※本記事は、日本航空電子工業株式会社の有価証券報告書(第96期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本航空電子工業ってどんな会社?
同社グループは各種コネクタや航空・宇宙用電子機器などの製造・販売を行う電子部品メーカーです。
■(1) 会社概要
1953年に日本航空エレクトロニクスとして設立され、1955年にコネクタの製造を開始しました。1961年に航空機用自動操縦装置やジャイロ機器などの製造を開始し、1980年には東京証券取引所市場第一部に上場しています。その後は北米、アジア、欧州などに海外拠点を設立し、グローバル展開を推進しています。
現在の従業員数は連結で11,908名、単体で1,539名です。筆頭株主は資本業務提携を結ぶ事業会社の京セラで、第2位および第3位は資産管理業務などを行う信託銀行等の金融機関となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 京セラ | 32.97% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.47% |
| THE CHASE MANHATTAN BANK, N.A. LONDON SPECIAL ACCOUNT NO.1 | 6.86% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は村木正行氏が務めており、社外取締役比率は35.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 村木正行 | 社長(代表取締役) | 1984年同社入社。コネクタ事業部管理一部長、コネクタ事業部長代理等を経て、2020年執行役員コネクタ事業部長。2021年取締役。2023年4月より現職。 |
| 浦野実 | 取締役専務執行役員 | 1982年同社入社。コネクタ事業部長代理等を経て、2012年取締役。2014年コネクタ事業部長、2019年取締役常務執行役員などを歴任し、2021年4月より現職。 |
| 檜山憲孝 | 取締役常務執行役員 | 1985年同社入社。総務人事部人事エグゼクティブマネージャー等を経て、2018年執行役員総務人事部長。2025年4月常務執行役員に就任し、同年6月より現職。 |
| 松尾正宏 | 取締役執行役員 | 1985年同社入社。第三海外営業本部長、第二海外営業本部長などを経て、2016年執行役員に就任。2022年6月より現職。 |
| 井原成人 | 取締役執行役員 | 1989年日本電気入社。同社中央研究所研究企画本部長、NEC X, Inc. President and CEO等を歴任。2024年4月同社執行役員に就任し、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、髙橋礼一郎(元駐オーストラリア特命全権大使)、後藤和宏(元中部管区警察局長)、川口寛(元東京特殊電線社長)、沼田優子(いちよし証券社外取締役・明治大学専任教授)、長崎真美(石井法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、コネクタ事業、インターフェース・ソリューション事業、航機事業およびその他事業を展開しています。
■コネクタ事業
スマートフォン等の携帯機器向け、自動車向け(ADAS関連やボディ・パワートレイン系など)、産機・インフラ向け(FA・工作機械、通信ネットワーク機器等)など、幅広い分野で使用される各種コネクタを製造・販売しています。
主な収益源はこれらの電子部品の販売による製品代金です。運営は同社および弘前航空電子、山形航空電子などの国内外の製造子会社や、JAE八紘などの販売子会社が担っています。
■インターフェース・ソリューション事業
車載用静電タッチパネルなどの自動車向け製品や、産業機器・医療機器用の各種タッチ入力モニタ・操作パネルなどの産機・インフラ向け製品を製造・販売しています。
主な収益源は自動車・産機分野の顧客企業からの製品販売代金です。運営は同社を中心に、JAE Wujiang Co., Ltd.などの製造子会社や、JAE八紘などの販売子会社によって行われています。
■航機事業
飛行制御装置、慣性航法装置、電波高度計などの防衛・宇宙用電子機器をはじめ、半導体製造装置向け制振・駆動用機器、油田掘削用センサパッケージなどの産機・インフラ向け製品を製造・販売しています。
主な収益源は防衛・宇宙市場および産機市場の顧客に対する製品の販売代金です。運営は同社や信州航空電子が製造・販売を担い、国内外の販売子会社がサポートしています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、その他の物品の販売および同社グループに関わる物流サービス事業を展開しています。
主な収益源は物品の販売代金や物流サービスの提供に伴う対価です。運営は販売をJAE八紘が、物流業務をニッコー・ロジスティクスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は2,200億円から2,300億円台で安定して推移しており、底堅い需要に支えられています。一方で、原材料価格の高騰や新製品立ち上げに伴うコスト増加の影響を受け、経常利益および利益率は直近の期間において低下傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,251億円 | 2,359億円 | 2,258億円 | 2,216億円 | 2,279億円 |
| 経常利益 | 186億円 | 191億円 | 148億円 | 148億円 | 82億円 |
| 利益率(%) | 8.3% | 8.1% | 6.5% | 6.7% | 3.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 96億円 | 84億円 | 104億円 | 90億円 | 89億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しているものの、売上総利益および営業利益は減少しており、利益率も低下しています。これは、原材料価格の急騰や開発コスト等の増加が原価を押し上げているためと考えられます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,216億円 | 2,279億円 |
| 売上総利益 | 421億円 | 364億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.0% | 16.0% |
| 営業利益 | 156億円 | 89億円 |
| 営業利益率(%) | 7.0% | 3.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が85億円(構成比31%)、支払手数料が43億円(同16%)、荷造運賃が41億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のコネクタ事業は自動車市場向けなどが堅調で増収となりましたが、原材料価格の高騰などで減益となっています。航機事業は防衛装備品の需要増により増収を確保しましたが、高収益の産機向け低迷で減益となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| コネクタ事業 | 1,928億円 | 1,992億円 | 177億円 | 119億円 | 6.0% |
| インターフェース・ソリューション事業 | 90億円 | 77億円 | 3億円 | 1億円 | 1.9% |
| 航機事業 | 193億円 | 205億円 | 26億円 | 22億円 | 10.7% |
| その他 | 5億円 | 5億円 | 1億円 | 1億円 | 22.6% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | △50億円 | △54億円 | -% |
| 連結(合計) | 2,216億円 | 2,279億円 | 156億円 | 89億円 | 3.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態(積極型)となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 363億円 | 170億円 |
| 投資CF | △192億円 | △244億円 |
| 財務CF | △316億円 | 0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業以来『開拓・創造・実践』の企業理念のもと、独自の革新的、創造性に富んだ高い技術・開発力を背景に事業を展開しています。また、“Technology to Inspire Innovation”をグローバルスローガンに掲げ、顧客の独創的な商品開発に新しい扉を拓く技術開発に注力しています。
■(2) 企業文化
良き企業市民として関係法令を遵守し、顧客、株主・投資家、取引先、地域社会をはじめとした関係者に対する社会的責任を果たすことを目指しています。世界のお客様からパートナーとしての高い信頼を得るため、「連結経営を基軸としたグローバルな事業展開」や「品質・ものづくりの革新」を基本方針として推進する文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
社会価値を創出し、持続的発展に貢献しながら企業価値の向上を目指すため、2028年度を最終年度とする3か年の中期経営計画を策定しています。安定的に収益を上げ継続的成長を実現する企業体質へと進化させることを目標に掲げています。
・売上高2,600億円
・営業利益180億円
■(4) 成長戦略と重点施策
大きく変動する外部環境への対応力を強化し、収益を最大化する「ポートフォリオ変革」と、それを構造的に支える「事業基盤強化」を重点的に取り組みます。注力領域へのリソース集中と重点4市場のリバランスを推進し、業務プロセスや情報システムの最適化による経営効率向上とコスト競争力強化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業の強みである技術開発、ものづくり力、グローバルマーケティングを一層強化するため、「多様な人材の活躍推進」「人材育成の強化」「社内環境整備」に取り組んでいます。年齢や性別にとらわれない多様な視点を取り入れ、自律的なキャリア形成を支援する専門スキル教育プログラムの拡充を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.3歳 | 16.3年 | 7,270,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.2% |
| 男性育児休業取得率 | 77.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 53.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 環境課題への対応リスク
脱炭素社会の早期実現や循環型社会への転換といった世界的な環境課題に対し、対応が遅れた場合は事業活動および業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社グループは温室効果ガス排出削減による地球温暖化対策をはじめとする各種環境管理活動に積極的に取り組んでいます。
■(2) 自然災害、疫病に関するリスク
国内外に分散する生産・販売拠点において、大規模な自然災害や感染症の蔓延が発生し、物的・人的被害や物流機能の麻痺が生じた場合、生産活動の縮小や停止を余儀なくされる可能性があります。設備のバックアップ体制を構築し、安定供給の維持に努めています。
■(3) 経済・金融・為替の変動リスク
生産および販売拠点をグローバルに展開しているため、世界各国の経済動向や政治・社会情勢の変化、金利や為替の変動が調達コストやサプライチェーンに影響を及ぼす可能性があります。生産の複数拠点化や先物為替予約によるリスク回避を進めています。
■(4) 調達・サプライチェーンの混乱リスク
製品の原材料や部材の多くを外部から調達しており、市況価格の急騰によるコスト増や物流の混乱による調達難が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。調達先の分散やコスト低減、製品価格の適正化を通じて安定調達とリスク抑制を図っています。



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