ダイヘン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイヘン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の重電メーカーです。変圧器や受変電設備などの電力機器、産業用ロボット、溶接機などの製造販売を主な事業としています。直近の業績は、電力インフラ関連や半導体関連の投資が堅調に推移し、M&Aの効果も寄与したことで増収増益となりました。


※本記事は、株式会社ダイヘン の有価証券報告書(第161期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイヘンってどんな会社?


変圧器などの電力機器や産業用ロボット、溶接機等を展開し、電力インフラや工場の自動化を支える企業です。

(1) 会社概要


同社は1919年12月に大阪変圧器として設立され、柱上用変圧器の生産を開始しました。1934年には電気溶接機、1980年にはアーク溶接用ロボットの生産を開始し事業を拡大しました。1953年に大阪証券取引所、1961年に東京証券取引所へ上場しています。1985年に現在のダイヘンへ商号変更し、2024年にはドイツの溶接機メーカーを買収するなどグローバル展開を進めています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は4,606名、単体従業員数は1,203名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第3位には主要な販売先である関西電力が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.15%
日本カストディ銀行(信託口) 9.16%
関西電力 6.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長は蓑毛正一郎氏が務めています。社外取締役比率は約21.4%です。

氏名 役職 主な経歴
蓑毛 正一郎 代表取締役社長 1987年同社入社。技術開発本部長や営業担当(プラズマシステム等)を歴任し、2021年4月より現職。
田尻 哲也 代表取締役会長 1978年同社入社。総合企画室長等を経て2009年に社長就任。2021年4月より現職。
加茂 和夫 取締役副社長執行役員本社担当 1981年同社入社。電力機器事業や安全担当を歴任。2025年4月より現職。
木村 治久 取締役専務執行役員産業電機事業部、EMS事業部、充電システム事業部担当 1984年関西電力入社。同社奈良支社長等を経て2019年同社入社。2023年4月より現職。
金子 健太郎 取締役専務執行役員溶接・接合事業部、FAロボット事業部、クリーンロボット事業部担当 1988年同社入社。FAロボット事業部長や欧米事業担当等を歴任。2025年4月より現職。
森本 慶樹 取締役 1982年同社入社。溶接機事業部長や品質担当等を歴任。2025年4月より現職。


社外取締役は、安藤圭一(元新関西国際空港社長)、馬越恵美子(桜美林大学名誉教授)、藤原康文(大阪大学名誉教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エネルギーマネジメント」「ファクトリーオートメーション」「マテリアルプロセシング」および「その他」事業を展開しています。

(1) エネルギーマネジメント


各種変圧器、受変電設備、開閉器、制御通信機器、分散電源機器、充電システム機器等の製造販売を行っています。電力会社や一般産業向けに電力インフラ機器を提供しており、脱炭素社会の実現に貢献する製品群を展開しています。

製品の販売対価を主な収益源としています。運営は主に同社が行い、連結子会社の四変テック、キューヘン、中国電機製造、東北電機製造、ダイヘン産業機器などが製造や販売を担っています。

(2) ファクトリーオートメーション


産業用ロボットやクリーン搬送ロボット等の製造販売を行っています。アーク溶接、ハンドリング、組立・加工などの用途向けロボットや、半導体製造装置向けの搬送ロボットを提供し、工場の自動化・省力化ニーズに応えています。

製品の販売対価を主な収益源としています。運営は主に同社が行い、連結子会社のダイヘンテックなどが製造を担っています。海外では連結子会社のOTC DAIHEN Asia Co.,Ltd.などが製造・販売を行っています。

(3) マテリアルプロセシング


各種溶接機、プラズマ切断機、プラズマ発生用電源等の製造販売を行っています。金属や半導体などの加工に必要な接合・切断技術や電源システムを提供しています。

製品の販売対価を主な収益源としています。運営は主に同社が行い、連結子会社のダイヘン産業機器、ダイヘンスタッドなどが製造・販売を担っています。

(4) その他


不動産賃貸事業などを行っています。

賃貸料などを主な収益源としています。運営は連結子会社のダイキが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあります。2021年3月期から2025年3月期にかけて、売上高は約1.5倍に拡大しました。利益面では、経常利益は安定的ですが、当期純利益は2024年3月期をピークに2025年3月期は減少しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,451億円 1,606億円 1,853億円 1,886億円 2,264億円
経常利益 138億円 158億円 177億円 161億円 172億円
利益率(%) 9.5% 9.8% 9.5% 8.5% 7.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 94億円 110億円 132億円 165億円 120億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は28%台で推移しており、営業利益率も7-8%程度を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,886億円 2,264億円
売上総利益 534億円 639億円
売上総利益率(%) 28.3% 28.2%
営業利益 151億円 162億円
営業利益率(%) 8.0% 7.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び福利費が160億円(構成比34%)、研究開発費が62億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


エネルギーマネジメントとマテリアルプロセシングが大幅な増収となり、全社の売上拡大を牽引しました。特にエネルギーマネジメントは利益面でも大きく貢献しています。一方、ファクトリーオートメーションは減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
エネルギーマネジメント 976億円 1,208億円 83億円 115億円 9.5%
ファクトリーオートメーション 348億円 327億円 41億円 23億円 6.9%
マテリアルプロセシング 559億円 726億円 63億円 70億円 9.6%
その他 2億円 2億円 0.3億円 0.3億円 17.3%
調整額 -0.2億円 -0.6億円 -37億円 -46億円 -
連結(合計) 1,886億円 2,264億円 151億円 162億円 7.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -90億円 240億円
投資CF -106億円 -96億円
財務CF 260億円 -60億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、お客様、社員と家族、株主、資材取引先、地域社会といったステークホルダーの皆様により多くの幸せを感じていただくこと(「みんなの幸せ同時達成」)を会社の目的としています。各ステークホルダーごとの具体的な目標(「幸せの目標値」)を明確に定め、その実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社独自の価値を持つ「ならでは製品」開発を事業の基本方針としています。この方針に基づき、社会課題解決に貢献する製品を創出することで社会のサステナビリティに貢献することを目指しています。また、その成果を「幸せの目標値」に沿って利益分配することで、ステークホルダーとの信頼関係強化につなげる文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は「研究開発型企業」を目指し、2026年度中期計画に取り組んでいます。

* 売上高 2,500億円以上
* 営業利益率 10%以上
* ROE 12%以上
* 開発費率 6%以上
* 配当性向 30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「脱炭素社会の実現」「労働力不足の解消」「デジタル化の推進」を重点分野と定義し、社会課題解決に資する開発領域の拡大を進めています。代理店販売の革新や海外事業の拡大、生産の自動化追求と最適生産体制の構築にも注力しています。また、長期人材育成計画に基づき、特に理系人材の確保や若手育成などの人的資本充実に重点を置いています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材の確保・育成を経営の重要課題と認識し、特に開発力強化に資する理系人材や若手人材の育成に重点を置いています。「経営人材」「女性管理職」「若年層」の育成を重点課題とし、働きやすい職場づくりのためエンゲージメントサーベイを実施して環境整備を進めています。また、株式インセンティブ制度の導入などにより帰属意識の向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.8歳 19.9年 8,526,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.9%
男性育児休業取得率 84.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.8%
男女賃金差異(正規) 62.8%
男女賃金差異(非正規) 79.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員教育に投資する費用の2022年度比較(2.4倍)、エンゲージメントサーベイの肯定的回答率(67.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 需要動向について


同社の事業は、電力インフラ、生産自動化、半導体関連などの設備投資需要に強く影響を受けます。データセンター増設や脱炭素関連投資、EV関連投資などの動向が業績に影響を与える可能性があります。

(2) 販売及び仕入価格の変動について


市場競争の激化による販売価格の下落や、銅などの素材価格高騰が利益率に悪影響を及ぼす可能性があります。また、輸出入取引に伴う為替変動も業績に影響を与える要因となります。

(3) 海外事業環境について


海外売上高比率は20%を超えており、今後も海外展開を強化する方針です。そのため、各国の政治・法規制の変化や、米国の関税政策などの社会情勢の変化が事業遂行に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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