グローリー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

グローリー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場。主要事業は金融市場や流通・交通市場等に向けた通貨処理機・セルフサービス機器の製造・販売・保守、および電子決済サービス等の提供です。当連結会計年度の業績は、国内需要の反動減等により売上高3,690億円(前期比0.9%減)、経常利益284億円(同41.1%減)の減収減益でした。


※本記事は、グローリー株式会社 の有価証券報告書(第79期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. グローリーってどんな会社?

通貨処理機やセルフサービス機器の分野で高いシェアを持つメーカーです。世界100カ国以上で製品・サービスを展開し、金融機関や流通店舗の業務効率化を支援しています。

(1) 会社概要

1918年に創業し、1950年に造幣局向け硬貨計数機を開発しました。2000年に東京証券取引所市場第一部に上場。2012年には英国の通貨処理機メーカーTalaris Topco Limitedを買収し、グローバル展開を加速させました。2024年にはリテール向けソフトウェアを展開するFlooid Topco Limitedを買収し、店舗DX支援を強化しています。

連結従業員数は11,392名、単体従業員数は3,153名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は大手生命保険会社です。特定の親会社はなく、機関投資家や従業員持株会、取引先持株会などが主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.84%
日本生命保険相互会社 5.93%
日本カストディ銀行(信託口) 4.52%

(2) 経営陣

同社の役員は男性9名、女性2名(社外取締役含む)の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は原田明浩氏です。社外取締役比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
原田明浩 代表取締役社長 1985年入社。生産技術部門やフィリピン子会社社長、経営企画部長等を歴任。海外事業本部長や海外カンパニー長を経て、2024年4月より現職。
三和元純 代表取締役会長 1977年太陽神戸銀行入行。2009年同社入社。法務部長、総務本部長、経営管理本部長等を歴任し、2019年社長就任。2024年4月より現職。
尾上英雄 取締役副社長、社長補佐、総務本部、経理・財務本部管掌 1999年入社。米国子会社社長、生産本部長、国内事業本部長、国内カンパニー長等を歴任。2024年4月より現職。
小谷要 取締役、開発・技術管掌 1987年入社。開発統括部長、開発本部長等を歴任。情報セキュリティ担当や新事業担当を経て、2024年4月より現職。
藤田知子 取締役、海外ガバナンス担当 証券会社等を経て2012年同社入社。英国子会社にて事業企画等を担当しDirectorを務める。2021年6月より現職。
犬賀昌人 取締役(常勤監査等委員)、監査等委員会委員長 1988年入社。広報・IR部長、経営企画部長、経営戦略本部長等を歴任。2023年6月より現職。


社外取締役は、井城讓治(元川崎重工業代表取締役副社長・指名諮問委員会委員長)、イアン・ジョーダン(元Avanade Inc.幹部)、池田育嗣(元住友ゴム工業代表取締役社長・報酬諮問委員会委員長)、加藤恵一(弁護士)、生川友佳子(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容

同社グループは、「金融市場」「流通・交通市場」「遊技市場」「海外市場」および「その他」事業を展開しています。

金融市場

国内の金融機関等に対し、窓口用紙幣硬貨入出金機やオープン出納システム等の通貨処理機、セルフサービス機器の製造・販売・保守を行っています。業務効率化や厳正化、非対面化のニーズに対応する製品を提供しています。
収益は、顧客への製品販売代金および保守サービス料からなります。運営は主にグローリー、グローリープロダクツ、北海道グローリーが行っています。

流通・交通市場

国内のスーパーマーケット、専門店、飲食店、鉄道会社、警備輸送会社等に対し、レジつり銭機や券売機、売上金入金機等の製造・販売・保守を行っています。人手不足への対応や店舗DXを支援するソリューションを提供しています。
収益は、顧客への製品販売代金および保守サービス料からなります。運営は主にグローリー、グローリープロダクツ、北海道グローリーが行っています。

遊技市場

国内のパチンコホール等に対し、カードシステムや賞品保管機、景品管理POSシステム等の製造・販売・保守を行っています。遊技場運営の効率化や省力化に貢献するシステム機器を提供しています。
収益は、顧客への製品販売代金および保守サービス料からなります。運営は主にグローリー、グローリープロダクツ、グローリーナスカが行っています。

海外市場

海外の金融機関、リテール業界、カジノ業界等に対し、紙幣入出金機やセルフサービスキオスク等の製造・販売・保守を行っています。また、店舗DXを支援するソフトウェアやソリューションの提供も拡大しています。
収益は、顧客への製品販売代金および保守サービス料からなります。運営は主にグローリー、Glory Global Solutions Ltd.等の海外現地法人が行っています。

その他

国内における生体認証ソリューションやロボットSI(システムインテグレーション)等の新領域事業、およびその他の付帯事業を行っています。
収益は、顧客への製品・サービス販売代金等からなります。運営は主にグローリー、グローリープロダクツ等が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績推移を見ると、売上高は第77期まで2,000億円台前半から半ばで推移していましたが、第78期に3,700億円台へと大きく伸長しました。これは主に新紙幣発行に伴う需要増などが寄与したものです。第79期は国内特需の反動で減益となりましたが、売上高は高水準を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,174億円 2,266億円 2,559億円 3,725億円 3,690億円
経常利益 141億円 104億円 -27億円 483億円 284億円
利益率(%) 6.5% 4.6% -1.1% 13.0% 7.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 98億円 99億円 -3億円 381億円 244億円

(2) 損益計算書

直近2期間を比較すると、売上高は前期比微減の3,690億円となりました。一方、利益面では、売上原価率は微増にとどまりましたが、販売費及び一般管理費が増加したことなどにより、営業利益、経常利益ともに前期を下回りました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,725億円 3,690億円
売上総利益 1,626億円 1,562億円
売上総利益率(%) 43.7% 42.3%
営業利益 511億円 352億円
営業利益率(%) 13.7% 9.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が526億円(構成比43%)、減価償却費が108億円(同9%)を占めています。売上原価においては、商品及び製品が1,454億円(売上原価の68%)、保守が674億円(同32%)となっています。

(3) セグメント収益

海外市場セグメントが売上高全体の約57%を占め、前年比で増収増益となりました。一方、国内の金融市場および流通・交通市場は、新紙幣対応特需の反動等により減収となりました。特に金融市場は大幅な減益となりましたが、海外市場の好調さが全体を下支えする構図となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
金融市場 784億円 544億円 242億円 87億円 15.9%
流通・交通市場 748億円 698億円 106億円 98億円 14.1%
遊技市場 282億円 277億円 100億円 85億円 30.7%
海外市場 1,852億円 2,101億円 65億円 85億円 4.0%
その他 58億円 70億円 -2億円 -3億円 -4.1%
調整額 - - - - -
連結(合計) 3,725億円 3,690億円 511億円 352億円 9.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであることから、本業で稼いだ資金を借入金の返済や投資に回している「健全型」と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 419億円 458億円
投資CF -336億円 -79億円
財務CF -140億円 -213億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「私たちは『求める心とみんなの力』を結集し、セキュア(安心・確実)な社会の発展に貢献します」という企業理念を掲げています。「求める心」には顧客や社会のニーズに不屈の精神で挑戦する思いが込められており、それを共有した「みんなの力」を結集することで偉大な仕事ができるという原点を表しています。

(2) 企業文化

企業理念の実現のために大切にする考え方として、「私たちの価値観」を定めています。これはグループで働くすべての人々の行動や判断の基準となるものです。事業環境の変化に対応し持続的に成長するため、2026中期経営計画の策定に合わせて見直しが行われました。

(3) 経営計画・目標

2024年4月から「2026中期経営計画」に取り組んでおり、「GLORY TRANSFORMATION 2026」をコンセプトに掲げています。財務目標として、ROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)、ROA(総資産利益率)、営業利益、売上高の向上を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策

長期ビジョン実現に向け、「新たな収益源の獲得」「コア事業の収益拡大」「経営マネジメントの強化」「リスクマネジメントの強化」を基本方針としています。特にリテール、金融、飲食市場において、製品とソフトウェアを融合させたソリューションビジネスの確立を目指し、店舗DXを支援する施策を推進しています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「競争力の源泉となる人的資本の充実」を掲げ、DX戦略を牽引する人材の確保・育成や、次世代経営人材の育成を強化しています。また、健康経営の推進やダイバーシティの促進、人権の尊重等を通じて、働きやすい職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.2歳 19.1年 8,942,338円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.2%
男性育児休業取得率 80.8%
男女賃金差異(全労働者) 61.0%
男女賃金差異(正規雇用) 69.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 36.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性新卒採用比率(14.3%)、障がい者雇用率(2.49%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) キャッシュレス化の進展

DX分野などの新領域事業の拡大に取り組んでいますが、これが成長するまでの間に、デジタル通貨の発行など急激なキャッシュレス化がグローバルかつ短期間に進展した場合、現金処理機への依存度が高い同社の業績に影響を与える可能性があります。

(2) 海外事業展開に伴うリスク

海外市場への展開を積極的に行っていますが、戦争や紛争、高率の追加関税などの地政学的リスク、為替相場や金利の変動、知的財産の侵害等が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。特に世界各地での情勢変化への対応が課題となります。

(3) 各国の法令・各種規制

事業を行う各国において、許認可や輸出入規制、環境関連やデジタル規制などの適用を受けています。これらの法令等の改廃や新設が行われ、その対応が遅れた場合、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 戦略投資に関するリスク

M&Aや持分法適用会社への投資など、コア事業拡大や新領域創出に向けた経営資源の投入を行っています。事業環境の変化等により期待した成果が得られない場合、のれんや顧客関係資産の減損損失が発生し、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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