タクミナ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

タクミナ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社はスタンダード市場に上場し、精密ポンプや流体制御機器の製造販売を行う企業です。主力製品「スムーズフローポンプ」を中心に、環境や医療など幅広い産業へソリューションを提供しています。業績は堅調で、売上高は5期連続で増加しており、当期は過去最高を更新し増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社タクミナ の有価証券報告書(第49期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. タクミナってどんな会社?


同社は、流体の精密制御技術を核とするポンプメーカーです。独創的な技術で多様な産業の課題解決を支援し、グローバルニッチトップを目指しています。

(1) 会社概要


1956年に創業し、塩素滅菌機等の製造を開始しました。1977年に分離独立する形で日本フィーダー工業を設立し、定量ポンプ等の製造販売を本格化させます。1993年にタクミナへ商号変更しました。2006年には主力製品となる「スムーズフロー」ブランドを立ち上げ、2013年の東証二部上場を経て、2022年にスタンダード市場へ移行しました。

同社グループの従業員数は連結で328名、単体で320名です。筆頭株主は同社従業員等で構成されるタクミナ共栄持株会で、第2位は創業者の親族と思われる山田義彦氏、第3位は資産管理会社と思われる合同会社N.K.Freudelとなっています。

氏名 持株比率
タクミナ共栄持株会 14.38%
山田 義彦 8.03%
合同会社N.K.Freudel 7.83%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は山田圭祐氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
山田 信彦 代表取締役会長 1975年同社入社。常務取締役営業本部長、取締役副社長を経て、1993年より社長を務める。2023年6月より現職。
山田 圭祐 代表取締役社長 2011年同社入社。TACMINA USA CORPORATION国際事業部長、取締役副社長などを歴任。2023年6月より現職。
白岩 源史 取締役執行役員営業統括本部長 2016年同社入社。営業本部営業統括部長、営業戦略本部長などを歴任。2021年4月より現職。
井上 博公 取締役執行役員生産本部長兼製造管理部長 1984年同社入社。技術部長、技術本部長などを歴任。2023年6月より現職。
吉田 裕 取締役(常勤監査等委員) 2000年同社入社。経理部長、管理本部長などを歴任。2020年6月より現職。


社外取締役は、打田幸生(元オカダアイヨン取締役東京本店長)、酒井修一(元ネステック常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ポンプ事業」を展開しており、製品群ごとに高性能ポンプや汎用ポンプなどを提供しています。

(1) 高性能ソリューションポンプ
顧客ごとの仕様に合わせてカスタマイズされた「スムーズフローポンプ」などを提供しています。精密制御技術により脈動のない高精度な送液を実現し、化学、電池材料、医薬などの製造プロセスで利用されています。

この事業では、主に製造業の顧客から製品の対価を得ています。運営は主に同社が行い、海外子会社も販売を担っています。

(2) 汎用型薬液注入ポンプ
ソレノイド駆動やモータ駆動の定量ポンプを提供しています。水処理や滅菌、装置組込みなどの用途で広く使用される標準的な製品群です。

この事業では、代理店やエンドユーザーから製品代金を受け取ります。運営は同社および海外子会社が行っています。

(3) ケミカル移送ポンプ
薬品や原料を短時間で大量に移送するためのポンプ群です。高耐食ポンプやエア駆動ポンプなどが含まれ、化学プラント等で採用されています。

この事業では、プラントメーカーや工場設備向けに製品を販売し収益を得ています。運営は主に同社が行っています。

(4) 計測機器・装置、流体機器
pH計や自動塩素滅菌装置などの計測機器や、混合装置などの流体機器を提供しています。ポンプ周辺機器として、水質管理や液体の混合プロセスに使用されます。

この事業では、製品やシステムの販売対価を得ています。運営は主に同社が行っています。

(5) その他
ケミカルタンクの製造販売や、ポンプ製品の保守・メンテナンスサービスなどを提供しています。また、一部でレストランやホテル等の運営も行っています。

この事業では、製品代金やサービス料を受け取ります。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は5期連続で増加傾向にあり、順調に事業規模を拡大しています。利益面でも、経常利益率は10%台後半から15%前後で推移しており、高い収益性を維持しています。当期は売上高、各利益ともに過去最高を更新しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 83億円 87億円 97億円 110億円 111億円
経常利益 8.5億円 13億円 15億円 16億円 16億円
利益率 10.2% 14.6% 15.1% 14.6% 14.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 5.0億円 7.4億円 11億円 11億円 11億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は40%台後半で安定しており、高付加価値製品の販売が寄与していることが窺えます。営業利益率は14%台を維持しており、販管費の増加を売上総利益の増加で吸収しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 110億円 111億円
売上総利益 50億円 52億円
売上総利益率(%) 45.4% 46.7%
営業利益 16億円 16億円
営業利益率(%) 14.4% 14.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が10億円(構成比29%)、研究開発費が3.8億円(同11%)を占めています。売上原価においては、材料費などが主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


主力である高性能ソリューションポンプは海外需要の一部減速があったものの、国内のケミカル関連需要が堅調でした。計測機器・装置やケミカルタンクは水処理関連の大型案件などで大幅に伸長しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
高性能ソリューションポンプ 44億円 43億円
汎用型薬液注入ポンプ 29億円 29億円
ケミカル移送ポンプ 8億円 7億円
計測機器・装置 13億円 15億円
流体機器 5億円 4億円
ケミカルタンク 7億円 8億円
その他 4億円 4億円
連結(合計) 110億円 111億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉の安定確保を基本方針としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に製造費や販売費及び一般管理費等の営業費用で生じます。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資等で資金需要が発生します。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期運転資金を自己資金や短期借入、設備投資資金を長期借入で調達しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 11億円 10億円
投資CF -5億円 -8億円
財務CF -4億円 -10億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「常にお客様の立場で物事を考え、個性豊かな人間と、独創的な技術で世界に役立つ」という企業理念を掲げています。お客様第一の立場を鮮明にし、満足度の高い製品・サービスを提供することで、サステナブルな社会に不可欠な企業として世界貢献を果たし、ステークホルダーとの共存共栄を目指しています。

(2) 企業文化


「タクミナの使命」として、あらゆる産業の流体を高精度・高効率に送るポンプを核とした課題解決を提案することや、水と環境の分野にポンプの応用技術で安全と安心を提供することを重視しています。独創的な技術とサービスを追求し、研究・開発における変革やものづくりイノベーションに貢献する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営目標の達成状況を判断する客観的な指標としてROE(自己資本利益率)を重視しています。収益構造の改革、コストダウン、資産の効率的運用などを通じてROEの改善を図り、企業価値の一層の向上を目指しています。具体的な数値目標としては、中長期的に資本コストを上回るROEの向上を掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


「スムーズフローポンプ」を中心とした主柱事業の強化・拡大に加え、海外市場での販売力強化や製品開発力の向上に取り組んでいます。また、顧客密着型のサービス提供やマーケティング機能の強化も進めています。

* 主柱事業の強化・拡大:EV化に伴う二次電池市場や水処理用途への拡販。
* 海外市場での販売強化:人員増強、代理店拡大、カスタマイズ製品の開発。
* 製品開発力の強化:「流体ソリューションセンター」の活用や産学連携の推進。
* サブスクリプションサービスの浸透:「スムーズフローポンプQシリーズ」の利用拡大。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人」を財産と考え、社員の成長が事業強化の原動力であるとしています。階層別・部門別教育や自己啓発支援、資格取得支援制度などを通じ、社員と企業が共に成長する環境づくりに注力しています。また、多様な人材の採用や女性活躍推進、柔軟な働き方の実現に向けた環境整備も進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.0歳 14.3年 6,825,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 2.0%
男性労働者の育児休業取得率 25.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 64.5%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 75.4%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 46.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用応募者に占める女性割合(17.6%)、男性の平均勤続年数に対する女性の平均勤続年数比率(83.0%)、一般職一人当たりの各月平均残業時間(12.0時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料価格の変動


同社製品は鋼材、樹脂製品、電子部品などで構成されています。市場価格の変動や国際情勢に起因する資源・エネルギー価格の高騰により部品等の仕入価格が上昇し、これを販売価格に十分に転嫁できない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 部品等の調達に関するリスク


多種多様な素材や部品を外部から調達しており、サプライヤーの予期せぬ操業停止や物流混乱による供給途絶・遅延が発生した場合、生産活動に支障をきたす可能性があります。先行手配や適正在庫の確保、代替調達先の検討等でリスク低減に努めています。

(3) 海外事業展開のリスク


米国や韓国に子会社を有し、中国やアジア地域でも事業を展開しています。予期しない法令変更、政治変動、為替変動などのリスクが内在しており、これらが顕在化した場合は事業遂行に支障が生じ、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 情報システムに関するリスク


サイバー攻撃やシステムトラブルによりサーバーが使用不能になるなど、情報システムに重大な障害が発生した場合、企業活動が中断し業績に影響を及ぼす可能性があります。セキュリティ対策や管理体制の強化に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。