※本記事は、精工技研の有価証券報告書(第54期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 精工技研ってどんな会社?
精密加工や精密成形、光学技術を強みとし、自動車部品や光通信用部品をグローバルに提供するメーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1972年に設立され、粉末冶金用金型やファインブランキング用金型の生産から事業をスタートしました。その後、1980年代には世界初の量産用光コネクタ球面研磨機や極低反射光コネクタ付コードの販売を開始するなど技術力を高め、2000年には株式を店頭登録(後の上場)しました。近年もM&Aや新工場の建設を積極的に進め、グローバルな開発・生産体制を構築しています。
現在、同社グループは連結従業員数1,231名、単体従業員数164名の体制で事業を展開しています。大株主の状況を見ると、創業家関連とみられる個人や資産管理会社、また信託銀行などが名を連ねています。筆頭株主は上野昌利氏で、第2位は有限会社高志となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 上野昌利 | 9.72% |
| 有限会社高志 | 7.26% |
| 木村保 | 6.72% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は上野淳氏が務めており、社外取締役は4名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 上野淳 | 代表取締役社長 | 2002年精工技研入社。大連精工技研有限公司副総経理、経営企画室長などを経て、2019年常務取締役。2024年より現職。 |
| 來関明 | 専務取締役光学製品事業管掌 | 静岡大学工学部助教授などを経て、杭州精工技研有限公司総経理。光学製品事業本部長、常務取締役等を経て、2024年より現職。 |
| 斎藤祐司 | 取締役管理部長 | 2000年精工技研入社。経営企画室経営企画チームリーダー、管理本部管理部副部長などを経て、2013年管理部長。2024年より現職。 |
| 角野清行 | 取締役機器事業部長 | 2002年精工技研入社。光製品グループ営業チームリーダー、事業本部営業統括部長、事業本部機器事業推進部長等を経て、2024年より現職。 |
| 森保彦 | 取締役(監査等委員) | 1974年不動建設入社。同社経営管理本部人事部長を経て、2002年精工技研入社。管理グループリーダー等を経て、2016年より現職。 |
社外取締役は、谷田貝豊彦(筑波大学名誉教授)、森川有理(グローバルセンセーション代表)、相場俊夫(相場公認会計士事務所開設)、三好慶(三好総合法律事務所副所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「精機関連」および「光製品関連」事業を展開しています。
■精機関連
主に自動車用部品や電子機器、事務用部品などの精密成形品のほか、成形品を効率的に量産するための各種精密金型、精密金属部品などの開発・製造を行っています。自動車向けセンサー関連部品や各種コネクタなども幅広く手掛けており、同社の精密加工・精密成形技術が活かされています。
収益は、顧客である自動車関連メーカーや電子機器メーカーに対して製品を引き渡し、その対価として販売代金を受け取るモデルです。運営は同社をはじめ、国内子会社の不二電子工業やエムジー、海外販売を担う米国およびドイツの現地法人などが行っています。
■光製品関連
データセンターなどで利用される光コネクタや光コネクタ付コード、光減衰器、フェルールのほか、光コネクタ研磨機や光部品形状測定装置などの開発・製造を行っています。また、通信以外の用途にも光伝送技術や光学設計技術を応用し、光電界センサーや超小型樹脂レンズなども提供しています。
収益は、通信インフラ事業者やデータセンター関連企業などに光通信用部品や製造機器を販売し、その対価を受け取るモデルです。開発および運営は同社のほか、中国の杭州精工技研有限公司や大連精工技研有限公司、精工訊捷光電(杭州)有限公司などの海外子会社が中心となって行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の連結業績を見ると、堅調な推移から直近2期で急激な成長を遂げています。特に当期は生成AIの普及拡大を背景としたデータセンター向け光通信部品の需要急増により、売上高が前期比約1.5倍、経常利益が約2.7倍となる大幅な増収増益を達成しました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 162億円 | 163億円 | 158億円 | 200億円 | 301億円 |
| 経常利益 | 16億円 | 16億円 | 13億円 | 30億円 | 81億円 |
| 利益率(%) | 10.1% | 9.9% | 8.0% | 14.9% | 27.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 12億円 | 11億円 | 8億円 | 22億円 | 62億円 |
■(2) 損益計算書
大幅な売上拡大に伴い、売上総利益が倍増し、売上総利益率は36.5%から46.7%へと10ポイント以上改善しました。営業利益率も大きく上昇しており、付加価値の高い製品の売上増加などによって高収益体質が強まっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 200億円 | 301億円 |
| 売上総利益 | 73億円 | 141億円 |
| 売上総利益率(%) | 36.5% | 46.7% |
| 営業利益 | 28億円 | 77億円 |
| 営業利益率(%) | 14.1% | 25.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が17億円(構成比27%)、賞与が9億円(同14%)、販売手数料が8億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、精機関連は車載用センサー関連部品や新規子会社の損益寄与により堅調に推移しました。光製品関連は、データセンター向けの光コネクタや関連装置の需要が急増したことを背景に、前期比で約2倍へと大きく拡大しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 精機関連 | 92億円 | 100億円 |
| 光製品関連 | 108億円 | 201億円 |
| 連結(合計) | 200億円 | 301億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 31億円 | 55億円 |
| 投資CF | 10億円 | -9億円 |
| 財務CF | -20億円 | -7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.1%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も81.2%といずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「すぐれた技術と独創性で質の高い商品を供給し、社会の進歩発展に貢献して、会社の成長と社員の幸福を追求する」を経営理念に掲げています。また、長期的に目指す企業像として「社会に必要とされる企業」を掲げ、社会課題解決への貢献を通して存在感のある企業グループとなるよう努めています。
■(2) 企業文化
「精密加工」「精密成形」「光学技術」を技術的な基盤としています。環境の変化を自らの成長の機会に転換し、いかなる事業環境下でも企業価値を向上させることのできる強固な経営基盤の確立を重視しています。また、多様な人材が健康に活き活きと働ける環境づくりや、風通しの良い組織風土の醸成にも取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
5か年の中期経営計画「マスタープラン2022」を推進しており、社会の維持継続や進歩発展への貢献を通じて、長期的視点での企業価値の向上を目指しています。具体的な数値目標として、以下を掲げています。
・2027年3月期の売上目標250億円、営業利益33億円(当期で1年前倒し達成)
・2027年3月期の連結売上高に占める新製品比率を30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「マスタープラン2022」において、市場環境の変化を迅速に読み取り的確な対応策を実行するため、4つの重点施策に取り組んでいます。
・顧客とのコミュニケーションを通じた接点の活性化
・成長市場に向けた新製品・新技術開発の加速
・自動化等による生産効率向上とものづくり力の強化
・サステナビリティ活動を通した経営基盤の強化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人材」を最も重要な経営資本と位置づけ、多様なバックグラウンドを持つ従業員が能力を最大限に発揮し、組織として高い付加価値を創出し続けることを目指しています。教育研修の充実や次世代リーダー育成を通じ、高い専門性と主体性を備えたプロフェッショナル人材の育成を推進し、適材適所の配置で成長機会の最大化を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.7歳 | 19.3年 | 7,778,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の取引先への依存
車載用インサート成形品の多くをデンソーに販売しており、連結売上高に占める割合が17.7%となっています。同社に対する売上依存度が高いことから、同社の経営状況の変化や事業方針の変更、関係性に変化が生じた場合には業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(2) 新製品・新技術の開発動向
情報通信や自動車などの市場は変化が速く、将来のニーズを先取りした革新的な製品開発が不可欠です。市場の変化を的確に予測できず、魅力ある新製品を開発できない場合や、既存製品が陳腐化するような技術革新が生じた場合には、競争力が低下する恐れがあります。
■(3) 調達活動を通じた部品供給
生産に必要な原材料を安定的に確保するため複数のサプライヤーから調達していますが、一部の限られたサプライヤーに依存する材料も存在します。災害や新型感染症、倒産等で供給が中断したり、需要急増で供給が滞った場合、生産活動に影響を及ぼす可能性があります。



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