野村マイクロ・サイエンス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

野村マイクロ・サイエンス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

野村マイクロ・サイエンスは東京証券取引所プライム市場に上場し、半導体や製薬工場向けの超純水製造装置などの設計・施工・販売を主力事業としています。直近の業績では、前期の大型水処理装置案件の反動などにより売上高・利益ともに減少しており、減収減益のトレンドとなっています。東南アジア等への展開も進めています。


※本記事は、野村マイクロ・サイエンス株式会社の有価証券報告書(第57期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 野村マイクロ・サイエンスってどんな会社?


半導体や製薬向け超純水製造装置の設計・施工・販売を主力とし、アジア等海外展開も進める企業です。

(1) 会社概要


1969年に米国GE社開発のろ過膜販売を目的に設立されました。1974年に超純水製造システムへ進出し、1983年の韓国市場をはじめ台湾や米国などに進出して海外展開を拡大しました。2007年にジャスダック証券取引所へ上場後、2022年に東京証券取引所プライム市場へ移行し、事業基盤を強化しています。

従業員数は連結で623名、単体で426名です。大株主として、筆頭株主は事業会社の北興化学工業で、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は金融機関のりそな銀行となっています。

氏名 持株比率
北興化学工業 10.97%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.05%
りそな銀行 3.13%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長執行役員は内田誠氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
内田誠 代表取締役社長執行役員 1983年三菱レイヨン入社。2018年同社入社。常務取締役、代表取締役副社長等を経て2023年4月より現職。
西江勝治 取締役常務執行役員営業本部長(韓国、米国担当) 1996年アクアシステム入社。2000年同社入社。海外営業部長、韓国営業部長等を経て2019年に取締役就任。2025年4月より現職。
西村司朗 取締役執行役員管理本部長兼資材部担当 1985年広島トヨペット入社。1991年同社入社。資材部長等を経て、2023年4月に管理本部長、同年6月に取締役就任。2025年6月より現職。
井上嘉成 取締役執行役員エンジニアリング本部長兼営業本部副本部長(台湾・その他地域担当) 1996年同社入社。中・台営業部長等を経て2024年にエンジニアリング本部長。2025年4月に営業本部副本部長、同年6月より現職。
千田豊作 取締役 1958年北興化学工業入社。1973年同社入社。1986年に取締役、2000年に代表取締役社長就任。2020年に取締役会長を経て2025年6月より現職。
瀬下忍 取締役(常勤監査等委員) 1979年山一證券投資信託販売入社。2007年同社入社。総務部長などを経て2023年6月より現職。


社外取締役は、田中伸介(元三菱重工業北海道支社長)、新島由未子(虎ノ門法律経済事務所山田グループ所属)、片岡久依(片岡久依公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「水処理装置事業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) 水処理装置事業


半導体、フラットパネルディスプレイ、製薬向けを中心に、超純水製造装置等の設計・施工・販売を行っています。また、納入した装置のメンテナンスや各種消耗品の販売、水質分析の受託なども提供しています。

顧客に超純水装置を提供し、使用した超純水の使用料を受け取るとともに、装置の運転管理やメンテナンスを同社が行うビジネスモデルも展開しています。これらの事業運営は同社および海外の各連結子会社が担っています。

(2) その他の事業


超純水製造装置を構成する各種装置の安定化運転などに資する高純度薬品や、化学薬品、上下水、ガス等の移送に使用される配管材料等の販売を行っています。

国内外のユーザーに対してこれらの製品を販売し、その対価として販売代金を受け取る収益モデルとなっています。運営は主に同社およびアグループラスチックが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績を見ると、売上高および経常利益は継続的な成長を遂げてきましたが、直近の事業年度では大型案件の一巡などにより大幅な減収減益となっています。それでも利益率は二桁を維持しており、一定の収益力を確保しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 319億円 496億円 730億円 964億円 562億円
経常利益 46億円 64億円 108億円 134億円 56億円
利益率(%) 14.4% 12.9% 14.8% 13.9% 10.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 26億円 21億円 38億円 48億円 42億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な減少に伴い、売上総利益および営業利益も大きく減少しています。売上総利益率はわずかに上昇したものの、営業利益率は低下しており、固定費負担の影響がうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 964億円 562億円
売上総利益 211億円 127億円
売上総利益率(%) 21.9% 22.6%
営業利益 154億円 67億円
営業利益率(%) 16.0% 11.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が15億円(構成比26%)、役員報酬が7億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本市場は堅調に推移していますが、米国市場では前期までの大型案件の反動により売上高が大きく減少しました。一方で、韓国市場は大型案件の進捗により大幅な増収を記録するなど、地域ごとに業績の動向が異なっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
日本 265億円 258億円
韓国 32億円 92億円
中国 99億円 77億円
台湾 43億円 35億円
米国 524億円 101億円
その他 - 0.2億円
連結(合計) 964億円 562億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -202億円 44億円
投資CF -27億円 -11億円
財務CF 272億円 -69億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「常に研究開発に励み独自の技術で社会と環境に貢献し顧客とともに栄える会社」「誠意と協調を基本とし各自の個性を尊重し全力を発揮出来る楽しい会社」「国際的視野にたち自らの向上にチャレンジするインテリジェントな会社」「いたずらにスケールメリットを求めず適正利潤により全社員の生活向上と福祉の充実を図れる会社」を経営理念に掲げ、最適な水処理ソリューションを提供しています。

(2) 企業文化


経営理念に掲げられた「誠意(信)と協調(和)」を基本とする姿勢や、「各自の個性を尊重し合いながら、全力を発揮出来る楽しい会社」といった価値観が企業文化の根底にあります。また、国際的な視野を持ち、自らの向上にチャレンジするインテリジェントな組織を目指しており、技術革新を通じた環境貢献や社会的価値の創造を重んじる文化が形成されています。

(3) 経営計画・目標


2023年度に中期経営計画「TTT-26(Together Toward Transformation-26)」を策定し、2026年度の経営目標の達成を目指しています。アジアを中心とした半導体・製薬工場向け超純水製造装置の卓越した会社を目指すとともに、サステナビリティ経営の実行をビジョンに掲げています。

* 売上高1,010億円
* 営業利益146億円
* ROE25%以上
* ROIC22%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画達成に向け、「営業力の強化」「エンジニアリングプロセスの改革」「研究開発の加速」「人的資本強化」「環境問題への取組み」を重点施策として推進しています。東南アジア地域への活動地域拡大や、製薬会社向け市場の開拓を進めるとともに、プレファブ施工等によるプロセス改革で業務効率化と納期短縮を図ります。また、次世代技術の研究開発や優秀な人材の採用・育成にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「職場環境への配慮と人材育成」を重要課題とし、安全で働きがいのある職場環境を整備しています。社員が能力を最大限に発揮できるよう、階層別研修や専門知識のセミナー受講など人的資本への積極的な投資を行っています。また、現地採用の推進や女性・障がい者・シニア層など多様な人材が活躍できるダイバーシティの推進にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.4歳 11.5年 8,902,711円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.5%
男性育児休業取得率 90.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 74.3%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 75.9%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 51.2%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国人従業員比率(27.9%)、外国人管理職比率(28.9%)、新卒採用女性比率(28.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定業種・顧客への依存


同社グループの主力である水処理装置事業は半導体市場が主要マーケットであり、主要顧客の投資動向による需要の変動を受けやすい状況にあります。予期せぬ市場変動や顧客の設備投資計画の延期・凍結などが発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外事業の展開と地政学リスク


海外売上高比率が概ね70%を占めており、政治・経済の混乱や法令・規制の変更などが業績に影響するリスクがあります。近年では米中貿易摩擦による輸出入規制の強化や、ロシア・ウクライナ情勢、台湾・中東情勢などの地政学リスクが高まっています。

(3) サプライチェーンの寸断や資材価格の高騰


機器等の資材調達や外部委託する装置の据付において、自然災害や感染症等により資材がタイムリーに供給されないリスクがあります。また、地政学リスクや為替変動による原材料・エネルギー価格の高騰が生じた場合、収益を圧迫する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。