戸上電機製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

戸上電機製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

戸上電機製作所は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、産業用配電機器、プラスチック成形加工、金属加工を主力事業として展開しています。主力の配電用自動開閉器や電子制御器の需要が好調に推移し、直近の連結業績では増収増益を達成しました。既存事業の高収益化や海外展開の加速に注力しています。


※本記事は、株式会社戸上電機製作所の有価証券報告書(第151期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 戸上電機製作所ってどんな会社?

同社は配電・制御機器の総合メーカーとして、社会インフラを支える多様な製品を提供しています。

(1) 会社概要

同社は1925年に自動配電装置の製作販売を目的として設立されました。1961年に上場を果たし、1989年にはソフトウエア開発を担う子会社を設立しました。2004年以降は中国等に拠点を設け海外展開を推進し、2022年には東京証券取引所スタンダード市場へ移行しています。

現在の従業員数は連結で1105名、単体で461名です。筆頭株主は同社役員が代表を務める戸上ビルで、第2位は取引先を中心とした戸上電機取引先持株会、第3位は主要取引金融機関である三井住友銀行となっています。

氏名 持株比率
戸上ビル 10.32%
戸上電機取引先持株会 6.56%
三井住友銀行 4.74%

(2) 経営陣

同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は戸上信一氏が務めています。社外取締役は2名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
戸上信一 代表取締役社長 1985年同社入社。1987年戸上ビル代表取締役。1989年取締役を経て、1993年より現職。
堤俊樹 取締役製造本部長兼経営戦略室長 1990年同社入社。環境事業部長等を経て、2012年取締役製造本部長。2025年より現職。
野中政則 取締役技術本部長 1987年同社入社。製品開発部長等を経て、2020年執行役員技術本部長。同年より現職。
仁部和浩 取締役管理本部長 1989年同社入社。総合企画部長等を経て、2021年取締役管理本部長兼総合企画部長。2024年より現職。
桃崎泰彦 取締役営業本部長 1990年同社入社。東京戸上電機販売出向(代表取締役)等を経て、2022年取締役営業本部長兼第一営業部長。2024年より現職。
蒲原啓輔 取締役海外事業推進部長 1991年同社入社。海外事業推進部長等を経て、2024年執行役員海外事業推進部長兼経営戦略室長。2025年より現職。
戸上孝弘 取締役(常勤監査等委員) 1991年同社入社。大阪戸上ビル代表取締役。技術本部開発管理グループマネージャー等を経て、2021年より現職。


社外取締役は、田中恵子(弁護士)、古谷宏(元佐賀県教育委員会教育長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「産業用配電機器事業」「プラスチック成形加工事業」「金属加工事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 産業用配電機器事業

電子制御器、配電用自動開閉器、配電盤及びシステム機器などの製造・販売を行っています。主に電力会社や産業インフラ向けに安定した電力供給を支える製品を提供しています。

製品の引渡・検収時点等で顧客から対価を受け取る収益モデルです。運営は同社のほか、戸上コントロール、戸上デンソーなどが製造を担い、東京戸上電機販売が販売を行っています。

(2) プラスチック成形加工事業

自動車業界向けを中心としたプラスチック成形加工品の製造および販売を行っています。顧客のニーズに合わせた高品質な樹脂成形部品を供給しています。

製品を顧客に引き渡し、検収が完了した時点で製品代金を受け取る収益モデルとなっています。本事業の運営は、子会社である戸上化成が行っています。

(3) 金属加工事業

産業用機械向けの金属加工品の製造および販売を行っています。主に産業機械で使用される鋼板ケース部品などの加工・生産を手掛けています。

製品の引渡・検収時点で顧客から対価を受け取る収益モデルとなっています。本事業の運営は、子会社である戸上メタリックスが行っています。

(4) その他

報告セグメントに含まれない事業として、プラスチック成形加工事業に付随する金型加工や、ソフトウエアの開発・販売などを行っています。

金型加工品や開発したソフトウエアの引渡時などに収益を得るモデルとなっています。運営は、戸上化成および戸上電機ソフトが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

売上高は順調に拡大しており、直近の5期連続で増収を達成しています。利益面でも増益基調が続いており、直近の経常利益と当期利益はともに過去最高水準を記録するなど、収益性の高い事業運営が伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 236億円 248億円 267億円 276億円 307億円
経常利益 18億円 21億円 30億円 36億円 40億円
利益率(%) 7.6% 8.5% 11.3% 13.0% 13.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 12億円 19億円 20億円 22億円

(2) 損益計算書

売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も堅調に伸びています。売上総利益率および営業利益率は前年度と同水準を維持しており、安定した利益体質が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 276億円 307億円
売上総利益 72億円 78億円
売上総利益率(%) 25.9% 25.4%
営業利益 34億円 37億円
営業利益率(%) 12.2% 12.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料が9億円(構成比23%)、発送費が5億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益

主力の産業用配電機器事業は、電子制御器等の需要増により増収となりました。プラスチック成形加工事業や金属加工事業も堅調に推移し、全社の増収に貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
産業用配電機器事業 233億円 256億円
プラスチック成形加工事業 30億円 38億円
金属加工事業 12億円 12億円
その他 1億円 1億円
連結(合計) 276億円 307億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

本業の営業活動で安定したキャッシュを生み出しており、その資金を設備投資や自己株式の取得・配当などの財務活動に充当しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 28億円 24億円
投資CF -16億円 -12億円
財務CF -7億円 -17億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.5%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も72.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は、「社会を、地球を、未来を豊かに。」という企業理念を掲げています。配電・制御機器の総合メーカーとして築いてきた伝統のもと、事業活動を通じた社会課題の解決により、持続可能な社会の実現と中長期的な企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化

同社は、「さぁ 挑もう つくろう かえていこう」というスローガンのもと、長期的視座に立った価値創造プロセスに基づき、新たな価値創造に取り組む文化を持っています。また、従業員一人一人の多様な働き方を尊重し、安全で健康的な職場環境を整備することで、社会への活力を生み出すことを重視しています。

(3) 経営計画・目標

同社は、これまでの100年で培ってきた経営資本を活用し、次の100年に向けた新たな一歩を踏み出しています。既存事業の高収益化や海外展開の加速、新規事業の創出などを推進し、長期的視座に立った価値創造プロセスに基づく経営を行っています。

(4) 成長戦略と重点施策

同社は今後の成長戦略として、既存事業の高収益化、海外展開の加速、および人的資本の強化を重点施策として掲げています。生産方式「TPW」による効率化やDX推進を図るほか、米国市場への参入を本格化させます。また、多様な人材の活躍を支える環境整備にも注力しています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

同社は、「行動力・成長力・創造力・基礎力・共有力」の5つの力を身につけた自律した人材の育成を基本方針としています。OJTとOFF-JTを融合した教育プログラムを実践し、多様性を尊重する風土の醸成やワークライフバランスの推進により、従業員がいきいきと働ける環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.0歳 15.2年 6,737,009円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.2%
男性育児休業取得率 76.5%
男女賃金差異(全労働者) 75.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 80.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員の採用比率(15.3%)、障がい者雇用比率(1.9%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料等の調達リスク

同社製品に使用される原材料や部材について、災害や地政学的リスクなどに伴う急激な価格上昇や納期の遅延が発生した場合、生産活動に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定事業セグメントへの依存

同社は産業用配電機器事業の売上高および利益の比率が高くなっています。配電用自動開閉器などの専門メーカーとして高い技術力を有する反面、主要顧客の設備投資抑制が行われた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 製品クレーム・製造物責任のリスク

徹底した品質管理体制のもとで製品を製造していますが、外部調達部品の不良品の混入などにより製品に欠陥が生じるリスクがあります。大規模な製品回収や製造物責任賠償の発生は、コスト増大や信用低下につながる可能性があります。

(4) 中長期的な担い手不足

長い歴史の中で培ってきた技術や技能の次世代への伝承が課題となっています。新入社員の減少や離職者の増加などによって技能伝承がスムーズに進まない場合、生産力や開発力の低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。