タムラ製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

タムラ製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の電子部品・化学材料メーカーです。トランスやリアクタなどの電子部品、はんだ材料などの電子化学実装、放送局向け情報機器を製造販売しています。2025年3月期は、データセンター向け需要増や円安効果により、売上高は過去最高の1,141億円、営業利益は52億円となり、増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社タムラ製作所 の有価証券報告書(第102期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. タムラ製作所ってどんな会社?


同社グループは、電子部品、電子化学実装、情報機器の3つの事業を柱にグローバル展開するメーカーです。

(1) 会社概要


同社は1924年にタムラジオストアーとして創業し、通信用変成器等の製造を開始しました。1939年に株式会社として設立され、1958年には電子化学材料の専門工場(後のタムラ化研)を設立しました。1972年のマレーシア現地法人設立を皮切りに海外展開を進め、1979年に東京証券取引所市場第一部に上場しました。

2025年3月31日現在、連結従業員数は4,318名、単体では877名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に資産管理を行う株式会社日本カストディ銀行です。第3位には取引先等の持株会であるタムラ協力企業持株会が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.83%
日本カストディ銀行(信託口) 5.18%
タムラ協力企業持株会 4.15%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表者は代表取締役会長兼CEO兼CFOの浅田昌弘氏です。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
浅田 昌弘 代表取締役会長兼CEO兼CFO 1982年同社入社。電子部品事業統括本部長等を経て2019年社長就任。2025年4月より現職。
中村 充孝 代表取締役社長兼COO 1997年タムラ化研(現同社)入社。電子化学実装事業や経営戦略担当を経て2025年4月より現職。
橋口 裕作 取締役EVP特命事項担当 1986年同社入社。取締役常務執行役員兼CFO、電子部品事業担当等を経て2025年4月より現職。
齋藤 彰一 取締役EVP兼CTO開発戦略担当開発戦略推進室長安全保障貿易管理担当 1988年タムラ化研(現同社)入社。取締役上席執行役員等を経て2024年6月より現職。
田村 陽平 取締役VP情報機器事業部長 2010年横河電機入社。2016年同社入社。社長室長、経営戦略本部長等を経て2025年4月より現職。
横山 雄治 取締役(常勤監査等委員) 1987年同社入社。電子部品事業本部HPM事業部長、監査役等を経て2023年6月より現職。


社外取締役は、窪田明(元オリンパス常務執行役員)、渋村晴子(弁護士)、今村昌志(元ソニーグループ執行役EVP)、豊田明子(PwCアドバイザリーパートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電子部品関連事業」、「電子化学実装関連事業」および「情報機器関連事業」を展開しています。

電子部品関連事業


トランス、リアクタ、電流センサ、LED関連製品などの電子部品を製造・販売しています。産業機械、家電、自動車、データセンターなど幅広い分野の顧客に向けて製品を提供しています。

製品の販売による対価を収益源としています。運営は、同社および株式会社光波、株式会社若柳タムラ製作所、株式会社会津タムラ製作所などの国内子会社に加え、田村電子(蘇州)有限公司やTAMURA CORPORATION OF AMERICAなどの海外子会社が行っています。

電子化学実装関連事業


ソルダーペースト、ソルダーレジスト、フラックスなどのはんだ材料および自動はんだ付装置等の製造・販売を行っています。電子機器の実装プロセスに不可欠な材料や装置を、エレクトロニクスメーカー等に提供しています。

製品の販売による対価を収益源としています。運営は、同社および上海祥楽田村電化工業有限公司、田村化研(東莞)有限公司、TAMURA ELSOLD GmbHなどの海外子会社が行っています。

情報機器関連事業


放送局向けの音声調整卓(ミキサー)、ワイヤレスマイクロホンシステム、ワイヤレスインターカムなどの通信機器を製造・販売しています。主な顧客は放送局や通信インフラ事業者です。

製品の販売およびそれに付随する工事や修理サービスの提供による対価を収益源としています。運営は主に同社が行っており、製造の一部を株式会社会津タムラ製作所などの子会社に委託しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は順調に拡大しており、特に直近の2025年3月期は過去最高を更新しました。利益面では、2022年3月期に一時的な赤字を計上しましたが、その後は回復基調にあり、経常利益、当期純利益ともに増加傾向を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 739億円 883億円 1,080億円 1,066億円 1,141億円
経常利益 24億円 20億円 43億円 50億円 51億円
利益率(%) 3.2% 2.3% 4.0% 4.6% 4.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 -1億円 20億円 22億円 28億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しています。売上総利益率は微増し、安定した収益性を維持しています。営業利益および営業利益率についても、前期から改善が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,066億円 1,141億円
売上総利益 288億円 303億円
売上総利益率(%) 27.0% 26.6%
営業利益 49億円 52億円
営業利益率(%) 4.6% 4.6%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が82億円(構成比32%)、荷造運賃が19億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


電子部品関連事業はデータセンター向け製品等が好調で増収増益となりました。電子化学実装関連事業も円安効果等により増収増益を達成しました。一方、情報機器関連事業は放送局向け設備投資の延期等の影響で減収となり、セグメント損失を計上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
電子部品関連事業 725億円 768億円 30億円 33億円 4.3%
電子化学実装関連事業 311億円 344億円 25億円 31億円 8.9%
情報機器関連事業 30億円 29億円 5億円 -2億円 -6.3%
調整額 -2億円 -2億円 -10億円 -10億円 -
連結(合計) 1,066億円 1,141億円 49億円 52億円 4.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 95億円 91億円
投資CF -27億円 -39億円
財務CF -40億円 -36億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「オンリーワン・カンパニーの実現を目指す」をコーポレートスローガンに掲げています。ミッションとして、グループの成長を支える全ての人々の幸せを育むため、世界のエレクトロニクス市場に高く評価される独自の製品・サービスをスピーディに提供することを目指しています。

(2) 企業文化


同社はGUIDELINEとして、「パートナーシップを大切にする」「革新する勇気を大切にする」「多彩な個性を大切にする」「社会的な責任を大切にする」という4つの価値観を掲げています。これらを重視し、公正な視点で社員を評価し、努力によって成果をもたらす人を最も称賛する風土を目指しています。

(3) 経営計画・目標


2028年3月期を最終年度とする第14次中期経営計画「One TAMURA for Next 100」において、事業戦略・財務戦略・サステナビリティ戦略を一体推進しています。財務目標として、最終年度に以下の数値を掲げています。

* ROE:8%以上
* 営業利益率:7%以上
* ROIC:6%以上
* PBR:1倍以上

(4) 成長戦略と重点施策


脱炭素社会の実現を市場機会と捉え、クリーンエネルギー関連を注力市場、次世代パワーエレクトロニクス関連製品を注力製品、欧米を注力地域と定めています。特に米国データセンター向けの大型トランス等の需要獲得を目指します。また、在庫適正化や生産販売拠点の最適配置による「体質改善」に取り組み、収益性と資本効率の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人が憧れる会社」「人が集まる会社」を目指し、グローバルでの働きがい改革を推進しています。心理的安全性の浸透や、変革を推進できるリーダー人材の育成、企業パーパスの浸透に注力し、従業員が生き生きと働ける環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.6歳 17.4年 7,074,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.3%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.1%
男女賃金差異(正規雇用) 78.8%
男女賃金差異(非正規) 56.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(56%)、管理職の外国人比率(1.8%)、管理職の中途採用者比率(39.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境に関するリスク


同社はクリーンエネルギー市場を注力市場としていますが、この市場は各国の経済環境や政策、顧客の戦略に左右されます。需要拡大が進まない場合、開発・設備投資の回収が遅れ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 素材価格に関するリスク


銅、鉄、錫、石油化学製品などの素材価格が変動すると、利益に影響します。同社は価格改定や設計変更、代替部材開発などで対策していますが、急激な変動に価格転嫁が追いつかない場合、収益を圧迫する可能性があります。

(3) 海外展開におけるリスク


同社は中国に多くの拠点を有していますが、経済圏の分断や各国の政策により、特定国での輸出入が困難になる等のリスクがあります。同社は欧米やアジアにも拠点を持ち、環境変化に応じて生産販売体制を見直すことで対応を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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