※本記事は、株式会社戸上電機製作所 の有価証券報告書(第150期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 戸上電機製作所ってどんな会社?
戸上電機製作所は、配電用制御機器やシステム機器等の製造販売を主力とし、電力の安定供給を支える老舗メーカーです。
■(1) 会社概要
1925年3月、創業者戸上信文が自動配電装置の製作販売を目的に設立しました。1961年に東証二部へ上場し、同年末には一部指定を受けましたが、後に二部へ指定替えとなり、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。2025年3月には創立100周年を迎え、次の100年に向けた新たなスタートを切っています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は1,094名、単体では461名です。筆頭株主は創業家資産管理会社とみられる戸上ビルで、第2位は取引先持株会、第3位は主要取引銀行の三井住友銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 戸上ビル | 9.92% |
| 戸上電機取引先持株会 | 6.18% |
| 三井住友銀行 | 4.56% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は戸上信一氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 戸上 信一 | 代表取締役社長 | 1985年入社。1993年より社長を務め、2015年より現職。 |
| 堤 俊樹 | 取締役製造本部長 | 1990年入社。環境事業部長、製造本部長を経て、2025年より現職。 |
| 野中 政則 | 取締役技術本部長 | 1987年入社。製品開発部長、戸上電機ソフト代表取締役を経て、2020年より現職。 |
| 仁部 和浩 | 取締役管理本部長 | 1989年入社。総合企画部長を経て、2024年より現職。 |
| 桃崎 泰彦 | 取締役営業本部長 | 1990年入社。東京戸上電機販売代表取締役、第一営業部長を経て、2024年より現職。 |
| 蒲原 啓輔 | 取締役海外事業推進部長 | 1991年入社。グローバル営業部長を経て、2025年より現職。 |
| 戸上 孝弘 | 取締役(常勤監査等委員) | 1991年入社。資材部資材グループマネージャー、総合企画部次長を経て、2021年より現職。 |
社外取締役は、田中恵子(弁護士法人安永法律事務所共同代表)、古谷宏(元佐賀県教育委員会教育長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「産業用配電機器事業」「プラスチック成形加工事業」「金属加工事業」および「その他」事業を展開しています。
■産業用配電機器事業
電力インフラを支える電子制御器、配電用自動開閉器、配電盤およびシステム機器などを製造・販売しており、同社グループの主力事業です。電力会社や一般産業向けに製品を提供しています。
収益は顧客への製品販売やシステム工事等から得ています。運営は主に同社が行い、製造を子会社の戸上コントロール、戸上電子(常熟)、戸上電気(蘇州)、戸上デンソーなどが担当し、販売を東京戸上電機販売などが担う体制です。
■プラスチック成形加工事業
自動車業界向けを中心に、プラスチック成形加工品の製造・販売を行っています。
収益は自動車部品メーカー等への製品販売から得ています。運営は子会社の戸上化成が行っています。
■金属加工事業
産業用機械向けの金属加工品を製造・販売しています。
収益は産業機械メーカー等への製品販売から得ています。運営は子会社の戸上メタリックスが行っています。
■その他
上記セグメントに含まれない事業として、金型加工やソフトウェア開発などを行っています。
収益は金型加工やシステム開発等の対価として得ています。運営は戸上化成(金型加工)および戸上電機ソフト(ソフトウェア開発)が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 226億円 | 236億円 | 248億円 | 267億円 | 276億円 |
| 経常利益 | 19億円 | 18億円 | 21億円 | 30億円 | 36億円 |
| 利益率(%) | 8.3% | 7.6% | 8.5% | 11.3% | 13.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 13億円 | 13億円 | 14億円 | 21億円 | 24億円 |
直近5期間において、売上高は着実に増加傾向にあります。特に2024年3月期以降は利益率が10%を超え、収益性が大きく向上しています。2025年3月期は売上高276億円、経常利益36億円となり、過去最高の利益水準を更新するなど、好調な業績推移を示しています。
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較します。売上高の増加に伴い売上総利益が増加し、売上総利益率も改善しています。販管費も増加していますが、増収効果により営業利益率は10.1%から12.2%へと上昇しており、収益力の向上が確認できます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 267億円 | 276億円 |
| 売上総利益 | 62億円 | 72億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.2% | 25.9% |
| 営業利益 | 27億円 | 34億円 |
| 営業利益率(%) | 10.1% | 12.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が9億円(構成比23%)、発送費が4億円(同12%)を占めています。売上原価については、大部分が製造費用で構成されています。
■(3) セグメント収益
主力の産業用配電機器事業は、配電用自動開閉器などが好調で増収増益となり、全社利益を牽引しています。プラスチック成形加工事業も増収増益を確保しましたが、金属加工事業は産業用機械の需要減により減収減益となりました。その他事業は大幅な増収増益となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 産業用配電機器事業 | 220億円 | 233億円 | 35億円 | 44億円 | 18.9% |
| プラスチック成形加工事業 | 30億円 | 30億円 | 0.3億円 | 0.6億円 | 2.0% |
| 金属加工事業 | 17億円 | 12億円 | 1.7億円 | 1.3億円 | 10.9% |
| その他 | 0.6億円 | 1.4億円 | 0.1億円 | 0.1億円 | 9.8% |
| 調整額 | -20億円 | -21億円 | -10億円 | -12億円 | - |
| 連結(合計) | 267億円 | 276億円 | 27億円 | 34億円 | 12.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
戸上電機製作所は、営業活動により潤沢な資金を創出し、事業基盤を強化しています。営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益の計上により増加しました。一方で、投資活動では、将来の成長に向けた有形固定資産の取得に資金を使用しました。財務活動では、株主還元としての配当金の支払い等が行われました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 21億円 | 28億円 |
| 投資CF | -15億円 | -16億円 |
| 財務CF | -4億円 | -7億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「社会を、地球を、未来を豊かに。」という企業理念を掲げています。配電・制御機器の総合メーカーとしての伝統のもと、事業活動を通じた社会課題の解決により、持続可能な社会の実現と中長期的な企業価値の向上に取り組む方針です。具体的には、「暮らしの安心」「環境への配慮」「従業員の幸福」の3つを重視しています。
■(2) 企業文化
創立100周年を迎え、「さぁ 挑もう つくろう かえていこう」をスローガンに掲げています。次の100年に向けてグループ全体で挑戦し続ける姿勢を打ち出しており、従業員には「行動力・成長力・創造力・基礎力・共有力」の5つの力を身につけた自律した人財への成長を求めています。多様性を尊重し、いきいきと働ける環境づくりを重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画を基本とし、持続可能な社会の実現と中長期的な企業価値の向上を目指しています。具体的な数値目標は明記されていませんが、販売価格の適正化や人財確保を行いながら、コストダウンや生産体制の最適化、新規事業の創出に取り組むことで、収益性の向上と事業基盤の強化を図る計画です。
■(4) 成長戦略と重点施策
「既存事業の高収益化」「新規事業の創出、海外展開の加速」「人的資本の強化」を重点課題としています。既存事業では生産方式「TPW」の推進やDXによる効率化を図ります。新規事業では新分野への挑戦や米国市場を中心とした海外展開を加速させます。これらを支える基盤として、自律した人財の育成と職場環境の整備に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
企業理念に基づき、人間力と実務力を兼ね備えた自律した人財の育成を目指しています。専門分野や階層に応じた教育プログラムとOJTを融合させるとともに、自己啓発を推奨しています。また、多様性を尊重し、ワークライフバランスを重視した、安全で健康的な職場環境の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.0歳 | 15.4年 | 6,378,195円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.6% |
| 男性育児休業取得率 | 71.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 74.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 87.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員の採用比率(32.4%)、障がい者雇用比率(1.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 設備投資の実施について
業界の技術動向や需給バランスの変化により、計画外の大規模な設備更新が必要となる可能性があります。計画的な更新を進めていますが、予期せぬ大規模更新が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 産業用配電機器事業への依存
売上・利益ともに産業用配電機器事業への依存度が高くなっています。主要顧客による設備投資の抑制など、同事業の市場環境が悪化した場合には、グループ全体の業績に大きな影響を与える可能性があります。
■(3) 価格競争について
高品質な製品を提供していますが、常に適正な利益を確保できる価格設定が可能とは限りません。今後、競合他社との価格競争がさらに激化した場合には、収益性が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 原材料等の調達リスク
製品に使用する原材料等を国内外から調達していますが、災害や地政学的リスクなどにより、急激な価格上昇や納期の遅延が発生する可能性があります。これにより、生産活動への支障やコスト増が生じ、業績に影響を与える可能性があります。



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