靜甲 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

靜甲 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する靜甲は、産業機械の製造販売をはじめ、冷間鍛造製品、電機機器、車両関連商品などを幅広く手掛ける企業です。直近の業績では、包装機械の大型案件獲得や車両関係事業の伸長が寄与し、売上高は約449億円と増収を達成。生産性向上による原価低減も奏功し、営業利益は約18億円と増益で推移しています。


※本記事は、靜甲株式会社の有価証券報告書(第124期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 靜甲ってどんな会社?


同社は、産業機械や冷間鍛造製品の製造のほか、電機機器、車両関連商品の販売を展開する多様な事業基盤を持つ企業です。

(1) 会社概要


同社は1939年に清水精機として設立され、航空機部品の製造から事業をスタートしました。その後、自動車や電機機器の販売業務へ事業を広げ、1951年には現在につながる液体自動充填機の製造販売を開始しました。1970年には冷間鍛造設備を設置し、多様な産業基盤を確立して着実な成長を続けています。

現在、同社グループは連結で892名、単体で428名の従業員を擁しています。筆頭株主は事業会社の鈴与ホールディングスで、第2位は有限会社テイ・エム・ケイ、第3位は代表取締役の鈴木孝典氏となっています。

氏名 持株比率
鈴与ホールディングス 28.37%
有限会社テイ・エム・ケイ 8.37%
鈴木孝典 7.37%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員を鈴木孝典氏が務めており、社外取締役の比率は約16.7%(12名中2名)となっています。

氏名 役職 主な経歴
鈴木孝典 代表取締役社長執行役員 大成建設へ入社後、グループ各社の取締役を歴任。2024年に同社代表取締役取締役社長に就任し、2025年より現職。
吉川範幸 取締役常務執行役員管理部長 日本機械商事へ入社し、同社取締役清水支店長等を経て入社。経営企画室長等を歴任し、2025年より現職。
一圓昌幸 取締役執行役員包装機械事業担当包装機械事業部長兼務三島工場長 同社入社後、三島工場長などを歴任。執行役員等を経て2026年より現職。
山下一弘 取締役執行役員エンジニアリング事業担当 同社入社後、清水工場長や商事事業部長などを歴任。取締役を経て2025年より現職。
湯子直樹 取締役執行役員海外事業担当 日本機械商事へ入社後、同社代表取締役社長に就任。同社取締役を経て2025年より現職。


社外取締役は、杉本基氏(杉本会計事務所所長)、関本和彦氏(TDKエナジーソリューションズビジネスカンパニーアドバイザー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「産業機械事業」「冷間鍛造事業」「電機機器事業」「車両関係事業」「不動産等賃貸事業」を展開しています。

(1) 産業機械事業


包装機械、殺菌装置、食品加工機械などの製造販売や保守メンテナンスを行っています。主に食品やトイレタリー業界、化粧品・医薬品業界の顧客に向けて、自動化や省人化、生産効率の向上に貢献する機械や生産システムを提供しています。

収益源は機械の販売代金や保守メンテナンスのサービス料です。包装機械の製造と保守は主に同社が担い、販売は日本機械商事が担当しています。また、エコノス・ジャパンや共和テックなどのグループ会社も製造販売や保守メンテナンスを展開しています。

(2) 冷間鍛造事業


独自の金型設計や内製化技術を強みとし、自動車部品、機械工具部品、産業機械部品などの冷間鍛造製品を製造販売しています。多品種小ロットの生産にも対応し、自動車市場の電動化に向けたヒートシンク製品の開発などにも取り組んでいます。

収益源は製造した冷間鍛造製品の販売代金です。同事業の開発から製造、販売に至るまでの業務は、すべて同社が単独で運営しています。

(3) 電機機器事業


FA機器、空調機器、冷凍機器、太陽光発電機器などの電機機器の販売や、空調設備等の設置工事を行っています。主に静岡県内の顧客に対し、省エネ性能に優れた空調やバックアップ電源など、環境対応やリスク管理に配慮したソリューションを提供しています。

収益源は電機機器の販売代金および設置工事の請負代金です。この事業は、地域顧客のインフラや生産現場に即応できる体制を活かし、同社が運営を行っています。

(4) 車両関係事業


スバル車などの新車および中古車の販売や、点検・整備などのアフターサービスを提供しています。ハイブリッド車を含む電動車などの販売にも注力し、自動車金融やタイヤの販売などを通じたバリューチェーンの拡充も図っています。

収益源は車両や関連商品の販売代金、ならびにメンテナンスのサービス料です。運営は同社をはじめ、静岡スバル自動車、静岡ブイオート、PUREST、Cool the Earthなどのグループ会社が共同で担っています。

(5) 不動産等賃貸事業


静岡県内を中心に、不動産の賃貸や駐車場の経営、貸自動車業などを展開しています。グループ各社が利用する店舗や事業所用物件の賃貸も行い、安定した基盤づくりに貢献しています。

収益源は不動産の賃貸料や駐車場の利用料などです。同社がグループ会社などに不動産を賃貸するほか、子会社の静岡自動車が駐車場経営などを担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期の業績は、売上高が継続的に拡大し増収トレンドが定着しています。特に直近2期では400億円台に到達しました。経常利益も売上の増加に伴って成長しており、堅調な利益水準を確保しています。利益率も安定して推移しており、確実な事業成長が伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 314億円 345億円 361億円 401億円 449億円
経常利益 7億円 7億円 10億円 16億円 16億円
利益率(%) 2.2% 2.0% 2.8% 3.9% 3.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 1億円 4億円 5億円 8億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益や営業利益も拡大しています。生産性向上や内部効率化による原価低減の取り組みが実を結び、営業利益率は上昇傾向にあります。増収と収益性改善が両立する順調な推移を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 401億円 449億円
売上総利益 88億円 96億円
売上総利益率(%) 22.0% 21.3%
営業利益 14億円 18億円
営業利益率(%) 3.6% 4.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与が23億円(構成比29%)、賞与引当金繰入額が4億円(同5%)を占めています。

(3) セグメント収益


包装機械の大型案件獲得により産業機械事業が大きく増収増益を達成し、全体の成長を牽引しました。車両関係事業も新車や中古車の販売が好調で増収を記録しています。一方で、冷間鍛造事業や電機機器事業では設備投資需要の低下などの影響を受け、利益が伸び悩む結果となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
産業機械事業 75億円 95億円 11億円 15億円 15.8%
冷間鍛造事業 16億円 16億円 1億円 1億円 8.5%
電機機器事業 81億円 87億円 6億円 6億円 7.3%
車両関係事業 228億円 250億円 4億円 4億円 1.7%
不動産等賃貸事業 1億円 1億円 2億円 2億円 108.3%
連結(合計) 401億円 449億円 14億円 18億円 4.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態である「健全型」を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 31億円 28億円
投資CF -24億円 -21億円
財務CF -22億円 -4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も58.7%で市場平均を上回っています。いずれも良好な水準を維持しています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「公平であり公正を追求する」「社会に貢献する」「働きがいのある職場環境をめざす」という3つの経営理念を企業活動の基本としています。常に顧客満足を考える姿勢を持ち、そのニーズに対応した製品やサービスを提供することで、ステークホルダーとの共存を目指した事業活動を推進しています。

(2) 企業文化


普遍的な価値観として「靜甲WAY」を定め、「コンプライアンスの徹底」「社会貢献と環境保全」「お客さまの満足向上」「業務プロセスの絶えざる改善」「人材の育成と職場環境の改善」という5つの行動規範を遵守しています。持続的な成長を支える基盤を強固にし、社会価値と経済的価値の双方の創造に取り組む文化があります。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン「創業100周年に向けて、持続的成長(サステナビリティ経営)をめざす」の実現に向け、2029年3月期を最終年度とする5ヵ年の中期経営計画を推進しています。持続的成長と収益力の向上を追求しています。

* 売上高:515億円
* 営業利益:21億円
* EBITDA:36億円
* 1株当たり配当金:30円

(4) 成長戦略と重点施策


方針として「リスクアバース(リスク回避)からリスクテイク(成功に挑む)への転換」を掲げ、既存事業の安定した収益基盤を維持しつつ、「省エネ」「省人化」「省資源」「カーボンニュートラル」をキーワードとした成長分野へキャッシュを再投資します。事業ポートフォリオの強靭化を図り、社会課題の解決に寄与します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員を最重要の「人的資本」と位置づけ、従業員一人ひとりが「自ら考え、主体性を持って未来を拓く集団」へと変革することを目指しています。キャリア採用の強化や実践的育成プログラム「靜甲アカデミー」の拡充を通じ、自律的な成長を支援するとともに、多様な働き方を確保して働きがいのある職場づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.5歳 15.7年 6,005,204円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.6%
男性育児休業取得率 47.1%
男女賃金差異(全労働者) 71.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 71.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 82.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(80.0%)、二次検診受診率(45.0%)、管理職、係長に占める女性労働者の割合(10.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 受注生産に伴う需要変動リスク

産業機械事業や冷間鍛造事業では、製品の多くが受注生産となっています。製品納期の短縮や品質保証の充実によって受注獲得に努めていますが、顧客企業の経営方針の変更や在庫調整などの影響を受けやすく、受注が減少した場合には業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定の仕入先への依存リスク

電機機器事業では主に三菱電機などから、車両関係事業ではSUBARUやボルボ・カー・ジャパンなど特定の仕入先から商品の供給を受けています。競合メーカーの新製品投入による競争力の低下や、仕入先の商品供給に支障が生じた場合には、業績に影響を与える懸念があります。

(3) 知的財産権の侵害リスク

主に包装機械関連技術に関する特許を所有し知的財産の保護を行っていますが、他社がより優れた技術開発を行い特許を取得した場合、競争力が低下する恐れがあります。また、意図せず第三者の知的財産権を侵害していると指摘された場合、事業展開に支障を来す可能性があります。

(4) 製品欠陥およびリコール対応リスク

各工場でISO9001の認証を取得し品質保証に取り組んでいますが、全ての製品に欠陥がなく、将来リコールが発生しないという保証はありません。万が一、製品の欠陥に伴うリコールが発生した場合には、その対応に多額のコストを要し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。