ダイヘン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイヘン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイヘンは、東京証券取引所プライム市場および福岡証券取引所に上場し、各種変圧器や受変電設備などのエネルギー機器、産業用ロボット、各種溶接機などを展開するメーカーです。直近の業績は、売上高が前年比5.0%増の2,377億円、営業利益が16.1%増の188億円と、増収増益の好調な推移を見せています。


※本記事は、株式会社ダイヘンの有価証券報告書(第162期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイヘンってどんな会社?


各種変圧器、産業用ロボット、溶接機などの製造・販売をグローバルに手掛けるメーカーです。

(1) 会社概要


1919年12月に大阪変圧器として設立され、柱上用変圧器の生産を開始しました。1934年3月に電気溶接機の生産を開始し、1953年11月に大阪証券取引所に上場、1961年10月に東京証券取引所に上場しました。1980年5月にアーク溶接用ロボットの生産を開始し、1985年12月に現在のダイヘンへ社名を変更しています。

従業員数は連結で4,542名、単体で1,203名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も信託業務を行う日本カストディ銀行(信託口)となっています。第3位には事業会社であり、かつて同社役員の出身元でもある関西電力が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.82%
日本カストディ銀行(信託口) 7.46%
関西電力 6.16%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役会長は田尻哲也氏、代表取締役社長は蓑毛正一郎氏が務めており、全取締役9名のうち社外取締役が3名(比率33.3%)を占めています。

氏名 役職 主な経歴
田尻哲也 代表取締役会長 1978年4月同社に入社。2001年6月執行役員、2003年6月総合企画室長などを経て、2009年6月代表取締役社長。2021年4月より現職。
蓑毛正一郎 代表取締役社長 1987年4月同社に入社。2011年6月執行役員、2014年4月技術開発本部長などを経て、2017年4月取締役常務執行役員。2021年4月より現職。
加茂和夫 取締役副社長執行役員本社担当 1981年4月同社に入社。2017年4月取締役専務執行役員、2022年4月電力機器営業本部長などを経て、2025年4月より現職。
木村治久 取締役専務執行役員産業電機事業部、EMS事業部、充電システム事業部担当 1984年4月関西電力に入社。2019年6月同社に出向し取締役常務執行役員。2019年9月関西電力を退社し、2023年4月より現職。
金子健太郎 取締役専務執行役員溶接・接合事業部、FAロボット事業部、クリーンロボット事業部担当 1988年4月同社に入社。2015年4月FAロボット事業部長、2023年6月取締役常務執行役員などを経て、2025年4月より現職。
栗山忠士 取締役常務執行役員配電システム事業部、大形変圧器事業部担当電力営業本部長技術開発本部長 1987年4月同社に入社。2015年7月配電システム事業部長、2019年4月執行役員などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、馬越恵美子氏(桜美林大学名誉教授)、藤原康文氏(大阪大学名誉教授)、川﨑清隆氏(弁護士法人御堂筋法律事務所代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エネルギーマネジメント」「ファクトリーオートメーション」「マテリアルプロセシング」および「その他」事業を展開しています。

エネルギーマネジメント


各種変圧器、受変電設備、開閉器、分散電源機器、充電システム機器などを提供しています。電力会社や一般民需向けの電力機器製品群に加え、再生可能エネルギーの活用拡大に資する機器やシステムにより、電力インフラを支えて脱炭素社会の実現を目指しています。

製品や部品の販売・サービス提供から収益を得ています。事業の運営は、主に同社および、四変テック、キューヘン、中国電機製造、東北電機製造などの連結子会社が行っています。

ファクトリーオートメーション


産業用ロボットやクリーン搬送ロボットなどを提供しています。同社が強みとする溶接ロボットだけでなく、ハンドリングや組立・加工など多様な産業用ロボットや搬送システムを通じて、世界中の工場の自動化・省力化に向けたソリューションを展開しています。

製品の販売や保守サービスから収益を得ています。事業の運営は、主に同社および、DAIHEN,Inc.、OTC DAIHEN EUROPE GmbH、OTC DAIHEN Asia Co.,Ltd.などの連結子会社が行っています。

マテリアルプロセシング


各種溶接機、プラズマ切断機、プラズマ発生用電源などを提供しています。多様なエネルギー源の高精度な制御技術を基盤とし、金属・半導体・樹脂材料の精密な接合・切断・成膜・表面処理・造形といった幅広い加工領域で事業を展開しています。

製品の販売や修理などから収益を得ています。事業の運営は、主に同社および、ダイヘン産業機器、ダイヘンスタッド、牡丹江OTC溶接機有限会社などの連結子会社が行っています。

その他


報告セグメントに含まれないその他の事業領域として、主に不動産賃貸事業などを展開し、グループ内の資産の有効活用を図っています。

所有する不動産の賃貸料などから収益を得ています。事業の運営は、主に連結子会社であるダイキなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は右肩上がりの成長を続けており、直近5年間で継続的な拡大を見せています。利益面も概ね安定した水準を維持しており、当期には経常利益が200億円を突破して過去最高水準を記録するなど、着実な収益力の向上が確認できます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,606億円 1,853億円 1,886億円 2,264億円 2,377億円
経常利益 158億円 177億円 161億円 172億円 201億円
利益率(%) 9.8% 9.5% 8.5% 7.6% 8.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 89億円 105億円 72億円 63億円 87億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益・営業利益ともに拡大しています。特に営業利益率は7.1%から7.9%へと改善しており、増収効果に加えてコスト管理や生産効率化の取り組みが利益の伸びに寄与していることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,264億円 2,377億円
売上総利益 639億円 685億円
売上総利益率(%) 28.2% 28.8%
営業利益 162億円 188億円
営業利益率(%) 7.1% 7.9%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が58億円(構成比12%)、給料手当及び賞与が52億円(同10%)、運賃及び荷造費が39億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


各事業セグメントにおいて堅調な増収を達成しています。特にエネルギーマネジメント事業は、国内における工場の受変電設備の更新投資や再生可能エネルギー導入に伴う蓄電池システムの需要増加を背景に、売上高が大きく伸びています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
エネルギーマネジメント 1,208億円 1,282億円
ファクトリーオートメーション 327億円 329億円
マテリアルプロセシング 726億円 764億円
その他 2億円 2億円
連結(合計) 2,264億円 2,377億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 240億円 49億円
投資CF -96億円 -108億円
財務CF -60億円 75億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、自社を取り巻くステークホルダー(お客様、社員と家族、株主、資材取引先、地域社会)の皆様により多くの幸せを感じていただくこと(「みんなの幸せ同時達成」)を会社の目的とし、各ステークホルダーごとの具体的な目標(「幸せの目標値」)を明確に定め、その実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社独自の価値を持つ「ならでは製品」の開発により、社会課題解決に貢献する製品を創出することで社会のサステナビリティに寄与し、その結果が売上高・利益の増加に結びつくと考えています。そして「幸せの目標値」に沿って利益の分配を充実させることが、ステークホルダーとの信頼関係の強化につながるという価値観を重視しています。

(3) 経営計画・目標


社会課題解決に積極的に貢献する「研究開発型企業」となることを目指し、2026年度中期計画において以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:2,500億円以上(2026年度)、3,000億円以上(2030年度)
* 営業利益率:10%以上(2026年度)、12%以上(2030年度)
* ROE:12%以上
* 開発費率:6%以上
* 配当性向:30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「脱炭素社会の実現」「労働力不足の解消」「デジタル化の推進」の3つの社会課題解決を重点分野と定義し、開発領域の拡大を図ります。また、代理店販売の革新と新領域での販売拡大、主要標準製品生産の完全自動化による最適生産体制の構築、理系人材の確保や若手人材の育成を通じた人的資本の充実を進めていきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「経営人材の育成」「女性活躍推進」「若手社員の育成」を人材育成の方針として定め、人的資本の開発・活用による企業価値向上を目指しています。次世代経営幹部候補者の選抜と育成、女性社員が自分らしく成長・活躍できる環境の構築、若手社員の主体的なキャリア形成の支援を通じ、働きやすい職場づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.0歳 20.0年 9,732,000円


※平均年間給与は賞与、基準外賃金及び前払いによる退職金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.7%
男性育児休業取得率 66.6%
男女賃金差異(全労働者) 66.1%
男女賃金差異(正規雇用) 66.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 76.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、自己都合離職率(単体)(1.4%)、年次有給休暇取得率(単体)(72.0%)、従業員に占める女性比率(単体)(12.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 需要動向について


エネルギー分野での送配電設備の更新や脱炭素関連投資、ファクトリーオートメーションでのEVや生産自動化関連投資、マテリアルプロセシングでの半導体製造装置関連投資などが主な需要です。これら主要顧客の設備投資に急激な変動が生じた場合、売上高をはじめとした業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 販売および仕入価格の変動について


市場競争の激化に伴う販売価格の下落や、中東情勢などを背景とする銅などの素材・原材料価格の高騰が懸念されます。生産自動化などのコスト削減や代替調達先の確保によるリスク軽減に努めていますが、状況次第では売上高や利益率に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 海外事業環境について


同社の海外売上高比率は20.6%を占めており、今後も海外での事業展開に注力する方針です。進出先市場の成長性における不透明な要素や、政治または法規制の変更といった予期せぬ事象により事業の遂行に問題が生じた場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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