日本航空電子工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本航空電子工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の日本航空電子工業は、コネクタ事業を主力とし、インターフェース・ソリューション事業や航機事業を展開するエレクトロニクス企業です。第95期は、自動車市場での堅調な需要があったものの、産機・インフラ市場の回復遅れなどが響き、連結売上高は前期比微減、親会社株主に帰属する当期純利益も減益となりました。


#日本航空電子工業転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、日本航空電子工業株式会社 の有価証券報告書(第95期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本航空電子工業ってどんな会社?


日本航空電子工業は、NECグループに属し、コネクタや航空・宇宙用電子機器などを手がける技術志向のメーカーです。

(1) 会社概要


1953年に日本航空エレクトロニクスとして設立され、1955年にコネクタの製造を開始しました。1961年には航空機用機器の製造に着手し、現在の事業基盤を築いています。1980年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。近年では海外拠点の設立や再編を進め、グローバルな生産・販売体制を強化しています。

同社グループは連結従業員10,154名、単体1,560名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は、事業パートナーでもある日本電気(NEC)であり、第2位には資産管理を行う日本マスタートラスト信託銀行が名を連ねています。NECとは製品の供給や仕入などで取引関係があります。

氏名 持株比率
日本電気 33.50%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.27%
THE CHASE MANHATTAN BANK, N.A. LONDON SPECIAL ACCOUNT NO.1 6.86%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。社長は村木正行氏が務めています。取締役10名のうち5名が社外取締役であり、社外取締役比率は50%です。

氏名 役職 主な経歴
村木 正 行 社 長(代表取締役) 1984年入社。コネクタ事業部長代理、グローバルテクノセンター長などを経て、2020年執行役員コネクタ事業部長。2023年4月より現職。
小野原  勉 会  長(代表取締役) 1981年入社。コネクタ事業部長、JAE Wuxi Co.,Ltd.董事総経理などを歴任。2014年社長就任を経て、2023年4月より現職。
浦 野 実 取締役専  務執行役員 1982年入社。コネクタ事業部長代理、同事業部長などを経て、2016年取締役執行役員。2021年4月より現職。
中 村 哲 也 取締役常  務執行役員 1983年日本電気入社。同社経営企画部長等を経て2012年日本航空電子工業入社。経営企画部長、コネクタ事業部長代理等を歴任し2021年4月より現職。
松 尾 正 宏 取締役執行役員 1985年入社。第二海外営業本部長、第三海外営業本部長などを歴任。2016年執行役員を経て、2022年6月より現職。


社外取締役は、髙橋礼一郎(元駐オーストラリア特命全権大使)、後藤和宏(元中部管区警察局長)、川口寛(元東京特殊電線代表取締役社長)、沼田優子(明治大学専門職大学院教授)、長崎真美(石井法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コネクタ事業」、「インターフェース・ソリューション事業」、「航機事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) コネクタ事業


スマートフォンなどの携帯機器、自動車(ADAS関連やECUなど)、FA・工作機械などの産業機器・インフラ向けに、各種コネクタを製造・販売しています。幅広い分野で電気的な接続を担う重要部品を提供しています。

収益は、顧客であるセットメーカー等への製品販売から得ています。運営は、日本航空電子工業のほか、弘前航空電子、山形航空電子などの製造子会社や、JAE Electronics, Inc.などの海外販売子会社が連携して行っています。

(2) インターフェース・ソリューション事業


自動車向けの車載用静電タッチパネルや、産業機器・医療機器向けの各種タッチ入力モニタ、操作パネルなどを製造・販売しています。人と機械をつなぐインターフェース領域の製品を提供しています。

収益は、製品の販売代金です。運営は主に日本航空電子工業が行い、製造面ではJAE Wujiang Co., Ltd.などが、販売面ではJAE八紘などが関与しています。

(3) 航機事業


航空・宇宙用の飛行制御装置、慣性航法装置、電波高度計などのほか、産業機器向けの半導体製造装置用制振・駆動機器や油田掘削用センサパッケージなどを製造・販売しています。高度な信頼性が求められる製品群です。

収益は、防衛・航空宇宙関連の顧客や産業機器メーカーへの製品販売から得ています。運営は、日本航空電子工業および信州航空電子などが担っています。

(4) その他


上記セグメントに含まれないその他の物品販売や、グループ内物流サービス事業を行っています。

収益は、物品の販売や物流サービスの提供対価です。運営は、販売を行うJAE八紘や、物流を担うニッコー・ロジスティクスなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2,000億円台前半で推移しています。第92期から第93期にかけては増収傾向にありましたが、その後は横ばいから微減となっています。利益面では、第92期以降、安定して利益を確保していますが、直近では原材料価格の高騰や市場環境の変化等の影響を受け、利益率は6〜8%台で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 2,097億円 2,251億円 2,359億円 2,258億円 2,216億円
経常利益 79億円 186億円 191億円 148億円 148億円
利益率(%) 3.8% 8.3% 8.1% 6.5% 6.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 26億円 96億円 84億円 104億円 90億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は前期比で減少しました。売上原価率は改善傾向にあり、売上総利益は増加しています。一方で、販売費及び一般管理費が増加したものの、営業利益率は上昇し、本業の収益性は改善しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,258億円 2,216億円
売上総利益 398億円 421億円
売上総利益率(%) 17.6% 19.0%
営業利益 144億円 156億円
営業利益率(%) 6.4% 7.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が86億円(構成比33%)、荷造運賃が36億円(同14%)、支払手数料が35億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のコネクタ事業は、売上が微減しましたが、自動車向け製品の売価適正化などが寄与し増益となりました。インターフェース・ソリューション事業は市場回復の遅れにより減収減益、航機事業も民間市場での調整局面により減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
コネクタ事業 1,948億円 1,928億円 154億円 177億円 9.2%
インターフェース・ソリューション事業 101億円 90億円 4億円 3億円 3.6%
航機事業 201億円 193億円 36億円 26億円 13.2%
その他 7億円 5億円 1億円 1億円 18.3%
調整額 - - △51億円 △50億円 -
連結(合計) 2,258億円 2,216億円 144億円 156億円 7.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローの状況は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)を使って設備投資を行い(投資CFマイナス)、借入金の返済や株主還元を進めている(財務CFマイナス)ことから、「健全型」と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 349億円 363億円
投資CF △203億円 △192億円
財務CF △119億円 △316億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.9%で市場平均(プライム9.4%)をやや下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.0%で市場平均(プライム製造業46.8%)を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は創業以来、『開拓・創造・実践』を企業理念として掲げています。また、「Technology to Inspire Innovation(当社の開発する技術が、お客様の独創的な商品開発に新しい扉を拓きます。)」をグローバルスローガンとし、独自の技術開発力によって顧客のイノベーション実現を加速させることを目指しています。

(2) 企業文化


「航空電子グループ企業行動憲章」に基づき、良き企業市民として法令を遵守し、社会的責任を果たすことを重視しています。「連結経営を基軸としたグローバルな事業展開」「グローバルマーケティングと技術開発力の強化」「品質・ものづくりの革新」を経営の基本方針とし、世界中の顧客から信頼されるパートナーとなることを目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


2025年度を最終年度とする中期経営計画を推進しています。市場環境の変化を踏まえ、2025年度の目標数値を再設定し、達成を目指しています。また、資本収益性の向上も重視しています。

* 売上高:2,400億円
* 経常利益:175億円
* ROE:10%以上(中期的には12%以上)

(4) 成長戦略と重点施策


「自動車」「産機・インフラ」「携帯機器」の3つの重点市場に加え、防衛予算増加を背景に「航空・宇宙」を第4の重点市場と位置付け、取り組みを強化しています。コネクタ事業ではEV化や自動運転への対応、インターフェース・ソリューション事業では新生産ラインによる効率化、航機事業では防衛・宇宙分野の基盤構築と民間市場への技術展開を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「開拓、創造、実践」の理念を具現化する原動力は人材であるとし、多様な人材の活躍推進、人材育成の強化、働きやすい職場環境の整備に取り組んでいます。女性管理職の登用や障がい者雇用の推進、階層別・職能別研修の充実、在宅勤務や育児・介護支援制度などの整備を通じて、従業員のエンゲージメントと生産性の向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.7歳 16.9年 7,160,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含め、ストック・オプションによる株式報酬費用を除いております。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.0%
男性育児休業取得率 48.6%
男女賃金差異(全労働者) 73.0%
男女賃金差異(正規雇用) 72.5%
男女賃金差異(非正規) 55.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 環境課題への対応リスク


脱炭素社会への移行や資源循環型社会への要請が高まる中、これらへの対応が遅れた場合、事業活動や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は環境課題を重要なサステナビリティ項目と位置づけ、温室効果ガス削減などの環境管理活動を推進しています。

(2) 自然災害、疫病に関するリスク


生産・販売拠点が国内外に分散しているため、大規模な自然災害や感染症の蔓延が発生した場合、操業停止やサプライチェーンの寸断により業績に影響が出る可能性があります。これに対し、設備のバックアップ体制の構築など、安定供給に向けた対策を講じています。

(3) 経済・金融・為替の変動及び地政学リスク


グローバルに事業展開しているため、各国の経済動向、政治情勢、為替変動の影響を受けます。特に米国の関税政策や地政学リスクの高まりが懸念されています。生産の複数拠点化や為替ヘッジなどの対策を行い、リスクの低減に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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