野村マイクロ・サイエンス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

野村マイクロ・サイエンス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する超純水製造装置メーカー。半導体や製薬業界向けに超純水製造装置の設計・施工・販売を行う水処理装置事業を主力としています。2025年3月期の連結業績は、半導体関連企業の設備投資拡大を背景に、売上高964億円(前期比32.0%増)、経常利益134億円(同23.9%増)と増収増益でした。


※本記事は、野村マイクロ・サイエンス株式会社 の有価証券報告書(第56期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 野村マイクロ・サイエンスってどんな会社?


超純水製造装置を主力とし、半導体や製薬など高度な水質が求められる産業を支える水処理のスペシャリストです。

(1) 会社概要


1969年に米国GE社開発の製品販売を目的に設立され、1974年に超純水技術を導入して製造システムへ進出しました。1983年の韓国市場進出を皮切りに台湾、米国、中国へ展開し、アジアを中心とした海外事業を拡大しています。2007年にJASDAQへ上場し、2021年に東証市場第一部へ指定替えとなりました。

連結従業員数は580名、単体では406名です。筆頭株主は創業時の事業統合元である北興化学工業で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。また、第3位にはりそな銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
北興化学工業 11.49%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 7.86%
りそな銀行 3.17%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長執行役員は内田 誠氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
内田 誠 代表取締役社長執行役員 三菱レイヨン(現三菱ケミカル)入社。2018年に野村マイクロ・サイエンス入社。常務、専務、副社長を経て2023年4月より現職。
西江勝治 取締役常務執行役員営業本部長(韓国、アメリカ担当) アクアシステム、橘工業を経て2000年に入社。海外営業部長、野村マイクロ・サイエンスUSA代表などを歴任し2023年4月より現職。
西村司朗 取締役執行役員管理本部長兼資材部担当 広島トヨペットを経て1991年に入社。資材部長などを経て2023年4月管理本部長、同年6月より現職。
井上嘉成 取締役執行役員エンンジニアリング本部長兼営業本部副本部長(台湾・その他地域担当) 1996年入社。中・台営業部長、国内エンジニアリング部長などを歴任。野村微科學工程股份有限公司董事長を経て2025年6月より現職。
千田豊作 取締役 北興化学工業を経て1973年に入社。2000年代表取締役社長、2014年会長兼社長、2020年取締役会長を経て2025年6月より現職。
瀬下 忍 取締役(常勤監査等委員) 山一證券投資信託販売、オリンピックを経て2007年に入社。総務部長、執行役員管理本部副本部長などを経て2023年6月より現職。


社外取締役は、田中伸介(元三菱重工冷熱執行役員)、新島由未子(弁護士)、片岡久依(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「水処理装置事業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) 水処理装置事業


半導体、FPD(フラットパネルディスプレイ)および製薬業界向けを中心に、超純水製造装置や排水・回収処理装置の設計・施工・販売を行っています。また、納入した装置のメンテナンスや消耗品の販売、水質分析の受託も手掛けています。顧客は国内外の電子デバイスメーカーや製薬会社などです。

収益は、装置の販売代金に加え、メンテナンス料、消耗品販売、およびBOOM(Build Own Operate and Maintenance)契約に基づく超純水使用料から構成されます。運営は、野村マイクロ・サイエンスおよび韓国、中国、米国、台湾、シンガポールの各現地法人が行っています。

(2) 其他の事業


国内および海外のユーザーに対し、超純水製造装置の安定運転に寄与する高純度薬品や、化学薬品・ガス等の移送に使用される配管材料の販売を行っています。

収益は、高純度薬品および配管材料の販売代金により構成されています。運営は主に野村マイクロ・サイエンスおよびアグループラスチックが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間において、売上高は304億円から964億円へと3倍以上に拡大し、5期連続の増収を達成しています。利益面でも、経常利益が36億円から134億円へと大幅に伸長しました。利益率は高水準を維持しており、特に直近2期は売上の急拡大に伴い利益額も大きく増加しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 304億円 319億円 496億円 730億円 964億円
経常利益 36億円 46億円 64億円 108億円 134億円
利益率(%) 12.0% 14.4% 12.9% 14.8% 13.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 26億円 21億円 38億円 48億円

(2) 損益計算書


前期と比較して売上高、各利益ともに大幅に増加しています。売上高は約32%増、営業利益は約44%増となり、営業利益率は1.3ポイント改善しました。大型案件の順調な進捗が増収増益に寄与しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 730億円 964億円
売上総利益 154億円 211億円
売上総利益率(%) 21.1% 21.9%
営業利益 106億円 154億円
営業利益率(%) 14.6% 16.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が17億円(構成比29%)、役員報酬が6億円(同10%)を占めています。売上原価に関しては、その内訳は開示されていません。

(3) セグメント収益


米国と日本のセグメントが大幅な増収となり、全社の成長を牽引しました。特に米国は売上が1.5倍以上に拡大しています。中国も増収となりましたが、韓国と台湾は前期の大型案件の反動により減収となりました。新たに設立された「その他(シンガポール)」セグメントは当期は営業活動を開始していません。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
日本 175億円 265億円
韓国 52億円 32億円
中国 72億円 99億円
台湾 94億円 43億円
米国 337億円 524億円
その他 - -
調整額 - -
連結(合計) 730億円 964億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の収益性は高いものの、売上債権の急増により営業CFがマイナスとなり、それを借入等の財務CFで補う「勝負型」のキャッシュ・フロー状態です。積極的な事業拡大に伴う運転資金需要に対応しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -187億円 -202億円
投資CF 4億円 -27億円
財務CF 175億円 272億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は31.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、独自の技術と研究開発により社会と環境に貢献し、顧客と共に栄えることを目指しています。また、国際的視野を持ち自己向上に挑戦するインテリジェントな企業であること、適正利潤を通じて全社員の生活向上と福祉充実を図ることを理念とし、最適な水処理ソリューションを提供します。

(2) 企業文化


「誠意(信)と協調(和)」を基本とし、社員一人ひとりの個性を尊重しながら全力を発揮できる「楽しい会社」であることを重視しています。また、いたずらに規模の拡大を追わず、社員の生活と福祉の充実を大切にする価値観を持っています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「TTT-26」を策定し、アジアを中心とした半導体・製薬工場向け超純水製造装置の卓越した会社を目指しています。また、経済的価値と社会的価値を同時に創造するサステナビリティ経営の実行を掲げています。

* 売上高1,010億円
* 営業利益146億円

(4) 成長戦略と重点施策


「営業力の強化」「エンジニアリングプロセスの改革」「研究開発の加速」等を推進し、企業価値拡大を目指します。半導体生産拠点の分散化に対応し、シンガポールへの現地法人設立やインドでの新規受注など、東南アジア地域での活動を拡大します。また、製薬市場では北陸地域への拠点配置や新製品の投入により受注強化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長のためには人材育成が不可欠とし、階層別研修や専門知識セミナーへの投資を積極的に行っています。また、多様な人材の活躍を目指し、現地採用や女性・障がい者の雇用促進、シニア人材の活用などのダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。さらに、働きがいのある職場環境整備や健康確保にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.5歳 11.9年 9,410,443円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.7%
男性育児休業取得率 40.0%
男女賃金差異(全労働者) 70.6%
男女賃金差異(正規雇用) 73.5%
男女賃金差異(非正規) 42.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国人従業員比率(24.7%)、新卒採用女性比率(22.2%)、障がい者雇用率(2.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定業種・顧客への依存


主力事業である水処理装置事業は半導体市場が主要マーケットであり、主要顧客の設備投資動向の影響を強く受けます。予期せぬ市場変動等による投資計画の延期や凍結があった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、顧客動向の情報収集や製薬関連分野の強化、メンテナンス受注の促進により対応しています。

(2) 海外事業


海外売上高比率が概ね7割を占めており、アジアを中心に事業を展開しています。各国の政治・経済の混乱、社会情勢の変化、予期せぬ法令変更等のリスクに加え、米中貿易摩擦や地政学リスクの高まりが懸念されます。これに対し、現地法人を通じた情報収集や専門家への確認を行い、国際情勢や規制の影響を受けにくい体制構築を進めています。

(3) サプライチェーン


資材の外部調達や工事の外部委託を行っているため、自然災害や地政学リスク等により供給遅延や価格高騰が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、サプライヤー評価や複数購買、計画的な購入、代替品の検討などを通じて安定供給の強化を図るとともに、コスト上昇時には販売価格への転嫁に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。