ヨコオ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヨコオ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヨコオは東京証券取引所プライム市場に上場し、車載用アンテナ(VCCS)、半導体検査用治具(CTC)、微細コネクタや医療用部品(FC・MD)等の製造販売をグローバルに展開する電子部品メーカーです。直近の業績は、半導体検査需要の拡大等により増収増益を達成し、売上高901億円、経常利益55億円と好調に推移しています。


※本記事は、株式会社ヨコオの有価証券報告書(第88期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヨコオってどんな会社?


車載用アンテナや半導体検査用治具などの各種電子機器の製造販売をグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


1922年に東京都墨田区で創業し、1951年に会社設立。1962年に東京証券取引所第二部に上場し、2001年に第一部へ指定替えしました。1957年のカーアンテナ生産開始を皮切りに、回路検査機器、微細精密加工部品などへと事業領域を拡大し、近年では光波からのネットワークソリューション事業の承継も行っています。

従業員数は連結で7,624名、単体で1,012名です。大株主の構成は、筆頭株主が信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に信託業務を担う日本カストディ銀行となっており、第3位には資金調達等の取引関係がある群馬銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 13.72%
日本カストディ銀行 6.10%
群馬銀行 4.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役実行役員社長は柳澤勝平氏が務めています。社外取締役の比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
徳間孝之 代表取締役会長CEO 1988年同社入社。アンテナシステムカンパニープレジデントや代表取締役兼執行役員社長等を歴任し、2026年4月より現職。
柳澤勝平 代表取締役執行役員社長 1988年同社入社。VCCS事業部長、VCCS海外工場統括等を歴任し、2026年4月より現職。
横尾健司 取締役副会長 1985年同社入社。VCCS事業部長、管理本部長、インキュベーションセンター長等を歴任し、2026年4月より現職。
小谷直仁 取締役執行役員常務 2013年同社入社。CTC技術部長、技術本部長などを経て、2024年4月より技術本部長兼コア技術開発本部長。2022年6月より現職。


社外取締役は、戸張眞(日本能率協会コンサルティング顧問)、姜秉祐(一橋大学教授)、米田惠美(米田公認会計士事務所代表)、ヘザーモンゴメリ(国際基督教大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「VCCS」「CTC」「FC・MD」「インキュベーションセンター」および「その他」事業を展開しています。

VCCS

車載用アンテナの基本ニーズである小型化・複合化・低背化・スマート化に応えるため、アンテナ技術やマイクロウェーブ技術、モジュール化技術を駆使したアンテナシステムを開発・提供しています。主な顧客は自動車メーカーです。
収益は、自動車メーカー等の顧客に対する製品の販売によって得ています。事業の運営は、同社および国内・海外の製造子会社(ヨコオ通信システム、東莞友華汽車配件など)、販売子会社が連携して行っています。

CTC

高性能・高密度・高集積化した半導体の検査ニーズ等に応えるため、微細精密加工技術やMEMS技術を駆使し、半導体等の検査用コネクタ(前工程・後工程用)をグローバルに開発・提供しています。
収益は、半導体メーカーや検査機器メーカーへのソケットおよびプローブカード等の販売により得ています。事業の運営は、同社および国内外の子会社(ヨコオプレシジョン、YOKOWO ELECTRONICS (M) SDN.BHD.など)が担っています。

FC・MD

FC事業では携帯通信端末機器等の多様化・高機能化に対応した細密スプリングコネクタを、MD事業では低侵襲治療の実現に貢献するOEMガイドワイヤや医療用カテーテル等を設計から開発・製造まで提供しています。
収益は、端末メーカーや医療機器メーカー等への部品・ユニット製品の販売によって得ています。運営は、同社およびヨコオプレシジョンなどの子会社が主体となって行っています。

インキュベーションセンター

ADAS(先進運転支援システム)や自動運転、コネクテッドカーなどの新規分野において、より先進的かつ付加価値の高い戦略製品の開発に取り組むとともに、MaaSやIoT向けのアンテナ製品やソリューションを提供しています。
収益は、新規市場向け製品の販売やMaaS向け車載鍵管理ソリューション等の提供により得ています。事業の運営は、同社のインキュベーションセンター部門を中心に、国内外の関連子会社と連携して行っています。

その他

報告セグメントに含まれない事業として、グループ内外に向けた人材派遣事業や清掃事業、事務補助業務などを展開しています。
収益は、人材派遣や業務請負にともなう手数料等によって得ています。主な運営主体は、ユアーコンサルティングやヨコオみらいサポートなどの子会社です。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は第84期の668億円から当期(第88期)の901億円へと順調に拡大しています。経常利益は一時的に落ち込みが見られたものの、当期は半導体検査需要の拡大等により55億円まで回復し、利益率も改善傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 668億円 780億円 769億円 829億円 901億円
経常利益 65億円 57億円 37億円 39億円 55億円
利益率(%) 9.8% 7.3% 4.8% 4.7% 6.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 47億円 31億円 15億円 22億円 39億円

(2) 損益計算書


売上高の増加にともない、売上総利益も157億円から178億円へと拡大しています。売上総利益率および営業利益率ともに前期から改善しており、コスト増を吸収して収益性が高まっていることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 829億円 901億円
売上総利益 157億円 178億円
売上総利益率(%) 18.9% 19.8%
営業利益 42億円 50億円
営業利益率(%) 5.1% 5.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料が39億円(構成比30%)、支払手数料が20億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のVCCSが安定して推移する中、CTCが生成AI関連の検査需要拡大により売上高・利益ともに大幅な成長を牽引しています。インキュベーションセンターは先行投資段階のため損失を計上しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
VCCS 560億円 561億円 28億円 22億円 3.9%
CTC 156億円 196億円 15億円 29億円 14.9%
FC・MD 110億円 115億円 8億円 6億円 4.8%
インキュベーションセンター 3億円 29億円 -9億円 -7億円 -23.6%
その他 0億円 0億円 0億円 0億円 0.0%
調整額 - - 0億円 0億円 -
連結(合計) 829億円 901億円 42億円 50億円 5.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で十分なキャッシュを創出し、それを設備投資等の成長資金に充てながら、借入金の返済なども進めている健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 72億円 43億円
投資CF -41億円 -44億円
財務CF -46億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、パーパス「人と技術で、いい会社をつくり、いい社会につなげる。」の実現に向け、グローバル社会のサステナビリティに貢献する事業活動および企業活動により、ステークホルダーと共に持続的な進化と成長を続ける「進化永続企業」を目指しています。

(2) 企業文化

同社は「技術立脚企業」として、品質第一主義に徹し、最高品質と環境負荷物質ゼロ化による「ヨコオ品質ブランド」の確立を重視しています。また、独自の4つの革新(プロダクト、プロセス、パーソネル、マネジメント)を強力に推進することで、「進化経営」を具現化する文化を大切にしています。

(3) 経営計画・目標

同社グループは、「新中期経営計画2024-2028」において、以下の目標を掲げています。
・「ミニマム10」の安定的な実現(売上高営業利益率・投下資本利益率・自己資本利益率を10%以上確保)
・連結売上高1,000億円の達成

(4) 成長戦略と重点施策

同社は、既存事業の安定収益基盤で創出したキャッシュを企業価値向上に活用する一方、CTC・MD事業等の注力領域への積極投資により成長を加速させる「両利きの経営」を推進します。さらに、ビジネスモデル変革や光電融合などの新領域探索、M&Aやアライアンスも積極的に活用し、事業ポートフォリオを強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

同社は「社員を企業競争力の源泉」と捉え、人的資本経営を推進しています。目指す人材像を「衆知を集め、『新しい』を生み、チャレンジし続ける人」とし、自律的なキャリア開発、DX・AIスキルの強化、経営人材や次世代中核人材の育成等を通じて、社員の成長を企業価値向上につなげる正の循環を生み出す方針です。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.7歳 10.8年 8,157,992円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.1%
男性育児休業取得率 94.0%
男女賃金差異(全労働者) 55.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 70.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 41.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、退職者率(3.9%)、エンゲージメント向上(52%)、労働災害度数率(0.311)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) コーポレート・ガバナンスの機能不全

経営環境が激変する中で、柔軟なリスクテイクや不祥事防止のためのコーポレート・ガバナンス機能が不十分な場合、業績低迷や評判の低下、さらには資本コストを下回る投資による企業価値の毀損を招くリスクがあります。同社は独立社外取締役の増員等によりガバナンスの強化に取り組んでいます。

(2) 人材獲得競争と要員不足

必要な技術やノウハウを有する人材の確保が困難な状況や、後継者不在による機能の停滞が続く場合、中長期的な事業推進や生産供給能力、製品品質の確保に影響を及ぼすリスクがあります。同社は多様で柔軟な働き方の推進や、自律的な人材育成、DXツールの活用などで対応しています。

(3) 脱炭素社会・生物多様性保全への対応

脱炭素や生物多様性保全に対する取り組みやその開示が不十分と評価された場合、顧客との取引縮小や投資の引き揚げ、評判低下等を招き、業績に悪影響を与えるリスクがあります。また、エネルギーコストの増加も収益を圧迫する可能性があります。

(4) 製品の品質と製造物責任

同社の製品(部品・半完成品・検査機器)に欠陥が生じ、顧客の製造工程や製品に損害を与えて賠償責任を負った場合、経営成績や財務状況に影響を与える可能性があります。同社は品質管理の強化や教育の拡充を進めるとともに、PL保険への加入でリスクに備えています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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