芝浦メカトロニクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

芝浦メカトロニクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

芝浦メカトロニクスは、東証プライム市場に上場し、半導体製造装置やFPD製造装置、自動券売機などの製造・販売・保守サービスを主力事業として展開しています。直近の業績では、半導体分野における先端パッケージ向け装置などの販売が好調に推移したことで、売上高・利益ともに前年を上回る増収増益を達成しています。


※本記事は、芝浦メカトロニクス株式会社の有価証券報告書(第117期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 芝浦メカトロニクスってどんな会社?


半導体やFPDなどの製造プロセスを支える先端装置や、流通機器システムの開発・製造・販売を手掛けるグローバルメーカーです。

(1) 会社概要


1939年芝浦京町製作所として設立し、その後芝浦製作所へ商号変更。1969年に東証二部、1972年に東証一部(現プライム)へ上場しました。1998年に東芝メカトロニクスと合併し現在の芝浦メカトロニクスに社名変更しています。近年は半導体分野へ注力し、グローバルに事業を拡大しています。

従業員数は連結で1269名、単体で621名です。筆頭株主は資産管理業務等を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位株主は事業会社である信越エンジニアリングです。技術力とサービスを通じて、製造業の多様なニーズに応える事業体制を構築しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.16%
信越エンジニアリング 5.92%
日本カストディ銀行(信託口) 5.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長執行役員は今村圭吾氏が務めており、社外取締役比率は30.0%(3名/10名)となっています。

氏名 役職 主な経歴
今村圭吾 代表取締役社長執行役員 1985年東芝入社。1996年同社入社。生産・調達本部長等を経て、2019年ファインメカトロニクス事業部長。2021年より現職。
黒川禎明 取締役常務執行役員、ファインメカトロニクス事業部長 1988年同社入社。ファインメカトロニクス事業部半導体装置統括部長等を経て、2019年同副事業部長。2021年より現職。
堀内和敏 取締役常務執行役員、メカトロニクスシステム事業部長 1993年同社入社。ファインメカトロニクス事業部営業第一部長等を経て、2019年同副事業部長。2022年より現職。


社外取締役は、井奈波朋子(龍村法律事務所所属)、小野満(元マツダ取締役専務執行役員)、澤由紀子(元味の素コーポレート戦略部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ファインメカトロニクス」「メカトロニクスシステム」「流通機器システム」「不動産賃貸」の事業を展開しています。

ファインメカトロニクス


同社グループの主力事業であり、半導体製造装置(洗浄、エッチング等)やFPD製造装置、インクジェット錠剤印刷装置などの開発、製造、販売を行っています。主に国内外の半導体メーカーやパネルメーカーなどの顧客に対して、最先端の製造プロセスを支える装置を提供しています。

収益は、製造装置の販売代金や保守サービス提供による対価から得ています。運営は同社を中心に、部品供給や保守サービスを担う芝浦エレテックなどの関係会社が連携し、海外販売・サービスにおいては台湾芝浦先進科技をはじめとする現地法人が展開しています。

メカトロニクスシステム


ダイボンディング装置やフリップチップボンディング装置などの後工程向け半導体製造装置を中心に、FPD製造装置、真空応用装置、精密部品製造装置を開発、製造、販売しています。生成AI向けの需要拡大を背景に、先端パッケージ向けの装置需要が高まっています。

収益は、装置本体の販売代金や周辺サービスによる対価から得ています。運営は同社が製品の開発・製造を主導し、部品の製造や組立業務を担う芝浦プレシジョン、及び施設の維持管理を行う芝浦ハイテックなどの子会社と協働して事業活動を進めています。

流通機器システム


鉄道駅や飲食店、各種施設などで利用される自動券売機や自動販売機などの流通機器システムの開発、製造、販売、および保守サービスを提供しています。交通機関や流通・外食産業の顧客ニーズに合わせた機器の提供により、店舗運営の効率化や省力化をサポートしています。

収益は、機器本体の販売代金や、導入後のメンテナンス・部品交換等のサービス提供による対価から得ています。運営は同社の子会社である芝浦自販機が製造、販売、据付、保守サービスまでを一貫して担当し、顧客の安定的な稼働を支援しています。

不動産賃貸


同社が所有するオフィスビルや土地などの不動産を活用し、外部の企業に対して賃貸および管理業務を行っています。主力事業である製造装置ビジネスと並行し、所有不動産の有効活用を通じて、安定的な収益基盤の構築を図っています。

収益は、賃貸先企業からの不動産賃貸料収入等から得ています。運営は同社が主体となって不動産の賃貸および管理業務を遂行し、施設の適切な維持と管理を行うことで継続的な価値の提供に努めています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、半導体市場の成長やAI需要の拡大を背景に、売上高は493億円から880億円へと継続的な拡大を遂げています。利益面においても経常利益が49億円から149億円へと大幅に増加しており、高い利益率を維持しながら安定した成長を続けていることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 493億円 610億円 676億円 809億円 880億円
経常利益 49億円 105億円 116億円 140億円 149億円
利益率(%) 9.9% 17.2% 17.2% 17.3% 16.9%
当期利益 25億円 77億円 80億円 89億円 110億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益は315億円から348億円へと順調に拡大しています。売上総利益率は38.9%から39.5%へと高い水準を維持しており、付加価値の高い製品の販売が寄与しています。営業利益も141億円から153億円へと増加し、強固な収益基盤を確立しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 809億円 880億円
売上総利益 315億円 348億円
売上総利益率(%) 38.9% 39.5%
営業利益 141億円 153億円
営業利益率(%) 17.4% 17.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与及び手当が84億円(構成比43.1%)、研究開発費が39億円(同20.2%)を占めています。売上原価の内訳は記載されていませんが、売上原価合計は533億円となっています。

(3) セグメント収益


主力のファインメカトロニクスは、ロジック/ファウンドリ向け装置が順調に推移し増収となりました。メカトロニクスシステムは、生成AI用GPUの需要増に伴い先端パッケージ向け装置が好調で大幅な増収増益を達成しました。一方、流通機器システムは新紙幣対応の更新需要が一巡し減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ファインメカトロニクス 504億円 522億円
メカトロニクスシステム 228億円 314億円
流通機器システム 60億円 26億円
不動産賃貸 18億円 18億円
連結(合計) 809億円 880億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 70億円 46億円
投資CF -32億円 -81億円
財務CF -27億円 -37億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.1%といずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「優れた技術・サービスを提供することで、人々の豊かな暮らしの実現に貢献します」を経営理念として掲げています。コーポレートスローガンに「Smart Solutions & Services for Your Manufacturing」を制定し、製造装置の開発からサービスまでトータルソリューションを提供する企業を目指しています。

(2) 企業文化


長期ビジョン「芝浦ビジョン2033」において、ありたい姿を「社会やお客様の将来課題とそこにある潜在的ニーズを把捉して能動的に提案・解決し、お客様と共に成長する企業」と定めています。「この先もずっと、人と技術で社会を支える。」というブランドメッセージの下、技術力と人を活かして社会に貢献する文化を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


「芝浦ビジョン2033」の実現に向けた中期経営計画(2026-2028年度)を推進しています。持続的な成長と資本効率の向上を図るため、以下の経営指標を重要な目標として設定し、企業価値の増大を目指しています。

* 売上高:800億円
* 営業利益:105億円

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向け、半導体製造装置市場における競争力強化を最重要課題と位置づけています。コア技術である洗浄、エッチング、ボンディング等を活用し、グローバルニッチトップ製品の拡充と用途・地域の拡大を進めます。また、先端半導体分野を中心とした継続的な研究開発投資による技術力強化や、持続的成長を担う専門人材の確保・育成に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「変化を創り、時代・お客様・仲間と共に成長する人財」を求める人財像として定義しています。人材を競争力の源泉と位置づけ、多様なバックグラウンドを持つ人材の採用、自律的なキャリア形成を支援する教育体系の充実、適材適所の配置を推進し、個々が能力を最大限発揮できる環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.8歳 18.5年 9,530,954円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.7%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 71.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 69.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 77.8%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員一人当たりの研修時間(11.5時間)、年代別キャリア研修受講率(82.5%)、育児休業者の復職率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況・市況による影響


同社が販売する製造装置の需要は、半導体やFPD等のエレクトロニクス製品の需給状況に大きく依存しています。主要な消費国や地域の景気後退によって設備投資の需要が縮小した場合、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外販売に潜在するリスク


同社グループは海外売上高比率が約76%を占めており、台湾、中国、欧米、東南アジアなどで事業を展開しています。進出する各国・地域における政治状況の急変、法律や税制の変更、為替変動、人件費の高騰等の事象が発生した場合、事業活動に支障をきたすリスクがあります。

(3) 半導体製造装置市場の競争激化


エレクトロニクス業界では価格競争が激しく、製造装置への投資コストが抑制される傾向にあります。同社はグローバルニッチトップ製品を中心に高付加価値製品を市場に投入していますが、競合メーカーや新規参入企業との競争が激化した場合、計画通りの収益を確保できない可能性があります。

(4) サプライチェーンに関するリスク


製品の製造や保守サービスに必要な部品・部材を外部から調達しています。世界的な需給の逼迫や供給の遅延・停止、価格の高騰、その他のサプライチェーン上の障害が発生した場合、製造活動や保守サービスが停滞し、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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