#記事タイトル:日本金銭機械転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社日本金銭機械 の有価証券報告書(第71期、自 2023年4月1日 至 2024年3月31日、2024年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本金銭機械ってどんな会社?
貨幣処理機器や遊技場向機器の開発・製造・販売を行い、グローバルに事業を展開する金銭機械メーカーです。
■(1) 会社概要
1955年に日本金銭機械として設立され、1969年に貨幣処理機器の製造販売を開始しました。1988年には遊技場向機器事業へ参入し、米国子会社を設立するなど海外展開を推進。2004年に東証および大証一部へ指定されました。2014年にはFUTURELOGIC GROUP, LLC.を子会社化し、事業を拡大しています。
連結従業員数は564名、単体では253名体制です。筆頭株主は創業家出身の上東洋次郎氏が代表を務める上東興産株式会社で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 上東興産 | 16.57% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.82% |
| 上東洋次郎 | 5.18% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は上東洋次郎氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 上東 洋次郎 | 代表取締役社長 | 1984年入社。JCM GOLD (H.K.)LTD.社長、海外統轄本部長等を経て2007年より現職。 |
| 高垣 豪 | 常務取締役 | 1997年入社。管理本部総務部長、経営企画本部長等を経て2019年より現職。 |
| 井内 良洋 | 取締役 | 2004年入社。海外統括本部海外統轄部長、JCM GOLD (H.K.)LTD.社長等を経て2018年より現職。 |
| 中谷 議人 | 取締役 | 1990年入社。生産本部長、第2研究開発本部長等を経て2019年より現職。 |
| 今井 崇智 | 取締役 | 2001年入社。財務経理本部副本部長、経営企画本部副本部長等を経て2023年より現職。 |
| 寺岡 路正 | 取締役(常勤監査等委員) | 1980年入社。管理本部長、リスク管理統轄等を歴任し、常勤監査役を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、吉川興治(元神戸地方検察庁検事正・弁護士)、猿渡辰彦(元TOTO副社長)、佐藤陽子(公認会計士)、米倉裕樹(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「グローバルゲーミング」「海外コマーシャル」「国内コマーシャル」「遊技場向機器」事業を展開しています。
■(1) グローバルゲーミング
カジノホールおよびOEM顧客向けに、紙幣識別機・還流ユニットやゲーミング用プリンター製品等を販売しています。
製品の販売代金等を収益源としています。運営は主に日本金銭機械、JCM AMERICAN CORP.、JCM EUROPE GMBH.等が行っています。
■(2) 海外コマーシャル
海外の金融・流通・交通市場向けに、紙幣識別機・還流ユニット等を販売しています。
製品の販売代金等を収益源としています。運営は各海外販売子会社等が行っています。
■(3) 国内コマーシャル
国内の金融・流通・交通市場向けに、紙幣・硬貨還流ユニット等を販売しています。
製品の販売代金等を収益源としています。運営は日本金銭機械が行っています。
■(4) 遊技場向機器
パチンコホール向けに、メダル自動補給システム、紙幣搬送システム、玉貸機、スマート遊技機専用ユニット等を販売しています。
機器の販売代金や設置工事費等を収益源としています。運営は日本金銭機械が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期までは赤字を計上していましたが、2022年3月期以降は黒字転換し、回復基調にあります。直近の2024年3月期は大幅な増収増益を達成し、利益率も二桁台に乗せました。
| 項目 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 261億円 | 170億円 | 200億円 | 253億円 | 316億円 |
| 経常利益 | -9億円 | -29億円 | 14億円 | 13億円 | 36億円 |
| 利益率(%) | -3.3% | -17.1% | 6.9% | 5.0% | 11.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -11億円 | -26億円 | -1億円 | 18億円 | 32億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が増加する中、売上原価率の改善により売上総利益が拡大しています。販売費及び一般管理費も増加していますが、増収効果により営業利益率は大きく改善しました。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 253億円 | 316億円 |
| 売上総利益 | 90億円 | 122億円 |
| 売上総利益率(%) | 35.6% | 38.6% |
| 営業利益 | 6億円 | 28億円 |
| 営業利益率(%) | 2.5% | 9.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与が33億円(構成比36%)、支払手数料が9億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで増収となりました。特にグローバルゲーミングと遊技場向機器が利益を牽引しています。国内コマーシャルも増益となりましたが、海外コマーシャルは部材価格高騰の影響等で損失を計上しました。
| 区分 | 売上(2023年3月期) | 売上(2024年3月期) | 利益(2023年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| グローバルゲーミング | 146億円 | 173億円 | 16億円 | 28億円 | 16.2% |
| 海外コマーシャル | 45億円 | 59億円 | 0.4億円 | -2億円 | - |
| 国内コマーシャル | 19億円 | 27億円 | 1億円 | 5億円 | 19.5% |
| 遊技場向機器 | 43億円 | 57億円 | -1億円 | 10億円 | 17.5% |
| 連結(合計) | 253億円 | 316億円 | 6億円 | 28億円 | 9.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -8億円 | -49億円 |
| 投資CF | 5億円 | -4億円 |
| 財務CF | -14億円 | 41億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「JCM Global Vision 2032」において、Purposeとして「幸せを世界に弘める」を掲げています。Missionには「変わりゆく世界のニーズに応え、社会に貢献し続ける」「コアテクノロジーを革新させ、新たな価値を創造し続ける」を設定し、豊かで持続性のある社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
創業者の想い「仕事のはじめに、人間ありき」を元に再定義された「JCM Spirit」が根付いています。これは同社に根付く企業文化・理念であり、お互いを尊重し合いながら仕事を進める姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年3月期を最終年度とする中期経営計画「JCM Global Vision 2032」を策定しています。なお、2025年3月期の業績予想が既に最終年度の数値目標を上回る状況にあるため、現在計画の見直しを進めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
マネートランザクション分野での信頼性維持と新事業領域でのブランド確立を基本方針としています。既存技術の他市場展開や海外コマーシャル市場の拡大、キャッシュレス社会への対応を進めるとともに、先行投資による新たな事業領域の構築を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員がお互いを尊重し合い、個性を発揮して成長し続けること、会社がその機会を提供することを基本方針としています。「ダイバーシティの拡充」「中核人材の育成」「多様な働き方の実現」を戦略の中心に据え、次世代リーダーの育成や女性活躍推進に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 42.7歳 | 15.5年 | 7,056,000円 |
※平均年間給与は、基準外賃金及び賞与を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.0% |
| 男性育児休業取得率 | 60.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 55.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 64.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 93.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用に占める女性比率(38.8%)、正社員に占める女性従業員比率(16.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況とゲーミング市場の動向
売上高の重要部分を占めるゲーミング市場向け製品の需要は、各国の経済状況や紛争・テロ等の世界情勢、個人の消費マインドに左右されます。これらの要因により市場の景況感が悪化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 為替変動の影響
海外向け売上の比率が高く、各国の通貨で取引を行っています。為替予約等でリスク回避に努めていますが、予期せぬ為替レートの変動は、円換算後の業績や外貨建資産の評価に影響を与える可能性があります。
■(3) 特定製品への依存と技術革新
紙幣識別機ユニットが主力製品であり、ゲーミング市場への依存度が高くなっています。競合他社との競争激化や、世界的なキャッシュレス化の急速な進展により需要が大きく変動した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(4) ゲーミング関連法規制への対応
カジノ等のゲーミング業界は厳格な法規制下にあり、製品販売には各国の許認可が必要です。関連法令の変更や、万一の法令違反による許認可取り消し等が発生した場合、製品販売ができなくなり業績に重大な影響を与える可能性があります。



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