※本記事は、サンケン電気株式会社の有価証券報告書(第109期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サンケン電気ってどんな会社?
同社は、自動車や白物家電向けのパワー半導体デバイスを提供する独立系半導体メーカーです。
■(1) 会社概要
1946年に埼玉県にて東邦産研電気として設立され、1962年に現在のサンケン電気に商号を変更しました。1970年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、近年は海外にも製造・販売拠点を拡大しています。2024年には米国子会社を持分法適用関連会社へ移行したほか、2025年にはパウデックを買収しました。
現在、従業員数は連結で2,683名、単体で842名です。筆頭株主はゴールドマン・サックス・インターナショナルで、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位はシティバンク、エヌ・エイ東京支店など、国内外の金融機関が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ゴールドマン・サックス・インターナショナル(常任代理人 ゴールドマン・サックス証券) | 14.63% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.44% |
| CGML PB CLIENT ACCOUNT/COLLATERAL(常任代理人 シティバンク、エヌ・エイ東京支店) | 6.69% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長CEOは髙橋広氏が務めており、社外取締役の比率は60.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 髙橋広 | 代表取締役社長CEO | 1986年に同社入社後、技術本部MCD事業部副事業部長、生産本部長などを経て2021年に代表取締役社長、2025年より現職。 |
| 川嶋勝巳 | 取締役(常務執行役員CFO)コーポレートデザイン本部長 | 埼玉銀行(現埼玉りそな銀行)を経て2019年に同社転籍。総務人事統括部長などを歴任し、2025年より現職。 |
| 宇津野瑞木 | 取締役(上級執行役員)事業推進本部長 | デーシーパックなどを経て1996年に同社入社。福島サンケン社長や事業推進本部長を歴任し、2022年より現職。 |
| 加藤康久 | 取締役常勤監査等委員 | 1985年に同社入社後、生産本部品質統括部長などを経て2022年に監査役、2023年より現職。 |
社外取締役は、平野秀樹(元埼玉りそな銀行常務執行役員)、菅原万里子(弁護士)、瀬木達明(元セイコーエプソン代表取締役)、柳澤修(IGW Japan執行役員)、森谷由美子(元協和銀行)、生越由美(東京理科大学嘱託教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「半導体デバイス事業」を展開しており、製品区分としてパワーモジュール、パワーデバイスなどの事業を行っています。
■パワーモジュール・パワーデバイス
同社グループの中核であり、自動車、白物家電、産業機械などの市場に向けて、高効率・省エネルギーなパワー半導体製品を開発・製造しています。主にハイブリッド車向けやエアコンのインバータ制御用などに採用され、顧客のイノベーションに貢献しています。
収益は、これらの半導体デバイス製品を国内外のセットメーカーなどに販売することで得ています。事業の運営は、同社を中心に、石川サンケン、山形サンケンなどの国内製造子会社や、海外の販売・製造子会社が連携して行っています。
■その他
主力となる半導体デバイス事業のほかに、製品販売を終了したスイッチング電源製品などの事業が含まれます。また、過去には米国子会社の製品売上も含まれていました。
収益は、これら関連製品の販売等によって得ていました。同社および関連するグループ会社によって運営されていましたが、事業ポートフォリオの見直しや子会社の持分法適用関連会社への移行により、現在の構成比は大幅に縮小しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、前半は売上高の拡大が続いたものの、直近2期は子会社の連結除外等の影響により大幅な減収となっています。利益面でも、金属建値の高騰や中国市場での競争激化などの外部環境の変化を受け、経常赤字を計上する厳しい状況が続いています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,757億円 | 2,254億円 | 2,352億円 | 1,216億円 | 802億円 |
| 経常利益 | 14億円 | 272億円 | 182億円 | -143億円 | -88億円 |
| 利益率(%) | 7.8% | 12.1% | 7.8% | -11.7% | -11.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -31億円 | -39億円 | -190億円 | 793億円 | -106億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、大幅な売上高の減少に伴い、売上総利益も減少しています。利益率も低下傾向にあり、固定費削減や生産性向上の取り組みを進めているものの、原材料価格の高騰などが影響し、営業赤字幅が拡大する結果となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,216億円 | 802億円 |
| 売上総利益 | 249億円 | 75億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.5% | 9.4% |
| 営業利益 | -38億円 | -47億円 |
| 営業利益率(%) | -3.1% | -5.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与が39億円(構成比32%)、業務委託料が29億円(同24%)を占めています。また、売上原価は727億円で、売上高に対する構成比は91%となっています。
■(3) セグメント収益
同社グループは半導体デバイス事業の単一セグメントですが、製品別の売上構成を見ると、パワーモジュールおよびパワーデバイスが主力となっています。直近では米国子会社の持分法適用関連会社への移行により、その他に含まれていた売上が大きく減少しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| パワーモジュール | 501億円 | 406億円 |
| パワーデバイス | 400億円 | 381億円 |
| その他 | 316億円 | 16億円 |
| 連結(合計) | 1,216億円 | 802億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的な状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -97億円 | -89億円 |
| 投資CF | 981億円 | -103億円 |
| 財務CF | -479億円 | -70億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-7.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「パワーエレクトロニクスを通じて貢献する企業となり、お客様のイノベーションのため、社員一人ひとりのイノベーションのため、そして、社会のイノベーションのため、サステナブルな未来を実現する」という経営理念を掲げています。独自の技術力で社会課題の解決に寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、技術力と創造力の革新に努め、「技と知のプロフェッショナル集団」として顧客価値の創出に貢献することを重視しています。多様な視点やイノベーションの創出を促すため、ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、社員一人ひとりを尊重しながら主体的に活躍できる組織風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は「2024年中期経営計画」において、2024年度を震災影響の立て直し期間と位置づけ、売上拡大と利益を生み出す企業への変革を目指しています。環境変化に対応しつつ、長期的に社会のイノベーションに貢献する高収益企業の実現に向け、以下の数値目標を掲げています。
* 売上高875億円
* 連結営業利益率4%以上(2028年3月期)
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、自動車・白物家電・産業機械の各市場での拡販戦略を進めています。自動車市場ではエンジン車の需要を捉えつつ空調向けモジュールを拡販し、白物市場ではアジア全体でのシェア拡大を図ります。また、中長期の成長に向けた戦略組織を新設し、以下の重点施策を推進しています。
* SPP-プラットフォーム製品とカスタム製品の成長
* 新製品比率の向上
* 既存製品の収益改善および原価改善
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、事業成長を支える基盤として人材戦略を経営の中核に位置づけています。「事業の持続的成長を支える専門人材の計画的な確保及び育成」「成果及び価値創出に応じた適切な処遇制度の整備」「多様な人材が活躍できる環境の整備」の3つを柱とし、専門人材の比率を50%へ引き上げる目標を掲げています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.0歳 | 17.5年 | 7,114,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.2% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 78.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規労働者) | 78.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 65.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、専門人材比率(29.7%)、社内教育受講者数(281名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国際情勢の影響
同社グループはグローバルに事業を展開しており、国際情勢の不安定化や地政学的リスクの影響を受ける可能性があります。エネルギー・原材料価格の変動や物流の停滞、サプライチェーンの分断などが調達・生産・販売活動に影響を及ぼすおそれがあります。
■(2) 新製品開発と市場の受容性
変化の激しい市場ニーズに沿った新製品の開発を進めていますが、製品のタイムリーな市場投入ができなかった場合や、市場に受け入れられなかった場合、収益性が低下し、同社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 価格競争の激化
半導体市場における競争激化や顧客のコスト低減要求の高まりにより、販売価格の低下や販売数量の減少が生じるリスクがあります。高付加価値製品の開発や原価低減に取り組んでいますが、それを上回る価格競争が継続した場合は収益性の低下につながります。
■(4) 災害や感染症の発生
国内外に生産・事業拠点を有しているため、地震や台風、洪水などの自然災害や感染症の拡大が発生した場合、生産設備やインフラの被害、操業停止、物流の混乱を通じて、事業活動の継続性や業績に重大な影響を及ぼすおそれがあります。



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