靜甲 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

靜甲 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する企業です。産業機械、冷間鍛造製品の製造販売に加え、電機機器や車両(スバル車等)の販売を行う多角的な事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、売上高401億円、経常利益16億円となり、前期比で増収増益を達成しました。


※本記事は、靜甲株式会社 の有価証券報告書(第123期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 靜甲ってどんな会社?


産業機械や冷間鍛造部品の製造、電機機器や自動車の販売など、製造と商社の機能を併せ持つ多角化企業です。

(1) 会社概要


1939年に静岡県清水市で清水精機として設立され、航空機部品の製造を開始しました。戦後の1946年に静甲いすゞ自動車販売へ改称し自動車販売へ進出、1951年には液体自動充填機の製造販売を開始し、現在の事業基盤を築きました。1983年に現在の社名である靜甲へ改称し、2004年にジャスダック(現スタンダード市場)へ上場を果たしています。

連結従業員数は887名、単体では420名です。筆頭株主は同社のその他の関係会社である鈴与ホールディングス、第2位は元代表取締役会長の鈴木惠子氏、第3位は有限会社テイ・エム・ケイとなっています。

氏名 持株比率
鈴与ホールディングス 28.37%
鈴木 惠子 12.81%
有限会社テイ・エム・ケイ 9.56%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は鈴木孝典氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
鈴木 孝典 代表取締役社長執行役員 1998年大成建設入社。エコノス・ジャパン取締役、静岡スバル自動車代表取締役社長などを経て、2024年6月より同社代表取締役社長、2025年6月より現職。
吉川 範幸 取締役常務執行役員管理部長 2007年日本機械商事入社。同社執行役員清水支店長などを経て、2019年同社経営企画室長。2025年6月より現職。
一圓 昌幸 取締役執行役員包装機械事業担当三島工場長 1994年同社入社。共和テック取締役などを経て、2023年同社包装機械事業本部三島工場長。2025年6月より現職。
山下 一弘 取締役執行役員エンジニアリング事業担当 1984年同社入社。清水工場長、商事事業部長、包装機械事業本部長などを歴任。2025年6月より現職。
湯子 直樹 取締役執行役員海外事業担当 1992年日本機械商事入社。同社代表取締役社長を経て、2023年同社取締役就任。2025年6月より現職。


社外取締役は、杉本基(公認会計士・税理士、杉本会計事務所所長)、関本和彦(元TDKラムダ取締役経営企画本部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「産業機械事業」「冷間鍛造事業」「電機機器事業」「車両関係事業」「不動産等賃貸事業」の5つの報告セグメントを展開しています。

産業機械事業


包装機械製品、殺菌装置、食品加工機械、産業機械およびFA生産システム等の製造販売を行っています。顧客は食品メーカーやトイレタリー業界などが中心です。また、これら製品の保守メンテナンスサービスも提供しています。

製品の製造および保守メンテナンスは主に同社が行い、販売は一部を除き子会社の日本機械商事が担当しています。また、子会社のエコノス・ジャパンが殺菌装置等の製造販売・保守を行い、共和テックが産業機械・FA生産システムの製造販売・保守を行っています。

冷間鍛造事業


自動車部品や機械工具などの冷間鍛造製品を製造販売しています。独自の冷間鍛造技術を活かし、多品種・小ロット対応などの提案を行っています。

製品の製造および販売は、同社が主に行っています。

電機機器事業


FA機器、空調機器、冷凍機器、太陽光発電機器等の電機機器の販売、および空調設備等の設置工事を行っています。静岡県内を中心に事業を展開し、省エネ提案や自動化設備の導入支援などを行っています。

事業の運営は主に同社が行っています。

車両関係事業


スバル車をはじめとする車両(ボルボ、ポルシェ、BYD等)およびその関連商品の販売、点検・整備サービスを提供しています。静岡県内を中心に店舗を展開し、新車・中古車の販売を行っています。

運営は、同社および子会社の静岡スバル自動車、静岡ブイオート、PUREST、Cool the Earthが行っています。

不動産等賃貸事業


不動産の賃貸、駐車場の経営、および貸自動車業を行っています。グループ会社への不動産賃貸のほか、地域顧客向けのサービスも含まれます。

同社が子会社等に対して不動産を賃貸するほか、子会社の静岡自動車が静岡県内を中心に駐車場経営および貸自動車業を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2022年3月期から2025年3月期までの4期間において、売上高は増加傾向にあります。特に直近の2025年3月期は売上高401億円に達し、経常利益も16億円と伸長しました。当期純利益も増加しており、利益率も改善傾向にあります。全体として順調な業績拡大が続いています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 314億円 345億円 361億円 401億円
経常利益 7億円 7億円 10億円 16億円
利益率(%) 2.2% 2.0% 2.8% 3.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 1億円 4億円 5億円

(2) 損益計算書


売上高は361億円から401億円へと約40億円増加しました。売上総利益も77億円から88億円へ増加し、売上総利益率は22.0%を維持しています。営業利益は9億円から14億円へと大幅に増加し、営業利益率も改善しました。増収効果が利益の拡大に寄与していることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 361億円 401億円
売上総利益 77億円 88億円
売上総利益率(%) 21.4% 22.0%
営業利益 9億円 14億円
営業利益率(%) 2.4% 3.6%


販売費及び一般管理費のうち、給与が21億円(構成比29%)、賞与引当金繰入額が3億円(同5%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで黒字を確保しています。主力の車両関係事業は売上・利益ともに最大規模であり、業績を牽引しています。産業機械事業は工場の稼働率向上により大幅な増益となりました。冷間鍛造事業も生産効率向上により利益が急増しています。電機機器事業も増収増益と堅調です。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
産業機械事業 75億円 75億円 9億円 11億円 14.2%
冷間鍛造事業 13億円 16億円 0.2億円 1億円 9.2%
電機機器事業 70億円 81億円 6億円 6億円 8.0%
車両関係事業 200億円 228億円 2億円 4億円 1.7%
不動産等賃貸事業 2億円 1億円 0.5億円 2億円 194.7%
連結(合計) 361億円 401億円 9億円 14億円 3.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「健全型」のキャッシュ・フロー構造です。本業の営業活動で得た資金(プラス)を、将来のための投資活動(マイナス)と借入金の返済等の財務活動(マイナス)に充当しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 17億円 31億円
投資CF -12億円 -24億円
財務CF -3億円 -22億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「公平であり公正を追求する」「社会に貢献する」「働きがいのある職場環境をめざす」の3つを経営理念として掲げています。法令遵守や企業倫理の向上、本業重視の姿勢を貫きつつ、顧客満足の追求と高品質な商品・サービスの提供を通じてステークホルダーとの共存を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「靜甲WAY」のもと、「コンプライアンスの徹底」「社会貢献と環境保全」「お客さまの満足向上」「業務プロセスの絶えざる改善」「人材の育成と職場環境の改善」という5つの行動規範を定めています。これらを具体的な行動指針とし、顧客と共に豊かな社会の創造と持続的な発展に貢献することを使命としています。

(3) 経営計画・目標


同社は長期ビジョンとして「創業100周年に向けて、持続的成長(サステナビリティ経営)をめざす」を掲げています。2025年3月期を始期とする5カ年の中期経営計画を策定し、最終年度である2029年3月期の数値目標として以下を設定しています。

* 売上高:515億円
* 営業利益:21億円
* EBITDA:36億円
* 1株当たり配当金:30円

(4) 成長戦略と重点施策


リスク回避からリスクテイクへの転換を方針とし、「省エネ」「省人化」「省資源」「カーボンニュートラル」をキーワードとした成長分野へ注力します。既存事業の収益基盤を維持しつつ、創出したキャッシュを環境配慮型事業へ再投資することで、事業ポートフォリオの強靭化を図ります。

* 環境関連分野への取組み:省エネ、カーボンニュートラル関連の新規事業立ち上げ
* 成長市場へのマーケットアウト:製造業向け自動化設備・試験機の販売強化、冷間鍛造技術を活かした新規顧客開拓
* 従来ビジネスからの変革:包装機械等の海外市場調査と営業強化、自動化・省人化の提案強化
* 安定収益基盤の維持・拡大:EV車両を軸とした新商材の販売強化、リノベーション事業の拡充

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「働きがいのある職場環境をめざす」を理念とし、従業員の人間力向上を目的とした階層別研修や、ベテラン社員の技術を伝承する『匠塾』などを実施しています。採用や管理職登用においては、性別・年齢・国籍等を問わず、能力・知識・経験を総合的に考慮し、多様な人材の活躍を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.9歳 16.8年 5,658,801円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.3%
男性育児休業取得率 40.0%
男女賃金差異(全労働者) 72.5%
男女賃金差異(正規雇用) 72.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 72.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(79.0%)、二次検診受診率(62.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品の多くが受注生産であること


産業機械事業および冷間鍛造事業では、製品の多くが受注生産となっています。そのため、顧客の経営方針の変更や在庫調整等の影響を受けやすく、受注減少が生じた場合に業績へ影響を及ぼす可能性があります。

(2) 依存度の高い仕入先があること


電機機器事業では三菱電機等、車両関係事業ではSUBARU等、特定の仕入先からの商品供給を受けています。競合メーカーの新製品投入や、仕入先の供給支障、戦略変更などが発生した場合、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(3) 情報流出のリスク


事業活動において顧客や取引先の個人情報を取り扱っています。情報管理体制の充実を図っていますが、万一情報流出が発生した場合には、社会的信用の失墜や損害賠償請求等により、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。