、ポートフォリオ経営への移行、全社最適な人材マネジメント、DXによる業務効率化と提供価値の拡張を重点的に推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を持続的な価値創造の源泉と捉え、変革に挑戦する人材の育成を目指しています。多様なバックグラウンドを持つ人材の採用、女性活躍推進、ジョブローテーションを通じた能力開発を行っています。また、柔軟な働き方の推進やハラスメント防止により、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.5歳 17.3年 6,613,513円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.8%
男性育児休業取得率 48.5%
男女賃金差異(全労働者) 59.0%
男女賃金差異(正規) 62.1%
男女賃金差異(非正規) 73.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 輸出入貨物の取扱いにおける影響


世界中の多種多様な輸出入貨物を扱っているため、特定の貨物の変動による影響は限定的と考えられます。しかし、天候不順による食料品の生産減少、感染症による輸入禁止、セーフガード等の規制変更、テロや戦争による社会的混乱などが起きた場合、貨物取扱量が減少し業績に影響を与える可能性があります。

(2) 環境問題の影響


主要事業である自動車運送事業において、CO2や窒素酸化物等の排出規制や安全性規制は広範囲に及びます。今後これらの規制が変更または強化された場合、対応のための費用支出が発生し、業績に影響を与える可能性があります。同社はこれまでも規制を遵守してきましたが、将来的な規制強化への対応が必要となる可能性があります。

(3) 事故及び自然災害などによる影響


作業工程や設備での事故、大地震などの自然災害、深刻な感染症の流行などが事業活動に影響を与えるリスクがあります。同社は過去の経験に基づき対策を講じていますが、主要な事業拠点で重大な災害等が発生した場合、業績に影響を受ける可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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