※本記事は、芝浦メカトロニクス株式会社 の有価証券報告書(第116期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 芝浦メカトロニクスってどんな会社?
同社は、半導体やディスプレイ製造装置を中心とした精密メカトロニクス製品を提供するメーカーです。
■(1) 会社概要
1939年に株式会社芝浦京町製作所として設立され、1942年に現在も主要拠点である大船工場(現・横浜事業所)の操業を開始しました。1998年に東芝メカトロニクス株式会社と合併し、現在の商号である芝浦メカトロニクスに変更しました。2022年には東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。
現在の連結従業員数は1,246名(単体616名)です。大株主の構成は、筆頭株主が資産管理業務を行う信託銀行で、第3位に事業会社である信越エンジニアリングが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.69% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 7.45% |
| 信越エンジニアリング | 5.92% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長執行役員は今村 圭吾氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 今村 圭吾 | 代表取締役社長執行役員 | 東芝を経て同社入社。生産・調達本部長、ファインメカトロニクス事業部長等を歴任し、2021年6月より現職。 |
| 黒川 禎明 | 取締役常務執行役員 | 同社入社後、ファインメカトロニクス事業部技術第二グループ長、同事業部長などを経て、2021年6月より現職。 |
| 堀内 和敏 | 取締役常務執行役員 | 同社入社後、ファインメカトロニクス事業部営業第一部長、同副事業部長などを経て、2022年6月より現職。 |
社外取締役は、井奈波 朋子(弁護士・龍村法律事務所)、高田 裕一郎(元SMBC日興証券取締役副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ファインメカトロニクス」「メカトロニクスシステム」「流通機器システム」「不動産賃貸」の報告セグメント事業を展開しています。
**ファインメカトロニクス**
半導体製造装置(洗浄、エッチング、アッシング、検査装置など)やFPD製造装置(洗浄、剥離、エッチング装置など)、レーザ応用装置などを提供しています。主な顧客は半導体やディスプレイパネルメーカーです。
収益は、これらの製造装置の販売および保守サービス等から得ています。運営は主に同社および芝浦エレテック等が行っています。
**メカトロニクスシステム**
半導体製造装置(ボンディング装置)、FPD製造装置(アウターリードボンディング装置)、真空応用装置(スパッタリング装置など)、二次電池製造装置などを提供しています。
収益は、各装置の販売および据付・サービス等から得ています。運営は主に同社および芝浦プレシジョン等が行っています。
**流通機器システム**
自動販売機や自動券売機などの製造・販売を行っています。
収益は、これらの機器の販売およびメンテナンスサービス等から得ています。運営は主に芝浦自販機が行っています。
**不動産賃貸**
同社グループが保有する不動産の賃貸および管理業務を行っています。
収益は、保有物件の賃貸料から得ています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に拡大傾向にあります。特に直近の2025年3月期は売上高が800億円を超え、経常利益も過去最高水準となる約140億円を記録しました。利益率も17%台の高水準を維持しており、収益性の高い事業運営が継続されています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 448億円 | 493億円 | 610億円 | 676億円 | 809億円 |
| 経常利益 | 28億円 | 49億円 | 105億円 | 116億円 | 140億円 |
| 利益率(%) | 6.3% | 9.9% | 17.2% | 17.2% | 17.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 18億円 | 25億円 | 77億円 | 80億円 | 89億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は約40%の水準からやや低下したものの、依然として高い収益性を確保しています。営業利益率も17%台を維持しており、効率的な経営が行われていることが分かります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 676億円 | 809億円 |
| 売上総利益 | 271億円 | 315億円 |
| 売上総利益率(%) | 40.2% | 38.9% |
| 営業利益 | 117億円 | 141億円 |
| 営業利益率(%) | 17.3% | 17.5% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与及び手当が78億円(構成比45%)、研究開発費が38億円(同22%)を占めています。売上原価については、売上原価合計に対する各費目の内訳詳細データはありませんが、全体として原価率は約61%となっています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの状況を見ると、主力のファインメカトロニクスは横ばいで推移しましたが、メカトロニクスシステムが大幅な増収となりました。これは半導体後工程向け装置の需要拡大が寄与しています。また、流通機器システムも新紙幣発行に伴う需要等により売上が大きく伸長しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| ファインメカトロニクス | 501億円 | 504億円 |
| メカトロニクスシステム | 124億円 | 228億円 |
| 流通機器システム | 33億円 | 60億円 |
| 不動産賃貸 | 18億円 | 18億円 |
| 連結(合計) | 676億円 | 809億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)を使って借入金の返済(財務CFマイナス)を進めつつ、投資も自己資金の範囲内で行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 60億円 | 70億円 |
| 投資CF | -23億円 | -32億円 |
| 財務CF | -37億円 | -27億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は24.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「Smart Solutions & Services for Your Manufacturing」をコーポレートスローガンに掲げ、「優れた技術・サービスを提供することで、人々の豊かな暮らしの実現に貢献します」を経営理念としています。ESGを重視した経営を行い、製造装置の開発からサービスまでトータルソリューションを提供することで、持続可能な社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は長期ビジョン「芝浦ビジョン2033」において、目指す方向性を表現したブランドメッセージとして「この先もずっと、人と技術で社会を支える。」を掲げています。これは、同社の強みである「技術力」と「人」を活かして社会に貢献するという思いが込められており、グループ一丸となってビジョンの実現を目指す姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は長期ビジョン「芝浦ビジョン2033」を掲げ、2033年のありたい姿として「社会やお客様の将来課題とそこにある潜在的ニーズを把捉して能動的に提案・解決し、お客様と共に成長する企業」を目指しています。経営指標としては、収益力、資産効率、株主価値の向上を重視し、ROS(売上高営業利益率)とROE(自己資本当期純利益率)の向上を目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、SPE(半導体製造装置)分野において、次世代・先端半導体に対応した装置開発・販売を推進し、グローバルニッチトップ製品を核とした拡大を図っています。また、FPD分野では主要サプライヤとしての地位を堅持しつつ、新型・次世代向け製品の開発・拡販に注力しています。さらに、現中期経営計画期間においては「持続的成長に向けた投資」による土台強化を積極的に進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、『変化を創り、「時代」「お客様」「仲間」と共に成長する人財』を求める人財像として定義しています。多様な価値観とバックグラウンドを持つ従業員が能力を最大限発揮できるよう、人財マネジメントポリシーや人材育成方針を定めています。具体的には、多様な人材の採用、自律的なキャリア形成支援、成果と行動を公正に評価する制度などを通じて、人財力の強化とエンゲージメント向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.3歳 | 19.5年 | 9,176,129円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.0% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 68.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 54.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用に占める女性の割合(27.0%)、障がい者雇用率(2.25%)、育児休業者の復職率(90.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況、市況による影響
同社グループの製造装置需要は、半導体やFPD等のエレクトロニクス製品の需給状況や各国の経済状況に影響を受けます。景気後退や需要縮小が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外販売に潜在するリスク
海外売上高比率が高く、特定の国や地域への依存も見られます。各国の政治・経済状況の変化、法規制の変更、為替変動、自然災害やテロ等の地政学リスクが顕在化した場合、業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
■(3) 価格競争による影響
エレクトロニクス業界では価格競争が激しく、投資抑制傾向があります。同社は高付加価値製品の開発に注力していますが、競合や新規参入による競争激化や、部材価格高騰による原価上昇が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 他社との提携によるリスク
新規事業や事業拡大において他社との提携や合弁を行っていますが、当事者間での不一致や想定外の事態が発生した場合、当初の計画通りに成果を上げられず、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。



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