※本記事は、株式会社上組 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
上組は、物流サービス事業を中核に多岐にわたる事業を展開しています。港湾運送、倉庫業、自動車運送業といった国内物流に加え、国際輸送業や海外での関連事業も手掛けています。
単体従業員数は3,633名、連結従業員数は4,389名です。セグメントは物流事業、その他事業の2つです。
主な国内グループ会社は、上組陸運(物流事業)、カミックス(その他事業)、上津運輸(-)などです。
同社グループは、中期経営計画に基づき、インドのSAURASHTRA FREIGHT PVT.LTD.を連結子会社化し、グローバル事業を強化しました。また、国内では日本ポート産業を完全子会社化し、国内基盤事業の強靭化を図っています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
上組は、港湾運送事業を基盤とする物流事業を主軸に展開する企業です。同社グループの給与水準や働き方の特徴は、安定した事業基盤と長年にわたる歴史の中で培われた企業文化を反映していると考えられます。従業員の定着性や人材育成に対する方針から、長期的なキャリア形成を支援する環境がうかがえます。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社は平均勤続年数が長く、平均年齢も比較的高めであることから、従業員が長期にわたって安定して勤務する傾向があると考えられます。これは、腰を据えてキャリアを築きたいと考える方にとって魅力的な環境であると言えるでしょう。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 7,038,681円 |
| 平均勤続年数 | 16.9年 |
| 平均年齢 | 41.6歳 |
| 単体従業員数 | 3,633人 |
| 連結従業員数 | 4,389人 |
| 単体のグループ内比率 | 82.8% |
同社及び連結子会社は、確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)と確定拠出型(会社が拠出した資金を従業員が運用する)の退職給付制度を採用しています。退職一時金制度があります。ただし支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
退職給付債務は155億円、年金資産は2.6億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、中長期的な企業価値の向上に向け、経営戦略と連動した「人材ポートフォリオ経営」と「全社最適の人材マネジメントへの転換」を人材戦略の基本方針として推進しています。従業員の能力、成果および貢献度を公正に評価し、処遇に反映させることを基本方針としています。給与(基本給)は、各職務における役割・責任の大きさを基準とし、外部労働市場における競争力や物価動向等を勘案して適正な水準に設定されています。
賞与は、単年度の業績目標の達成度および個人の業績評価を連動させて支給され、業績達成へのインセンティブとして機能しています。中長期的に必要となる人材像を定義してスキルギャップを可視化し、戦略的な外部採用、自律的なキャリア形成と研修による育成、グループ全体での適材適所の配置を三位一体で実行しています。多様な個性や価値観を尊重した育成体系の構築を推進し、自律的なキャリア形成の支援、役割に応じた研修、次世代リーダーの育成に注力しています。
また、女性をはじめとする多様な人材の活躍推進により、現場オペレーションの改善や新たな物流ニーズへの対応力強化を目指しています。役割や成果に基づく公正な評価制度を運用し、エンゲージメントの向上を図るとともに、心理的安全性の高い組織風土の醸成と柔軟な働き方の実現を推進しています。さらに、健康経営と安全な労働環境を徹底し、従業員の心身の健康維持と労働生産性の向上を目指しています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合 | 1.7% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 53.2% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(全労働者) | 63.1% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(正規雇用労働者) | 66.6% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(パート・有期労働者) | 61.1% |
連結子会社の法定開示
主要事業会社3社の数値のみ掲載します。
上組陸運㈱の男女の平均勤続年数の差異は、男性10.3年、女性9.9年となっています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合 | 5.8% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(全労働者) | 58.1% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(正規雇用労働者) | 63.2% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(パート・有期労働者) | 52.0% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
上組グループは、物流サービス事業を中核として多岐にわたる事業を展開しています。主要な事業は「物流事業」と「その他事業」の2つのセグメントに分かれています。同社グループの営業収益は、その大部分を日本国内の外部顧客から得ており、特定の外部顧客への収益集中は見られません。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、港湾運送、倉庫、国内運送、国際運送といった物流サービスを中核に事業を展開しています。これらのサービスを通じて、顧客の多様な物流ニーズに応え、収益を上げています。
物流事業
港湾運送では、飼料、穀物、青果物、コンテナ貨物の取扱量が堅調に推移しています。倉庫および国内運送では、スポット案件が寄与し、入出庫作業や輸送の取扱量が増加しました。国際運送においては、海外子会社を連結したことにより収益が増加しています。収益は、港湾運送、倉庫、国内運送、工場荷役請負、国際運送といったサービス提供から得ています。
その他事業
重量・建設事業では、重量貨物の運搬・据付案件の減少により収益が減少しました。その他事業では、新車整備における取扱量や燃料販売が減少しています。収益は、重量貨物運搬据付業、建設業、不動産賃貸業、新車整備、燃料販売などから得ています。
| セグメント | 営業収益(2025年3月期) | 営業収益(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 物流事業 | 2,429億円 | 2,608億円 |
| その他事業 | 362億円 | 339億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの過去5年間の業績は、営業収益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも増加傾向にあります。特に直近の連結会計年度では、営業収益、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益がそれぞれ前期から増加しました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 2,617億円 | 2,741億円 | 2,668億円 | 2,792億円 | 2,948億円 |
| 経常利益 | 309億円 | 351億円 | 342億円 | 367億円 | 407億円 |
| 経常利益率 | 11.8% | 12.8% | 12.8% | 13.1% | 13.8% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 209億円 | 246億円 | 250億円 | 269億円 | 313億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 180.14 | 220.69 | 232.97 | 257.88 | 311.26 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの営業収益は前期からほぼ横ばいとなりましたが、従業員1人あたりの営業利益は増加しています。これは、収益性の改善が進んでいることを示しており、組織全体の効率化への取り組みがうかがえます。このような生産性の動向は、同社グループの安定した収益基盤と、従業員一人ひとりの貢献が利益に結びついている状況を反映していると言えるでしょう。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり営業収益(連結) | 67.3百万円 | 67.2百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 8.0百万円 | 8.3百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社グループは、本業で得た資金を将来に向けた投資に積極的に充てている状況です。財務基盤の厚みや資金の流れから、同社グループの安定性や成長への姿勢を読み解くことができます。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤は、自己資本比率や手元資金の状況から安定していることがうかがえます。当期の自己資本比率は73.5%となっており、プライム市場の平均と比較しても高い水準を示しています。これにより、外部環境の変化にも耐えうる強固な財務体質であることが示されています。
ROE(自己資本利益率)は8.0%で、プライム市場平均と比較するとやや下回る水準です。手元資金である現金及び預金は763億円を確保しており、事業運営における資金の安定性も高い状態です。これらの財務状況は、同社グループが安定した事業運営を継続し、従業員の雇用や給与の安定にも寄与する基盤を持っていることを示しています。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 3,845億円 | 3,979億円 |
| 自己資本比率 | 78.0% | 73.5% |
| ROE(自己資本利益率) | 7.0% | 8.0% |
| 現金及び預金 | 751億円 | 763億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループのキャッシュフローは、本業で得た資金を将来の成長投資に充てている状況を示しています。営業活動によるキャッシュフローは357.2億円の純収入となりましたが、前期と比較すると減少しています。これは主に仕入債務の増減額の影響によるものです。
投資活動によるキャッシュフローは、定期預金の純増額や関係会社株式の取得、連結子会社株式の取得による支出が増加した結果、△606.1億円の純支出となりました。これにより、フリーキャッシュフローはマイナスとなっています。財務活動によるキャッシュフローは、長期借入れによる収入が増加した一方で、配当金の支払いや自己株式の取得による支出があり、△16.1億円の純支出となりました。
これらの資金の流れは、同社グループが本業で安定的に資金を生み出しつつ、事業拡大や競争力強化のための投資を積極的に行っていることを示しています。このような投資は、将来的な事業成長とそれに伴う雇用や給与の安定性につながる可能性があります。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 404.1億円 | 357.2億円 |
| 投資CF | △74.7億円 | △606.1億円 |
| 財務CF | △178.9億円 | △16.1億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 329.4億円 | △248.9億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、世界中の多種多様な輸出入貨物を取り扱っており、特定の貨物取扱量の増減による影響は少ないとしながらも、天候不順や病原菌の発生、規制変更、社会的混乱などにより貨物取扱量が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、自動車運送事業におけるCO2や窒素酸化物などの排出規制が今後さらに厳しくなる可能性があり、新たに追加される規制への対応費用が業績に影響を及ぼすことも考えられます。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループの従業員に対する退職給付費用及び債務は、割引率等の数理計算上の前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件に変更があった場合、将来の期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼす可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
上組グループは、物流を総合的にマネジメントする企業として、社会を支える役割を担っています。国内外での事業強化と人材育成を通じて、グローバル企業としての価値向上を目指している会社です。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
上組グループは、物流を総合的にマネジメントできる企業として、グローバル企業としての価値を高め、企業価値の更なる向上を図ることを経営方針としています。
同社グループは「存在意義(パーパス)」を設定し、10年後のありたい姿として「長期ビジョン2035」を定めています。
2035年に目指す姿は「日本と世界で物流の未来をデザインする総合物流カンパニー」です。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
上組グループは、創業以来培ってきた「現場力」と「充実したアセット」を強みとしています。
企業価値の源泉である「人」が能力を最大限に発揮できるよう、多様な個性や価値観を尊重した育成体系の構築を推進しています。
従業員が挑戦と成長を続けられるよう、役割や成果に基づく公正な評価制度を運用し、エンゲージメントの向上を図る方針です。
心理的安全性の高い組織風土の醸成と柔軟な働き方の実現を推進し、健康経営と安全な労働環境の徹底にも取り組んでいます。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
上組グループは、原油価格高騰によるコスト上昇や人口減少社会への対応など、多くの経営課題を抱えています。
これらの課題に対し、長期的な変化を想定した経営戦略が求められています。
中期経営計画2030では、重点取組みとして「ポートフォリオ経営を支える経営管理への移行」や「全社最適な人材マネジメントの実践」を掲げています。
また、「DXを通じた業務の効率化と提供価値の拡張・高度化」も重要なテーマとして推進しています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
上組は、株主をはじめとするステークホルダーの利益を確保し、長期安定的な成長を目指す効率的な経営体制の確立を基本方針としています。連結経営のもと、同社グループ会社を含めた適法経営とリスク管理を重視した内部統制システムを構築しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
上組の株主構成を見ると、信託銀行の信託口が上位に複数名を連ねています。また、同社グループの関連団体であるかみぐみ共栄会や上組社員持株会も主要な株主として名を連ねており、安定した資本基盤を形成していることがうかがえます。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.68% |
| かみぐみ共栄会 | 7.47% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.10% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
上組の役員は12名(男性8名・女性4名)で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は田原典人氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 深井 義博 | 代表取締役会長CEO 取締役会議長 | 1977年同社入社。玉島支店長、鹿島支店長、東京支店長、執行役員を経て、2012年代表取締役社長に就任。2023年社長執行役員CEO、取締役会議長に就任。2026年より現職。 |
| 田原 典人 | 代表取締役社長 社長執行役員COO | 1982年同社入社。福岡支店長、名古屋支店長、執行役員を経て、2011年取締役。2013年取締役常務執行役員、2020年代表取締役専務専務執行役員。2026年より現職。 |
| 平松 宏一 | 代表取締役専務執行役員 営業部門管掌 (鉄鋼・エネルギーエリア) 管理部門管掌 | 1981年同社入社。東海支店長、福山支店長、執行役員を経て、2020年取締役執行役員。2023年取締役常務執行役員。2026年より現職。 |
| 長田 行弘 | 代表取締役専務執行役員 営業部門管掌 (西日本・九州エリア) | 1979年同社入社。徳山支店長、名古屋支店長、執行役員を経て、2020年取締役執行役員。2024年営業部門管掌(西日本・九州エリア)。2026年より現職。 |
| 椎野 和久 | 代表取締役専務執行役員 営業部門管掌 (東・中日本エリア) | 1981年同社入社。徳山支店長、大阪支店長、名古屋支店長、執行役員を経て、2020年取締役執行役員。2024年営業部門管掌(東・中日本エリア)。2026年より現職。 |
社外取締役は、保坂收氏(豊国シッピング株式会社顧問)、松村はるみ氏(ひろぎんホールディングス社外取締役)、柚木和代氏(ロック・フィールド社外取締役)です。
同社は監査役会設置会社であり、社外取締役3名、社外監査役3名で構成されています。社外取締役は、取締役会に出席し、社外の立場から経営の監視と専門知識に基づいた監督を行っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
上組の役員報酬は、職位や経営環境を考慮し、持続的な企業価値向上を目的として決定されています。業務執行を担う取締役の報酬は、月額基本報酬(現金報酬)と中長期報酬(株式報酬)で構成され、株主との利害共有を図るため株式報酬の割合が設定されています。月額基本報酬は固定給と業績連動の変動給から成り、社外取締役は独立した立場から固定給のみで構成されています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 5名 | 3.6億円 | 73.0百万円 |
| 監査役(社外除く) | 1名 | 13百万円 | 13.0百万円 |
| 社外役員 | 7名 | 45百万円 | 6.4百万円 |
個人別報酬が開示されている役員は、深井義博氏(1.06億円)です。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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