ヨシタケ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヨシタケ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の自動調整弁メーカー。主力製品の減圧弁や流量計が製鉄関連や工場設備市場で好調に推移し、海外子会社の連結効果も寄与しました。第82期の連結業績は、売上高が98億円(前期比9.9%増)と増収でしたが、親会社株主に帰属する当期純利益は9億円(同17.7%減)の減益となりました。


※本記事は、株式会社ヨシタケ の有価証券報告書(第82期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヨシタケってどんな会社?


自動調整弁の製造販売を主力とし、省エネルギーや環境保全に貢献する流体制御機器を提供するメーカーです。

(1) 会社概要


1944年に株式会社フシマン製作所名古屋工場として設立され、1990年に現社名へ変更しました。2004年にJASDAQ市場へ上場し、その後スタンダード市場へ移行しています。2006年には計測器メーカーのカワキ計測工業を完全子会社化しました。近年は海外展開を加速させており、2023年にはマレーシア、インドネシア、シンガポール、ベトナムの販売会社を相次いで子会社化し、グローバルな事業基盤を強化しています。

連結従業員数は551名、単体では180名体制です。筆頭株主は有限会社プラスファイブで、第2位はシンガポールの法人株主です。

氏名 持株比率
プラスファイブ 36.63%
DAIWA CM SINGAPORE LTD- NOMINEE PLUS SEVEN PTE. LTD. 10.97%
昭和螺旋管製作所 1.94%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は山田哲氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
山田 哲 代表取締役社長 1996年入社。アームストロング・ヨシタケ代表取締役などを経て、2004年副社長就任。2006年より現職。カワキ計測工業や海外子会社の代表取締役社長も兼任。
吉野 幸司 取締役カワキ計測工業株式会社担当 1985年入社。技術部長、エンジニアリング事業本部長などを歴任。2022年ヨシタケ・アームストロング代表取締役就任。2024年より現職。
早川 健二 取締役生産本部長 1984年入社。製造部長などを経て、2012年ヨシタケ・ワークス・タイランド代表取締役就任。2018年より現職。
浅田 幸男 取締役エンジニアリング事業本部営業本部長 1991年入社。エンジニアリング事業本部部長などを経て、2015年ヨシタケ・アームストロング取締役就任。2018年より現職。
橋本 育夫 取締役エンジニアリング事業本部部長(海外販売担当) 1995年入社。海外販売事業部長などを経て、2022年より現職。アームストロング・ヨシタケ代表取締役なども兼任。


社外取締役は、水谷博之(弁護士)、林宏忠(メイネツ代表取締役社長)、加藤敦(セーシン代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」および「アジア」事業を展開しています。

(1) 日本


自動調整弁をはじめとする流体制御機器の製造販売を行っています。主な顧客は国内の建築設備市場や工場設備市場、製鉄関連市場などです。省エネルギー効果やCO2削減効果のある製品の提案営業を強化しています。

収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は主にヨシタケが行い、製造子会社のカワキ計測工業が計測器等の製造を担当するほか、輸入子会社のヨシタケ・アームストロングも事業に関与しています。

(2) アジア


タイにおける製造拠点での製品生産と、アセアン地域および中国における販売活動を行っています。タイ工場はグループの主力生産拠点として、鋳造から加工、組立までの一貫生産体制を構築し、品質・コスト・納期の改善を図っています。

収益は、製品の販売により顧客から対価を受け取ります。運営は、製造を担うヨシタケ・ワークス・タイランドのほか、販売活動を行うDoctrine Engineering (M) Sdn.Bhd.やYoshitake Wuxi Fluid Technology Co., Ltd.などの現地法人が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が増加傾向にあります。第81期から第82期にかけて売上高は伸長しましたが、利益面では原材料価格の高騰等の影響もあり、利益率は低下傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 63億円 71億円 75億円 90億円 98億円
経常利益 8億円 14億円 13億円 15億円 14億円
利益率(%) 12.4% 19.1% 17.6% 16.6% 14.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 7億円 9億円 10億円 6億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も拡大しましたが、販売費及び一般管理費の増加などにより営業利益率は低下しました。売上規模の拡大に伴いコストも増加しており、利益率の維持が課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 90億円 98億円
売上総利益 34億円 39億円
売上総利益率(%) 38.1% 39.8%
営業利益 9億円 11億円
営業利益率(%) 9.8% 10.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料が10億円(構成比36%)、法定福利費・福利厚生費が2億円(同8%)を占めています。売上原価は売上高に対して60%程度で推移しています。

(3) セグメント収益


日本セグメントは、工場向けバルブ製品や製鉄関連市場での売上が好調で増収増益となりました。アジアセグメントは、海外子会社の新規連結効果などにより売上が大幅に増加し、利益も倍増しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 71億円 76億円 8億円 8億円 11.2%
アジア 18億円 23億円 1億円 3億円 11.2%
連結(合計) 90億円 98億円 9億円 11億円 11.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、営業キャッシュ・フローを積み上げ、将来への成長投資や研究開発へ積極的に資金を振り向ける一方で、事業リスクに備えた財務体質強化のため、内部留保による自己資本の充実を図っております。

営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の減少等により増加要因があったものの、法人税等の支払額が増加したことなどから、前連結会計年度に比べて減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の償還や投資有価証券の売却による収入が減少した一方で、子会社株式や投資有価証券の取得による支出が減少したことなどから、前連結会計年度に比べて支出が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入がなくなったことや、短期借入金の純増減額が減少したことなどから、前連結会計年度の収入から一転して支出が増加しました。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「フェアビジネス(Y’s, a Business of Fair Endeavor)」を企業理念として掲げています。この指針に沿った会社運営を行うことが、会社の発展と株主利益につながると考えています。

(2) 企業文化


環境問題への取り組みを重視しており、環境会計報告書を作成し、事業がもたらす環境負荷をモニタリングして改善活動につなげています。環境マネジメントシステムに基づきPDCAサイクルを回し、環境保全活動や環境配慮型製品の開発、製品アセスメントの実施など、サステナビリティを意識した事業運営を行っています。

(3) 経営計画・目標


収益性、効率性、成長性、安全性などの総合的なバランスをとりながら、収益の持続的な拡大を目標としています。特に、安定的な収益力の指標として営業利益および経常利益を重視しています。

(4) 成長戦略と重点施策


変化の激しい経営環境に対応するため、新規案件と新規販路獲得のための活動を積極的に行い、受注率の向上に取り組みます。中長期的には、販売シェアの拡大、製品開発の強化、リスク管理の強化、サステナビリティ経営の推進の4つの課題に取り組み、経営の効率化と業績向上を目指しています。また、海外販路の更なる拡大や、製品ラインアップの拡充、開発期間の短縮による開発力向上も推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材の多様性を確保するため、性差や国籍等を問わず経営に資する人材を採用・登用する方針です。外国籍社員や女性管理職の登用も進めています。また、時間外労働が常態的に発生する社内環境の改善を目指し、具体的な目標を設定して全社的な取り組みを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.6歳 16.0年 6,066,419円


※平均年間給与は賞与および基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 生産拠点について


製品の一部をタイの生産子会社で生産しており、現地や輸送経路での紛争・災害等により製品入手が困難になる可能性があります。備蓄や代替調達・生産のノウハウ確保などの対策を講じていますが、想定外の事態が続き入手困難となった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料調達について


鋳鉄や青銅鋳物、ステンレスなどの金属製品を主要原材料としており、金属市況の大幅な価格上昇により仕入先からの価格引き上げ要請を受ける可能性があります。販売価格への転嫁やコスト削減には限界があるため、中長期的には業績に影響が出る可能性があります。

(3) 人材確保について


継続的な事業運営には将来を見据えた人材確保・育成が不可欠です。新卒採用を中心に活動を行い一定数の採用を確保していますが、将来にわたり優秀な人材の確保が維持できない場合、中長期的に業績へ影響を及ぼす可能性があります。

(4) 販売価格について


景気減速や設備投資意欲の減退が販売価格の低下圧力につながるリスクがあります。「フェアビジネス」の理念のもと、安易な価格競争は行わず適正価格を提示する方針ですが、競合他社の動向や市場情勢により一時的に市場シェアを失う可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。