グローリー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

グローリー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

グローリーは東京証券取引所プライム市場に上場し、国内外の金融・流通・遊技市場向けに通貨処理機やセルフサービス機器等を幅広く提供する企業です。直近の業績は、海外市場の売上が過去最高を更新して堅調に伸長したものの、国内での新紙幣対応特需一巡等の影響を受け、前期比で減収減益のトレンドとなっています。


※本記事は、グローリー株式会社 の有価証券報告書(第80期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. グローリーってどんな会社?


国内外で通貨処理機やセルフサービス機器の製造・販売・保守を手がける同社の特徴を紹介します。

(1) 会社概要


1918年に電球製造機の修理から始まり、1950年に国産初の硬貨計数機を開発しました。その後、1982年に米国、1991年にドイツへ進出するなど海外展開を加速し、2000年に東京証券取引所市場第一部へ上場しました。近年は、2020年のAcrelec社子会社化など、M&Aを通じた新領域事業を拡大しています。

従業員数は連結で11,266名、単体で3,139名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)であり、第2位は保険事業を行う日本生命保険、第3位はグロ-リ-グル-プ社員持株会となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.98%
日本生命保険 6.33%
グロ-リ-グル-プ社員持株会 4.04%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は原田明浩氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
原田明浩 代表取締役社長 1985年同社入社。フィリピン法人社長や海外事業統合プロジェクトリーダー等を経て、2018年海外カンパニー長に就任。2024年4月より現職。
三和元純 代表取締役会長 1977年太陽神戸銀行入行。2009年同社入社。総務統括部法務部長や経営管理本部管掌、代表取締役社長等を歴任し、2024年4月より現職。
尾上英雄 取締役副社長、社長補佐、総務本部、経理・財務本部管掌 1999年同社入社。米国法人社長や生産本部長、国内カンパニー長などを歴任。2024年4月より現職。
藤田知子 取締役、IR担当、海外ガバナンス担当 1985年日興證券入社。2012年同社入社。海外子会社のDirector等を歴任し、2021年6月に取締役、2026年4月より現職。
犬賀昌人 取締役(常勤監査等委員)、監査等委員会委員長 1988年同社入社。経営戦略統括部広報・IR部長や経営戦略本部長等を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、イアン・ジョーダン(元Avanade CEO)、池田育嗣(元住友ゴム工業社長・報酬諮問委員長)、内藤宏治(元ウシオ電機社長・指名諮問委員長)、加藤恵一(はりま法律事務所弁護士)、生川友佳子(生川友佳子税理士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「金融市場」「流通・交通市場」「遊技市場」「海外市場」および「その他」事業を展開しています。

(1) 金融市場


国内の金融機関やOEM先向けに、オープン出納システムや窓口用の紙幣硬貨入出金機、セルフ出納システムなどの通貨処理機および関連ソリューションを提供しています。

顧客である金融機関からの製品販売代金および保守サービス料が主な収益源です。事業運営はグローリーおよびグローリープロダクツ、北海道グローリーなどの子会社が連携して行っています。

(2) 流通・交通市場


国内のスーパーマーケットや百貨店、飲食店、鉄道会社、病院などに対し、レジつり銭機や売上金入金機、飲食店向けBIツールなどの自動サービス機器を提供しています。

流通・交通関連の企業から製品販売代金や保守サービス料を受け取るモデルです。事業運営は主にグローリーが担い、開発や製造、販売において各種国内子会社と連携しています。

(3) 遊技市場


国内のパチンコホール等の遊技場向けに、カードシステムや両替機、セルフPOSシステムなどの遊技関連機器およびソリューションを提供しています。

遊技場を運営する企業からの製品販売代金および保守サービス料によって収益を得ています。事業の運営は主にグローリーおよび子会社のグローリーナスカが担当しています。

(4) 海外市場


米州、欧州、アジアなど海外の金融機関や大手リテーラー、飲食店向けに、紙幣硬貨入出金機やセルフサービスキオスク、小売業向けクラウドソリューションを提供しています。

海外の顧客企業から機器の販売代金、ソフトウェアのライセンス料、保守サービス料を受け取ります。運営はGlory Global Solutions (International) Ltd.などの海外子会社が中心に行っています。

(5) その他


国内のコインパーキング事業者向け製品の販売や、顔認証・骨格認識技術を活用した来店顧客分析システムなどの新領域事業となるソリューションを提供しています。

製品の販売代金やソリューションのシステム利用料等が収益源となります。事業の運営は主にグローリーおよび関連する国内グループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近2期(IFRS基準)の業績推移を見ると、売上収益は3,686億円から3,396億円へと減収となっています。利益面でも、税引前利益が346億円から247億円へと減益となり、利益率も9.4%から7.3%へと低下しています。新紙幣対応特需が一巡したことが影響しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 3,686億円 3,396億円
税引前利益 346億円 247億円
利益率(%) 9.4% 7.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 245億円 154億円

(2) 損益計算書


コスト構造において、売上原価の減少以上に売上収益が減少したため、売上総利益率は低下しています。また、研究開発等への継続的な投資に伴い、販管費の負担が相対的に増加し、営業利益率の低下に繋がっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 3,686億円 3,396億円
売上総利益 705億円 575億円
売上総利益率(%) 19.1% 16.9%
営業利益 420億円 298億円
営業利益率(%) 11.4% 8.8%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が121億円(構成比9.7%)、給与手当が83億円(同6.6%)、手数料が50億円(同4.0%)を占めています。

(3) セグメント収益


海外市場は欧米での販売が好調で増収増益となり、全体の収益を牽引しています。一方、国内の金融市場、流通・交通市場、遊技市場は、前期の新紙幣対応に伴う特需の反動により、いずれも大幅な減収減益となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
金融市場 544億円 371億円 79億円 39億円 10.5%
流通・交通市場 697億円 576億円 87億円 0億円 0.0%
遊技市場 274億円 211億円 77億円 51億円 24.3%
海外市場 2,101億円 2,161億円 180億円 211億円 9.8%
その他 70億円 77億円 -3億円 -4億円 -5.0%
連結(合計) 3,686億円 3,396億円 420億円 298億円 8.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスであり、本業で生み出した資金を投資や借入金の返済に充当する「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。企業の収益力を測るROEは7.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.7%で市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 513億円 428億円
投資CF -98億円 -68億円
財務CF -249億円 -390億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「私たちは『求める心とみんなの力』を結集し、セキュア(安心・確実)な社会の発展に貢献します」という企業理念を掲げています。「求める心」は顧客や社会のニーズに不屈の精神で挑戦する思いを、「みんなの力」は結束して偉大な仕事を成し遂げるという同社の原点を表しています。

(2) 企業文化


企業理念の実現に向け、働くすべての人の行動や判断の基準となる「私たちの価値観」を定めています。具体的には、「社会とお客様のために」「誠実」「挑戦」「スピード」に加え、「多様性の尊重」や「チームワーク」を掲げ、多様な価値観や個性を尊重してチームの力を最大化する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン2028「人と社会の『新たな信頼』を創造するリーディングカンパニーへ」の実現に向け、「2026中期経営計画」を推進しています。本計画では、以下の経営指標の向上を目標として掲げています。

* 自己資本利益率(ROE)
* 投下資本利益率(ROIC)
* 総資産利益率(ROA)
* 営業利益、売上収益、新領域事業売上収益

(4) 成長戦略と重点施策


中計のコンセプト「GLORY TRANSFORMATION 2026」の下、世界最高品質の製品とソフトウェアを融合し、店舗DXをサポートする企業への変革を目指します。リテール・金融・飲食市場に狙いを定めたソリューションビジネスによる「新たな収益源の獲得」や、通貨処理機事業での「コア事業の収益拡大」などに注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


店舗トータルソリューションビジネスへの変革を牽引するため、DX技術やデータを活用した新たな価値創出を担う人材の確保・育成を重要課題としています。キャリア自律を支援する「まなVIVA」等の学習機会の提供や、グローバル人材の育成、さらに健康経営の推進を通じた働きやすい環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.8歳 18.5年 8,394,882円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.5%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 65.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 43.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員における外国人比率(55.5%)、管理職に占めるキャリア採用比率(25.6%)、障がい者雇用率(2.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) キャッシュレス化の急速な進展


同社は新領域事業の拡大に取り組んでいますが、デジタル通貨の発行など急激なキャッシュレス化がグローバルかつ短期間に進展した場合、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、ソフトウェアプラットフォームの提供等で店舗トータルソリューションを推進しています。

(2) 海外事業展開と地政学的リスク


海外市場への事業展開を積極的に行っていますが、戦争や紛争、高率の追加関税など国際情勢の変化や為替相場・金利の変動、知的財産の侵害等が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに備え、生産戦略の立案や為替ヘッジ等の施策を進めています。

(3) 戦略投資に伴うのれん等の減損リスク


企業価値向上のためにM&A等の戦略投資を積極的に行っており、のれん等の無形資産が連結総資産の多くを占めています。事業環境の変化等により期待した成果が得られず、減損損失が発生した場合には、同社の業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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